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R-TYPE / ZERO: 天使の軌跡:4

木星の巨大な赤い嵐がゆっくりと回転する様子を背景に、アルビオン防衛基地は静かにその役目を果たしていた。その巨体は金属的な光沢を放ち、星間戦争における最重要防衛拠点としての存在感を示していた。しかし、その静けさは突如として破られる。

「警報!緊急警報!未確認バイドの大規模接近を確認!」

基地内部に響き渡る機械音声に、研究員たちは慌ただしく動き始めた。巨大なモニターには、無数の肉塊のような物体が基地に向かって接近する様子が映し出されている。その数は膨大で、まるで生き物の群れのように連携して動いていた。

「これがバイドの新型か……?」

中央指令室のフリーマン博士が息を飲みながら呟く。その横では、整備班リーダーのジョン・カーターが拳を握りしめ、モニターを凝視していた。

「数が多すぎる……。防衛ラインが持たないかもしれない。」

ジョンの言葉に、研究員の一人が不安げに声を上げた。

「もし防衛線を突破されたら、基地内部に侵入される可能性が……。」

「それだけじゃない。」

フリーマン博士が静かに言葉を継いだ。

「バイドの動きが従来のものと違う。目的を持っているようだ。彼らは基地を飲み込むつもりだ。」

その瞬間、基地全体に赤い警告灯が灯り、さらなる警報音が響き渡った。

「外部防衛システムが制圧されました!敵が防衛兵器を取り込んでいます!」

指令室にいる全員が言葉を失う。バイドはただの破壊者ではなく、基地の兵器を吸収し、それを逆利用する能力を見せていた。


基地から少し離れた軌道上では、Team / ゼロのパイロットたちが、それぞれの機体のコクピット内で警報音を聞いていた。R-9Eの中央に埋め込まれたコアが淡く光を放ち、リオの声が和也に届く。

「お父さん、これ……私たちの出番だよね?」

和也は操縦桿を握り直し、静かに頷いた。

「そうだ、リオ。俺たちが行かなきゃ、この基地も地球も持たない。」

リチャード・カーティスの冷静な声が通信を通じて響いた。

「全員、準備を整えろ。出撃まで時間がない。これまで以上に厳しい戦いになるぞ。」

美咲はナオミに声をかけた。

「ナオミ、大丈夫?怖くない?」

ナオミの声は少し震えていたが、それでも力強く返事をした。

「うん、お母さんと一緒なら大丈夫……。」

整備班からの通信が入る。

「全機、整備完了!出撃準備が整いました!」

ジョンが最後に一言付け加えた。

「お前たち、絶対に帰ってこいよ。俺たちが守っているのは、お前たちだってことを忘れるな。」


Team / ゼロの機体が次々と発進し、基地外縁部へと向かった。外部防衛システムは完全に制圧され、基地そのものが敵の兵器となり果てていた。

「敵が基地の兵器を取り込んで攻撃してくるなんて……。」

美咲が息を呑みながら呟く。ナオミが少し震えた声で答えた。

「私たち、これに勝てるのかな……。」

「ナオミ、落ち着いて。一緒に頑張ろう。」

リチャードの声が全員の通信に入る。

「敵はただ数が多いだけじゃない。戦術的に動いている。各機、敵の動きを予測しろ!」

和也が目の前の敵群に向かって波動砲をチャージする。

「リオ、サポートを頼む。」

「了解、お父さん!敵の右側に弱点があるみたい!」

波動砲が放たれ、敵の一部が破壊される。しかし、それでも肉塊バイドの勢いは止まらない。次々と再生しながら進行を続ける敵の姿に、パイロットたちは恐怖と絶望感を覚える。


