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天蓋の欠片EP11-3

Episode 11-3:和解への道

あの夜、大きな激突と対話を経て、ユキノたちはタスクフォースの仮設拠点に戻っていた。空はどんよりとした灰色に覆われ、夜明けだというのに暗さが残る。薄雨が窓を叩き、外界をかすかな水音で満たす。
ユキノは簡易ベッドに横たわり、まだ痛み止めの効果を必要としている。目を閉じると、蒔苗の虹色の瞳や、真理追求の徒との不毛な対話が脳裏をちらつき、ゆっくりと眠りに落ちることができない。

(どうすれば……本当にこの世界を守ることができるのかな)

声にならない疑問が胸を締めつける。観測者・蒔苗を拒絶しつつも、彼女が本気で「世界終了」を行うなら止めようがない――それを考えると不安がこみ上げる。でも、ユキノはあくまで“自分たちの手で”世界を救いたいと思っている。そんな“矛盾”を抱えながら、しばらく静かに呼吸を整えた。


カエデが病室(といっても仮設用の簡易区画だが)へやってきて、ユキノの様子を見守る。彼女自身も身体に傷を負っており、右腕に包帯を巻いている。
「……大丈夫?」
「うん、まだ痛むけど……わたしは平気。カエデさんこそ、無理しちゃダメだよ」
ユキノの顔には微かな笑みが浮かぶが、瞳の奥にはまだ不安が残っている。カエデはその表情を見て胸が痛む。もしまた真理追求の徒が襲ってきたら、観測者が混乱を巻き起こしたら、ユキノは命の危険に晒されるかもしれない。

そこへ探偵エリスも加わり、コーヒーの入った紙コップを差し出す。「飲む? 苦いけど、少しは気が紛れるわよ」
カエデは感謝しつつ受け取り、ユキノは遠慮したいところだが、エリスが半ば強制的に「飲んで気を落ち着かせなさい。痛み止めと一緒に苦いコーヒーなんて合わないだろうけど、目が冴えるしね」と勧める。ユキノは少し苦笑しながら一口含み、「苦い……でも、ありがとう」と礼を言う。
そんな何気ないやりとりにも、戦場を共にした仲間の絆が滲む。気詰まりな空気の中で、心が少しだけ温まる瞬間だった。


エリスと入れ違いに、タスクフォースのアヤカが姿を見せる。彼女はスーツ姿だが、血の汚れや埃が残っているのか、いつもの清潔感とはほど遠い。一晩中動き回っていたのだろう。
「……ユキノさん、少しでも体調が安定してるならよかった。大事な話があるの」
そう切り出すと、カエデが「どうしたの? まさか、また敵の動きが?」と身構える。アヤカは苦い表情で頷く。「外部解放術式は未完成で終わったけど、真理追求の徒の一部はまだ潜伏してる。それだけじゃない。上層部が『蒔苗の存在は無視できない』と騒ぎ始めてるの。観測者をどう扱うかで意見が真っ二つ……。組織が分裂しかねない事態ね」

ユキノは心の奥に重い圧迫感を覚える。自分たちが何とか蒔苗を拒絶し、独自に世界を守ろうとしている中、タスクフォースの上層部は「観測者の排除」や「強制制御」を考え出すかもしれない。もしそんな行動をとれば、蒔苗が本気でリセットを選ぶ可能性も高まる。
アヤカは疲れきった顔で続ける。「私もどこまで抵抗できるか分からない。スパイ問題もあって、組織全体が疑心暗鬼になってるから。……だから、エリスさんと私は別行動で『蒔苗と穏便に接触する方法』を探ろうと思ってるの。あなたたちにも協力してほしいけど、ユキノさんは危険すぎるから……」

ユキノは眉を寄せ、「協力する。わたしはもう蒔苗に会う気はないけど……あの子が本気で世界を壊そうとするなら、止めなきゃいけない。タスクフォースが暴走して、観測者を敵とみなして先制攻撃するなんてのも駄目だよ」と反論する。
アヤカは困ったように微笑む。「分かってる。私も蒔苗を強制制御なんて論外だと思う。でも、上層部は命令を出す権限を持ってる。私たちにできるのは、現場レベルで不穏な動きを阻止して、スパイをあぶり出すこと……そして、真理追求の徒の残党とも交渉して、全面対立を避ける道を探すこと。正直、どれも難題よ」


