R-TYPE / ZERO: 天使の軌跡:5
戦闘後、Team / ゼロの機体とエンジェルパックたちは、基地に戻ってきた。格納庫には整備班や研究班がすでに待機しており、機体やエンジェルパックの状態をチェックするための準備が整えられていた。
和也がコックピットを開けて降り立つと、リオのコア部分が淡い光を放ちながら格納庫のアームに固定されていくのが見えた。エンジェルパックたちの体は戦闘の疲労を感じさせるように微かに脈動していた。
「和也、リオの状態はどうだ?」
整備班リーダーのジョン・カーターが声をかける。和也は顔を曇らせながら答えた。
「戦闘中、リオが異様に疲れているように感じた。接続の負荷が大きすぎたのかもしれない。」
ジョンが軽く頷き、研究班のフリーマン博士に目配せをした。
「博士、エンジェルパックたちの検査を急いでくれ。何か異常が起きている気がする。」
「もちろんだ、ジョン。すぐに解析に入る。」
エンジェルパックたちは格納庫の専用ステーションに収められ、それぞれの生体信号がモニターに映し出された。リオの脈動が通常よりも速く、不規則になっていることに気付いたフリーマン博士は眉をひそめた。
「和也、リオの状態が通常ではない。負荷だけでは説明できない異常が出ている。」
和也が近づき、モニターを覗き込む。
「どういうことだ?戦闘のダメージじゃないのか?」
フリーマン博士はため息をつきながら頭を振った。
「それが分からない。だが、この反応……バイド細胞に酷似している。」
その言葉に格納庫が一瞬静まり返った。
「バイド細胞……?」
美咲がナオミを抱きかかえるようにしながら尋ねる。
「どうしてエンジェルパックがバイドと同じような反応を示すの?」
「まだ断定はできない。ただ、さらなる検査が必要だ。」
フリーマン博士は解析データをさらに詳しく調べ、研究班の他のメンバーにも意見を求めた。その結果、エンジェルパックの生体組織が戦闘中に活性化し、通常時とは異なる細胞構造を形成していることが明らかになった。
「博士、これは……エンジェルパックが戦闘のたびに何か変化しているということですか?」
研究班員の一人が不安げに尋ねる。
「そうだ。エンジェルパックたちは、接続を通じてパイロットの精神や神経と深くリンクしている。だが、その過程でバイド細胞のような特性が現れるのは……理論上あり得ないはずだ。」
モニターに映し出されたリオの細胞構造が、バイドのサンプルデータと一致している箇所を示していた。フリーマン博士の顔に冷や汗が流れる。
「だが、これは事実だ。」
和也たちパイロットが研究室に集められ、フリーマン博士が事態を説明した。モニターにはエンジェルパックの細胞構造と、バイド細胞の比較データが表示されていた。
「これを見てくれ。」
博士がデータを指し示す。
「エンジェルパックの細胞活動は、戦闘中に異常な活性化を見せた。そして、これはバイド細胞と非常に近い特性を持っている。」
「ふざけるな!」
和也が机を叩き、声を荒げた。
「リオがバイドだって言うのか!?そんなこと信じられるわけがない!」
美咲も震えるナオミを抱きしめながら、困惑した表情を浮かべていた。
「ナオミは私の娘のような存在よ。バイドなんかじゃない……!」
リチャードは冷静に博士に問いかけた。
「博士、これは一時的な現象か?それとも……もっと根本的なものなのか?」
フリーマン博士は重々しく頷きながら答えた。
「それはまだ分からない。ただ、エンジェルパックたちの存在そのものが、戦闘のたびに変化し続けている可能性がある。」
通信回線を通じて、エンジェルパックたちもこの事態について知ることになった。リオが震える声で和也に語りかける。
「お父さん……私、バイドなのかな……?」
和也はすぐに否定した。
「そんなことあるわけない!リオはリオだ。それ以外の何者でもない。」
ナオミも美咲に問いかけた。
