R-TYPE / ZERO: 天使の軌跡:7
プロメテウス基地の司令部は、これまでにない緊張感に包まれていた。巨大なスクリーンには、バイド中枢の座標を示す解析データが投影され、その中心部には異様な輝きを放つ虚無空間の映像が映し出されていた。
指揮官のアーヴィング少将が深刻な表情で立ち上がり、周囲を見渡した。司令部にはTeam / ゼロのパイロットたち、整備班リーダーのジョン・カーター、研究班を代表するフリーマン博士、そして軍上層部の代表者たちが集まっていた。
「諸君、これは人類がバイドに対して初めて攻勢に転じる作戦だ。『アローヘッド作戦』が成功すれば、敵の中枢を破壊し、長きにわたる戦争を終結させる可能性がある。しかし、この作戦には重大なリスクが伴う。」
その言葉に、場内の空気が一層張り詰めた。
フリーマン博士が席を立ち、スクリーンを指差しながら説明を始めた。
「こちらが今回の目標地点、バイド中枢が存在する虚無空間です。この空間は通常の物理法則が通用しない領域であり、到達するには新開発の『波動突入システム』が必要となります。」
スクリーンには、波動突入システムを搭載したR型戦闘機の図面が表示された。その設計は複雑で、技術班が全力を尽くした成果が一目で分かる精巧なものだった。
「このシステムを使えば、概念空間を経由して中枢へ直接到達することが可能です。ただし、この作戦には以下のリスクがあります。」
博士は別のスライドを表示し、続けた。
高負荷によるエンジェルパックの限界突破の可能性:突入時のエネルギー消費が膨大で、エンジェルパックへの負担が極限に達する恐れがある。
帰還の保証がない:虚無空間からの帰還ルートは未確定であり、作戦が失敗すれば全滅する可能性が高い。
敵の圧倒的な防衛力:中枢コアを守るバイドの精鋭防衛部隊が待ち構えている。
パイロットたちは博士の説明を真剣に聞きながら、スクリーンに映るデータを凝視していた。
和也が手を挙げて口を開いた。
「つまり、俺たちはこの作戦でバイドにとどめを刺せるかもしれないってことですね。」
フリーマン博士が頷く。
「その通りです。ですが、代償が伴う覚悟が必要です。」
リチャードが冷静な声で全員に向けて語った。
「全員、覚悟を決めろ。これは俺たちの最後の戦いになるかもしれないが、同時に人類が勝利を掴むための唯一の機会だ。」
美咲が隣に座るナオミに優しく語りかけた。
「ナオミ、怖いだろうけど、一緒に頑張ろうね。」
ナオミが小さく光を放ちながら答えた。
「はい、お母さん。私も力を尽くします。」
ジョン・カーターが技術班の進捗を報告するために立ち上がった。
「波動突入システムの調整はほぼ完了している。だが、これ以上のテストを行う時間はない。本番で全てが正常に動作することを祈るしかない。」
整備班の他のメンバーが黙々と機材を確認している様子が映し出される。
フリーマン博士が技術班の努力を称賛しながら補足した。
「技術班の尽力で、可能な限りの精度を確保しました。あとはパイロットとエンジェルパックの力を信じるのみです。」
アーヴィング少将が全員を見渡し、力強い声で語りかけた。
「これが人類の未来を懸けた戦いだ。全てのリソースを投入し、成功を掴むために全力を尽くそう。Team / ゼロ、君たちの役割がこの作戦の鍵を握る。」
和也が立ち上がり、敬礼をしながら答えた。
「了解しました。我々Team / ゼロ、必ず任務を遂行します。」
他のパイロットたちもそれに続き、全員が決意を胸に作戦開始の準備に向かった。
プロメテウス基地の格納庫は、作戦準備に向けた緊張感で満ちていた。整備班と研究班が総力を挙げてTeam / ゼロの機体に波動突入システムを搭載し、最終調整を進めている。無数のケーブルが床に這い、機械音と指示の声が入り混じる中、時間との戦いが繰り広げられていた。
整備班リーダーのジョン・カーターは、部下たちに指示を飛ばしながら各機体を確認していた。