一方、指令室では研究班と整備班が敵の動きを分析し続けていた。フリーマン博士が新たなデータを確認し、顔を青ざめる。

「培養層だ……。奴ら、基地内部の培養層に侵入した。」

ジョンが博士を睨むように見て問いただす。

「培養層ってなんだ?そこに何があるんだ?」

「新型バイドの研究データと実験体だ。もしそれを取り込まれたら、敵はさらに進化する。」

その言葉に、指令室の空気が凍り付く。モニターに映し出された培養層には、すでに肉塊バイドが入り込み、自己増殖を始めていた。

「これ以上、奴らを進化させるわけにはいかない……!」


フリーマン博士が絶望的な表情でデータを確認し、声を震わせながらパイロットたちに通信を送った。

「Team / ゼロ、聞こえるか?基地内部の培養層でバイドが進化した。コードネームはドブケラドプス。これまでのどの敵よりも危険だ。」

リオが和也に不安げに問いかける。

「お父さん、どうしてこんなことに……?」

和也が静かに答えた。

「分からない。でも、俺たちが止めるしかないんだ。」

ドブケラドプスの姿がモニターに映し出される。巨大な質量を持ち、工学兵器と質量兵器を融合させた異様な姿。Team / ゼロの全員がその威容に息を呑んだ。

「行くぞ、全員。この基地と地球を守るために!」

パイロットたちの決意を乗せた機体が、次なる戦場へと向かう。その先に待つのは、さらなる絶望と過酷な戦いだった。


木星基地の深部に設けられた培養層。その場所は、通常の基地職員ですら立ち入ることが許されない、高度機密区域だった。そこでは、新型バイドの解析と、戦闘データを用いたバイド兵器の研究が密かに進められていた。

しかし、その厳重なセキュリティも肉塊バイドには意味を成さなかった。

モニターに映る培養層内部では、肉塊バイドが壁や装置を次々と取り込み、異様なまでに膨れ上がっていた。その中心には、かつて人間が研究のために培養していたバイド細胞のサンプルが吸収され、不可逆的な進化が始まっていた。

フリーマン博士が指令室の中央でモニターを指しながら叫んだ。

「やはり奴らは培養層に到達した!このまま放置すれば、我々の研究成果が奴らの武器に変わる!」

整備班リーダーのジョン・カーターが苛立ちを隠せず声を荒げた。

「研究成果だと!?こんな状況でそんな言葉が出てくるのか!?」

フリーマン博士は目を伏せ、苦い表情を浮かべる。

「私だってわかっている……だが、これを止める術は、パイロットたちに頼る以外にない。」


培養層内部のモニターに映し出された肉塊は、異様な動きを見せていた。取り込んだバイド細胞が細胞分裂を繰り返し、数秒ごとにその形状を変化させていく。

「これが……自己増殖するバイドの姿か。」

リチャード・カーティスの低い声が通信越しに響く。

「奴らはただ破壊するだけじゃない。進化し続けている。」

和也が操縦桿を握りしめ、リオに声をかけた。

「リオ、分析できるか?」

「……お父さん、敵の動きが速すぎて解析が追いつかない。でも……奴らの中心に、強いエネルギー反応がある!」

フリーマン博士がすかさず応答する。

「それがドブケラドプスだ。完全に進化すれば、基地そのものを飲み込むだろう。」


モニターに映る肉塊が大きく震えた。その中心部が赤く光り始め、次第に形を整えていく。異様な骨格と、機械的なパーツが融合した姿――それが、ドブケラドプスだった。

「ドブケラドプス……。」

ナオミの震える声が通信を通じて美咲に届く。

「お母さん……これ、私たちに似てる……。」

「ナオミ、そんなことないわ。あなたは違う。」

美咲の声には、確かな強さと母親としての優しさが込められていた。しかし、モニターに映るドブケラドプスの姿は、まるでエンジェルパックの進化の果てを示唆しているかのようだった。

「敵が動き出すぞ!」

リチャードが声を上げると同時に、ドブケラドプスが基地内に蓄積されていたエネルギーを吸収し、巨大な質量兵器を形成した。触手のような砲台が伸び、周囲にエネルギー弾をばら撒き始めた。

