3.42章 ようこそUniswapへ
「なんて、あからさまな飾り付け!」
「本当に、これって都市なの!?」
「まるで、テーマパークだよ!これじゃ」
「どうしたのですか?麗しきレディたち」
そういって、彼女達の前に姿を現したのは虹色の髪をアシンメトリーに仕上げた髪型の青年だった。
正直、美人の類に間違いなく分類される見た目ではあるが。
「あぁ、そこの金髪のお嬢さん。特に素晴らしい。素朴さの中に隠しきれない煌めきを抱えてらっしゃる」
「見える!私には見える!!」
発言がいちいち残念なのだ。
「もしかして」
「そう、私がUnis-」
「変態さん?」
「酷いなぁ。ボクは変態じゃないよ。紳士さ」
「紳士で、この森林都市代表のUniswap」
「それが、ボクだよ」
「うん、自己紹介ありがとう!」
「でも、この都市?ちょっと街としたら奇抜化も。もっと、自然豊かなものをイメージしていたのに」
「あー。これか!これはね。僕の趣味だ。こんな時だ、趣味出してもいいかなーってね」
「で、キャプテンから事情徴収してこいとか言われているんでしょ?」
「なんでわかったの?」
「そりゃーね。その位しか思い当たらないもの。こんな森の中の都市にご新規さんで来るのって」
「後は、迷子か商売人位だけど。君達、そのどちらとも違う雰囲気だったからさ」
「それで、聞かせてもらえるのですか?」
「うんうん。いいよ。聞かせてあげる」
「ただ、名前くらいは名乗ろう!それが礼儀だろ?」
レディたち?と続けるUniswap
その仕草にじゃっかん苛立ちを覚えたエブモス達だが、正論過ぎた。
「じゃあ、まず、わたしから」
「わたしは、エブモス。みんなからはエブ子って呼ばれているの」
「こっちは、ノノ」
「ノノです。イーサリアムのフォーク体ナンバー無し。ノノと言います」
ペコリとお辞儀をする二人。
「うん。いいね。実にいい」
何がいいのか、あごに手をやりながら、頷きながら、うなるUniswap
「さて、立ち話しもなんだから、ボクの家で話そうか。お茶をごちそうするよ」
そういって、今にもスキップしそうな足取りで一行の先陣を切って歩き出した。
(変な人だけれど)
(悪い人ではなさそうね)
それが、彼女たちから見た彼の印象だった。
「うそ!大きい」
「うん。これ下手したらOpen Sea本社より大きいわ」
「でも、この森の中で一体どうやって?」
「空間拡張を使っているのさ」
「目的の部屋に到着するには、普通なら時間がかかる」
「だから、これを持ちたまえ」
そういって、Uniswapは、一枚のNFTをエブモス達それぞれに渡す。
ツタが生い茂った大きな門をUniswapが透過する。
「へっ?」
「あぁ、びっくりさせてしまったね。そのNFTを持っていれば同じことが出来るから、やってごらん」
言われた通り、エブモス達は大きな門を通る。
すると、体が門をすり抜けて向こう側へと吸い寄せられる。
そのまま身を任せ、移動するとそこは暖炉のある客間だった。
「ひろい!ううん。あっという間!何があったの?」
「NFTに掛かれた座標にワープできるようになっているんだよ」
「ほら、ここ」
そういって、エブモスのNFTを指さす。
そこには、アドレスと思われし数値が記載されている。
「ここのアドレスに基づいて、部屋を移動できるというわけね」
「それも、複数個所記載できるということは、住人はこれで部屋の移動」
「もし、外敵が来たとしてもあれだけの門と内部空間。容易に捕まらないというわけね」
「ノノちゃん、正解!しかし、そこまで一発でわかるとは、ノノちゃん達に攻められてたら、キャプテンのところに強制連行されていたなぁ」
「誉めないでください。それと、ちゃんってキモイ」
「酷いんですけど!いいじゃない。君達とボクのなかでしょ?」
「さっき会ったばかりですよね」
「う、うん。そうだけどさ。いいさ。いいさ。インタビューは明日にしようか?」
「キャプテンのところに強制連行しますよ」
それでもいいのでしたら、どうそと言わんばかりのノノ
「くっ」
(言い過ぎてしまったかしら)
「素晴らしい!この見た目からは想像できないドSっぷり、ボクは最高に昂っている!」
「さぁ、ティータイムだ」
「アトムちゃん、お茶を持ってきてくれたまえ!」
そういって、トランザクションを飛ばすUniswap
「ちょっと!まって。今、アトムちゃんっていった?」
エブモスが突っ込む
「いったよ!あぁ、丁度、ワープしてきたから紹介しよう。相変わらず仕事が早い」
「ユニー、お茶が入ったわよ」
そういって、トレイに紅茶セットを4人分乗せたアトムが現れた。
メイド服姿のアトムが。
「、、、」
途端、エブモスはアトムに駆け寄り抱き着いた。
アトムも、エブモスを見た衝撃かトレイを落としそうになったが持ち直し、エブモスを受け止める。
受け止めて、頭の後ろをなでる。
「どうだい!完璧だろ!」
「そう、メイド服だ。しかもだ。ひざ丈はきっちりととった奥ゆかしい本場スタイルのメイド服だ」
「PancakeSwwapの膝丈より上の現代風メイド服とはちがう。れっきとしたメイド服だ」
「ボクがつくったのだよ」
目を閉じたまま、誉めたまえと言わんばかりの説明をするUniswapが目を開き目の前の光景に歓喜したのは、言うまでもなかった。
「素晴らしい光景を見せてもらったよ」
「冥途の土産にはふさわしい、いや、過剰なくらいだ。素晴らしい」
「で、なんで、二人して抱き合っているんだい?」
「いや、美少女が抱き合うのに理由はいらない」
「いいさ、それは言わなくてもわかるよ。わかるさ!」
一人暴走し始めるUniswapをアトムがひっぱたく。
「ったい!」
「何するのアトムちゃん!」
「まずは理由を聞きなさいよ」
「理由を」
そういって、ひっぱたかれたUniswapに言い渡す。
「あぁ、すまなかった。百合の間に挟まるべきではないと思ったからね」
そういって、いつの間にか身に着けていたクラシカルな眼鏡をくいっと上に持ち上げる。
「趣味に生きてますよね。あなた」
「ははは、ありがとう!」
「で、アトムさんがいる理由はどうしてなの?」
感動の再会を終えたエブモスが聞く。
「まぁまぁ、まずは、椅子に座ってお茶でも飲んで話そうではないか。長い話しになるのだから」
そういって、Uniswapは三人を座るように促すと自身も座り話し始めた。