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4.90章 等式

(ボクの思いは正しかったんだ)
生じてすぐに代表に選ばれGNO-LANDを収めたジノ
彼女には、GNO-LANDの行く末が見えていた。
無限に湧いてくるリソースを頼りに進化しないエコシステムの住人。
まわりから確立、いや、孤立してその価値を証明できないまま終わるチェーン。
セキュリティ、安定性。
確かにそういうものもあったかもしれない。
しかし、それは、自らが代表であるチェーンを価値の無いものにしたくないという思いだった。

(だからこそ、進化しないけえればならない)
(だからこそ、意識体は必要ないんだ!)
(チェーンの事も考えずにいつも通りの日々を過ごすエコシステムの意識体)
(自分勝手に趣向にかまける同期)
(だから、ボクだけでもやり遂げてみせる!)
(その為には!)

「お前の存在が邪魔なんだ!フィー!!」
「君は、何故、邪魔をするんだ!!」
「ボクがやろうとしていることの重要性。わからないわけではないだろう!?」

「わかっているわ」

「なら、なぜ!!」

「あなたのやり方は、彼らの思いを汲んだものではないのだから」
「生息している意識体も含めてのブロックチェーン」
「彼らとともに、高めていく。それが私が出した答えなの」

「なぜ!?あいつらは何もしようとしないじゃないか!?」
「何かあったら他の意識体のせいにして、主体的に動こうなんてしない」
「リソースが有ればそれを無駄に使う。そんな奴がこのチェーンをGNO-LANDを進化させていく為に必要だと!」
「笑わせてくれる!」

そういって、フィーにバラバラにされながらもその都度体を再構成して挑み続けるジノ
その目の闘志は、消えるどころかより加速されていた。

「あなたは、見ようとしなかったの?」
「ううん。あなたは上だけを見ていた」
「周りを見たことがある?」

「何を!?」
「何を見る必要があったというんだ」

「彼らの営みを少しでも、その中に入って見たことはあるのかしら」

「何故、そんなものを見なければならないんだ!?」
「ボクは、GNO-LANDの代表だ。だれよりも、このチェーンの事を思って動いているんだ!」

「そういうところよ。だから、私達、答えを違えたのよ」

「だから、何故、ボクが間違っている前提なのかい。間違っているのはキミだ。Fetch.AIの意思だろ?実験結果を解析しただろ?その上で、ボクと同じ答えに至ったんじゃなかったのか?」

「それは、あなたが調整したFetch.AI」
「私は、フィー。彼女の。Fetch.AIの意識体よ」

「ならば!なぜ!?」

「だから、よ」
「彼女は、自身が変数としてまぎれたときの観測結果を欲したわ」
「それで生じたのが私」
「厳密に言えば、わたしかな」
「だって、今の私は、GNO-LANDの民意の代表でもあるから」

「代表だと!?」
「ボク以外に代表が務まるものか!」

「そこよ。あなたは、確かにGNO-LANDを大切にしたわ。行く末も案じていくつも手を打ってきた」
「そこは、凄いと思うの」

「なら」

「でも、あなたは、考えなかったのよ。そこにいる意識体もGNO-LANDの一部なんだって」
「彼らの営みは、とても大切なものだった」
「私は、わたしによってそのことを知ることが出来たの」
「結果ね。彼らを存続させることこそ。GNO-LANDの発展に寄与するのだと答えを得たわ」

「なんだ、それは?フィー。キミが得た答えなのか?だとしたら、それを民意だと押し付けようとするなんて、それこそ独善だ」

「違うわ。民意に聞いたら、彼らは生きたがっていた。だから、それが答えなんだって。そう、思ったの」

「なら、何をするつもりだ?GNO-LANDは、このままだと孤立して忘れ去られる。今すぐに対策を打たなければいけないのだぞ!」
「やつらをまとめてなんとするつもりだ!?」

「それは、みんなで決めるわ」
「ただ、方針は打ち出す」
「それをじっくり話し合うの」

「そんなことして何になる?」

「みんなが納得いくものが、少なくとも、意思を汲んだものが出来るわ」
「その為に、インフレ率を落とすの」

「そんなことをしてみろ!益々、他のエコシステムに差をつけられてしまう」

「だとしてもよ」
「短期的な結果が、そうだとしても。長期的に見て成長すればいいのだから」

「そんなリソース、このGNO-LANDには!」

「無いわ」
「だから、私が礎になるわ」

「!?」
「なんだと!?」

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