「おい、波動突入システムのエネルギーラインを再確認しろ!過負荷でショートしたら全てが無駄になるぞ!」
部下の一人が工具を片手に駆け寄る。
「ジョン、調整は完了しました。ただ、実戦での負荷が予想を超える可能性があります。」
ジョンは一瞬考え込み、険しい顔で答えた。
「そんなことは分かってる。だが、俺たちができることは、最善を尽くして可能性を広げることだけだ。」
格納庫の奥では、整備班のメンバーが機体の外装を取り付けながら、緊張した声で進捗を報告していた。
「機体『R-02』、最終調整完了!波動突入システム、全系統オンライン!」
ジョンが満足げに頷き、次の機体へと向かった。
一方、パイロットたちはそれぞれのエンジェルパックと向き合い、作戦への心構えを整えていた。和也はリオの光を見つめながら語りかける。
「リオ、次は俺たちにとっても未知の領域だ。お前がいなきゃ、俺はこの戦いに勝てない。」
リオが静かに輝きを強めながら答えた。
「お父さん、私、頑張るよ。一緒に帰ろうね。」
美咲はナオミと対話しながら、慎重にエネルギーリンクを確認していた。
「ナオミ、この作戦は危険が多いけれど、あなたがいてくれるから私は勇気を持てる。」
ナオミが小さな声で答える。
「お母さん、一緒に乗り越えましょう。私も全力を尽くします。」
他のパイロットたちもそれぞれのエンジェルパックと意思を共有し、戦いへの覚悟を固めていた。
研究班のフリーマン博士は、制御室で作戦全体の技術的要件を確認していた。彼の周囲には解析用のコンソールが並び、ディスプレイには複雑なデータが映し出されていた。
「エネルギーリンクの安定性は確保されているか?」
若い研究員が頷きながら答える。
「はい、博士。ただし、突入時のエネルギー波動にさらされた場合、リンクが一時的に乱れる可能性があります。」
フリーマン博士は眉間にしわを寄せ、短く答えた。
「そのリスクは想定内だ。パイロットたちに詳細を伝え、対応策を準備させろ。」
通信回線を通じて、フリーマン博士がパイロットたちに注意点を伝えた。
「諸君、突入時に機体が一時的な不安定状態に陥る可能性がある。冷静に対処してほしい。エンジェルパックがリンクを支えてくれるはずだ。」
和也が通信越しに答える。
「了解しました、博士。俺たちがしっかり対応します。」
準備が整った頃、Team / ゼロの全員が格納庫に集合した。リチャードが全体を見渡しながら、静かに口を開いた。
「これが俺たちの最後の戦いになるかもしれない。だが、俺たちはこれまで以上に結束している。この作戦を成功させるため、全力を尽くそう。」
ルイスが肩をすくめながら冗談めかして言う。
「最後の戦いって言うなよ、リチャード。俺たちは全員で帰るんだろ?」
リチャードが笑みを浮かべながら頷いた。
「その通りだ、ルイス。全員、生きて帰る。それが俺たちのルールだ。」
整備班が最終チェックを行い、全てのシステムが正常に作動していることを確認した。ジョンが整備班のメンバーを集め、声を張り上げる。
「よし、全機準備完了だ!お前たち、よくやったぞ!」
パイロットたちはそれぞれの機体に乗り込み、エンジェルパックとの神経接続を完了させた。
「全機、出撃準備完了!」
司令部からの指示が下り、格納庫の扉がゆっくりと開かれる。外には星々が輝き、彼らの行く先を見守っているようだった。
アーヴィング少将の声が通信回線を通じて響く。
「Team / ゼロ、これより『アローヘッド作戦』を開始する。健闘を祈る。」
和也がリオに向かって微笑みながら語りかけた。
「行くぞ、リオ。これが俺たちの戦いだ。」
リオが静かに光を強めて応じた。
「うん、お父さん。一緒に頑張ろう。」
プロメテウス基地の格納庫が静まり返る中、Team / ゼロの機体が一斉に準備を整えた。パイロットたちはそれぞれのエンジェルパックとの接続を確認し、全機が発進準備を完了させた。
「Team / ゼロ、全機準備完了。」