「お母さん……私、これからも一緒にいられる?」
美咲は涙をこらえながら、優しく答えた。
「もちろんよ、ナオミ。あなたは私の大切な家族だから。」
フリーマン博士は、さらに詳細な解析が必要であると告げた。
「我々はエンジェルパックの根本的な構造を理解する必要がある。そして、それが次の戦いにどう影響を及ぼすのかを調べる。」
ジョン・カーターが不安げな表情で博士に詰め寄る。
「博士、エンジェルパックをこれ以上負担させるのは危険じゃないのか?」
「それは承知している。だが、彼らの秘密を明らかにしない限り、我々は彼らを守る方法を見つけられない。」
パイロットたちは無言で頷き、それぞれの思いを胸に抱えながら散会した。
会議室は重苦しい空気に包まれていた。Team / ゼロのパイロットたちと、エンジェルパックたちがそれぞれの専用ポッドに収められた状態で、一列に並んでいた。パイロットたちは立ち上がったまま、それぞれのエンジェルパックに視線を送り、何かを確かめようとするかのようだった。
会議室の中央には巨大なスクリーンがあり、そこにフリーマン博士の姿が映し出されている。その顔には明らかな疲労が浮かび、普段の冷静さが揺らいでいることが見て取れた。
「諸君、集まってもらったのは、これ以上隠し通すことができない事実を共有するためだ。」
博士のその一言で、全員が固唾を飲んだ。スクリーンには、エンジェルパックの細胞構造を示すデータが映し出された。
「まず、これを見てほしい。これはエンジェルパックの細胞サンプルのデータだ。そして、こちらはバイド細胞のデータだ。」
スクリーンには比較データが表示され、二つの構造が驚くほど類似していることが一目で分かる。
「この二つのデータが示す通り、エンジェルパックの細胞にはバイド細胞と極めて近い特性が含まれている。」
その言葉に、和也が激しく声を上げた。
「冗談じゃない!リオがバイドだなんて、そんなことがあるか!」
リオの光が一瞬揺らぎ、和也に問いかけた。
「お父さん、私、本当にバイドなの……?」
和也はすぐにリオを安心させるように答えた。
「違う!お前は俺の娘みたいな存在だ。それが真実だ!」
美咲も動揺を隠せず、ナオミのポッドの前で膝をついた。
「ナオミ、あなたは私にとってかけがえのない存在よ。何があってもそれは変わらない……。」
ナオミの声は震えていた。
「でも、お母さん、もし私が本当に……敵と同じだったら?」
リチャードが冷静を装いながら博士に質問した。
「博士、これはどういうことだ?私たちはエンジェルパックを信じて戦ってきた。それが敵と同じだと言うのか?」
フリーマン博士は深いため息をつき、続けた。
「エンジェルパックは、人間の胎児細胞と、バイド細胞の一部を人工的に融合させた存在だ。その理由は、バイドに対抗するための適応能力を持つ生体が必要だったからだ。」
スクリーンには、プロジェクト「エンジェルズ・ハート」の概要が映し出された。研究班の記録映像や、倫理的な議論を交わす研究者たちの姿が次々に再生される。
「このプロジェクトは、バイドに対抗するための最終手段として開始された。人間とバイドの構造を利用して、生体兵器を作り上げるというものだ。」
映像の中で、若いフリーマン博士が議論に参加している姿も映し出されていた。
「しかし、この計画は多くの問題を抱えていた。倫理的な観点から反対意見も多く、幾度も中止が検討された。しかし、バイドの脅威に直面する中で、人類は妥協を強いられたのだ。」
美咲が信じられないという表情で呟いた。
「そんな……ナオミたちが生まれた理由が、ただの兵器だなんて。」
和也も拳を握りしめながら、怒りを抑えるのに必死だった。
「博士、俺たちはそれを知らずに彼らと戦ってきたのか……?」
エンジェルパックたちは、神経接続を通じてパイロットたちの感情を感じ取っていた。リオが震える声で和也に問いかけた。