「全機、陣形を取れ!奴を止めるぞ!」


基地深部での戦闘が開始された。ドブケラドプスは、触手状の砲台から高エネルギー弾を発射し、周囲に爆発的な衝撃を与えた。

「リオ、右側に回り込む!援護を頼む!」

和也のR-9Eが素早く旋回し、敵の死角に入ろうとするが、触手が機敏に反応し、高速で迎撃してきた。

「お父さん、気をつけて!」

リオが神経接続を通じて和也の視界に情報を送り込み、触手の動きを事前に察知させる。そのおかげで直撃を免れるものの、攻撃の隙が見つからない。

「美咲、ナオミ、後方から一斉攻撃を仕掛けろ!」

リチャードが指示を出し、美咲とナオミのR-11Bが連携して後方から攻撃を開始する。

「ナオミ、行くわよ!」

「うん、お母さん!」

エネルギー弾が触手を直撃し、一部を切断することに成功。しかし、ドブケラドプスはすぐに再生し、再び全身を攻撃に転じた。


「奴は再生してる……どれだけ攻撃してもキリがない!」

ルイスが叫ぶ中、カルロスが冷静に状況を整理した。

「和也、中心部のコアに波動砲を当てる必要がある。それ以外では奴を倒せない!」

「リオ、波動砲を準備する!」

和也が波動砲のチャージを始めるが、触手の猛攻が続き、接近することすら困難だった。

「お父さん、今じゃない!もう少し待って!」

リオの声に従い、和也はタイミングを見計らう。その間、美咲とナオミが防御を担当し、リチャードが敵の注意を引きつける。

「全員、今だ!」

リチャードの合図と共に、和也が波動砲を発射。高エネルギーの光がドブケラドプスのコアを直撃し、その巨大な体が崩れ始めた。

「やったか……?」

ルイスが息を切らしながら呟く。しかし、ドブケラドプスは再び動き出し、最後の抵抗を見せた。


「もう一度、波動砲を準備しろ!」

リチャードの指示で、全機が再び攻撃態勢を取る。和也とリオが再チャージを行い、リチャードが敵のコアを露出させるために触手を引き裂く。

「お父さん、今!」

リオの叫びと共に放たれた波動砲が、ついにドブケラドプスのコアを完全に破壊した。その巨大な体は崩れ落ち、静寂が訪れた。

「全機、被害状況を確認しろ。」

リチャードの冷静な声が響く中、パイロットたちはそれぞれの機体の状態を確認した。リオが和也に語りかける。

「お父さん……怖かったよ……。」

「リオ、よく頑張ったな。お前のおかげだ。」

和也の言葉に、リオは少しだけ安堵したような声で返事をした。

「うん……。」

その頃、基地深部ではさらに異様な動きが始まっていた。それを知るのは、まだ誰もいなかった。


ドブケラドプスの巨体が完全にその姿を現した。異様にねじれた金属と生体組織が絡み合った姿は、人間の理性を拒絶するかのようだった。その巨大な質量兵器が基地の培養層を取り込み、周囲に圧倒的な威圧感を放っていた。

「これが……ドブケラドプスか。」

リチャード・カーティスの声が冷静に通信越しに響いたが、その言葉の端々に緊張が滲んでいる。パイロットたちはすでに何度も死線を潜り抜けてきたが、目の前の敵は過去のどれとも異なっていた。

