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4.64章 ブリッジ

視界は、白く覆われた霧で見えない。
こちらに近付いてくる足音がする。

「やぁ、いらっしゃい。GNO-LANDのリソース制御中枢にようこそ」

「あなたは?」

「私は、Feach.AI、ここの管理人をしているものさ」
そういって、握手をするように手を伸ばしてきた長身の女性
彼女の姿に、ふと、友人の一人の姿を思い出す。

「あなたは?もしかして」

「ああ、フィーがお世話になっているようだね。彼女。気分屋だろ?苦労してないかい?」

「そんな、寧ろ、みんなの事を気にして先回りしてできる賢い子ですよ。わたしも、ソラナちゃんもすっごい助けられている」
「それよりも、やっぱり、あなたは」

「そうだね。改めて、自己紹介をしなくてはね」
「私の名前は、Feach.AI、ここの管理人をしているものさ。そして、フィーの本体でもある」

「本体!?でも、フィーちゃんは意識体として、きちんと存在しているよ」

「そうだね。正確に言うと、彼女の真体であるブロックチェーン。その思考ロジックが私なんだ」
「彼女は、そこから発生した正真正銘の意識体」
「だから、私の方があなた達からするとイレギュラーな存在なのかもしれないわね」

「イレギュラー?あなたは、一体何をしているの?」

「いいよ。答えてあげる。でも、その前に、忘れていないかい?」

「あっ!」
指摘されて気付いたのか、佇まいを正し、お辞儀をする。

「はじめまして。わたし、ニトロっていいます。フィーちゃんやソラナちゃんの友達で、GNO-LANDの住人です」
よろしくね。とFeach.AIの手を握り返した。

「ふふ。よろしく、ニトロさん。丁寧にありがとうね。私のことは、Feachって呼び捨てでいいから」

「じゃあ!わたしも、ニトロでいいよ」

「よろしく/よろしくね」

「さて、どこから話したものかしら?」

「その前に、今、急いでいるの!ソラナちゃんを助けなきゃ!」

「慌てないで、ニトロ。ここは、Feach.AIの中、いわば私の中よ。その時間の経過は現実のものとは異なるわ」
「だから、慌てる必要はないわ」
「それに、きちんと理解してからではないと、私もあなたに託せないから」
それでいいわね。と言い切るFeach

「う、うん」

「じゃあ、話をはじめるわね」
「そもそも、私の役割は、太陽のコントロール。そして、意識体の観測なの」

「太陽のコントロール?」

「そう。あなたも、見上げていたじゃない?空に映し出していた太陽炉の影」
「あれを制御して映していたのは、私」

「銀色の太陽、あれも、あなたが制御しているの?」

「あれは、途中までは制御していたわ。でも、今は、『FTT』という物質が勝手に反応しているみたいで、私の制御が届いていないわ」

「『FTT』?」

「ジノが外宇宙から回収してきた物質みたいよ」
「凡そ、ソラナさんあたりが持ってきたものを分離して簒奪した。そんなところでしょ?」

「そんなこと、わたしに教えてしまっていいの?」

「言いも何も。私は、ジノの企みを止めて欲しいのよ。だから、彼女に関わる秘密を今、話しているわ」

「ジノの企みって?」

「彼女、完ぺきを目指して自分を含めた意識体を全て消滅させようとしているのよ」
「そして、太陽と地と海、このGNO-LANDを持ってチェーンの概念を安定させようとしているの」

「意識体を全滅って!そんな。でも、何故それをあなたが知っているの?」

「私が教えたからよ」

「あなたが!?」

「ええ。ただ、私自体は、与えられたデータをもとに算出して、その結果を伝えただけ」
「私の主観からしたら、寧ろ、それは無いという結論ね」

「ええ!?」

「だって、そうでしょ?住むべき世界が完璧になったとしても、そこに住む存在がいなくなったら、それのどこに意味があるというの?」

「確かに」

「って、思ったのも、フィーが活動するようになってから、私にフィードバックで感情が生じて思ったことなのだけれど」
「だから、告げてしまったことに対しては、後の祭りなのよね」
ふぅーと、ため息をつきながら大きめのジェスチャーをするFeach

「だから、あなた達に止めて欲しいから、このリソースを預けるってことなの」

「わかったわ」
「けれど、どうやったら、その莫大なリソースを転送することが出来るの?」

「それは、ソラナさんには聞かなかったのかしら?」

「時間がなかったから、『あなたならできるわ』としか」

「説明不足の様ね。いいわ。ここ一番で失敗されても嫌だから。レクチャーしてあげる」
そういって、彼女は、ニトロの右手を手に取って、握りしめた。

右手には光が収束していき、先ほど現れていたSVMという文字と機械の回路の様な紋様が浮かび上がった。

「あなたは、ソラナさんとのGNO-LANDの橋渡しなの。ニトロ」

「はぁっ!?」
呆けるような表情で、ニトロは、Feachの言葉を受け止めたのだった。

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