
再観測:星を継ぐもの:Episode10-3
Episode10-3:アリスの覚醒
白い光に満ちた空間の奥――そこは現実と異界の境界も曖昧になる、不思議な青い霧と闇が混ざり合った世界だった。まるで夜空を反転させたように、上下左右の観念が崩れ、かすかな星のような光が点々と浮かぶ。
アリス、カイン、アーサー、ガウェイン、トリスタン――円卓騎士団の面々はすでに死闘を越えて、機体も身体も限界に近い。けれど、まだ役目を終えたわけではなかった。ここが真に最後の領域――The Orderの深奥、そしてアリスが「自分の本体」と呼ぶ存在が眠る場所かもしれないのだから。
白く激しい光の渦を潜り抜けたあと、四機の戦闘機はそこかしこを傷だらけにしながらも、なんとか整列していた。アリスは銀の小手のコクピットで崩れるように座り込み、額に汗を滲ませ、ひどい頭痛に耐えている。
「アリス……無理するな」
カインが操縦桿を支えつつ、彼女に声をかける。アリスは息を整えられないまま、小さく頭を振った。
「だ、大丈夫……最後まで、一緒に行く。もうここまで来たら……戻れないから」
アーサーのエクスカリバーは片腕を失ってスパークを散らし、ガウェインの機体は盾も装甲もボロボロで、ほとんどフレームむき出しだ。トリスタンのライフルは弾薬が尽き、代わりにレーザーを細々と撃つくらいしかできない。
それでも彼らは円を描くように隊形を取り、未知の宙域を睨む。視界にはぼんやりとした闇と青白い霧が重なり合い、微妙な波紋をつくっている。そこから息づくような波動が伝わり、じわじわと胸を締め付けてくる。
「ここが……最後の場だとしたら、俺たちは何をすればいい?」
ガウェインが声を張りながらも、どこか弱々しい響きだ。アーサーは唇を引き結び、険しい視線を外へ向ける。
「おそらく、“あれ”が出てくるまで長くはかからんだろう。The Orderの本体か、あるいはアリスの……」
言いかけたとき、青い闇がさざ波のように広がり、霧をすり抜ける形で巨大なシルエットが浮かび上がってきた。かつて要塞や大艦隊をも超えるような圧倒的な存在感がある。まるで球体のようでもあり、生体らしき脈動を持っているようでもある。
その中心部に、金色の淡い輝きがうっすら透けていて、そこから重低音の振動が響いてくる。観測光の束が行き交い、時折稲妻のような光が表面を走った。
「……来るぞ」
トリスタンが息をのみ、ガウェインが盾のない腕で操縦桿を握りしめる。カインはアリスを横目で見ながらスロットルを握り、攻撃態勢を整えた。
「アリス、辛いだろうが、もう一踏ん張りだ。もし俺たちでこいつを倒せなきゃ、地上は完全に終わる」
アリスは苦しい顔をしながら「わかってる……覚悟はできてるわ」と返す。彼女は今、干渉力を全開には使えないほど消耗しているが、ここで力を出さなければ――という焦りもあった。
巨大なシルエットが、ゆっくりとその姿を変化させ始める。もろい殻を破るように、いくつもの外郭が剥がれ落ち、内側に青白い中枢が現れてくる。まるで卵が割れて中から核が出てきたように見えた。
そこには無数の目のような模様がうごめき、中心には眩い光の球が収められている。脈動が段々と早くなり、空気も震えるように振動が増していく。カインは背筋を凍らせながらも、「こいつが……The Orderの根源か……」と呟く。
「まるで生きている要塞だな」ガウェインが汗を滲ませながら嫌悪感を表す。トリスタンは冷静にレーダーを覗き、「膨大なエネルギー反応がある。近づけば一瞬で弾かれるかもしれない」と歯噛みする。
アリスは頭を押さえつつ、「……あれが、本当にThe Orderのコア? いえ、それだけじゃない気がする……まるで私を呼んでるような……」
「呼んでいる……だと?」カインが問い返す。アリスは瞳を閉じて苦しそうに眉間を寄せる。「うん……“あなたが目覚めるなら、ここに来い”って……。不確かな声だけど、確かに呼びかけを感じる……」
アーサーは冷静に判断しようと、剣ビームを構えなおす。「つまり、あれが君を覚醒させようとしている、もしくはその逆かもしれん。いずれにせよ、奴を倒すか干渉しなければ先には進めないということだな」
ポキポキと何かが砕ける音が響き、球体の一部が割れて落ちる。
その途端、そこから光の“腕”のようなものが伸び、先端が鋭い刃のように変形する。まるで複数の触手を持った人型の巨人が姿を現しつつあるかのごとく、巨大な影がゆっくりと立ち上がるのだ。
その全長はどこまであるのかさえ見当もつかない。宙の向こうまで続く背骨のようなパーツが波打ち、観測光の稲妻が何度も走る。まさに“最後の敵”を象徴するような光景だった。
「なんてこった……。いままで倒してきた戦艦や守護者が小さく見えるぞ」
ガウェインが呆れ口調で言う。トリスタンも「火力の残弾はもうほとんどない。まともに正面からぶつかって勝てるのか……?」と眉をひそめる。
カインは心の奥で悲壮感を噛みしめながらも、操縦桿を離さない。「やるしかない……ここで退けば地上が確実に終わる。アリス……最後の干渉、頼む」