「お父さん……これ、本当に倒せるの?」

リオの声に不安が混じる。和也は操縦桿を握り直し、力強く答えた。

「倒すしかない。俺たちがやるんだ。」


ドブケラドプスが触手のような砲台を展開し、周囲に高エネルギー弾を放ち始めた。爆発音が響き渡り、基地の残骸が四散する。

「全機、散開しろ!被弾するな!」

リチャードの指示で、パイロットたちは一斉に陣形を崩し、それぞれが敵の死角を狙おうと動き始めた。しかし、触手状の砲台は機敏に動き、全方向から攻撃を仕掛けてきた。

「ナオミ、右側の敵を引きつけるわ!」

「うん、お母さん!」

美咲とナオミのR-11Bが連携して右側からの攻撃を分散させる。一方で、ルイスとカルロスが正面から攻撃を試みた。

「ルイス、無理に突っ込むな!」

「わかってる、カルロス!」

エネルギー弾をかわしながら、ルイスの機体が巧みに回避行動を取り、敵の防御層に直撃弾を叩き込む。しかし、ドブケラドプスはその傷を瞬時に再生させた。

「こいつ、本当に厄介だな!」


リオが和也に神経接続を通じて情報を送る。

「お父さん、敵の中心にコアがあるみたい!でも、すごく硬い防御層で覆われてる。」

「コアを狙うには、まず外部の砲台を破壊するしかないな。」

和也は波動砲のチャージを始めるが、触手が猛然と反撃してきた。

「リオ、援護を頼む!」

「任せて、お父さん!」

リオのサポートで触手の動きを事前に察知し、和也は波動砲を発射。その光線が触手を吹き飛ばし、周囲に一時的な隙間を作る。

「今だ!全員、コアに接近しろ!」

リチャードが指示を出し、全機が敵の中心部に向かう。しかし、ドブケラドプスは触手を再生させ、さらに新たな砲台を展開した。


「再生速度が速すぎる……これじゃキリがない!」

ナオミが悲鳴のような声を上げる。美咲がナオミを励ますように答える。

「落ち着いて、ナオミ。私たちならやれるわ。」

ルイスが通信越しに叫ぶ。

「和也、早く何とかしてくれ!」

「わかってる!」

和也は波動砲を再びチャージするが、ドブケラドプスの砲台がさらに激しい攻撃を仕掛けてくる。リオが息を飲む。

「お父さん、次の攻撃はもっと強い……来るよ!」

触手が周囲を取り囲み、一斉にエネルギー弾を放った。パイロットたちは辛うじて回避するが、その爆風で機体が揺れる。

「持ちこたえろ!俺たちがやらなきゃ誰がやるんだ!」

和也の叫びが全員に届く。


「全機、波動砲をチャージしろ!奴の防御を一気に破壊する!」

リチャードの指示で、全員が波動砲をチャージし始めた。和也がリオに語りかける。

「リオ、これが最後だ。一緒にやるぞ!」

「うん、お父さん!」

全機がタイミングを合わせ、ドブケラドプスの中心部に向けて波動砲を発射した。光の奔流が敵を貫き、防御層が崩壊する。

「コアが露出したぞ!今だ!」

リチャードの叫びと共に、和也が最後の一撃をコアに叩き込む。その瞬間、ドブケラドプスの巨体が崩れ落ち、周囲に閃光が走った。


戦闘が終わり、静寂が訪れる。しかし、その場に漂うのは安堵よりも深い疲労感だった。リオが和也に小さな声で話しかける。

「お父さん……怖かったよ……。」

和也はリオを安心させるように微笑みながら答えた。

「でも、やったじゃないか。お前のおかげだよ。」

ナオミが美咲に抱きつきながら泣き声を漏らす。

「お母さん、私……本当に大丈夫なのかな……。」

美咲が優しくナオミを抱きしめた。

「ナオミ、あなたは大丈夫。私たちが一緒にいるから。」

全員が重い足取りで基地へと帰還しながら、それぞれの思いを抱え続けていた。この戦いがもたらしたのは勝利だけではなく、心に残る深い傷跡でもあった。


ドブケラドプスとの戦いを終えたTeam / ゼロのメンバーは、疲労感に包まれながらも次なる事態に備えていた。しかし、戦場に戻る途中、指令室からの緊急通信が入る。

「全員、聞こえるか?基地内部に取り残されていたR型戦闘機—Δタイプとアルバトロスがバイドに取り込まれ、動き出した。現在、制御不能な敵性体として接近中だ!」

その報告に、和也が操縦桿を握り直した。

「Δタイプとアルバトロスだと?あの高性能機が敵に回るなんて、冗談じゃないぞ。」

美咲が通信越しに声を上げた。

「基地に残っていたって、どうしてそんなことに……。まさか、バイドが機体そのものを…。」

フリーマン博士が落ち着いた声で続ける。

「その通りだ。バイドは単なる肉塊ではない。彼らは取り込んだ技術を完全に理解し、それを武器として活用できる。このままでは、奴らは基地の外部にまで進行するだろう。」

リチャードが冷静に状況を把握し、指示を出した。

「全員、敵機との戦闘準備を整えろ。これまでのバイドとは違う、高度な戦術を想定しろ。」


宇宙空間の闇に紛れるようにして、2機のR型戦闘機が姿を現した。しかし、それはかつての洗練されたフォルムではなく、歪んだ金属とバイドの肉塊が融合した異形の姿だった。