そんな会話を交わしている最中、通信端末が再び鳴り、アヤカが受け取る。画面には「真理追求の徒・ナナセ」を名乗る人物からの連絡と表示されている。アヤカが混乱して「ナナセ……? 初耳ね」と怪しむが、ユキノはふと胸に嫌な予感を覚える。もしかしたら罠かもしれない。しかし、内容は「一部のメンバーが降伏したい。タスクフォースと停戦協定を結びたい」と書かれているのだという。
アヤカは眉をひそめ、「どう思う? これは罠の可能性が高いけど……もし本当なら、話を聞いておきたいわね」とユキノやカエデ、エリスに問いかける。ユキノは曖昧に首を振る。「分からない。さっきの拘束された男たちは降伏なんてしそうになかったけど、残党の中にも考え方が違う人がいるのかもしれない……」

エリスは「興味深いわね。対話を求めるなら、逆に利用して真理追求の徒の本拠や幹部を突き止める手段になるかもしれない。スパイも炙り出せるかも」と思案する。カエデは心配そうに、「でも敵は手強いし、またユキノを狙うかもしれない……大丈夫?」と訊くが、ユキノは苦笑して「大丈夫じゃないけど、必要なら話すよ。わたしのせいで仲間が困るのは嫌だから」と頷く。
かくして、アヤカは慎重に連絡を取り、数日後に「降伏を望む残党」と称するグループとの接触を図る段取りを整えることになる。そこには和解の可能性がほんの少しだけ漂っていた。


交渉の場として指定されたのは、川沿いの埠頭にある古い倉庫。昼間だが、空は厚い雲に覆われ、霧雨が漂う。不気味な雰囲気が漂うなか、タスクフォース側からはアヤカ、エリス、少数の隊員、そしてユキノとカエデが参加する。ユキノはまだ痛みを抱えており、歩くたびに顔がしかめられるが、どうしても同行したいと主張したのだ。
「本当に大丈夫? また騙されて襲われるかもしれないわよ」とエリスが優しく言うが、ユキノは少し笑って、「うん、わたしはきっと死なないから」と返す。カエデが隣で心配そうに「死なないでよ、絶対……」とつぶやく。
倉庫の前にはまだ人気がなく、隊員が周囲を捜索して異常がないことを確認する。霧雨が服を濡らす度合いを強めながら、アヤカが無線で「相手はまだか?」と問い合わせるが、静寂が続く。

やがて、倉庫の奥から人影が現れる。ローブを脱ぎ捨てた数名――若い女性を中心に、見るからに疲れ切った表情をしている。武器を持っていないことを示すように両手を上げ、「私たちは戦意を失いました。どうか降伏を受け入れてほしい」と声を張る。アヤカは合図を出して隊員に警戒を緩めさせ、ユキノとカエデも前へ出る。


「あなたたちが“ナナセ”を名乗る人?」
アヤカが確認すると、その若い女性は小さく頷く。「はい……わたしの名はナナセ・シオン。真理追求の徒の下部組織に属していましたが、今回の大量の犠牲と戦いを見て、もう耐えられなくなりました。観測者を利用する計画には賛同できません……」と声を震わせる。
エリスが鋭く問いかける。「本当に降伏したいだけ? 罠じゃないの? 上層部の指示で私たちを引きずり出す作戦では?」
ナナセは苦い表情で首を振る。「信じてもらえないかもしれません。でも、わたしたちは実際に戦闘の現場を見てきました。生成者がどんなに辛い痛みを抱えているのかも知ったし、世界を壊すなんて行為が本当に正しいか、分からなくなったんです」

