4.75章 フィーの実家
「ここが、フィーの実家。お母さまはいらっしゃるかしら?」
挨拶しなくてはとあたりを見回すソラナ
「ソラナちゃん、私にお母さんはいないよー」
「これは、あくまで私の大本の体」
「だから、実家っていっても、文字通り意識体の私の実家なんだ」
「そうなのね」
そういって、少しバツが悪いような表情をするソラナ
「もしかして、気にしている?私にお母さんがいないこと言っちゃったって思ってない?」
「そうよ。わたくしとした事が、そんな気遣いも出来ずに」
「大丈夫!私は、それで寂しいとか思ったことないから!ただ、ここから眺めていて羨ましいなぁーとは思ったことがあるけど」
「フィー」
「それに、今は、ソラナちゃん達が仲良くしてくれているから、全然寂しくないよ!」
寧ろ、毎日が刺激があって楽しい!と返すフィー
「フィー、いい子ね」
そういって、フィーの頭を撫でるソラナ
「ところで、フィーちゃんのお家って、前に来た時と変わっていない?」
そういって、あたりを見回すニトロ
「ほら、前来たときはものすごくSFチックな空間で、宇宙やら銀河やらVRっぽいものが沢山あったのに、なぜか、今日は、お茶の間」
そう、そこは普通の家の茶の間
こじゃれたガラスのテーブル囲むようにソファーが配置されており、座るとそこからはキッチンを覗くことが出来た。
(なんというか、ものすごく生活感があるような)
テーブルの隅を見ると麦茶なのだろうか、茶色の液体が透明なガラスに入っていた。
「みんな、座って座って!」
「ソラナちゃんとニトロちゃん、飲み物は冷たい麦茶でいいかな!?」
(やっぱ、それ麦茶だったんだ)
「よくってよ」
「ええ、わたしも、麦茶でよろしくね」
「うん!」
ちょこまかとした動作で、麦茶を入れて二人に渡すフィー
その様子は、やはり手馴れておらず、少し危なげなものだった。
「フィー、ありがとう」
「どういたしまして!」
そんなやり取りをしていると、キッチンの奥からふと人影が見えて、こちらに挨拶してきた。
「フィーがいつもお世話になっております」
「あっ、どうも、こちらこそ」
反射的にニトロが反応する。
「ねぇ、お母さんはいなかったんじゃないの?あなた?」
彼女の髪の毛は、黒髪に銀色のメッシュがかかったロングヘア―だった。
丁度、フィーが大きくなったなら、こういう風に成長するのでは?と思い浮かべられるような姿だった。
「お母さんじゃなくて、Fetch.AIとしての私よ」
「?」
「意識体としてのフィーちゃんって、二人いるの?」
「んー、そうじゃなんだけれど、なんて言っていいかな」
「ほら、ここって、私のなかだから、そこには、AIとしての私もいるわけ」
「で、私よりもずっと前から、居るから、私より成長している姿なの」
「へーー」
「なんか、お姉ちゃんみたいな感じなのかな?」
「自分自身だから、そうは感じないけれど」
「フィー、お友達が来るなら来ると言ってくれればよかったのに」
「急だったから、簡単な物しか用意できなかったわ」
そういって、ガラスの机にクッキーの入ったお皿を配置する。
「お姉ちゃんじゃん!」
「やっていること、仕草、完ぺきにお姉さまよね。フィーの」
「うっ、確かに言われてみれば」
「じゃあ、私は、自分の部屋に行ってるから、ゆっくりと寛いでいってくださいね」
「フィーをよろしくね」
「「お姉ちゃん/お姉さまですわね」」
「う、うん」