和也が通信回線を通じて全体に声をかける。司令部からの最後の指示が下されると、格納庫の扉がゆっくりと開き、外には無限の宇宙空間が広がっていた。星々が煌めくその先に、彼らの目指す概念空間への入口が静かに佇んでいる。
アーヴィング少将の冷静な声が通信越しに響いた。
「全機、発進を許可する。健闘を祈る。」
和也が微かに笑みを浮かべながら、リオに声をかけた。
「行くぞ、リオ。これが俺たちの戦いだ。」
リオが静かに光を強めて応じた。
「うん、お父さん。一緒に頑張ろう。」
エンジンの轟音とともに、Team / ゼロの機体が次々と発進していく。その姿はまるで未来を切り拓く矢のようだった。
概念空間への入口に到達すると、機体に搭載された波動突入システムが起動し始めた。周囲の空間がゆがみ、光が不規則に歪む。パイロットたちの視界に異様な光景が広がる中、フリーマン博士の声が通信越しに響いた。
「全機、波動突入システムの動作を確認。概念空間への転移を開始する。注意深く進め。」
リチャードが全体に指示を出す。
「全機、フォーメーションを維持しろ。この空間では何が起きるか分からない。」
突入から数秒後、パイロットたちは異次元の風景に包まれた。そこは物理的な法則が一切通用しない場所で、幾何学模様が絶えず変化し、無限の光が空間を満たしていた。
ナオミが不安げに呟く。
「お母さん、ここ……怖い。」
美咲が優しく声をかけた。
「大丈夫よ、ナオミ。一緒にいるから怖くないわ。」
突然、空間が激しく歪み、無数の敵影が現れた。それはバイドのデジタル生命体で、まるで悪夢の具現化のような異様な形状をしていた。
「来たぞ!全機、迎撃態勢を取れ!」
和也が叫び、全員が戦闘準備を整えた。
敵は物理的な攻撃だけでなく、精神的な干渉も行ってきた。和也の視界に一瞬、過去の記憶がフラッシュバックする。
「これは……幻覚か?」
リオの声が彼を現実に引き戻した。
「お父さん、しっかりして!」
「すまない、リオ。ありがとう!」
一方、美咲とナオミの機体にも、無数の敵が襲いかかっていた。
「ナオミ、右を狙って!」
「分かった、お母さん!」
ナオミが正確に攻撃を繰り出し、敵を次々と撃破していく。その動きは母と娘の連携が見事に取れたものだった。
リチャードが全体を見渡しながら指示を出す。
「敵の数が多すぎる!全機、フォーメーションBに切り替え、互いのカバーを優先しろ!」
パイロットたちは素早く指示に従い、互いに援護し合いながら敵を撃破していった。しかし、敵の波は尽きることがなく、次々と湧き出てくる。
「くそっ、キリがない!」
ルイスが苛立ちを隠せず叫ぶ。その声にカルロスが冷静に応じた。
「焦るな、ルイス。今は耐えるんだ。」
激戦を乗り越えたチームは、ついにバイドコアのある中心部に到達した。そこには巨大なコアが存在し、空間全体を支配しているかのような威圧感を放っていた。
リチャードが静かに語る。
「これがバイドの中枢か……。」
コアが脈動し始め、周囲に無数の防衛機構が出現した。敵は圧倒的な力でチームに襲いかかってくる。
「全機、集中攻撃を開始!コアを破壊する!」
和也がリオに指示を出す。
「リオ、波動砲をチャージしろ!」
「分かった、お父さん!」
リチャードの機体も波動砲を発射し、敵の防衛機構を破壊していく。しかし、コアは強力な防御フィールドを展開しており、直接攻撃が通らない。
フリーマン博士の声が通信越しに響いた。
「コアの防御フィールドを無力化するには、エネルギー源を破壊する必要がある!周囲の構造体を狙え!」
和也が叫ぶ。
「全員、構造体を狙え!フィールドを解除するんだ!」
フィールドを解除したチームは、ついにコアに直接攻撃を仕掛ける準備を整えた。リチャードが全員に指示を出す。
「これが最後の攻撃だ!全機、波動砲を最大出力で発射!」
全員が息を合わせ、波動砲を一斉発射する。光の奔流がコアを直撃し、空間全体が激しく揺れ始めた。