ユキノはその言葉に少し驚き、まだ痛む身体をこらえつつも口を開く。「……わたしはユキノ。痛みを抱える生成者の一人だけど、あなたがそう言ってくれるなら嬉しい。でも、本当に仲間を裏切って大丈夫なの?」
ナナセは悲しそうに微笑み、「わたしは裏切り者かもしれない。でも、このまま観測者を狂気のまま利用しようとしても、何も生まれないって悟ったの。わたしはただ、自分で見た真実を信じたい。もしあなたたちが命を賭して世界を守ろうとするなら、力にはなれないかもしれないけど、邪魔はしない。少なくとも私は……」

この告白にカエデやエリス、アヤカは息を飲む。大規模な裏切りかもしれないが、確かに目の前の女性は真摯な雰囲気を持っている。アヤカは慎重に言葉を選び、「あなたたちのグループはどの程度の規模? 本当の幹部たちはどう動いてるか分かる?」と質問を重ねる。ナナセは眉を伏せて「一部の過激派はまだ暗躍中で、真理追求の徒の再興を狙っています。彼らは“別の術式”を用意するとか……。わたしは正確な場所は知らない」と答える。


さらにナナセは続ける。「実は、わたしには妹がいて……彼女も真理追求の徒の研究部門に属している。もし彼女まで観測者や生成者を利用しようとするなら、わたしは止めなきゃって……」と涙をこぼす。
ユキノは心を揺さぶられ、「あなたは家族を助けたいんだね。わたしも分かる気がする……。でも、あなたを仲間として信頼するのは、ちょっと怖い。タスクフォースにもスパイがいるし、過激派があなたを利用しようとするかもしれない」と率直に言う。
ナナセは悲壮な決意を帯びて「それでも構わない。わたしはあなたたちと歩み寄りたい。自分の大切なものを守りたいし、世界を壊すなんて考え方から抜け出したい……。もしわたしが協力できるなら、あなたたちは受け入れてくれる?」と問いかける。

アヤカが応える。「私たちは当然、一度は拘束調査をしなきゃならない。あなたが言うことが正しいかどうか確かめたうえで、協力してもらうことになる。それに、タスクフォースの上層部は“真理追求の徒の残党”を激しく敵視してるから、簡単にはいかないかもしれない。……でも、和解への道があるなら、わたしは賭けてみたいと思う」
エリスは興味深そうに腕を組み、「いいわね。スパイをあぶり出すにも、内部情報がほしい。敵を完全に排除するだけじゃなく、説得できるならそれがベストだとわたしは思うし」
カエデはまだ不安げな顔だが、ユキノが「わたしも同じ。和解できるなら、そのほうがいい。あなたが本当に観測者を利用する道を捨てたのなら、わたしも仲間として助け合いたい」と、小さく微笑む。


和解への小さな一歩が見えた矢先、薄暗い倉庫の奥で虹色の光がかすかに揺れる。ナナセとタスクフォースメンバーがぎょっとして身を構えるが、そこには蒔苗が姿を見せるほどの実体化はなく、“観測者の残滓”とも言えそうなかすかな波動だけが漂う。
ユキノは眉をひそめ、「……蒔苗?」と呼びかけるが、何も返答はない。ナナセはその光景に目を見開き、「これが観測者の……残り香ってやつ?」と怯えるように後ずさる。アヤカが慎重な声で言う。「落ち着いて。干渉はないみたい。様子を見ましょう」
光はやがて消え、空気が静まり返る。その場に居合わせた全員が、観測者の絶大な力を改めて感じ取りつつも、干渉がなかったことに胸をなで下ろす。しかし、**“世界は誰が守り、誰が決めるのか”**という問いを再認識させられる現象だった。


