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1.5-37 予測

「ねぇ、ソラナちゃん。巻き返すって何を?」
ふとした疑問を投げかけるエブモス

リックとデイジーは行方不明
トロンは、死んだ。

事件となった本件は、ポルカドット達が引き継いだ。

自分達がやるべきでは無いと。
やらないでも解決するのでは無いかと。

しかし、ソラナの答えは違った。

「そこに、わたくしの意思がありませんわ」
どこまでも、わがままで。
どこかおせっかいな彼女らしさ。

「わたくしが、解決したいからするのですわ」

「わー。こうきょうの人にあるまじき言葉」

「普段は、ですわ。今から、ソラナ個人として行動するのです」

「へりくつ」

「何とでもいいなさい」
「さぁ、そうと決まったら。まず、0xLSD。そして、デイジー達のバックグラウンドを知らなければね」

「なんで?だって。それ、リックさんが説明していたでしょ?」
何故、それを今更、調べるの?と疑問が口に出る。

「彼が、本当のことを言っていた証拠はある?」

「ないけど、それを疑っても仕方なくないんじゃない?」

「そんな事はないわ」

「うん。だとしても、どうやって、本当か確認するの?」

「こんなときは、ある状況証拠と情報から推察するわ」
「お姉様!」

「はーい。ちょっと待ってね」
そう言いながら、オズモが幾つかの辞書の様に分厚いNFT媒体をテーブルに重ねる。

「これは?なーに?」

「何って、エブモス。本よ」

「データじゃないの?」

「これも、立派なデータよ」

「そうじゃなくて」

「すぐに読み取れるデジタルデータじゃないって事よね。そうよ。そうできなかったもの達よ」

「なんで?」

「ここに書いてあるわ」

「次の者以外の閲覧を禁じる『コスモス』って!」

「そうよ。コスモス以外は閲覧出来ないものよ」

「でも、こうやって、開いて見れるよっ!」
本のページを開きながら、エブモスがおかしいなぁ!と叫ぶ。

「おかしくないわよ」
「これは、アトムに言って『コピー』してもらったものだもの」

「コスモスさんじゃないと『閲覧』出来ないんじゃなかったの?」

「閲覧はね。ただ、コピーは可能なのよ」
「ただし、コピーした本人は読めなくなる」
「それが制約なのよ」

「じゃあ!重要資料でも何でも無いじゃん!誰だってコピーしてもらったら読めるじゃない!」

「あの娘がそんな簡単に許可すると思う?」

「それはー」
イーサリアムで一緒に旅をした事を思い出す。

「やらないと思う」

「そうね」
「それに、読めなくなるのは、永久的によ」
「彼女の図書館から、その本は永遠に失われる。そういうことなのよ」

「そんなの、よく許可してくれたね」
ぽかーんとした顔になり、エブモスがソラナに問う。

「頼み込んだわ」
「幾つかの条件を提示したわ」

「それで、わたしてくれたの?」
「私が取りに行ったときは、慌てて渡す素振りすら見せていたわ」
一体どういうことなの?とオズモが訪ねる。

「コスモスの危機、そう伝えたましたわ」

「?」
はてなマークを浮かべるエブモス

「そうね。何故、危機なのか。わたしも気になるわ」

「お姉様、エブモス。わたくし達は、今回、上位者という情報に触れすぎた気がしませんか?」

「確かに、あらゆるところに登場していたわね。エブ子ちゃんが話してくれた『赤いコートの男性』も上位者みたいね」

「そうです。そして、上位者は、そう易々と現れないのが常なんです」
「わたくしが関わっていた事件、アフロだって、最後に姿を現したでしょ?」

「確かに。それまでは、ソラナちゃんが代理だったものね」

「はい。お姉様」

「でも、彼らが現れてはいけない理由があるのかしら?ピース。ううん。ヴィタリックは、シークレット君たちを助けたと聞いたし」

「それは、彼が意識体と同じレベルまで自身の力を制限していたからです」
「直接、わたくしは、攻め入れられなかったですもの」

「なるほどね」
「それで、制限をしていないと何か悪いことがあるのかしら?」
謎解きのパズルを当てはめる様に質問するオズモ。

「ありますわ」
「大きすぎる力の余り、空間が破壊されてしまいます」

「どういうこと?」
首を傾げて不思議そうにするエブモス

「こういうことよ」
そう言って、ソラナは、2つのコーヒーにミルクを入れてスプーンを差し込んだ。
片方は、ゆっくり。
片方は、早く。

「このミルクの層が世界だとしたら、ちからをかけた方は?」

「それは、大変!」

「そういうことよ」
コーヒーの表面に広がっていたミルクの層がバラバラになったところをスプーンで指し示しソラナは、言った。

「でも、もう上位者はいないんじゃない?」

「確かに気配は感じないわ」
「ただ、わたく達が対峙したトロン。彼女は、上位者と契約していたわ」

「契約?」

「そうよ。様子がおかしかったから、探りを入れてみたのよ」
そういって、空の薬莢を取り出す。
それは、光りグラフとなりある事象を指し示した。

「そういう事ね。これなら納得よ」

「はい、お姉様。そして、こちらが」
そう言って、幾つかの空間データを提出するソラナ

「契約方法、わかっちゃうわね」

「はい。呼び出し方から、契約方法まで、調べようと思えば出来てしまうものばかり」
「こんな痕跡をコスモス宙域に残したのよ」

「でも、これ。ソラナちゃんやオズモさんじゃなきゃわからないんじゃない?」

「その通りよ。証拠はあるけど、方法を知れるのは一部のもののみ」
「だけれど、もし、仮にわたく達がこれを使うとするのならば、わたく達以外の宙域を観測し利益を得ている上位者達は、どうするかしら?」

「それは!」

「そうよ。なかなか鋭いわね。エブモス」
何かに気付いたエブモスにニヤリと笑いかけ結論を促す。

「そのぐらいわかるよ!自分達の領域が脅かされるならば、その原因は取り除く。でしょ?」

「そうよ。そして、その執行者は彼ら以外。何故なら、彼らは、易々と表に出ることができないから」

「でも、それが何でリックさんの話を疑う事に繋がりの?」

「彼、とても良いタイミングで来たと思わない?」

「?」

「丁度、わたくし達がExAを追っていた時期よね?あったのは」

「確かに」

「後は、わたくしの予想になるわ」
「だからこそ、裏付ける必要があったのよ」
ソラナは、山積みになった辞書の様な分厚いNFTに手を置いた。

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