「信じられない……本当にΔタイプとアルバトロスだ。」

ルイスが苦々しい声を漏らす。カルロスが即座に応じた。

「見た目は似ていても、中身は完全に別物だ。倒すしかない。」

Δタイプが突然加速し、一直線にTeam / ゼロの陣形に突っ込んできた。その動きは精巧で、人間の操縦を思わせるものだった。

「敵の動きが早い!全員、回避!」

和也のR-9Eが急旋回して攻撃を回避する。しかし、アルバトロスが後方から正確な射撃を仕掛けてきた。

「これじゃ、まるで俺たちと戦ってるみたいだ。」

リチャードが苦渋の表情を浮かべる。

「それだけじゃない。奴らは、まるでエンジェルパックを模倣しているようだ。」


リオが震える声で和也に問いかけた。

「お父さん……あの機体、私たちに似てる。私たちも、ああなっちゃうのかな……?」

和也はすぐに否定する。

「リオ、お前たちは違う。俺たちと一緒に未来を守るためにいるんだ。」

しかし、リオの声にはまだ不安が残っていた。

「でも……でも、私たちの構造も似てるんでしょ?どうして違うって言えるの……?」

ナオミも美咲に問いかけた。

「お母さん、私たちって本当に人間の味方なの?もしかして、私たちもバイドの一部なんじゃないの……?」

美咲は一瞬言葉を詰まらせたが、優しくナオミに語りかけた。

「ナオミ、あなたは私の家族よ。それ以上でも以下でもない。私はそれを信じている。」


Δタイプとアルバトロスは、完全に連携した動きを見せていた。Δタイプが機動戦で相手を翻弄し、アルバトロスがその隙を突いて精密射撃を加える。

「こいつら……俺たちの戦術をコピーしてるのか?」

カルロスが驚きを隠せない中、アレックスが冷静に分析を進める。

「恐らく、敵は我々の戦闘データを取り込んでいる。特にエンジェルパックの動きを再現している可能性が高い。」

和也が歯を食いしばりながら叫んだ。

「それなら、俺たちがオリジナルだってことを証明するしかない!」


リオが静かに、しかし決意を込めて和也に語りかける。

「お父さん、私、もう逃げない。私たちが違うって、自分で証明する!」

ナオミも震えを抑えながら美咲に言った。

「お母さん、私、怖いけど……頑張る。みんなと一緒に。」

エンジェルパックたちの言葉に、パイロットたちの士気が高まった。

「全員、陣形を組む!奴らの連携を崩すぞ!」


パイロットたちは敵の連携を崩すべく、それぞれの機体を最大限に駆使して攻撃を展開した。ルイスとカルロスがΔタイプを牽制し、美咲とナオミがアルバトロスの動きを封じる。

「今だ、和也!コアを狙え!」

リチャードの指示に応じ、和也が波動砲をチャージする。

「リオ、一緒に決めるぞ!」

「うん、お父さん!」

波動砲が発射され、Δタイプの中心部を直撃。その機体が爆発し、歪んだ肉塊と金属が宇宙空間に散った。

直後に、アルバトロスが最後の突撃を仕掛けてきたが、美咲とナオミの連携攻撃でこれを撃破。戦場に静寂が戻った。


「終わったか……。」

和也が息を吐き、リオが静かに答える。

「お父さん、私たち……本当に違うのかな……?」

和也は微笑みながらリオに語りかけた。

「リオ、お前は俺の家族だ。それが全てだ。」

ナオミも美咲に寄り添いながら呟く。

「お母さん、ありがとう。私、もう少し頑張れる。」

リチャードが全員をまとめるように語る。

「これで終わりじゃない。次の戦いに備えるぞ。」

パイロットたちはそれぞれの機体を整えながら、次なる戦場を見据えていた。その背後には、木星の赤い嵐が静かに回転していた。


木星基地周辺の戦場に静寂が訪れた。爆発の余波で漂う微細な金属片とバイドの残骸が、薄暗い宇宙空間を漂っていた。Team / ゼロのメンバーは、それぞれの機体を操作しながら、重い空気の中で深い息をついた。