和解への道を探るうえで、ナナセら“降伏派”をどのように扱うかが重大な問題となる。アヤカはナナセに対し、タスクフォース本部での保護プログラムを提案するが、上層部が素直に認めるはずもない。
エリスが「あの頑固な幹部連中にどう説得を?」と聞くと、アヤカは苦笑して「私も苦戦すると思う。でも、あなたたちが真理追求の徒ときちんと話し合い、降伏を受け入れたという実績があれば、説得材料にはなる」と言う。ユキノも頷き、「わたしも必要なら出向いて説明するよ……上層部に会うのは気が重いけど」。
カエデは内心で(ユキノをこれ以上酷使したくないのに……)と思いつつも、「わたしも一緒に行く」と意志を示す。ナナセは「私も責任を持って話します」と決心を見せる。こうして、敵対していた者同士が、徐々に言葉を通わせる形になりつつある。


数日後、タスクフォース本部の会議室。巨大な長テーブルの両端に幹部たちが座り、中央にアヤカ、ユキノ、カエデ、エリス、そしてナナセが配置される形で「降伏派」の件が審議される。幹部らは渋い顔で、「真理追求の徒など信用できない。おまけに観測者の危険が去ったわけでもない」「そんな話を認めるわけにいかない」と反発する。
ナナセは怯えながらも、「私たちは戦闘行為を放棄しました。今後はタスクフォースに協力して残党を説得し、過激派を抑えたい。観測者に頼らない形で世界を発展させる道を探りたい」と切実に語る。ユキノは痛みをこらえて同席しており、「この子は本気です。過激派に追い詰められたら命を落とすかもしれないリスクを承知で、こうして降伏してるんです」と助け舟を出す。
しかし、幹部たちは「そもそも敵の一味を信用するなど……」「生成者を守るのがタスクフォースの本来の役目だ。観測者との関係も不透明なのに、さらにリスクを増やすのか?」と不満を噴出させる。

アヤカは胸を張って反論する。「私たちはずっと彼らと戦ってきて、大勢の犠牲を出した。でも、ここで和解を拒絶すれば、また地下にもぐった残党が新たな術式を発動する恐れがあるのよ。彼女たちが協力してくれるなら、真理追求の徒を抑止できる可能性が高まるわ!」
エリスも冷静な口調で「彼らに騙されるリスクは承知。だからこそ、情報収集をしながら慎重に進める余地がある。スパイ問題も、降伏派の証言で一歩近づけるかもしれない」と論理を積む。幹部の一部はうんざりした表情だが、中には「確かにスパイの件は深刻だ。協力を得られるなら悪くない」という意見も出始める。

(これが“和解への道”なのか……しかし、まだ先は長そうだ)

ユキノはそう痛感しながら、痛む胸をそっと押さえる。だが、ここでの対話によって亀裂が一瞬でも埋まるなら、やる価値はある――その思いが彼女を支えている。


会議室が紛糾する中、ユキノは意を決して立ち上がる(実際にはかなりきつい動作だが)。幹部のほうを向き、「すみません……わたしは観測者を拒絶しました。蒔苗の力に頼ることなく、痛みを克服して世界を守るって決めたから。だから、あなたたちが観測者をどう扱うかで組織が分裂するなんて、もう止めてほしい」と声を張る。
幹部たちは困惑の視線を投げつつ「生成者本人が観測者を拒絶……そんなこと可能なのか?」と疑問を口にする。ユキノは頷き、「はい。実際、わたしは干渉を断ち切りました。観測者が世界を壊すなら、それも止めます。タスクフォースと真理追求の徒が戦うのではなく、話し合いで収束できるなら、わたしは協力します。だから……観測者に下手に攻撃しないでください。あの子を刺激しちゃ駄目なんです」と訴える。

ある幹部が苛立ちを露わに「生成者を保護するのが我々の使命なのに、あなたはなぜそんなリスクを?」と詰め寄る。ユキノは真正面から目を逸らさず、「……世界を守るのは、わたしやみんながやるべきこと。蒔苗に頼るくらいなら、痛みに耐えてでも戦いたい。それがわたしの意志です」と返す。
この言葉に場内がシーンと沈黙する。カエデは小さく拍手するように笑みを浮かべ、エリスとアヤカは複雑な顔つきながらも誇らしげに目を細める。幹部の一部は納得しきれないが、「そこまで言うなら……」と少しトーンを落とす者も現れる。


