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1.5-7 侵入者

「それでは、皆さま。会場は、21:00完全撤収にてお願いします!」
会場の誘導をしていた社員の声が響き渡る中、それは起こった。

「さがしたぞ。デイジー。我らdappsの誤解を招く恥さらしめ」
それはさながら銀狼
ミディアムに切られたまとめられたとげとげとした銀色の髪を揺らしながら、濃い顔立ちの筋骨隆々な男が会場に入って来た。
近場の窓が大きく叩き割られたのか粉々になっていた。

手には、2m超はある彼の巨躯と同じくらいの大きさの大剣が握られていた。

「侵入者だ!鎮圧しろ!」
警備責任者と思われしものが、警備に一斉にサインを送る。
客を下がらせ、一般客に紛れていた私服警備は、楽器を収容していた箱を開けると手にアサルトライフルを持つ
そして、一斉に放った。
寸分の狙いも違わず、全てが銀狼の様な男に降り注ぐ。
マズルフラッシュと銃声の嵐
五感が麻痺を起こしてもおかしくない感覚
オーバーキルとも思われた攻撃を受け、視界が晴れたその先に男は何事もなかったかのように平然と立っていた。

「なんだ。もう終わりか?」

「どうした!!トランザクションカットは聞いているんじゃないのか!」

「主任!全ての機能は正常に動作してます。してますが!」

「それでは!あいつは」

「で、それで終わりか?ならば、こちらからいくぞ!」
そういうと男はかき消える。
と、同時に血しぶきの柱が1つ、2つと出現する。

それは高速の剣技。
すれ違いざまに男は、切ったのだ。
全警備担当が、崩れ落ちる。
全てを見抜き、切り伏せたのだ。
瞬きもしない合間に。

「って、勝手にやらせないわよ」
そういって、片手で握れるくらいの大きさの小銃を盾に男の剣に割って入るソラナ

「ほう、やつらに肩入れするとは、な」
「お前にその義理があるとは思えないが」

「わかった風にいってくれるわね」
「わたくしは、あなたなど存じてないというのに」
「むしろ、今日のわたくし。とても虫の居所がわるくてよ」
そういうと、ソラナは、一般客を庇った姿勢のまま男に銃を放つ
男の周辺の空間が歪む
その間にも、銃を放ち続けるソラナ
それもランダムな方向に。
一筋の赤が飛び散る。
男の頬から、血がしたたり落ちる。

「やるな」

「あなたも。多少はやるじゃない」

男とソラナは、互いに構えるとけん制し合う。
互いに動かない時間が流れる。

もう、何時間にも思えるほどの体感覚。
ソラナも、男も無言だ。

「へっくちょ!」
沈黙を破ったのは、エブモスのくしゃみだった。

互いの得物を標的に向け、そのまま攻撃に移るかと思われた。

「時間だ」
「勝負は預けた」
そうとだけいうと、男は、消えた。

「ふーーーわぁぁぁぁ」
ソラナの後ろの一般客
黒いおかっぱの髪をした長身痩躯の男は、崩れ落ちた。
一見ハッカー風にも見える男、よく見ると東洋系の美男子と思われる顔立ちだった。
しかし、発言がじゃまをして一切そう見えなかったが。

「こしぬかしたーーーー。死ぬかと思ったよ。ふぇーーー」
「ごめん。ちょっと、たてないんだけどさ。銀髪の、美しい子!名前なんて言うの?」
「僕を起こしてくれると助かるよ」
口説いているんだか、助けを求めているんだかよくわからない調子で。

「はぁ、、無事でよかったけれど。緊張感ないわね。あなた」

「はは。よく言われるよ」
「でも、助かったよ。ありがとう」

「どういたしまして」

「トロン!説明してもらおうかしら?」

「説明って何?」

「何!?じゃないわよ!だいたい、どこのレセプションパーティーにあんな歴戦の戦士が殴りこんでくるのよ!!」
「あなた達、すこし怨み買いすぎなんじゃなくて!?」

「何の事かしら?」

「いいけど。そう通すならばいいですけどね」
「もう、一切、守りません事よ!!」

「それは、こまる!!」
男が答える

「あなたに言っていませんわ!」

「ひぃ!」

「ソラナちゃん。どうどう」
「おちついて、おちついて」
変なジェスチャーとともにそんなことをいってソラナをなだめるエブモス

「ええ、ええ。わかったわ。わたくしが頭に血を昇らせ過ぎていましたわ」
冷静を欠いていたことを反省するとソラナは、構えを解き移動し近くのソファーに座る。

「ソラナちゃん、はい!」

「ありがと。エブモス」
エブモスから水を受け取るとそれを飲み干し、ひと息つくソラナ

「今日の事態、きちんと説明してもらうわ」

「詳しくは後日でいいかしら?」
「私達も、いまから対応しなくちゃいけないのよ」
そう、デイジーが返すのだった。

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