「うん……だけど、それを最大にしたら、私……」
アリスはまたあの忌まわしい恐れを思い出す。覚醒すれば世界を消すかもしれない、という警告。しかし、それでもやるしかないと腹を括った。「わたしは……この世界を守る。だから、力を出す……!」
アーサーが傷だらけの機体を無理やり動かし、「よし、皆で一斉攻撃だ。あの巨体を崩してコアを露出させる。そこにアリスの干渉をぶつければ倒せるはず……いや、倒せなければ終わりだ!」と檄を飛ばす。
四機は満身創痍のまま散開し、巨大意識の本体へ向かう。
巨体がゆっくりと腕を振り上げると、視界を埋め尽くすほどの観測光ビームが放たれた。その一撃だけで、死角もなにもあったものではない。アーサーたちは必死に回避行動を取り、近づこうにも砲撃の雨が続く。青い空域が一瞬で閃光と闇に切り裂かれ、耳をつんざく爆音が響き渡る。
ガウェインが「うおおっ!」と咆哮しながら、無茶な突進をする。盾がない機体では直撃を避けきれず、何度も光弾を被弾し、装甲が剥がれ落ちて煙を吹く。だが彼は止まらない。「ここで引いたら意味がねえ……!」と吠えていた。
トリスタンもレーザーを撃ち込みながらコアを狙うが、相手は並外れた反応速度で防御を展開する。無数の腕や触手が動き、弾を叩き落としてしまう。
アーサーは剣ビームで腕を一本落としにかかるが、逆に背後から別の触手に斬り下ろされ、機体がスパークを散らす。
「ぐあっ……俺はまだやれる!」
痛みをこらえ、片腕で攻撃を続行する姿は必死そのものだ。
カインは銀の小手で軌道を取り、ミサイルを撃ち込む。だが、既に弾薬は少なく、爆発の規模も小さい。破片が僅かな傷をつける程度で、大局を変えられない。アリスが操縦席で失神寸前になりつつも、干渉をまばらに撃って援護する。それでも相手の防御を抜けきれない。
「ちっ……これじゃラチがあかん! どうすれば……」
ガウェインが限界の声を上げた矢先、巨大意識の胸部付近から黒い衝撃波が放たれる。まるで重力波のように一帯を圧し潰し、円卓騎士団がバラバラに吹き飛ばされる。
「ぐあああっ!」カインたち全員が衝撃に悲鳴を上げ、機体がスピンする。ガウェインの機体は背面を強打して火が上がり、トリスタンの機体はレーザー部分が完全に焼かれて制御不能。
「まずい……まずい!」カインは急制動で姿勢を直し、「アリス……! 平気か!?」と呼びかける。アリスは胸を抑え、「……だ、だめ……もう干渉も……」と声を失いかけている。
そのとき、青い空域がバチバチと火花を散らし、どこからともなく“声”が鳴り響いた。はっきりとした言語ではないが、まるで意志の叫びが伝わるような独特の振動――The Order本体が意思を持って吠えているのか、あるいはアリスの覚醒を試す合図なのか。
視界の端には、腕を失ったアーサーの機体が漂い、ガウェインは機体全体から火を噴いている。トリスタンはエンジンが完全に死にかけていて、ただ漂うだけだ。もう彼らに戦う力はほとんど残っていない。
「終わりか……」ガウェインが、敗北を悟ったかのように苦笑する。「ここまでなのか……?」
アーサーはなおも剣ビームを握りしめ、「ふざけるな……まだ、地上が……」と呟くが、機体が反応しない。トリスタンも沈黙したまま動けない。
カインは必死に操縦桿を握りしめ、「くそ……まだだ、まだ終わらない……!」と叫ぶが、銀の小手も翼や武装が限界で、まともな突撃は不可能。しかもアリスの干渉がもう空振り状態で、実質このままでは何もできない。
絶望が四機を覆いかけたそのとき、アリスが小さく震える声を出す。「カイン……ごめんね。私……やっぱり、もう一度だけ……本当に限界まで力を使う」
「なっ……やめろ! それ以上やったら、お前は――!」
「わかってる……でも、このままじゃ皆が……地上がみんな死んでしまう。だったら、私が恐れてる“覚醒”に踏み込んでも構わない。どうなっても……あなたが止めてくれるって信じるから」
カインは何も言えなくなる。アリスが泣きそうな目で笑っているのを見て、胸が張り裂けそうだった。彼女を止めたいが、止めたら地上が滅ぶ。かといって進めば、この世界ごと消えるリスクがある。
「でも……」
「ごめん。でも、私は皆を見捨てられない。だから、覚醒する。私は私の意思で目覚めるよ……。そしたら世界が消えるかもしれない。でも……最後に信じさせて。カイン、あなたやみんななら、新しい道を見つけてくれるって」
カインは震える声で叫ぶ。「ちょっと待てよ、そんな……俺はどうすれば……」
「守って。私が壊れないように、止めることができるなら……でも、もし止められなくても、私は後悔しない。あなたと一緒に最期までやり抜くから」
アーサー、ガウェイン、トリスタンも微かに通信を通じて耳にしている。誰もが苦しそうに沈黙していたが、結局はアリスの意思を尊重するしかなかった。ここで力を出さねば、確実に全滅。地上も壊滅する。ならば――という選択だ。
アリスが大きく深呼吸し、まぶたを閉じる。意識世界が一気に展開するのを感じ、頭の奥で誰かが「眠れ!」と叫ぶ声を聞くが、彼女は毅然と跳ね返す。(もう眠らない。私は、私の意志で戦う!)