「お父さん、私たちが生まれたのって、間違いだったの?」
和也は目を閉じて深呼吸をし、静かに答えた。
「そんなことない。お前がここにいることには意味がある。それを信じてくれ。」
ナオミも美咲に泣きながら尋ねた。
「お母さん、私……ただの兵器なのかな……?」
美咲は強く首を振り、ナオミを励ました。
「違うわ、ナオミ。あなたは私にとって家族よ。それが真実よ。」
アレックスが静かに語り始めた。
「私たちは自分たちが何者なのか、今は分からないかもしれない。でも、一緒に戦ってきた絆だけは本物だ。それを忘れないでほしい。」
リチャードが立ち上がり、全員を見渡して冷静に語りかけた。
「この事実をどう受け止めるかは、それぞれの自由だ。しかし、俺たちはエンジェルパックと共に戦ってきた。そして、それはこれからも変わらない。」
ルイスが苦笑いを浮かべながら言った。
「まぁ、こんな状況でも俺たちがやるべきことは変わらないってわけか。」
カルロスが力強く頷く。
「そうだ。俺たちはこれまで通り、目の前の敵を倒すだけだ。」
和也がリオを見つめながら言葉を続けた。
「リオ、お前は俺にとって特別な存在だ。それはどんな事実があっても変わらない。」
リオが小さく微笑み、答えた。
「ありがとう、お父さん。私、信じてみる。」
会議が終わり、フリーマン博士は最後に言葉を残した。
「バイドの脅威はこれからさらに大きくなるだろう。そして、エンジェルパックの秘密を知った敵が、これを逆手に取る可能性もある。だからこそ、君たちの力が必要だ。」
和也が頷きながら答えた。
「俺たちは戦い続ける。それが俺たちの選んだ道だ。」
その言葉に、全員が静かに同意した。エンジェルパックたちもまた、自らの存在意義を見つけるために戦う覚悟を決めていた。
そして、彼らは次の戦いへ向けて、新たな一歩を踏み出した。
会議室のスクリーンに、新たな映像が再生され始めた。画面には、フリーマン博士を含む若かりし研究者たちが議論している様子が映し出されていた。場所は、軍の先進技術研究施設と思われる。明るい蛍光灯に照らされた研究室には、無数の試験管や培養槽が並んでおり、そこには生命の兆しを持つ未熟な細胞が揺らめいていた。
「これは、プロジェクト『エンジェルズ・ハート』の初期段階の記録だ。」
フリーマン博士が重々しい声で説明を始める。彼の顔はスクリーンの映像に映る若い頃の自分と重なり、どこか後悔の念を感じさせるものだった。
スクリーンに映し出されたデータには、プロジェクトの概要が記されていた。
映像の中で、若いフリーマン博士が議論を進めている。
「この計画は、人類がバイドに対抗するための最終手段だ。従来の機械兵器では奴らに太刀打ちできない。適応性と成長性を持つ生体ユニットが必要だ。」
別の研究者が反論する。
「だが、それは倫理的に許される行為ではない!人間の胎児細胞を使うなんて……そんなことは科学の名の下に行われるべきではない!」
「それでも、時間がないのだ。バイドは人類を滅ぼそうとしている。このままでは、我々は成す術もなく敗北する。」
議論は平行線をたどり、映像は次第に暗いトーンへと変わっていく。
フリーマン博士がスクリーンを指差し、説明を続けた。
「プロジェクトの中核は、人間の胎児細胞の利用だった。胎児細胞は成長性と適応性に優れており、バイド細胞との融合に最も適した基盤として選ばれた。」
スクリーンには、実験のために用意された培養槽の映像が映し出される。透明な液体の中で、小さな細胞の塊が緩やかに成長していた。
「これらの胎児細胞は、通常の中絶処置で提供されたものだ。」
その言葉に、会議室にいる全員が息を飲んだ。和也が拳を握りしめ、低い声で呟いた。
「そんなこと……許されるはずがない。」
ナオミが美咲に問いかけた。
「お母さん、私たちって……こんな形で生まれたの?」
美咲は涙ぐみながらも、ナオミを抱きしめた。