「やったか……?」
和也が呟いたその瞬間、コアが最後の力を振り絞って反撃を開始した。
「全員、警戒を続けろ!まだ終わってない!」
リオが静かに光を強めながら応じた。
「お父さん、もう一度一緒にやろう!」
和也は力強く頷き、最後の一撃に向けて機体を加速させた。
バイドコアがその全容を現したとき、Team / ゼロのメンバーは圧倒されるような感覚に包まれた。目の前に広がる巨大な構造物は、絶え間なく変形しながら脈動しており、まるで空間そのものが生きているかのようだった。周囲には無数のエネルギーが渦巻き、時間と空間が歪んでいる。
リチャードが静かに声を発した。
「全員、冷静に状況を把握しろ。ここからが本番だ。」
和也がリオに向かって確認する。
「リオ、大丈夫か?」
リオが明るく光を放ちながら答えた。
「大丈夫だよ、お父さん。一緒に頑張ろう!」
バイドコアが警戒態勢に入ると同時に、周囲に無数の防衛機構が出現した。それらは物理的な存在を持つものもあれば、エネルギー体として攻撃を仕掛けてくるものもあった。
「全機、迎撃を開始!フォーメーションCを維持しろ!」
リチャードの指示で全員が一斉に攻撃を開始する。波動砲が次々と発射され、光の奔流が防衛機構を貫いた。
「ナオミ、右をカバーして!」
美咲が声をかけると、ナオミが即座に応答する。
「分かった、お母さん!」
ナオミの正確な射撃が敵を撃破し、周囲の圧力を軽減する。一方、和也とリオも連携して防衛機構を排除していた。
「リオ、エネルギーリンクを最大にしてくれ!」
「分かった、お父さん!」
リオがリンクを強化し、和也の攻撃を支援することで、敵の大群を切り裂いていく。
防衛機構をある程度排除した後、バイドコアがその真の力を解放し始めた。無数の光線が空間を切り裂くように放たれ、パイロットたちを追い詰める。
「くそっ、こんな火力、どうやって防げばいいんだ!」
カルロスが叫びながら機体を操り、敵の攻撃をかわす。リチャードが冷静に指示を出す。
「全機、エネルギー波動を読み取れ!敵の攻撃パターンに合わせて回避しろ!」
和也も攻撃をかわしながら、リオに問いかける。
「リオ、この状況をどうにかできるか?」
「できるよ、お父さん!一緒にやろう!」
リオがリンクを最大限に活用し、和也の攻撃精度をさらに高める。その結果、光線の隙を突いて波動砲をコアに向けて発射する。
「当たれ……!」
波動砲がコアに直撃するが、強力な防御フィールドが攻撃を遮断する。フリーマン博士の声が通信越しに響く。
「コアには強力な防御フィールドが展開されています!周囲のエネルギー供給源を破壊しなければ、直接攻撃は無効です!」
リチャードが即座に指示を出す。
「全機、エネルギー供給源を狙え!フィールドを解除するんだ!」
パイロットたちはコア周囲のエネルギー供給源に攻撃を集中させた。敵の防衛機構が激しく反撃を行う中、和也とリオが特に目立った活躍を見せる。
「リオ、もう一度波動砲をチャージだ!」
「了解、お父さん!」
和也の機体が敵の攻撃をかわしながらエネルギー供給源を狙い、リオのサポートで精密な射撃を成功させる。他のメンバーも次々と供給源を破壊していく。
ナオミと美咲も連携して敵を排除し、最後の供給源に攻撃を集中する。
「ナオミ、ここが正念場よ!」
「分かってる、お母さん!」
ナオミの正確な一撃が最後の供給源を破壊し、コアの防御フィールドが崩壊する。
「フィールドが消えたぞ!今がチャンスだ!」
フィールドが解除されたコアに向けて、全員が最大出力の攻撃を仕掛ける準備を整えた。リチャードが全体に呼びかける。
「全機、波動砲をチャージし、タイミングを合わせて一斉発射する!」
「了解!」
パイロットたちが息を合わせ、全員が波動砲を発射する。光の奔流がコアに向かって収束し、直撃を与えた。
空間全体が激しく揺れ、コアが脈動を止める。
「やったか……?」
和也が呟くが、その直後、コアが最後の力を振り絞って大規模なエネルギー爆発を起こそうとする。