すると、コクピット内に凄まじい圧力が生まれたように空気が震え、銀の小手が青白く発光する。機体の装甲や損傷部が眩く輝き、観測光の稲妻がコクピット外を走った。
「アリス……!」
カインが驚くほど、アリスの身体から青い光の粒が溢れ、操縦パネルに吸い込まれるように融合していく。まるで機体と彼女が一体となって、干渉の究極を引き出しているのだ。
頭の中で何かがちぎれるような痛みが走り、アリスは声にならない叫びを上げる。意識世界との境界が壊れ、彼女の「本体」が微かに覚醒へ向かう感覚。世界が揺らぎ出す。
「く……世界が……震えてないか?」ガウェインが悲鳴に近い声を上げる。あたりの青い霧が狂乱し、広大な宙がひしゃげたように歪む。トリスタンは「こ、このままじゃ本当に世界が崩壊するのかも……」と目を伏せる。
アーサーも「なんという力……!」と震えを帯びた声を出す。カインは操縦桿を掴んだまま「アリス、しっかり……!」と叫ぶが、もうアリスは自分をコントロールできる状態ではないように見える。
観測光の奔流が渦巻き、巨大なThe Orderの本質が激しく身をよじる。腕や触手を幾本も復元し、再度ドローンのような結晶体を生み出そうとするが、アリスからあふれる覚醒の光がそれを妨げる。
光の波紋が一気に拡張し、敵の触手を片端から砕いては吹き飛ばす。すでに円卓騎士団の攻撃を必要としないほど、アリスの干渉力が圧倒的に働き始めている。敵の軍勢が崩れ、叫びにも似た振動を漏らして退いていく。
「す……すげぇ……!」ガウェインが度肝を抜かれた声を上げる。「まるで神様じゃねえか、アリス……」
アーサーが目を見開き、「これが……アリスの本当の力……」と呟く。トリスタンは「確かに敵を制圧しているが、このまま世界も巻き込まれそうだ」と声を落とす。
そして事実、空間が大きく軋む音が走る。青い霧が所々剥がれ、そこから白い亀裂のようなものが伸びている。まるで空間が破裂寸前なのだ。アリスの覚醒によって下位世界の法則が崩れ始めているのかもしれない。
カインはコクピット内で揺れるアリスの体を支え、「アリス……止まれ! このままじゃ、お前が……!」と呼びかけるが、アリスは意識の大半が意識世界へ飛んでいるのか、耳に届いていない様子だ。ただ一心に力を放出して、The Orderの巨体を削り取っている。
「うああああっ……!」
その叫びはアリスの口から漏れているのか、意識世界の声が混ざっているのか分からない。銀の小手は青い輝きを限界以上に放ち、機体が悲鳴を上げる。さらに膨大な観測光が周囲を巻き込み、巨大意識の本体を骨のように砕きながらも、周辺の空間をも砕こうとしている。
「まずい、空間が壊れる……!」トリスタンが警鐘を鳴らす。すでに霧の壁が各所で破け、白い亀裂がそこから伸びて、まるでガラスの割れ目みたいに拡散している。
「このまま行ったら、本当に下位世界が終わるかもしれない……!」ガウェインも絶望的な声を上げ、アーサーは黙り込んで歯を食いしばる。だが、彼らにはどうすることもできないほど、アリスの力が大きすぎる。
カインはほとんど死にものぐるいでアリスを揺さぶる。「アリス、戻れ! このままじゃ世界が崩れるって言ってたじゃないか……! 覚醒を……抑えてくれ!」
だがアリスの瞳は光を宿しつつも焦点が定まらず、意識世界に深く入りこんだまま。唯一、カインの声がわずかに届く気配があるものの、暴走とも呼べる干渉力が止まらない。
巨大意識の本体は断末魔をあげるかのように大きくひび割れ、幾重もの断面から観測光が噴出し、眩い爆発が連鎖していく。もしこれが完全に崩壊すれば、The Orderは止まる――が、同時にこの下位世界も巻き添えになるかもしれない。
「アリス、助けて……みんなを助けたいんだろ!?」カインが声を張り上げる。
その言葉に、アリスの瞳が微かに動いた。意識世界の中で、眠りし自分と対峙している光景がよぎる。「目覚めたらこの世界は消える、でも地上は……」と葛藤が渦巻く。
まばゆい爆光の連鎖がピークに達し、巨大意識は半ば死にかけの状態にある。腕や触手が燃え尽き、青い霧をかき乱しながら最期の断末魔を発しようとしている。世界の亀裂も増大し、まるで宇宙全体が崩れ落ちるカウントダウンのようだ。