「ナオミ、それでも私はあなたを大切に思ってる。それだけは信じてほしい。」
スクリーンには、バイド細胞の動きを記録した映像が映し出された。その細胞は機械の部品を取り込みながら異様な速度で成長していく。
「バイド細胞は、自己進化と適応能力を持つ。それを制御するために、胎児細胞との融合を試みた。」
映像には、融合実験の記録が映し出されていた。最初の試みは失敗に終わり、培養槽の中で細胞が暴走して破壊される様子が映る。
「多くの試行錯誤の末、ついに安定した融合体が完成した。それがエンジェルパックの原型だ。」
博士の言葉に、パイロットたちの顔に緊張が走る。リチャードが問いかけた。
「その融合体が、我々が今使っているエンジェルパックというわけか。」
「その通りだ。しかし、その成功には多大な犠牲が伴った。」
スクリーンに映し出された映像の中で、若い研究者たちが顔を伏せている。会議室の隅で、一人の研究者が声を荒げた。
「これは科学ではない。虐殺だ。人類を救うためだと言いながら、私たちは人間の生命を利用しているだけだ。」
「だが、それでもやらなければ、誰も生き残れないんだ。」
フリーマン博士は重々しい口調で言葉を続けた。
「この計画は、間違いなく倫理的に許されるものではなかった。しかし、我々は選択肢を持たなかった。バイドとの戦争はそれほど絶望的だったのだ。」
和也が深いため息をつきながらつぶやく。
「それでも、こんな方法で得た勝利に意味があるのか?」
最後にスクリーンには、エンジェルパックの完成形が映し出された。それは現在のものとほとんど変わらない形状だったが、記録の中の研究者たちはその成功を祝福する様子はなかった。
「エンジェルパックは完成したが、この計画は極秘裏に進められ、最終的に軍上層部によって封印された。記録は消され、関係者は全員沈黙を強いられた。」
フリーマン博士はスクリーンを消し、会議室の全員を見渡した。
「これがエンジェルパックの真実だ。諸君、それをどう受け止めるかは君たち次第だ。」
沈黙が会議室を包む中、リオが震える声で和也に問いかけた。
「お父さん、私たち……間違った存在なのかな。」
和也はリオの光を見つめ、静かに答えた。
「お前が間違っているなんて思ったことは一度もない。お前は俺にとって家族だ。それ以上でも以下でもない。」
ナオミも涙声で美咲に問いかけた。
「お母さん、私……戦えるかな?」
美咲は優しくナオミを抱きしめ、力強く答えた。
「大丈夫よ、ナオミ。一緒に戦おう。」
会議室の空気は重く張り詰めていた。エンジェルパックの真実が明かされた後、整備班と研究班の間で不穏な空気が漂っていた。これまで一つの目標の下で協力してきた両班だが、エンジェルパックの存在を巡り、考え方に深い溝が生まれ始めていた。
ジョン・カーターが大きな手でテーブルを叩き、声を荒げた。
「博士、あんたたちはエンジェルパックを戦場に送り込むことで、何を達成しようとしているんだ?あの子たちはただの兵器じゃない!」
フリーマン博士はジョンを真っ直ぐに見返し、冷静な口調で答えた。
「ジョン、私たちも同じだ。彼らを兵器として扱うつもりはない。しかし、現実を見てほしい。バイドに対抗するために、彼らの力は不可欠なんだ。」
「力が必要だ?それが理由で、あんな計画を進めたのか!」
ジョンの言葉に、整備班の他のメンバーたちも同調するように声を上げた。
「俺たちはエンジェルパックを守るためにここにいる!彼らを消耗品みたいに扱うなんて許せない!」
「そうだ!研究者たちは現場のことなんて考えてないんじゃないのか!」
フリーマン博士は深いため息をつき、冷静さを保ちながら言葉を続けた。
「誰も彼らを消耗品だなんて思っていない。しかし、バイドとの戦争は人類の存亡をかけた戦いだ。エンジェルパックが持つ能力がなければ、私たちはこの戦争に勝つことはできない。」
研究班の若い科学者の一人が、震える声で補足した。
