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日常パート:ひみつ

使い慣れた機器を整えていく。
録音に使う専用のマイクセット、自然光に限りなく近い光を照射する照明。
どの角度からも撮影ができるレール式のカメラ。
それらを整えた上で、全てのコントローラを握る。
「よし、後は、着替えるだけだね」
そういうと、部屋の主人は、着替え始めた。

ゴシックロリータを思わせる服装。
前の細い人様に作られた服を着ていく。
髪を整え、お気に入りのSCRETのSを模ったイヤリングをする。

整えずとも、艶のある銀髪にヘッドドレスをつけていき。

「完成」

ダウナーなテンションで、アルビノを思わせる肌色の主人は、鏡を見て、その出来に微笑んだ。

艶のある肌は、化粧を必要としておらず。
本来の意味で、自然だった。

準備を整えた部屋の主人は、コントローラーを操作する。

「シルク・チャンネル、はじまるよ」

配信がスタートした。

まずは、お気に入りの歌の紹介。
少しハスキーな、宝塚の男役の様な声で歌い上げていく。
リズムより、感情を優先に感じたままに。

その度にコメント欄は、いっぱいになる。

「シルクちゃん、さいこー!ファンなります!」
「既にファンでしょ、あなた」
「銀髪僕っ娘、やばすぎ。はじめて見たけど常連になっちゃいそう」
「露出多めで!柔肌、もっとみたいです」
「ばっか、あの低い露出で綺麗なのがたまらないんですわよ!」

好き勝手なコメントが流れてくる。
そのひとつひとつに、丁寧に答えていく。
答えた上で、逆に質問を投げかける。

「僕にリクエストとかあるかな?」

すると、コメント欄が一段と賑わい。

「ぜひ!もう一曲!」
「いや、あの声優さんの真似して!絶対やばい」
「極上の一枚絵、お願いします!」

「いいよ、でも、みんな。お願いするときはどうするんだっけかな?」
そう言って、部屋の主人は、観客を煽る。

「シルクちゃん、お願いします!秘密にするから」
観客が一斉にコメントする。

「シークレットだからね」
部屋の主人は、答えた。

ひとしきりお願いを聞いて、ポージングしたり歌を歌ったり、学校であったことを話して配信が終わった。

「ふぅ、終わったね。おつかれさま」
誰にともなく呟く。

翌日。

「シークレット君、おはよ!」
「昨日のシルクちゃんの配信みた!可愛かったよね!」幼馴染のエブモスが答える。

「でも、シルクちゃんがシークレット君だなんて、知ったときは、びっくりしたなぁ」そう続けたエブモス。

「エブモス、それは、シークレットだよ」
そう言って、彼は、微笑みながら、エブモスの口に人差し指を置いた。

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