0.4 アイデアある?
星を創る。
そんな壮大な目標を言われるとは思わなかったエブモスは、ぽかーんとし表情で固まっていた。
「固まっていたって、仕方がないよ。ほら、再起動」
シークレットがエブモスの頭を撫でる。
氷の様に固まっていたエブモスが見る見る赤くなり、湯気がたちのぼる。
「しっ、シークレットくん!」
シュッシュポッポッ
エブモス機関車の出来上がりである。
「兄様、やり過ぎですわ。エブモスがバグってます」
「あっ。エブモス!」
「ふぁー。シークレットくん」
————
「それで、星を創りたいんだねっ!」
「ええ。私は、Libertaccelera Republic出身なのよ。でも、ほら。実際の故郷と呼べるところがないから」
「なんで?」
「Libertaccelera Republicはね。共同体なのよ。ある思想を持ったね」
「だから、そう言った場所があるわけではないの」
静かに語り始めるアヴェリアと、うんうんと納得するエブモス。
「だけれどね。私達も、故郷。と呼べる明確な土地が欲しいの。でも、ここの宙域には、もう土地がないでしょ?」
「えっ、土地ならあるけど。ほら」
そう言って空き地を指差すエブモス
「違うよ。そこは、空き地ではあるけれど、それ以前にコスモスでしょ」
違いを正す様にシークレットが指摘する。
「そっかぁ」
「ただ、『空いている土地』じゃいけないんだね!」
「そういう事よ」
「だから、私達は、土地そのもの。つまり自分たちの『星』を作ろうとしたのよ」
「ねぇ、それって、奪うという案は出なかったのかしら?」
「それも、考えたものたちはいたわ」
発言したシェードの方を見て、呟く。
「でも、それでは長続きしないわ」
「なんで?」
「エブ子。なんでだと思う?」
「うーん。あっ!もといた人と取り合いになるからだっ!」
「奪い合いの争いか。それだったら、心納まるときはないよね」
シークレットが頷く。
「そうね。でも、それは理由のひとつに過ぎないわ」
「違うの?」
「違うわ。もっと決定的な事よ」
「うーん?なんだろう。なんだと思う?シークレットくん?」
「さぁ。僕もわからないなぁ」
「シェードちゃん。わかる?」
「いえ。私もさっぱり」
うーん。うん。と唸るエブモス達
一向に答えが出る気配がない。
「それはね。『土』が合わないの」
「『土!?』」
「そう」
「あなた達は、コスモス宙域の意識体だから特に気にする事はないと思うけれど。私は、ここに今、存在しているだけでもリソースを消費しているのよ」
「えっ!じゃあ。アヴェリアちゃん消えちゃの!?」
「そんな事はないわよ。私だって、チェーンからの供給を受けている。だから、消える事はないわ」
「ほっ!でも、ならなぜ?」
「それはね。チェーンとの距離よ」
「コスモス宙域は、自ずとその所属するエコシステムのチェーンとは近い。あるいは、イコールですらあるくらいの距離」
「だから、普段、立っているだけでリソースが減っていく感覚はないと思うの」
「確かに」
「でも、あなた達がコントラクトを組み、トランザクションを発動する事もあるでしょ。そのときは、どんな感覚かしら?」
「リソースがぎゅーっと、減って。すぐに供給される感じ、っあ!」
「そう。その感覚がいつもある。と言ったらいいかしら?ほら、あまり快適ではないでしょ?」
「確かに!」
「でも、大丈夫なの?結構、あれ。キツイと思うんだけど」
「大丈夫よ。そこは、工夫して負担を少なくしているから」
「せいぜい、あなた達が早歩きする感覚かしら。私がここで歩くと消費する体感としては」
「なら、大丈夫?なのかなぁ?」
「心配してくれて、ありがとう。だから、大丈夫なのよ」
「ただ、それならば、安息の地を創るという目的も頷ける」
「そう言ってくれると、うれしい」
「だれか、そういうのに詳しい人、いないかしら?」
「うーん。あっ!いた!」
「そうだね。彼女以外には考えられないかな」
「ねぇ、アヴァリアちゃん!荷物って、これだけ?」
「うん。それだけよ。後は、格納しているから」
「解決出来そうな人がいるから、今から移動しよう!」
「いいわよ」
そう言って、荷物をまとめ終えるとぺこりとエブモス達にお辞儀をした。
「よろしくお願いします」
「よろこんでっ!」