![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/125875889/rectangle_large_type_2_57c17d4d22c8a37c8487b618d0ebfcf2.png?width=1200)
1.5-16 疑問
一体いつまで、そうしていたのだろうか。
尻を地に着け、剣を構え目を閉じる。
一閃。
開眼と共に鋭い一撃が放たれる。
同時に、複数のボット達が両断される。
その切断面は、まるで熱せられたナイフで切られたバターの様になめらかなものだった。
「落ち着いて、ひと息つくこともままならない。か」
そういって、立ち上がり、進み始める。
短く切りそろえらえた白髪の髪を逆立てた筋肉質なシルエット
その手には、身長と同じくらい大きな剣を持ちながら。
路地裏を歩く。
落ち着いて、体力を回復させるべく場所を探す。
ボット達から逃れては、休み。
見つかれば切り伏せ移動する。
その繰り返しだった。
「まだか」
鋭い眼光を宿した瞳で、空を見つめる。
その呟きは、『何』に対していったものだったのか。
その姿は、何かを待っているようにも思えた。
========
「で、こーんな棒をもらってどうするのよ?」
こんなんじゃ何も守れんよ?
寧ろ、これで何とかしろと?
そんな悪態をつきながら、オズモからもらった棒を振り回すリック
「あなた、お姉様の対応になんか文句でもあるの?」
睨みつける様にリックを見るソラナ
「君のお姉様を信用していないわけじゃないんだけどさ」
「これ、どうするのよ?」
そういって、ソラナに棒を見せるリック
その棒は、細く。
木の枝を金属質にしただけのような見た目だった。
取っ手には、丸いくぼみが存在する以外は特段何も特徴がない。
もちろん、コントラクトの類は一切関知出来なかった。
「っ、きっと。きっとあるはずよ」
「なんだ!君もわからないのか!」
そういって、手を叩きながら笑うリック
「だって仕方ないでしょ!何も感じられないのだもの」
「でも、お姉様が何の考え無しに渡したりはしないわ」
「きっと、何かしらの効果があるはずよ」
「でしょ!?エブモス?」
「へっ!?」
「ちょっと!エブモス聞いてたの?」
「ううん。ごめん。考え事してた」
「そう。で、どうなのよ!お姉様の真意」
「えーー。そんなのわからないよー」
「なんでよ!エブモス!あなた、お姉様とは昔からの付き合いなのでしょ!?」
「そうだよ!でも、だからって、オズモさんの考えていることがわかるわけじゃないから」
「それにさ」
「それに?」
「別にわからなくても良くない?」
「よくないわ!」
「どうして?」
「だって、わたくしはオズモお姉様の妹よ。それが、お姉様の意図するところをわからないだなんて、いけないわ」
(妹って!)
「んー。じゃ、質問を変えよっか。ソラナちゃんは、オズモさんの事を信じてる?」
「当たり前ですわ!」
「じゃあ、この件は、おしまい」
「なぜ!?」
「ソラナちゃん。オズモさんのこと、信じてるんでしょ?だったら、『何か』きっとあるって思い。信じたらいいよ!」
「ほら、そうした方がけんぜんでしょ!?」
「エブモス」
「その方が、ソラナちゃんも楽じゃないの?」
「ソラナちゃんが信じたオズモさんのやることを信じる」
「それじゃ、ふまん?」
「エブモス」
はっと我に返ったように静かになったソラナが思い返すようにエブモスの名前を呼び、無言で彼女のほっぺたに手を伸ばす。
「ちょ、ソラナにゃん。にゃにするの!?」
「こーーの口が、たまーに真実っぽいことを語るのがひじょうにムカつきますわ!!」
「そんにゃの、ひどいよーーー」
うにょうにょとほっぺたを引っ張られ、反論を正しく発音できないエブモス
「あなたって人は、あなたって人は!!」
「にゃうああぁーーー」
「たまに、凄く。『真』を射貫くのだから」
そういって、手を放す。
「すごいわよ。ホント」
「ソラナちゃん」