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1.5-44 信頼関係

とにかく、上手かった。
ソラナの銃撃を難なく逸らし、剣による斬撃をかえす刀で迎撃する。

「ExAで弱く見せていたのは、演技かしら?」

ソラナの拳銃がリックの額を捉えた瞬間、リックは、体勢を変えて射線から身を引き、その隙間からゼクセルが切り掛かる。

「演技ではないんだけどなぁ」

「そうね。あなた。さっき、記憶喪失と言っていたものね」

「正確には、記憶の上書きさ。彼女らの手によって引き起こされたね」

ゼクセルの全力を拳銃を捨て、盾に似た巨大銃器を顕現させ防ぎ切るソラナ。
そのまま、シールドでお仕返しゼクセルを押し返す。

「すっごいパワーだね!キミ!」

「何を。あなたこそ、何てちからなのかしら?手に原子力エンジンでも搭載しているの?」

「まっさかぁ!」
弾かれた勢いのまま、地面に手をつき勢い良く走り始める。
ミサイルの様に勢い良くグニャリと軌跡を曲げながらも直進する。

「てぇい!」
大振りに振られた大剣。
碧色をしたそれは、光波を放ちソラナに襲いかかる。

「だから?」
それを最小限の動きで躱し、シールド型の銃器から小型拳銃を引き抜きゼクセルの頭へと引鉄を引く。
至近距離で弾かれた引鉄
爆音が発せられ、ゼクセルがその小さな体ごと後方に吹き飛ぶ。

吹き飛ぶ瞬間にゼクセルは、大剣をリックへと振り、投げる。

リックが予めエブモスを狙い放った刀は、ソラナがオズモより借りたAMMにより防がれていた。
それは、シールドの形をとりエブモスの周りに展開されていた。

ゼクセルは、吹き飛ぶ方向を調整、エブモスへとAMMにより弾かれた刀を持ち、勢い良くエブモスに振りかぶる。

AMMにより、無力化されると思われた刀は、シールドを突破してエブモスへと迫り

「エブモスっ!」
くっ
虚をつかれた形となったソラナは、反応しきれず、彼女の名前だけを叫ぶ。

「ちょっと!それ、反則!」
ゼクセルの声がこだまする。

「反則も何もないんだよっ。使えるものは何でも使え。ってね!」
エブモスは、指抜きグローブをしており、それをもってゼクセルの刀を捉えていた。

「真剣白刃取りか!君にそんな技があったとは」
感心する様に構え、ソラナを牽制するリック

「そんな高度な技、わたし。出来るわけないでしょ!」
そう言い切り、グローブからは碧色の光が放たれた。

「ちょっと!それ。私の瞳!それは、ずるだよ!」

「ズルでも何でも。ここで倒れるわけにいかないの!」
そう良い終える前に光は最高潮へと至り、リックの刀をゼクセルから取り上げた。

「エブモス!やるじゃない。あなた!」
「それでこそ、わたくしのパートナーよ!」
テンション高めに言い放つソラナ
その言葉のまま
リックに対して、銃撃を集中させる。
盾の様な銃火器から繰り出される弾丸の雨。
それは、一発残らず全てリックへと引き絞られていた。

回避出来ないくらいの大量の銃撃をリックは、碧い大剣だったもの。
今は柄のみになったものをかざす。
つかの周りの空間が歪み、弾丸の雨が吸い取られていく。
自らの攻撃が無効かされているとみると、そのまま引鉄から手を引き、サイドにあるボタンを操作しミサイルを放つ。
それらは、エブモス達のいる碧い光の方へと飛んでいった。

「なっ、君はなんて」

「おだまりなさい。舌を噛むことになりますわよ」
そう発せられたソラナの口は、真一文字に結ばれていた。

引鉄から手を離し、盾型の銃器を勢い良く振り回し、その巨体をリックへと叩きつけた。

歪んだ空間を維持していたと思われる柄ごとリックを砕く。
勢いよく投げ出されるリック。
彼を追撃するようにソラナが跳ねる。

リックは、柄をソラナに向けて、銃撃に備える。
(おそらく、この近距離から撃ち込んでくるはず)
(至近距離でも、飛び道具ならば、これで対処が)

そう考えを巡らしていたリックの頭を衝撃が襲う。

「な、に!」
ソラナは、リックの頭を殴りつけていた。
拳銃のグリップで、だ。
殴打は、続く。
しかし、イーサと違い近接戦のプロではないソラナ。
その一撃は、彼女のものと比べたら遥かに軽くリックを倒すに至らない。

パージされるカートリッジ。
散らばる銃弾。

「おぃ!!」
冷静さを失ったリックの叫び

「とどめ、ですわ」
ソラナは、手にトランザクションを纏い銃弾ごとリックを打ち抜く。
拳で!

————
(眼が見えない)
ゼクセルは、光が溢れる空間を彷徨っていた。
そこは、エブモスがグローブより放った光が形成した空間。

相手の姿が見えない。
見えれば即座に反応し、全力で対処する。
例え武器が無くとも、ゼクセルにはそれが出来た。

手を祈る様に合わせ碧色の光がゼクセルの手を満たした。


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