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1.5-8 報告

「ということがありましたわ」
そう、ソラナが締めくくった。

「なるほどね。つまり、謎の侵入者がいたということね」

「オズモお姉様、心当たり、あります?」

「うーん。残念ながらないわね」

「そうですか」
「あれから、一向に連絡も無し。事態の詳しい説明は一切ありませんわ」
「しかも、ExAの本社は閉鎖」
はぁ、とため息をつくソラナ

「ソラナちゃん!そんなんじゃ、しあわせが逃げちゃうよ!」

「逃げ出したのは、しあわせではなく、『幸せを売っていたやつら』が正確かしらね」
まっ、コスモス宙域から逃げ出したのならば、問題は無いのだけれど。
二度と帰ってきてほしくはないわ。
と、新たな調査からわかった事実を手に呟くソラナ

「ポン爺じゃ」

「だれよ!!」
ソラナが叫ぶとそこには、モフモフとした身長50cmくらいのぬいぐるみの様な生物がいた。

「わしゃーポンジスキームが大好きじゃ!」

「とんでもないやつね」

「こっちは、孫のKumo美」

「どうもーKumo美です」
「少し怪しい商法でもMLMで広げれば万事オッケーよ!」
「ほら!だれだれさんが信じた案件だからって、疑いなしに養分が来るんだから!!」
「これも、KIZUNAよね!」

ポン爺と名乗ったナマモノより一回り小さい何かが話始める。
ぱっと見た感じでは、二人とも何かのマスコットの様な外見だった。

(もっとも、話している内容は穏やかじゃないのよねー)

「ねぇ、ソラナちゃん。オズモさん。わたし、久しぶりにあたまきちゃった。この人たちにトランザクション放っていい?」
そう言いながら、両手に黒い塊を顕現させているエブモス
引力と斥力が交互に発生しており、その様はまるで
(ワームホール)

高度なコントラクトで組まれたトランザクションだった。

「あなた達に本当の絆を教えてあげる!」
そういって、エブモスの両手から放たれた球体は、ポン爺とKumomiと名乗った二人を包み込みきれいさっぱり消し飛ばした。

「って、ノンタイムで何てことしているのよ!エブモス!!」

「だって、あの人たち。あまりにもふざけたことをいっているから」

「だからって、いきなり葬ることはないでしょ!?」

「葬ってないよ!」

「今、とんでもない技を放ったじゃない。二人とも消えたでしょ?」

「うん。消したよ」
「でも、この場から消しただけで、ちゃんと生きてるよ!」

「そう。それは、よかった」
「よくないわね。全然」
「どこに飛ばしたのよ!」

「んーー、ポル兄ぃのところ!」

「なら、妥当ね」

=====

「よっし、今日も昼だ!!飯が美味い」
そういいながら、弁当のふたを開けるポルカドット

「どうしたんですか?それ?」
明らかに手作りと思われるそれを見て、ツッコミを入れるアス太

「ふふん、これはだな。聞きたいか?」

「まだ、何も言ってないですけど。言わないでいいです」

「気になるだろ?これはな」

「人の話を聞いてください」
アス太の話しを聞かずに自慢を始めるポルカドット

「あーなんか、胃もたれする話ですね」

「そうだろ。とても、ありがたいものなのだ」

「はいはい」
それは、アバランチがポルカドットの為につくったお弁当だった。
エブモスの為に作ったものが多すぎて、あんたがよければと受け取ったものらしい。

(エブ子ちゃんの事は建前ですよ。進展していてよかったじゃないですか、ポルカドットさん)
そんなことを心のなかで思い祝福しながらも、どこか毒づくアス太。
兄貴分の幸せを喜びながらもいじるのを忘れないのだ。

「何、あれ!?」
「って、ポルカ課長。後ろ!!」

「なんだ!?アス太。後ろに何か?」
「って!!」
間一髪、後ろから飛んできた蹴鞠の様な生き物を躱し、体勢を整えるポルカドット。
しかし、お弁当はその被害を免れることは出来ずに。

「おい、俺の弁当が」

「ごちそうさまです!!」

「馳走になったのぅ」

二人の毛玉に食べられていたのだった。

「お前ら!!」

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