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1.5-6 レセプションパーティー

「凄いね!ソラナちゃん。人で一杯だよ!!」

「そうね。よくこれだけ集まったものね」

「集まったではないわ。集めたのよ」

「あら、トロン。もういいのね」

「ええ、後は、給仕や社員たちがやる手はずになっているから私は、外して大丈夫なの」

「そう。やっと、専属の顧客に集中出来るってわけね」

「そうよ」
「と、なーに言わせるのよ」
そう言いながら、軽くウィンクするトロン
はきはきとした雰囲気から繰り出されるそれは、色気以外にも色々と要素が乗っており、同性すら魅了するものだった。

「まったく。油断も隙もあったものではないわね」

「それは、どうも」
「ともあれ、エブ子ちゃん。どう?楽しんでくれてる?」

「うん!」
「いろんな人がいて楽しい!」
「さっきはね。占い師をしているっていうお姉さんに話しかけられてね。占ってもらったんだよっ!」
そういって、貰った名刺を出すエブモス
そこには、ラジオ番組にも特集された〇〇と占い師の名前が大きく記載されていた。

「凄い宣伝だったわね」
呆れる様に返すソラナ

「はは!こういう場所だからね。いろんな人がいるわ」
そういって、中央のテーブルを指さすトロン
そこには、デイジーを中心に何人かが集まり、商談になっていた。

「ねっ!」

「ねっ。じゃないわよ。あなたはいかないでいいのかしら?」

「私の出番はもう終わったからね。後は、皆がやってくれるわ」

「代表も?」

「そうね」
「それと、そろそろね」
そういうと、デイジーがおもむろに立ち上がり、会場の中央へと移動する。
そこには、社員たちによりマイクが備え付けられ、カメラが用意され。
さながら、即席の演説台と化していた。

「皆さま。ExAのレセプションパーティーへといらしていただきありがとうございます」
「本日は、きわめて重要な知らせがあります」
そういうと、彼女は胸元からレーザーを放つペンライトを引き抜く。
それと同時に中央に立体的な図形が浮かび上がる。
観客たちは、『おお!』だの『何?何?』など色めき立つ

「これは、ExAを概念的に表したものになります」
そういって、正方形をレーザーで細かくなぞっていく。
なぞられる度にそれらが分裂して、紐の様なものでつながりながらも集団を形成し、全体は飛行機の様な形に変っていった。

「我々、ExAは出資者たる皆さまにも我々の事業に参加頂きたいと考えています」
「そして、出資者が事業を展開しExAはそこが適切だと判断した場合、出資していきます」
「出資者は、各々の事業を拡大するとともに我々のトークン。つまり、リソースの価値を高めていきます」
「独立したそれぞれの個性が集団を織りなし、ExAの名のもとに繋がる」
「これを『ExAレルム』と呼ぶことにする!!」
そう力強く宣言すると同時に拍手が起こる。
1か所、2か所。
それは波及していき、大きな流れとなり会場を包み込んだ。

(なんなのこれ?まるで、これじゃ宗教ね)
「エブモス?」

「ふーん。なるほどね」
そこには、かつてないほど真剣な、何かを見通しているかの様なまなざしのエブモスがいた。
、手元にワインを持った。

「って、あなた!酔ってるんじゃなくて!?」

「ふぇ、ソラナちゃん。なーにいってるにょ?」
「ほらほら、そんな風にふざけてゆらゆらしている場合じゃないでしょ?今、会のクライマックスなんだよ」
「横のトロンちゃんだって。トロンちゃん?なんで、分裂してるの?」

「トロン!!お水もってきて!エブモス。しっかりしなさい。あなた、完全に酔ってるわよ」

「これ、まずいわ。かなり顔も真っ赤だし」
先ほどまで、熱狂的な拍手を送っていたトロンが青ざめて水を持って来る。

「ほら、飲みなさい」

「ん。ソラナちゃん。もう飲めないよー」

「いいから!あなた、顔が真っ赤通り越して、もう、真っ青よ。飲めないもの無理して飲むんじゃないの!」
そういいながら、ソラナは、エブモスに無理やり水を流し込む。

「んーーー、ぷはぁ。くるしいー」
ひとしきり、水を飲んだエブモスは、タポタポになったお腹を摩りながら、ソファーに横になった。

「ありがと。トロン。助かったわ」

「いいえ。私も、少し目を放しすぎたわ。エブ子ちゃん。好奇心の塊なんだもの」
「あれ、会場にあった一番強いお酒よ」

「?」
「ただのワインじゃなくて?」

「ええ、ワインじゃないわ。デイジーさんの大好きなブロックタイムのお酒」
「その原酒ストレートよ!」

「それは。まずいわね。って、どうしてそんなもの飲んでいるのよ。エブモス!」

「ん?デイジーしゃんがくれたんだよー」

「あぁ!大方そんなことなんじゃないかって思っていたわよ!」
「あなたって、見境ないというか。バリアがないわね!」

「ほんとね。ある意味尊敬しちゃうわ」
そう付け加えるトロンは、呆れているんだか、驚いているんだかよくわからない表情をしていた。

(大物なんだか、ばかなんだか)

「うーん。あたまいたーい」

「ほら、これで冷やしなさい」
「会は、さっきのでお開きっていっていたけれど。少し、ゆっくりさせてくれるかしら?」

「ええ。いいわよ。それとちょっとまってね。酔い覚ましもってくるから」

「助かるわ」
そういって、トロンは席を外した。


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