「私たちだって悩んでいるんです。エンジェルパックの存在がどれだけ複雑で、どれだけ倫理的に難しい問題か……それでも、戦争に負けたら全てが終わる。」
ジョンがその言葉に噛みついた。
「戦争に勝つためなら何をしてもいいってのか?そんな考え方で進めた計画が、エンジェルパックを苦しめているんじゃないのか!」
会議室の端で、エンジェルパックたちが各パイロットのそばで静かに光を放っていた。リオが神経接続を通じて和也に語りかける。
「お父さん……みんな私たちのために争ってるの?」
和也はリオの声に答えるように小さく頷き、優しく言った。
「そうだ、リオ。みんなお前たちのことを守りたいと思っているんだ。」
ナオミも美咲に問いかけた。
「お母さん、私たちが戦うのって間違ってるのかな……?」
美咲はナオミをしっかり抱きしめ、力強く答えた。
「間違ってなんかないわ、ナオミ。あなたたちは私たちと一緒に未来を守っている。それを誰も否定することはできない。」
リチャードが両班の間に立ち、静かに手を上げた。
「ちょっと待て、みんな。こうやって争っていても、俺たちの目の前にいるバイドは消えない。エンジェルパックのことを大事に思っているのは全員同じはずだ。」
ジョンがリチャードを睨む。
「じゃあ、どうすればいいって言うんだ?研究班があの子たちを苦しめることを止められるのか?」
リチャードは深く息を吸い込み、冷静な口調で答えた。
「止められるかどうかじゃない。俺たちがエンジェルパックを支えるために何ができるかを考えるんだ。それが俺たちの役目だろう?」
カルロスも静かに声を上げた。
「そうだ。俺たちはチームだ。エンジェルパックを中心に、この戦争をどう戦い抜くかを考えなきゃならない。」
フリーマン博士が改めてジョンに向き直り、深く頭を下げた。
「ジョン、私たち研究班は現場のことを軽視していたのかもしれない。その点については謝罪する。これからは、君たちの意見をもっと反映させるよう努める。」
ジョンはしばらく沈黙した後、ため息をつきながら答えた。
「分かった。だが、エンジェルパックのことを実験体として見るんじゃなく、家族として扱うって約束してくれ。それがない限り、俺たちは協力できない。」
博士は静かに頷き、力強く答えた。
「約束しよう。エンジェルパックは人類の希望だ。それ以上に、私たちの家族だ。」
和解が成立した後、パイロットたちが静かに頷き合い、リオやナオミを中心に輪を作るように集まった。和也がリオに微笑みながら語りかけた。
「リオ、お前は一人じゃない。みんながお前を守るためにいるんだ。」
リオが光を放ちながら小さく答える。
「ありがとう、お父さん。私、もっと頑張る。」
ナオミも美咲の手を握りながら、静かに決意を固めた。
「お母さん、私もみんなと一緒に戦うよ。」
格納庫の薄暗い光の中、エンジェルパックたちは専用ポッドに収まりながら、パイロットたちの様子をじっと見守っていた。戦闘後の緊張感はまだ完全に解けておらず、それぞれの表情には疲労と葛藤の色が浮かんでいる。
リオが静かに光を放ちながら、和也に話しかけた。
「お父さん、私……本当にここにいていいのかな。」
和也はその言葉を聞いて少し目を閉じ、慎重に答えを選んだ。
「リオ、お前がいるからこそ、俺たちは戦えてる。お前の力がなかったら、俺たちはとっくに負けていた。だから、自分を否定する必要なんてない。」
その言葉に、リオの光が微かに強まった。
「でも、私たちの生まれ方が……間違いだったんじゃないかって、思うの。」
和也は操縦桿を持つ手をゆっくりとリラックスさせ、リオを安心させるように言った。
「生まれ方は関係ない。重要なのは、お前が今ここにいることだ。俺たちが共に未来を作っていける、それだけが真実だよ。」
ナオミもまた、美咲に問いかけていた。
「お母さん、私たち……本当に必要とされてるのかな?」