そのとき、銀の小手が青いオーラを爆発的に発し、アリスの声が宙へ鳴り響いた。意識世界での選択が決定した瞬間――彼女は目を開き、覚醒と同時に“自分の力”を制御する道を掴もうとしている。
「……私……壊さない……世界は私が守る……っ!」
まるで奇跡のような光景が広がる。絶大な干渉波がさらに膨れ上がり、一瞬、空間の亀裂が増すが、その刹那にアリスは力を反転させるように巧みに抑え込み始める。観測光が大きく波打ち、白いひび割れを“上書き”するように修復の波が広がるのだ。
「こ、これは……!」ガウェインが驚愕の声を上げ、トリスタンも「崩壊していた空間が戻りつつある……」と目を疑う。アーサーは腕を失った機体で、ただ無言でその光景を見つめる。
カインはコクピットでアリスを抱きとめるように支え、「アリス……! お前、覚醒してるのか? でも、世界が壊れてない……!」と歓喜の声を上げる。
アリスの瞳は蒼い輝きを宿したまま、大きく息を整え、「そう……きっと、私は上位の私とつながったけど、壊すだけじゃない。私が“この世界を守りたい”って強く念じれば、壊れないで済む……!」と震える声で言葉を綴る。
周囲を見渡せば、先ほどの巨大意識の本体が猛烈に崩壊していく。まるでアリスの干渉力を正面から受け止められず、砕け散っていくのだ。絶叫が空気振動に混じり、一気に爆発を繰り返すが、その爆炎は亀裂を広げずにアリスの光が受け止めている。
青く燃え上がる観測光の炎の中、The Orderの核とおぼしき部位が、金色の液体を吐き出すように破裂していく。触手も腕も消え失せ、本体らしき球体がじわじわと溶けていく様子は、壮絶かつ哀れな光景だ。
アリスは干渉波を保ちながら、小さく目を伏せ、「……ごめんなさい。あなたも、眠りを求めたんだね……」と寂しげにつぶやいた。カインが「アリス……?」と聞き返すが、彼女は微笑んで首を振る。
「もう大丈夫。The Orderは……これで終わる」
そして最後の閃光が宇宙を染めるように広がった。コアが砕け散り、上位の力もろとも霧散していく。長きにわたる戦いの果て、ついにThe Orderが消滅したのだ。
だが、問題はまだあった。空間中の亀裂はアリスのコントロールである程度修復されているが、これほど大規模な干渉の形跡を完全になかったことにするのは容易ではない。青い宙は徐々に安定を取り戻しつつあるが、世界が“丸ごと壊れる”リスクがゼロになったわけではない。
アリスが力を解放し続ければ、かえって破滅を招くかもしれない。一方で、力を中途半端に抑えれば、この宙域や下位世界が歪んだままになる可能性もある。カインたちが抱く不安を察したのか、アリスが優しい声で告げる。
「大丈夫……私、もう制御の仕方が分かった。覚醒しても……世界を維持できるって。……ほら、見て」
コクピットから見える景色が一変する。青い霧がゆっくりと澄んでいき、代わりに穏やかな光が辺りを満たす。硬く凍てついていた空間が溶けるように和らぎ、星が波打つように美しく連なる。そこに先ほどまでの死闘の痕跡が、まるで修復されるかのように薄れていく。
「なんだ……? 世界が……元に戻っていくのか?」ガウェインが呆然とつぶやき、トリスタンは「アリスが……この空間を再生している?」と驚きを隠せない。
アーサーは静かに息を整えながら、「本当に、神にも等しい力だな……。だが、アリス自身は大丈夫なのか」と危惧の声を上げる。
カインも「アリス……お前、どこまで……」と尋ねるが、アリスは穏やかな微笑みを返し、頷いた。
「私、もう大丈夫……上位世界の眠りし私と繋がってる。でも、こうして意志で力を抑えれば、世界は壊れないって分かったの」
The Orderが溶け去ったあとの空間は、まるで穏やかな海のように星々を漂わせていた。青い宙の闇がほどけ、白い光が柔らかに彩る。そこにはもはや敵の姿はなく、ただ静かに揺れる波紋だけが残っている。
アリスは銀の小手のコクピットで、最後の痛みに耐えつつ目を閉じる。やがてふっと表情が緩み、「……うん、やれる。私は、“眠り”と“目覚め”の狭間で、世界を維持できる」と言った。
「……本当か、それ……?」カインはまだ信じられない面持ちだった。実際、世界が消滅する可能性を散々聞かされてきたのだ。けれど、アリスの力が本当にコントロールできるのなら、地上は救われるかもしれない。
「うん……私が完全に覚醒してしまえば、下位世界は消える。でも、私が“覚醒の寸前”で制御すれば、力だけを引き出せる。要するに、今の私の状態がそう……」