「全機、警戒を続けろ!まだ終わってない!」
リオが光を強めながら静かに語る。
「お父さん、最後まで頑張ろう!」
和也が力強く頷き、全員で最後の攻撃を仕掛ける。
バイドコアの中心部が露わになると、その凄まじいエネルギーが空間全体を震わせた。コアは絶え間なく脈動し、放出されるエネルギー波はチーム全員に大きな圧力をかけていた。だが、Team / ゼロのメンバーは怯むことなく最後の準備に取り掛かっていた。
「全機、これが最終攻撃だ!波動砲を最大出力でチャージしろ!」
リチャードの声が通信越しに響き渡る。パイロットたちはそれぞれのエンジェルパックと意識をリンクさせ、機体の波動砲を限界までチャージし始めた。
和也の機体であるR-01もチャージを開始し、リオの光がさらに強く輝き始めた。
「リオ、準備はいいか?」
「うん、お父さん。一緒にやろう!」
リオの声には決意が込められており、その光は和也の緊張を和らげるようだった。一方、美咲とナオミも息を合わせ、波動砲の準備を進めていた。
「ナオミ、怖くない?」
「お母さん、私は大丈夫。これで終わらせよう。」
ナオミの穏やかな声が美咲を励まし、二人の機体も波動砲をチャージしていく。ルイス、カルロス、そしてリチャードの機体も同じように準備を整え、それぞれが自分の役割を理解していた。
「全員、タイミングを合わせるぞ。これが最後の攻撃になる!」
突然、コアが激しく脈動し始めた。その周囲から無数の防衛機構が新たに出現し、チームに向かって一斉に攻撃を開始する。
「防衛機構が再稼働した!全員、攻撃を中断するな!」
リチャードの指示が飛び、パイロットたちはチャージを維持しながら敵を迎撃する。和也がリオに指示を送る。
「リオ、左から来る敵を排除するぞ!」
「分かった、お父さん!」
リオがリンクを強化し、和也の機体が正確に敵を狙撃する。その一撃で複数の敵が爆散し、他の機体の負担を軽減した。
美咲とナオミも同様に敵を迎撃しながら波動砲のチャージを続ける。
「ナオミ、右後方に敵がいるわ!」
「見えてるよ、お母さん!」
ナオミの冷静な射撃が敵を的確に排除し、美咲が前方の敵を撃破する。その連携は完璧だった。
すべての波動砲がチャージ完了し、コアへの最終攻撃の準備が整った。リチャードが全体に合図を送る。
「全機、波動砲を一斉発射!目標はコアの中心部だ!」
「了解!」
全員が息を合わせ、波動砲を発射した。光の奔流が融合し、巨大なエネルギーの矢となってコアを直撃する。
「当たれ……!」
和也の呟きと同時に、エネルギーがコアに吸い込まれるように炸裂し、その中心部が崩壊を始めた。空間全体が激しく揺れ動き、チーム全員に緊急警告が届く。
「コアが崩壊を始めた!全員、脱出準備をしろ!」
だが、その時、コアが最後の力を振り絞り、空間全体を巻き込む大規模な爆発を準備している兆候が見えた。和也が咄嗟に叫ぶ。
「全員、急げ!このままだと巻き込まれる!」
しかし、次の瞬間、各機体の脱出ポッドが自動的に射出され始めた。和也は驚きの表情を浮かべる。
「リオ、どうして……?」
通信越しにリオの声が響く。
「お父さん、私たちが守るから。お父さんたちは帰って……」
美咲も同じようにナオミに問いかける。
「ナオミ、何をしてるの!?私たちで帰るって……!」
「お母さん、ごめんなさい。でも、私たちがここで止めないと……!」
エンジェルパックたちは自らの意思でパイロットたちを脱出させ、自分たちだけでコアの残骸と戦い続けることを選んだ。R型戦闘機がバイドコアを包囲し、最後の抵抗を試みている姿がポッド内の窓越しに見えた。
「リオ、ナオミ……!」
パイロットたちの叫び声が空しく響く中、コアが最終的に崩壊し、閃光が空間全体を包み込んだ。
ポッドが現実空間に帰還し、プロメテウス基地に無事到着すると、パイロットたちはそれぞれが静かに立ち尽くしていた。リチャードが拳を強く握り、無念の表情を浮かべる。
