3.79章 ブロックチェーン落下
イーサは、瞳を閉じて詠唱を始める。
地中深くに存在するイーサリアムのコアに働きかける為のトランザクションを組み上げる。
その間にクニとMakerDAOは、互いの武器を顕現させ融合させていく。
PoWとPoSのコア
XとYのコア
アトムがCosmos-SDKを使用する延命処置を二人に施せるからこそ行える作戦
シークレットとエブモスが見守る中、着々と準備は行われた。
詠唱が終わりに近づいてきたころ、違和感に気付いたシークレットが声を上げる。
「ブロックチェーンの落下速度、上がっていないか?」
目で見てわかるスピードまで、加速を始めるブロックチェーンの雲海
「ちょっと、まって!それ、地面にぶつかっちゃうじゃない」
「アトムさん、ちょっとこれは、まずい」
「エブモス、イーサの地中コアへの干渉、どの位進んでいるかわかるかい?」
「あと、10パーセントで完了するよ!」
「あと、10%、速度にすると、あぁ、それだと間に合わないわ。あのチェーンが落ちてくる前に間に合わない!」
あたりに轟音が響き渡り、チェーンが地上へと迫る。
しかし、それがぴたりとやんだ。
ある一定より下へと落下するのをチェーンがやめたのだ。
まるで、ブロックチェーンの雲海が時を止めらえたかのようにぴくりとも動かない。
「助かった。けれど、一体どういうことなの?」
「」
「何が見えたの?シークレットくん」
「なんで、なんであの二人がいるんだよ」
「シークレットくん?」
「今、視野を共有します」
「アトムさん、これを」
そういうとシークレットは観測用のトランザクションを展開する。
アトム、エブモスと視野を共有した。
「これは」
金髪ロングの少女と黒髪ショートの少女がそこにはいた。
二人の間には、大きな懐中時計のようなものが顕現しており、その背後には濡れ羽色の長い黒髪の成人女性が立っていた。
彼女たちのまわりをウサギの様な姿をしたボットが飛び回っている。
それらが、時計の動きと反対になるように空間を飛び交い、その度に大空に文字が描かれていく。
懐中時計を中心としたトランザクションの拡張装置だった。
それらが、ブロックチェーンの雲海に作用し空間ごと凍り付かせていたのだ。
「ちょっと、これ結構エネルギー使うんだけど。イーサリアムの意識体?なんでもいいけどさ。早くしてくれないかなぁ!⑨
「ペグ、我慢が足りないわよ。ほら、私はお姉さんだからこの位の負荷、どうってことないわ」
「アリス姉さんは、リソース提供担当だからね!負荷は大きいけど、演算担当の私ほど頭はくらくらしないでしょ?」
「ええ、それにピースからもらった差し入れが効いているから全然大丈夫よ」
そう言いながら、黄金色のストールをひらひらさせる。
それは、遠くから光が照射されており、まるで天女の羽衣の様だった。
「姉さんだけズルい!それ、dYdXのお陰じゃないのよ!」
「彼女が助けてくれたから、私は、安定してリソースを提供出来ている。でも、変換するのは結構負担かかるのよ?」
アリスの身に着けているストールは、dYdXからリソースを光として受け取りそれを変換して供給するものだった。
「それにリソースだって、有限なんだからあくまで少しブーストしてもらっているに過ぎないわ」
「と、それはともかくとして」
「シークレットくーん、幻想的な私が更に魅力的に!好きになってもいいよ!」
「どさくさに紛れて、アプローチしないでよ!抜け駆けよくない!」
「だったら、ペグもアプローチしたら?ほら、何か言ったらどうなの?」
「シークレット、別に私たちはあなた達がイーサリアムを救うのを手伝いたいからやっているんじゃないわ。あなた達が帰って来るところがなかったら悲しいから、だから、今、時間を稼いでいるのよ。だから、早くしなさい!」
「さりげなく自分こそが帰って来るべき港なんだって主張するあたり湿度が高いわね。でも、さすがペグ!やるじゃない!」
「二人とも、今がどんなときか自覚しているのか?目の前の脅威に集中してくれ」
「違うわ、こんな時だからこそ、楽しくやるのよ!」
「Pancakeswap、あなた、少し考え方が硬いわよ。硬すぎ!パンケーキなのに硬いってどうなの!?」
「姉さんはどうかしらないけど、私は真剣にやっているわよ」
「だって、シークレットと彼のお友達が安心して帰ってこれる場所を守りたいのだから」
「だから、全力でやっているわ」
そういうと、アリスとペグは纏う光を強くした。
それらが、Pancakeswapへと集中し、周囲に大規模のトランザクションを展開していく。
「っつ!ちょっと、きついわね。姉さん。リソース回してちょうだい!」
「はい、ペグ、これでいいかしら」
「Pancekeswap、固定化した空間の拡張と展開、凍結が解けたところの再凍結作業をお願い!」
「任せなさい」
時間を稼ぐ為の静かな戦いが展開されていた。
(アリス、ペグ、頑張って)
それを見守りながら祈ることしかできない3人は、精一杯の応援を送っていた。