アリスは青い光を体に纏いながら、そのまま操縦コンソールをそっと握る。「だから、The Orderを倒せたし、空間の亀裂も塞げる。あとは……地上に戻って、全部を立て直すだけ……!」
ガウェインが破損機体を動かしながら「マジか。じゃ、世界は助かるってことだな?」と笑みを浮かべる。トリスタンも小さく息を吐き、「奇跡というか、アリスが神になるというか……とにかく、助かったわけだ」とほっとした声を漏らす。
アーサーは腕のない機体で首を振りつつも、剣ビームを収める動作を見せ、「ありがとう、アリス。お前がその道を探してくれたおかげで地上も生き延びられる」と弱々しく微笑んだ。
カインは喜びと安心で胸を熱くしながら、「アリス……本当に頑張ったな。これで地上を救えるし、お前も消えずに済む……!」と感極まった声を出す。
アリスは目頭に涙を浮かべ、「うん……ありがとう、みんな。私、一人じゃ怖かったけど、皆が背中を押してくれたから。カイン、アーサー卿、ガウェイン、トリスタン……ありがとう」と震える声で礼を言う。
巨大意識が完全に溶け去った後、観測光の塵がふわりと宙へ漂い、それが虹色に光りながら消えていった。まるで壮大な花火のラストシーンのように、最後の輝きを放って消える。
アリスがほんの少し力を込めると、その塵が白い光の一筋に収束し、空間の亀裂を補修していく。数分経つうちに、あの青い霧も安定してきて、周囲が静けさを取り戻す。
「すごいな……」ガウェインが息を呑む。「こんなことができるなんて……」
「まさに神わざだね」トリスタンも珍しく笑みを浮かべる。
アリスは疲労の極地にありながら、「私……これが私の責任だから。生み出してしまったかもしれない危機を、ちゃんと収めるの……」と微笑む。
円卓騎士団がこの空間に長居しても危険だ。機体は大破寸前だし、地上がどうなっているか急いで確かめねばならない。アーサーが息を吐きつつ、「みんな、ここでやるべきことは果たしたな。The Orderは消え、アリスの力が世界を壊さずに済むなら……次は地上だ」と宣言する。
ガウェインが同意し、「オレら、ぼろぼろだけど、まだ生きてる。早く帰って王都や他都市を救わねえと。偵察もできてねえし……」と頷く。トリスタンも「回線が死んでるなら、直接戻って事態を把握するしかないね」と補足する。
カインは操縦桿に力を入れ、「アリス、帰ろう。今こそ地上へ戻って、地上の皆を助けるんだ。お前の力なら、復興だって手伝える……」
「うん……帰ろう。私がこの世界を守るって決めたから……地上のみんなに会いたい」とアリスは心底ほっとしたように微笑んだ。
機体を再起動し、青い宙から「門」を逆に辿る形で帰還する準備が進む。空間の亀裂はほぼ修復され、干渉制御によって白い光が沈静化している。銀の小手を含む四機はフラフラになりながらも動き出し、出口へ向かい始めた。
アリスの意識には、まだ“上位の私”――眠りし存在がある。これを完全に覚醒させれば世界は泡沫の夢のごとく消える。だからこそ今、寸前の覚醒レベルで踏みとどまり、力だけを引き出す形を保っている。
「私は、たぶんずっとこの“中途半端な覚醒状態”で生きることになると思う。眠るわけでも、完全に目覚めるわけでもなく……でも、それでいいの。地上を救えるなら」
彼女はコクピット内で、静かに語る。カインが複雑そうな顔で「そんな状態で苦しくないのか?」と尋ねる。アリスは首を振る。
「確かに少し痛みはあるけど……覚醒に踏み込む前の恐怖に比べたら、ずっと楽になったよ。世界が壊れないなら、それで幸せ……。みんながいるし……あなたもいるし……」
カインはぽっと頬を赤らめつつ「そ、そうか。なら、よかった。オレも、お前が笑ってくれれば、なんでもいいよ」と照れくさそうに笑う。アーサー、ガウェイン、トリスタンも、遠巻きにその会話を聞いて苦笑する。
四機が戻る道筋は、白い空間を経由して、さらに要塞の深部から外界へ続いている。途中で爆発炎上する残骸や崩れた通路を越え、そこを辛うじて帰るまでに何度か障害が起きるが、アリスの制御によって空間が安定しているおかげで大規模崩壊は起こらない。
バラバラだった艦隊も、すでに大半が撤退準備をしており、さほど時間をかけずに円卓騎士団の帰還を迎えに来るだろう。息も絶え絶えのまま、カインたちはついに要塞の外へ、そしてさらに宙域を抜けて仮設拠点へ帰還する道のりにたどり着く。