「俺たちが守るはずだったのに……守られた側になってしまった……。」
和也が壁に拳を叩きつけながら呟いた。
「リオ……ありがとう……でも、お前を失いたくなかった……。」
他のメンバーもそれぞれの思いを胸に、エンジェルパックたちへの感謝と悲しみを感じていた。
プロメテウス基地に静けさが戻る中、Team / ゼロのパイロットたちが次々と脱出ポッドから降り立った。格納庫にはいつもの喧騒がなく、スタッフたちは彼らを迎えるも、誰も口を開くことができなかった。その理由は誰の目にも明らかだった。
和也がポッドから降りると、真っ先にリオのいない事実が胸に重くのしかかった。彼はそのまま壁に手をつき、拳を強く握り締めた。
「リオ……。」
彼の震える声は格納庫に静かに響いたが、誰もその言葉に応えることはできなかった。他のパイロットたちも同様だった。リチャードは拳を握りしめたまま黙り込み、美咲はポッドの入り口で動けなくなっていた。
整備班リーダーのジョン・カーターがゆっくりと和也に近づいた。
「和也……。」
ジョンは何か言葉をかけようとしたが、それ以上言葉が出なかった。和也が壁に拳を叩きつける。
「守るって約束したのに……!俺が守られてどうするんだよ!」
その声は格納庫全体に響き渡り、沈黙がさらに重くのしかかった。美咲はナオミのことを思い出しながら小さく呟く。
「ナオミ……。あの子、最後まで私を守ってくれた。」
彼女の目から一筋の涙が流れ落ちた。
パイロットたちはその後、司令部の会議室に集まり、アーヴィング少将が作戦の結果を整理していた。
「今回の作戦で、バイドの中枢コアを完全に破壊することに成功した。しかし、それはエンジェルパックたちの犠牲の上に成り立っている。」
フリーマン博士が深い溜息をつきながら報告を続けた。
「彼らは最後まで我々を守ることを選び、コアの崩壊に巻き込まれた……。」
和也が机を握りしめながら静かに言葉を絞り出した。
「彼らは戦士だった。そして、俺たちを生かすために全てを捧げた……。」
リチャードがその言葉に応える。
「それを無駄にしないためにも、俺たちはこれからも戦い続けるしかない。」
会議室にいる全員がその言葉に頷きながらも、重い空気が漂い続けていた。
その日の夜、和也は格納庫に戻り、リオがいた場所をじっと見つめていた。整備班の作業員が片付けをしている中、ジョンが再び彼のそばにやってきた。
「リオはお前のことを信じていたんだ。そしてお前を守ることで、自分の使命を果たした。」
和也がジョンの言葉に小さく頷く。
「分かってる……でも、それでも悔しいんだ。」
美咲もまた、ナオミの思い出を胸に、彼女が自分を守り抜いたことに感謝しながらも、その喪失感に耐えられず涙を流していた。
数日後、Team / ゼロの解散式がプロメテウス基地の広場で行われた。エンジェルパックたちの名前が記された記念碑が設置され、その前でパイロットたちが集まった。
アーヴィング少将が演説を行い、彼らの犠牲がもたらした勝利を称えた。
「エンジェルパックたちの自己犠牲は、人類の未来を切り拓いた。彼らの名前は永遠に我々の記憶に刻まれるだろう。」
リチャードが代表として前に立ち、言葉を紡いだ。
「彼らは仲間であり、家族だった。俺たちはその絆を忘れることなく、この勝利を次につなげる。」
広場に集まった全員が静かに頭を下げ、エンジェルパックたちに敬意を表した。
解散式が終わった後、和也は星空を見上げていた。その隣に美咲が立ち、静かに話しかけた。
「リオもナオミも、きっと私たちのことを見守ってる。」
和也が頷き、微笑みながら答える。
「そうだな。彼らの思いを無駄にしないためにも、俺たちは進み続けるしかない。」
リチャードもまた、遠くから星空を見上げながら、静かに呟いた。
「これが終わりじゃない。だが、一つの大きな節目だ。」
パイロットたちはそれぞれの思いを胸に、新たな未来への一歩を踏み出す決意を固めた。