美咲は優しくナオミの光に手を添え、静かに語りかけた。
「もちろんよ、ナオミ。あなたたちがいなかったら、この戦いに勝つことなんてできなかったわ。そして何より、あなたは私の家族。必要ないなんてことは絶対にないわ。」
ナオミが少し震えながら答える。
「でも、私たちの存在そのものが……みんなを傷つけてるかもしれない。」
「違うわ。あなたたちがいるからこそ、私たちは希望を持てるの。傷つけているんじゃなくて、未来をつないでいるのよ。」
その言葉にナオミは少しだけ光を強め、小さく頷いた。
「……ありがとう、お母さん。」
通信回線を通じて、他のエンジェルパックたちもそれぞれのパイロットに心情を吐露していた。
アレックスが冷静な声で語る。
「私たちが戦う理由は、ただ命令を受けているからじゃない。私たち自身が何かを守りたいと思っているからだ。それだけは、誰にも否定させない。」
ルイスが苦笑いを浮かべながら答える。
「頼もしいな、アレックス。でも無理はするなよ。お前がいなきゃ俺はここまでやれないんだから。」
カルロスと共にいるエンジェルパック、レイが初めて控えめに話し始めた。
「……私、もっと強くなりたい。みんなの役に立てるように……。」
カルロスはその言葉に頷き、力強く応じた。
「レイ、お前はもう十分強いさ。でも、その気持ちは大事だ。一緒に頑張ろう。」
整備班と研究班が集まり、エンジェルパックたちのケアを進める中、パイロットたちは次の戦いに向けて自らを奮い立たせていた。リチャードが全員を見渡し、静かに口を開いた。
「今回の戦いで、俺たちはエンジェルパックの力がどれだけ重要かを改めて思い知らされた。だが、それ以上に大事なのは、俺たちが彼らとどう向き合うかだ。」
和也がその言葉に頷き、リオを見つめながら語る。
「リオたちはただの兵器じゃない。俺たちと同じように感情を持っている。そして、俺たちを信じてくれている。それを裏切るわけにはいかない。」
ルイスが腕を組みながら、少し軽い口調で言った。
「まぁ、俺たちがやれるのは、エンジェルパックと一緒に戦って生き延びることだけだろ。余計なことは考えないさ。」
カルロスが静かに付け加えた。
「そうだな。でも、俺たちが戦う意味を忘れるな。彼らを守ること、それが俺たちの使命だ。」
リオが通信越しに全員に語りかけた。
「私たちも、みんなと一緒に戦いたい。怖い気持ちはあるけど、それ以上に、みんなと未来を守りたい。」
ナオミも続ける。
「お母さん、みんな、私……もっと頑張る。私たちがここにいる意味を見つけたい。」
アレックスが冷静な声でまとめた。
「それが私たちの存在意義なら、迷うことはない。戦い続けよう。」
レイも静かに答えた。
「みんなと一緒なら、きっと……勝てる。」
パイロットたちはそれぞれのエンジェルパックを見つめ、彼らの決意を感じ取った。その瞬間、チームの絆はさらに強く結ばれた。
格納庫の片隅では、整備班が機体の修理を進めていた。ジョン・カーターが和也に声をかける。
「お前たちが本気で戦うって決めたなら、俺たちも全力でサポートするだけだ。エンジェルパックのこと、ちゃんと守ってやれよ。」
和也が力強く頷いた。
「ああ。絶対に守る。それが俺たちの役目だ。」
フリーマン博士も近づき、静かに語った。
「エンジェルパックの存在が何であれ、彼らがここにいる理由は確かだ。私たちもそれを支えるために全力を尽くす。」
パイロットたちとエンジェルパック、整備班と研究班が一体となり、次の戦いに向けて動き始めた。
戦いの余韻が格納庫の隅々にまで漂う中、Team / ゼロのメンバーは次の任務に向けた準備を進めていた。整備班が機体の修理とエンジェルパックの調整を進める一方で、研究班はバイドの新たな動きを予測するための解析に追われていた。
フリーマン博士が会議室に全員を集め、次なる作戦について説明を始めた。スクリーンには、敵の動きと戦術的な目標が映し出されている。
