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1.5-46 判断
「すごいわ!あなた達、そんな道を歩んできたのね!」
きゃっきゃと乗り出しては、話を聞くアイラ
はじめは、まるで気に入りの洋服を見つけた女児の様だった。
エブモス達は、これまでに歩んできたので道のりを話した。
エブモスのこと、ソラナのこと。
オズモとジュノ、ポルカドット達と解決したリソース強奪事件。
イーサリアムでのイーサのフォーク体との出会い。
MakerDAOとの対決。
ソラナとジノの話し
ソラナとの決戦
アフロとの決着
「よく大丈夫だったわね!」
目をキラキラさせながら、頷くアイラ
「大丈夫じゃなかったよ。でもね。生きるためには進むしかなかったから!」
「エブモス。そうね。でも、それだけでは無いでしょ?あなたは、周りの大切な人を思いやって、だからこそ、立ち上がって進んだのでしょ?」
「うーん。そのときは、そんな意識はなかったけど。って、元凶のソラナちゃんがそれ言っちゃうの!?」
「わたくしにも、事情がありました。勿論、反省すれば許される。という訳のものではないと分かっていますわ」
「うん。今更、攻める気はないよ」
「さすがね。エブモス」
そう言って、ポンポンとエブモスの頭を叩くソラナ
「っちょっとぉ!子供扱いだよ。ソラナちゃん!わたしと同じくらいでしょ!」
ぷんすかとするエブモスにソラナは
「わかっているわよ。ただ、こうポンポンと叩きやすいのよ」
「理由になってなーーい!」
「あはは!2人とも、面白いわっ!」
紅茶を持つ手を止めて笑い出すアイラ
目には、笑いすぎたのか涙が溜まっていた。
紅茶は、ソラナが。
食器と椅子、テーブルは、リックが変換のコントラクトで作り出したものだった。
(正気なのかい?)
ふと思ったリックの顔を見て、ソラナが察する。
「正気よ!先ずは、互いに理解する。それが大切で、話し合いならば、席を用意した方がよろしくありません?」
言っていることは、最もだった。
しかし、先程まで命を狙い合っていたものがお茶会を開いて話す。
リックに至っては、アイラを消したと思った挙句のお茶会だった。
(合理的ではあるけれど)
(正気を疑うなぁ)
そんな表情をしていたのが分かったからか、ソラナは付け加える。
「戦いの場が、変わっただけよ」と。
ソラナ達の話が終わり、彼女たちの旅路を讃えるアイラ
ソラナは、気になった事を聞く事にした。
「ねぇ、アイラ」
「何かしら、ソラナさん?」
「貴女の話も聞かせてもらったけれど、とても気になることがあるの」
「何かしら?答えられる事ならば、喜んで答えるわ」
「ありがとう。貴女は、リックに消された筈でしょ?」
「えぇ、そうよ」
「正確には、彼とゼクセル。上位者の犬と上位者殺しにね」
「では、何故。貴女は、生きているのかしら?」
「、、、、」
「私、生まれたばかりでしょ?」
「ええ」
「もっと世界を見たかったの」
「そして、母さん達が出来なかった事を成し遂げたかった」
「ええ」
「だから、手を伸ばしたの。強く祈った」
「そうしたら、赤い光が現れたの」
「それで?」
「『まだ、やり残した事があるだろ?』そう聞かれた気がしたから、答えたの」
「まだ、消えたく無いって」
「そしたらね。赤い光が私に被さってね。ゼクセルの神剣で撃ち抜かれたコアが修復されていたのよ」
「なるほどね」
そう言って頷くと、言葉を再び紡ぐ。
「アイラ」
「何かしら?」
「貴女、レルム。貴女のお母様方の夢。それがどういったものかわかっているの?」
「うん。知っているわ」
「上位者を『従わせ』て、自分の価値を認めさせる。愛を受けたいという計画でしょ?」
「知っているわ」
「貴女は、それを今も実現したい。そう考えているのかしら?」