最終的に、タスクフォース上層部は多数決のような形で、ナナセら“降伏派”の保護と監視下での活動参加を一部容認することになる。スパイを含む内部調査が継続されるが、これまでとは違い“和平工作”という選択肢が生まれたわけだ。
会議がひとまず終結に向かい、ナナセが深い息を吐いてユキノを見つめる。「……ありがとう、あなたが幹部にあんなに堂々と意見したおかげで、私たちも希望が持てるわ」
ユキノは汗ばんだ額を押さえつつ、「わたしは何もできてないよ。ただ痛みを抱えてるだけ。でも……あなたが本気なら、一緒にやろう。もう観測者に頼ったり、世界を壊したりしない道を見つけたい」と答える。ナナセの瞳が潤み、「うん……」と力なく微笑む。

カエデはその様子を見届け、「よかったね、ユキノ。和解って、簡単じゃないけど、こうして一歩進めるんだ」と語りかける。エリスは腕を組み、「ただ、真理追求の徒の本体がどこまで納得するかは未知数よ。まだ過激派が多数残っているし、観測者を狙う動きが完全になくなるわけじゃない。でも、こうした“話し合い”がゼロよりは前進ね」と皮肉な笑みを浮かべる。

アヤカは肩を落としながらも、「真理追求の徒の一部と和解できるなら、スパイも炙り出しやすくなるわ。タスクフォースを内から蝕む存在を早く特定して、組織全体を立て直したい」と意欲を見せる。
こうして、**“和解への道”**が細いながらも形成されつつある。もちろん、観測者・蒔苗の意志はまだ不透明で、世界終了のリスクが消えたわけではない。ユキノは拒絶の姿勢を変えず、しかし“対話”の可能性を探ることを忘れない――それが仲間や降伏派との新たな絆を生むかもしれないのだから。


和解とは、決して一瞬で成し遂げられるものではない。数多くの流血と衝突を経て、それでもなお手を取り合いたいと願う者たちの行動が、闇を照らす灯火になる――そう感じさせる時間が、ようやく訪れ始めている。

ユキノは重い痛みを抱えつつも、蒔苗に依存しない形で世界を守ると決めている。観測者を拒絶したことで、彼女は自ら痛みを引き受け、真理追求の徒の脅威にも正面から向き合ってきた。今、新たに「降伏派」との対話を得て、組織の分裂や過激派とのさらなる衝突を回避しようという一筋の光が見えている。

蒔苗はユキノたちを「面白い存在」と見ながらも、いつ“終了”を実行するかは不透明のままだ。それでも、少なくとも今、蒔苗は世界をリセットしていないし、真理追求の徒の完全な道具にもなっていない。これはユキノの“拒絶”がもたらした一つの成果かもしれない。

タスクフォース内のスパイ探しは続き、過激派の再突起も予断を許さない。しかし、ユキノやカエデ、エリス、アヤカ、そしてナナセのような“新たな仲間”が加わることで、世界を救う希望は確実に増している。痛みの中で紡がれる言葉は、今や対立だけでなく、和解の可能性をも伴うからだ。

もしかしたら、蒔苗との最後の“決着”も、対話を通じて訪れるかもしれない――互いに譲れない一線がありながら、人間と観測者がそれでも尚つながり合う奇跡を起こせるなら、世界終了の未来は変えられるのだろうか。ユキノの選んだ道は、“痛みをも共有し合う”人間同士の和解への一歩であり、同時に“観測者”とさえも分かり合いたいという新たな希望を秘めているのかもしれない。

和解は始まり、痛みを乗り越えたユキノたちはさらに成長を遂げるだろう。観測者・蒔苗は世界をどう見るのか、真理追求の徒の残党は最終的にどんな行動を起こすのか――すべてがまだ終わったわけではない。

だが、傷ついた者たちがそれでも手を取り合い、言葉を交わし、未来を信じ合う姿こそ“和解への道”の真髄。ユキノたちの物語は続いていく。苦しみと希望を抱えながら、それでも共に進もうという意志が、世界の運命を大きく変えていくに違いないのだから。

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