「諸君、バイドの次なる侵攻の兆候が確認された。火星の情報戦基地からのアラートによると、新たな脅威が迫っている。」
博士の言葉に、パイロットたちは重々しく頷いた。リチャードが冷静な声で問いかける。
「次の目標はどこだ?」
スクリーンが切り替わり、目標地点が映し出された。それは、人類が最後の砦として築き上げた防衛拠点の一つだった。
「火星の情報戦基地『プロメテウス』だ。ここを守り抜かなければ、バイドの侵攻を地球圏で止めることは不可能だ。」
和也がリオの光を見つめながら、決意を込めて語った。
「リオ、次はさらに厳しい戦いになる。でも、お前と一緒なら乗り越えられる。俺たちは絶対に負けない。」
リオが静かに応じる。
「お父さん、私も一緒に戦う。怖くても、みんなと一緒なら頑張れる。」
ナオミは美咲の手を握りながら、不安げな表情を浮かべていた。
「お母さん、私たち、本当に勝てるのかな?」
美咲は優しくナオミを抱きしめ、力強い声で答えた。
「ナオミ、勝つしかないのよ。私たちはここで止まらなければならない。それが私たちの使命なの。」
リチャードは全員を見渡しながら、冷静に語った。
「どれだけ厳しい戦いになろうと、俺たちは進むしかない。全員、覚悟を決めろ。」
格納庫では整備班と研究班が総出で準備を進めていた。ジョン・カーターがエンジェルパックの調整を確認しながら叫んだ。
「おい、もっと慎重にやれ!これ以上負荷をかけたら、彼らのシステムが持たないぞ!」
研究班のメンバーがすぐに応じる。
「分かっています。ですが、次の戦いでは彼らの力を最大限引き出す必要があるんです。」
ジョンが眉をひそめながらフリーマン博士に声をかけた。
「博士、俺たちは限界までやるつもりだ。でも、もしエンジェルパックたちが壊れそうになったら、戦いを止める決断をするべきだ。」
フリーマン博士は深く頷き、静かに答えた。
「分かっている。その判断は私が責任を持つ。」
通信回線を通じて、エンジェルパックたちがそれぞれの思いを語り始めた。リオがまず口を開いた。
「みんな、私たちは一緒に戦うために生まれた。でも、それだけじゃない。私たちはみんなと未来を守るためにここにいるんだと思う。」
ナオミが小さな声で続ける。
「私も、みんなの役に立ちたい。怖いけど、それ以上に、みんなと一緒に戦いたい。」
アレックスが冷静に語る。
「私たちには不安もある。でも、それを超えて進まなければならない。それが私たちの使命だ。」
レイも小さな声で決意を述べた。
「一人じゃない。みんなと一緒なら、きっと勝てる。」
パイロットたちはエンジェルパックの声を聞き、それぞれの覚悟をさらに強めた。リチャードが全員を見渡し、力強く言った。
「俺たちは一つのチームだ。どんな困難があろうと、全員で乗り越える。それを忘れるな。」
和也がリオに微笑みかけながら語る。
「お前がいてくれるから、俺たちは戦える。これからも頼むぞ。」
リオが光を強めて応じた。
「任せて、お父さん。一緒に頑張ろう。」
美咲がナオミの手を握りしめて、静かに言った。
「ナオミ、私たちは一緒よ。絶対に負けない。」
格納庫では、最終的な機体の点検が進められていた。ジョンが全員に向けて声を張り上げた。
「これで準備は整った。お前たち全員、絶対に帰ってこい!」
和也が笑みを浮かべながら答える。
「任せろ、ジョン。俺たちは全員で帰ってくる。」
フリーマン博士が最後に全員に向けて語りかけた。
「この戦いは人類の未来を左右するものだ。だが、君たちなら必ず勝てる。エンジェルパックと共に、この危機を乗り越えてほしい。」
パイロットたちはそれぞれの機体に乗り込み、エンジェルパックとともに準備を整えた。
「全機、出撃準備完了!」
指揮官の声が響き渡り、Team / ゼロの機体が次々と発進していく。その先に待つのは、かつてない激戦だった。