艦隊に戻った際、疲弊した兵士たちが円卓騎士団を迎え、歓声を上げる人々がいる。まだ通信回線は死んでいる部分が多いが、「The Orderの活動が一気に止まった」という報告が入り始めている。要塞周辺でも敵影が撤退または消滅し、静けさが戻りつつある。
神官隊は残骸を回収しながら、上位世界の崩壊が起きていないことに安堵する。アリスはほとんど意識が途切れながらも、「The Orderは……もう動かない……世界、救えるね」と微笑む。
「そうだ……お前がやってくれたんだ」カインがアリスの肩を抱いて言う。
ガウェインやトリスタンが機体を降りて、整備士に預けながら苦笑する。「こっちも体ボロボロだが……地上を助けに行く気力はあるぜ」とガウェインが呟くと、トリスタンも「そうだね。まだ任務は半ばだ」と頷く。
アーサーは腕のない機体からなんとかコクピットを抜け出し、疲れ切った面で「王都へ戻ろう……妹や多くの民たちが待っているはずだ」と小さく呟く。
一息ついたあとの簡易会議で、アリスは自分が取りうる道を説明する。「私……いつか眠りを再び選ぶかもしれないけど、今はこの“中途半端な覚醒”状態でいる。そうすれば世界は壊れないし、力はある程度使える。地上復興も助けられるわ」
モルガンや神官隊が驚きと敬意を込めて彼女を見守る。「アリス、あなたは半神のような存在になってしまったのね……でも、本当に大丈夫なの? 痛みや負担は……」と問いかける者もいる。アリスは笑みを返す。
「少しは苦しいけど、これが私の選んだ道だから。眠りを破って目覚めちゃえば世界が消えてしまうかもしれない。だから、こうして皆と一緒に生きるの。……この世界を大事にしたいから」
カインはその横で微笑み、「俺たちも手伝うさ。お前が一人で全部抱え込まなくていい」と小さく手を握り合う。アーサーやガウェイン、トリスタンも頷き、円卓騎士団全員が心を一つにするような空気が流れる。
最後の大空戦を終え、The Orderの脅威を封じた円卓騎士団は、修理可能な機体をかき集め、大型の輸送艦に乗り換える準備を進める。地上が陥落しかけているとの報せがあったからだ。回線が部分的に回復してきたが、まだ詳細は掴めていない。いずれにせよ自分たちの目で確かめねばならない。
カインとアリスは銀の小手をひどく傷つけた状態のまま、艦内ドックで最後の点検を受けながら、しみじみと辺りを見回す。青い宙の死闘を思い返すと、今ここに立っていることが奇跡のように思える。
「アリス……ありがとう。お前のおかげで生き延びた。もう、地上へ戻るだけだな」
「うん……私こそありがとう、みんながいたから、覚醒を中途で止められたと思う。ほんと、怖かったけど……」
2人はそんな会話を交わし、次いでガウェインやトリスタンとも顔を合わせる。ガウェインは相変わらず盾なしだが、「修理は間に合わねえな。仕方ない、地上に降りたら作り直すか。ああ、仕事が増えるぜ」とぼやく。トリスタンはライフルを失い、「僕もスコープだけ持って帰るよ。これから先の復興で何を狙い撃つか……は冗談だけどね」と苦笑する。
アーサーは片腕のない機体とともに静かに歩み寄り、「地上へ戻ってからが本当の勝負だ。王都が落ちたままなら、私たちが再建しなきゃならない。……みんなでやろう」と力なく笑う。
艦が地上へ向けて跳躍するための準備が整う頃、アリスはふと意識世界の囁きを聞く。「あなたは本当に、こうやって中途半端に生き続けるの……?」という、かつての黒い人影のような声だ。
だが、アリスは心中で微笑む。(ええ、私はこの世界で、みんなと一緒に生きる。この姿勢を崩さないわ)としっかり答える。
すると、声は抵抗を見せなくなり、すっと沈んでいく。覚醒と眠りの狭間を生きる――彼女が選んだ道を、上位世界の存在も否定できなくなったのかもしれない。
「アリス、行くぞ。飛べるな?」カインが最終確認で声をかける。アリスは笑って頷く。「うん、銀の小手もギリギリ動くし、私も大丈夫」
アーサー、ガウェイン、トリスタンらは輸送艦と合流し、地上へ帰還する経路を確保する。破損した機体は艦隊が連携して回収し、必要最低限の姿で地球へ帰るのだ。母艦がワープゲートか通常航路を通じて地上へ戻るまで、あと幾度かのジャンプが必要だが、The Orderの妨害はもうない。