「終わったのか?」

ルイスが息を切らしながらつぶやく。通信越しに聞こえる彼の声には、疲労と安堵が混じっていた。

「いや、これが本当に終わりなのかどうか……。」

リチャード・カーティスの冷静な声が全員の耳に届く。その言葉に誰も反論できなかった。Δタイプとアルバトロスとの激闘は終わったが、それが全てではないと全員が理解していた。


和也は機体の操縦桿を握り直し、コックピット内に広がる静寂を感じていた。リオの声が静かに響く。

「お父さん……私、本当に大丈夫なのかな。」

彼女の声には震えが混じっていた。和也は深く息を吐き、言葉を選びながら答えた。

「リオ、お前は俺の大切な家族だ。それだけは絶対に変わらない。」

リオはしばらく黙っていたが、やがて小さく返事をした。

「……ありがとう、お父さん。」

一方、美咲の機体では、ナオミが泣き出しそうな声で語りかけていた。

「お母さん、私、怖い。戦ってる間ずっと、自分が何なのか分からなくなった。」

美咲は操縦桿から手を離し、ナオミの声に応じた。

「ナオミ、大丈夫よ。私たちは人間の側に立っている。それだけは確かだわ。」

しかし、ナオミの不安は完全に晴れることはなかった。


帰還途中、通信回線に整備班のジョン・カーターの声が入った。

「おい、全員無事か?こっちはお前たちが戻るのを待ってるぞ。」

彼の明るい声が場の空気を少しだけ和らげた。和也が応じる。

「全員無事だ。ただ、心も体もボロボロだよ。」

ジョンが笑い声を上げた。

「それなら早く戻って来い。お前たちがいなきゃ、この基地は始まらないんだ。」

フリーマン博士も通信に加わる。

「エンジェルパックの皆さん、よくやりました。私たちはあなたたちが人間と共にある存在だと信じています。」

リオが小さな声でつぶやいた。

「私たちが……人間と一緒に……。」


格納庫に戻ると、整備員たちが手を振って迎えた。パイロットたちはコックピットを開け、それぞれのエンジェルパックと顔を合わせた。

和也はリオに微笑みかけた。

「リオ、お疲れ様。よく頑張ったな。」

リオが少し照れたように答える。

「お父さんも、すごかったよ。」

美咲はナオミを抱きしめながら涙をこらえていた。

「ナオミ、本当にありがとう。一緒に戦ってくれて。」

ナオミが震える声で応じた。

「お母さん、私……これからも一緒に戦うよ。」


その夜、エンジェルパックたちは通信回線を通じて会話を交わしていた。

「リオ、私たち、本当に大丈夫なのかな。」

ナオミが不安げに問いかける。リオは少し考え込んだあと、静かに答えた。

「分からない。でも、お父さんたちは信じてくれてる。それだけは確かだよ。」

アレックスが冷静な声で付け加える。

「私たちは、今ここにいる。それがすべてだ。」

その言葉に、リオとナオミは小さく頷いた。


翌朝、Team / ゼロのメンバーは再び会議室に集まった。リチャードが全員を見渡しながら口を開いた。

「今回の戦いで、俺たちは限界を超えた。それでも生き残れたのは、チームとしての力があったからだ。」

ルイスが笑いながら肩をすくめた。

「まぁ、あれ以上やれって言われたら、さすがに嫌だけどな。」

カルロスが真剣な表情で続けた。

「次はもっと厳しい戦いになるだろう。でも、俺たちならやれる。」

和也がリオを見ながら言った。

「俺たちの絆があれば、どんな敵だって倒せる。」

リオが力強く頷いた。

「うん、お父さん。一緒に頑張ろう!」

その言葉に、全員が静かに同意した。戦いは終わらない。それでも、彼らは次に向けて歩き始めていた。

宇宙にはまだ多くの脅威が潜んでいる。それでも、彼らは信じていた。自分たちの絆が未来を切り拓く力になると。



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