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1.5-31 後片付け
「エブモス、わたくし」
「いいよっ。ソラナちゃんは頑張ったよっ!」
「でも、わたくし。2人を無意味に見殺しに」
「わたし達、目隠しされていたんだから。そんなに自分を責めないで」
ぎゅっと、ソラナを抱きしめ落ち着く様に促すエブモス
「彼ら、彼。責任取らせなきゃ」
「大丈夫だよ!みんなは、ジュノ姉ぇが連れて行ったから!」
イエローテープで立ち入り禁止と書かれた現場。その中で、立ち尽くすソラナ。
先程から、ずっとだった。
無意味に命を絶たれ、その理由と責任を放棄されたトロン。
そして、ちからを振るった、本来護るべき彼ら。
その矛盾に心の理解が追いつかず立ち尽くしていたのだ。
「いたい」
「お姉、さま?」
パチンと、頬を叩かれた感覚
自分が叩かれたと認識し、顔を上げる。
ふと、温かく大きな温もりが自分を包む。
「ソラナちゃん。そういうことも、あるわ」
「本来、あってはいけないものだけど」
「その為に私達がいるの」
「だから。背追い込まないで」
抱きしめながら、オズモは彼女に言い聞かせてた。
変わらない無表情は、一転して泣き顔になり、彼女の瞳からは、涙が溢れていた。
「で、エブモス達以外だーれもいないったぁどういう事だ?」
あいつらは、ジュノさんが連れて行っちまったしな。
引き締まった体格の短髪の青年が呟く。
「ポルカ課長、あたりには、誰もいませんでしたよ」
そういいながら、調査結果のデータを渡す青髪の少年。
「さんきゅ、アス太」
「いえいえ」
「ただ、『何も』検出されない場所はありましたよ」
「あんだと?」
「それは、かかるな」
「おい!アゼロ。いけるか?」
「はい。お任せください」
そう言って、痩身に四角い眼鏡をした青年が手をかざす。
『何も』検知されない場所を次々と炙り出す。
それは、ひとつに繋がり、まるで。
「獣道かよ」
「はい。まるで、手負の獣が猟師を巻く様な巧みな移動の痕跡です」
クイっと、眼鏡を押し上げながら。
「しかし、巻かれてしまいました」
そう報告するアゼロ。
「いや、これだけ絞れたんだ。後は、地道に捜査すりゃーいい。ありがとうな、アゼロ」
「いえ、仕事ですから」
そう言って、アゼロは作業着姿の鑑識に混じる様に自分の持ち場に戻った。
「よっし!んじゃ、アス太くん。やりますか!」
「ですね!アゼロは、よかったのですか?」
「あー。やつは、後方支援の方が光るからな!俺たちの集めたデータを逐一集めてだ。解析してもらう」
「かしこまりました。では、パラチェーンズ。集合!」
そうアス太が叫ぶと、事件現場を調べていた彼らは、集まった。
「よし、捜索の時間だ。お前ら、獣を捕まえるぞ!」
「はい!!」
スクラムを組み、掛け声を上げた後、アゼロが示した道へと散っていった彼ら。
コスモス特殊対策一課のパラチェーンズとその長のポルカドットであった。
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「ほーぅ。このボクに何かようで、も!?」
真っ赤なスーツが鮮血に滲む。
そして、徐々に鈍い鉄色を帯びていく。
「うそ、だろ?ボクは、上位者なんだぞ」
スーツから生えた角が消え、一閃の光となりその姿を両断した。
粒子を放つわけでもなく、切られた身体からは鮮血が解き放たれ路地を血に濡らしていた。
一閃の光は、星の様に無数へと分たれ、そこにいた人影を瞬く間に肉の塊へと変えた。
そこへ放たれた一筋の赤い光
それが、塊を焼き尽くした。
「殲滅終了っと」
そう軽快に口走る青年の横には、中性的な少年の様な、少女の様な姿があった。