最後の大空戦を終えた円卓騎士団は、血みどろの姿のまま笑い合う。ガウェインが盾もないままニカッと笑い、「ああ、地上じゃ新しい盾を作ってもらわなきゃな」と言えば、トリスタンはライフルを失ったまま「僕は狙撃以外の仕事も覚えなきゃ」と笑う。アーサーは腕のない機体とともに、「王都を復興しよう。妹の消息も確かめねば……」と目を伏せ、想いを噛みしめている。
カインは操縦席のアリスを覗き込み、「お前がいてくれたから、ここまでこれた。ありがとう」と改めて礼を言う。アリスは涙を浮かべながら「私こそ、みんなを危険に巻き込んじゃった。けど、地上へ一緒に戻って世界を再建しよう」と微笑んだ。
こうして、アリスは“覚醒”という恐怖を振りほどき、“眠りもしない”という選択を成し遂げた。力を引き出しながら世界を保ち続ける、まさに“神にも等しい存在”として、この世界を守りゆく象徴となるのだ。もちろん、その道は困難を伴うだろう。けれど、円卓騎士団が彼女を支えてくれる。
青い空域に、最後の光の息吹が漂う。The Orderの絶対的脅威は消え、地上を覆う混乱が止むなら、彼らは復興に向けて歩き始めることができるだろう。アリスは自分の魂と身体を分割するような痛みに耐え、覚醒と眠りの境界を意志の力で引き留めている。
大きく傾いた輸送艦がエンジンを噴かし、全員を乗せてゆっくり動き始める。アーサーが指揮を執り、回線の修復を急ぐ技術班と連携しながら、地上帰還の座標を探りだす。もうThe Orderが邪魔することはない。
カインはコクピットの操縦桿から手を離し、アリスをそっと抱きかかえるように支え、「お疲れ……少し眠ってもいいんだぞ」と耳元で囁く。彼女は微笑んで首を横に振る。
「ありがとう……でも、まだ眠らない。私が眠ってしまうと、力を使えなくなるかもしれないし……。地上がちゃんと落ち着くまでは、私も一緒に見届けたいの……」
「……そっか。わかったよ。じゃあ、目を閉じずに頑張れ」
カインは苦笑してそのままサポートを続ける。アリスの肩にはまだ微かな震えがあるが、先ほどまでの悲壮感とは違って、どこか希望に満ちた輝きがある。
ガウェインが通信で「おーい、アリス、みんな。地上に着いたらでかいパレードでもやってくれんのかな? 俺はヒーロー扱いされるなら悪くねえぜ」と茶化すように言う。トリスタンは「君の盾姿はもうボロボロだろうけど、それでも誇り高い戦士だったよ」と返し、そこにアーサーが「ふふ、王都が無事なら歓迎してくれるだろう。……妹が生きていてくれるといいが」と沈んだ声で語る。
そのやり取りに、多少の笑いが混じりつつも、やはり地上の状況は気がかりだ。もし王都が陥落していたら、そこから復興を始めなければならない。メンバーたちは表情を引き締め、帰還の道中も気を緩めずにいる。
艦のブリッジでは、アリスが安定して“部分覚醒”を維持していることで、周囲の空間が崩壊する兆候が見当たらない。むしろ、ほんのりと暖かな光が艦全体を包むように思える。
カインが横で「不思議なもんだな。お前が発する光は、なんだか皆を癒やしてるみたいだ」と素直に驚きを漏らす。アリスは少し頬を赤らめ、「そう……私も正直よくわからない。でも、これが私の“覚醒”の在り方なんだと思う」と答える。
アーサーや神官隊も、「まるで新しい秩序を作り出すかのようだ……」と口々に言う。そう、The Orderを破壊するだけでなく、新たな秩序を紡ぐ力をアリスは得ている。かつて眠りし存在として、世界をエミュレートしていた存在が、そのまま意志を持って下位世界に残る形になったのだ。
巨大意識との最後の大空戦は、円卓騎士団に大きな傷跡を残した。犠牲は決して小さくはない。だが、結果としてThe Orderの核心は消滅し、アリスがこの世界を崩壊させずに済む道を見つけたという結末を迎えた。
あとは地上へ戻り、王都を、他都市を、人々を救うための戦いが続くかもしれない。でも、これまでのような敵の猛攻はもうないはず――The Orderの根が絶たれたのだから。
アリスは最後に、ふと瞳を閉じて内なる声に問いかける。(眠ることも、覚醒しきることもできない私。けど、それでも私は笑って生きる。大切な仲間と、この世界で――)
すると、意識世界から返事が返ってくる。「……あなたの好きにするがいい。もう止められないし、私たちもそれを受け入れよう……」