ソラナの問いを聞いて、アイラは暫し沈黙すると、首を振った。
「いいえ。それは、しないわ」
「何故?貴女のお母様が成したかった事ではないの?」
「そうよ。でも。それは、虚しいだけよ」
「何故?」
「『従わせ』た上位者に愛を受けるのよ。そんなこと。自分が自分自身にする自己満足じゃない」
「それでも、あなたのお母様。デイジーは望んでいたのよ。それを手放していいのかしら?」
アイラから聞いたデイジーの気持ち
それを無かった事にして良いのか?とソラナは尋ねる。
「お母様の願いを叶えたい。それは、本当よ」
「でも、お母様の方法では叶わない。そう思ったの」
「だから、私は、もっと多くのものを見て実現出来る方法を模索したいの」
「だって、それが、お母様が私に託した願いでしょ?」
「なるほど、ね。いいわ。わかったわ」
そう言うと、ソラナは、立ち上がりパンケーキ用のナイフをアイラのコアに突きつけた。
「貴女を助ける事にしたわ」
そう言うと、コントラクトを発動させる。
ナイフは、柄へと変形し、その先から槍の様に鋭利な突起が生えアイラを貫く。
「さぁ、『貴方』には消えてもらうわ!」
そう言うと、柄を構えている手とは反対の手で、ハンドガンを腰のホルスターから引き抜きアイラの後、突起が貫いた先を撃ち抜いた。
「いやぁー、なかなかやるね。レディ達」
「『何がレディ達』よ。そのレディを盾に行動しようとして。貴方、とんだ卑怯者ね」
「僕も不本意だったのだけどね。体が完璧に破壊されてしまったからね!こうするしか無かったのさ」
薄い影が立体をとる。
それは、真っ赤なスーツを着たすらっとした青年の姿をとった。
「『ジャスティン!』お前は!」
「はーい。ストップ。『僕が倒した』なんて、お決まりは面白く無いよー。リック君」
そう言って、ジャスティンと呼ばれた影が笑う。
「しつこいにも、ほどがあるんだよっ!」
「どうも、小さなオレンジ髪の勇者さん」
「ゆっ、ゆうしゃ!?」
「君の活躍を、ほら、この子と一緒に聞いたからさ」
「やぁー。力も無いのに、吹き飛ばされては起き上がり、進み続ける。周りを鼓舞しながら。これを勇者と呼ばずになんとする!」
芝居掛かった言い回しで、言う。
「わたくしのエブモスが勇敢なのは、事実ですけれど」
「貴方に言われるとむかつきますわね」
静かに目を細め睨みつける様な目になるソラナ
「はっはっは!怒らないでくれたまえ!」
終止上機嫌なジャスティン
「さて、僕は、帰らせてもらうよ」
「っと、その前に君たちには、罰を受けてもらう!」
「上位者に歯向かった罰だ」
そう言って、影がコアへと戻ろうとして、異変に気づく。
その影がコアをすり抜けてしまったことに。
「おい!お前たち。何をした!」
「何をした?ですって?」
「そんな事、貴方自身がよく分かっているのでは無いかしら?」
そう言って、柄から突起を打ち出し、ジャスティンをアイラから離れた場所に移す。
「がっはぁっ!」
勢いのまま投げ出されたジャスティンは、対岸にあるビルの壁に縫い付けられた。
支えを失い倒れ込むアイラ
「しっかりなさい」
左手と全身を使いしっかりとアイラを抱き止めるソラナ
右手には、碧色に輝く銃が存在した。
「エブモス!リック!!」
「オッケー!」
「いいよ!」
エブモスは、両の手に展開した漆黒の球体を合わせワームホールを形成する。
それは、リックに向かって放たれた。
リックへと着弾しようとしたワームホールにリックが手を突っ込み固定する。
みるみると、漆黒の球体は凝縮されひとつの弾丸となり、ソラナへと投げ渡された。
「覚悟はいいかしら?」
「いえ、出来ていて当然よね」
「わたくし達に害悪を働いたのだから」
言い終える前に、銃身へと弾丸を装填
ジャスティンへと撃ち出した。