0.10 ゲスト
ピアーナの歌が終わり、ステージが暗くなる。
「まだまだ、これからなのに!」
次曲の歌い出しを頭に浮かべ予備動作に入っていたピアーナからしたら不意打ちだった。
あたりを見回すも、薄暗くてよくわからない。
(照明だけじゃなく、コントラクトによる阻害もあるみたいね)
スポットライトが踊り、ステージの真ん中を照らす。
そこには、乳白色の髪色をした可愛らしい姿があった。
「みんな。今日は、ボクの友達のステージに来てくれてありがとう」
ダウナーでありながら、どこか、『きゃぴっ』と可愛げがある声が聞こえる。
その声に会場は、ざわついていた。
「シルクちゃん!」
勢いのいい第一声が、ステージ袖から聞こえた。
その一声をトリガーにシャワーの様なコールが起こる。
「シルクちゃーん!!遊びに来て来れたんだ」
「こっちむいて!」
「いつものダウナーな笑顔で、スカートちらってやって!」
「ハート!ハートプリーズ!こっちこっち!」
「『秘密のままで踊る恋』歌って!」
思い思いに言葉を発するファン達。
ピアーナとアヴァリアのステージで盛り上がっていた観客だが、彼らは、もともと『シルクちゃん』の熱狂的なファン。
一度、シルクちゃんが現れれば、そちらに注目がいってしまうのも必至。
(なんなの!?あの人気!)
シルクが来るという情報は、知らなかったピアーナ。
だから、シルクのリアルな人気を調べてなかったから起こった想定外だった。
(でも、会場の熱気は高まっているようね。注目は、もっていかれてしまったけれど。なら、取り戻すまで!)
気を引き締めて、シルクへと歩みを進めるピアーナ
「シルクさん。本日は、ステージを用意して頂きありがとうございました」
まずは、第一声。お礼を言う。
シルクとシルクのファンを立てる為。
その上で。
「いそがしいなか、せっかくいらしてくれたのだから、一曲。あたしとご一緒していただけないかしら」
お願いするような口調で。
しかし、実際は、挑戦状を叩きつけた。
その言い回しに、ファン達は、ブーイングと思いきや。
「いいね!シルクちゃんとピアーナちゃんのコラボ!見てみたい!」
「ロックな雰囲気と、シルクちゃんの綺麗な歌。きっと、すてき!」
「ぜったいにいい」
ピアーナの提案に、意外にも、好意的なファン達だった。
「みんな。期待してくれているところ、悪いんだけど」
「今日は、友達が主役。ボクはあくまで脇役さ」
人差し指をスッと観客達の唇に合わせるような仕草を取り、言葉を紡ぐ。
「そ、それは!」
「そう。それが今日の目的」
「でも。みんな、歌ってほしい?」
ジト目で、会場に投げかけるシルク
前屈みになり、甘えるかのように。
見えるか見えないかのギリギリを攻める。
「「「みたーい!」」」
会場を声援が包み込む
「『見たい』じゃなくて、『聞きたい』でしょ?みんな」
「「「そうだった!」」」
「しょうがないなぁ」
「まぁ、もう用意してあるんだけど」
そう言って、シルクが指をパチンと鳴らす。
すると、ステージの明かりが落ちた。