温かなまどろみが背中を支え、アリスはほっと息をつく。カインが「どうした?」と聞くが、彼女は笑って「ううん……もう一人の私と、ちょっと話してただけ」と微笑む。
艦がワープジャンプを開始し、青い宙が遠ざかっていく。あれほどの死闘を繰り広げた“最終領域”は静寂に沈み、観測光だけが名残のようにきらめいていた。もう二度とThe Orderの脅威が及ぶことはないだろう。
ガウェインが座席で息をつき、「おい、地上じゃ何食えるかな。戦いづめで腹も減ったし」と笑う。トリスタンは「君はいつも食い気だね」と呆れ、アーサーは沈んだ面持ちだが、「王都の人々が待っていてくれるといい……」と祈るようにつぶやく。
カインはアリスに視線をやり、「地上へ戻ったら、ゆっくり休めよ。もう限界超えただろ」と言う。アリスは瞳を伏せ、「うん……そうだね。でも、まずは地上に行って私ができることをやる。干渉力で、いろいろ復興の手助けができるかもしれない」と答える。
「そっか。じゃあ終わったら、ちょっとだけでいいから、本当に休めよ。寝ても世界は壊れないのか?」とカインが冗談交じりに尋ねると、アリスはくすっと笑って「そうね、もう怖くないから、少しなら眠っても大丈夫……」と優しく返す。
艦が閃光を放ち、ワープゲートへ突入した。長い道のりだが、もう妨害はない。地上の混乱が待ち受けるとしても、彼らは確信を持って立ち向かえるだろう。The Orderの恐怖は消え、アリスが“覚醒”しながらも世界を壊さずに生きてくれる――それが最大の希望になったのだ。
世界の崩壊寸前で迎えた決着だった。
最後の大空戦は円卓騎士団を滅亡寸前へ追い込んだが、アリスが“部分覚醒”を果たすことで逆転し、The Orderを滅ぼすに至った。
しかし、本当に奇跡的だったのは、アリスが完全に目覚めず“寸前の覚醒状態”を維持できたことだ。もし一歩でも踏み間違えれば、彼女の上位世界の存在が下位世界を消していたかもしれない。それを支えたのは、カインはじめ仲間たちの想いと、アリス自身の「この世界を守りたい」という強い意志だった。
このあと、地上へ帰還すれば、荒廃した王都や都市国家の再建が待っている。通信が途絶していた原因や、The Orderの残党のような混沌があるかもしれない。だが、アリスの新たな力があれば、多少の奇跡は起こせるだろう。
カイン、アーサー、ガウェイン、トリスタン――ボロボロになりながらも生き残った彼らとともに、アリスはこれから先の世界を創り直す。もはや眠らないが、完全には目覚めない存在として。それが彼女の選んだ“在り方”だ。
艦の窓から見える星海が、静かにきらめきを放つ。アリスが微笑んだ。
「カイン……みんな、ありがとう。私、もうこの世界が消えるかもしれないって不安がない。だから……前向きに生きていける」
カインも笑って頷き、「俺らがいる限り、お前は一人じゃない。もし暴走しそうになっても止めるし、苦しいなら助ける。だから、これから一緒に地上を……守ろう」と握った拳を軽く突き合わせる。
アリスはコクピットで拳を合わせ、涙を流しながら「うん、約束だよ」と囁いた。その涙は悲しみではなく、安堵と希望の光に満ちている。
こうして、アリスの覚醒は決して世界の破壊を招かなかった。上位世界との接点を保ったまま、彼女は下位世界を存続させ、むしろ新しい秩序を築いていくだろう。長き戦いを終え、円卓騎士団は荒廃した地上を救うべく帰還の道を進む。
最終決戦を越えた先――それは絶望ではなく、新たな始まりだった。アリスの青い瞳が星々を映して優しく輝き、カインや仲間たちの笑顔が暗闇に灯る。地上で待つ人々に伝えたい。「もうThe Orderの脅威は去った」と。アリスが覚醒を自分のものにし、世界をこわさずに済んだのだと……。
下位世界を震わせた最後の大空戦が終わり、混沌と恐怖もまた消え去る。あとは、復興と新たな物語が始まるだけ。アリスは眠りもしない、けれど眠っていない神として、この世界で生き続ける――仲間の温もりとともに。
それが、結末。
世界は崩壊を免れ、The Orderは完全に滅び、アリスは神にも似た力を抱えながら人々と生きる道を選んだ。明日の地平を目指しながら、彼女は微笑んでこう誓うのだ。「私がこの世界を守り続けるから、もう怖がらなくていいよ」と――。