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FFT_律する者たちの剣_EP:8-1

EP8-1:ゾディアーク召喚阻止

イヴァリースの灰色の空が、夜明け前の一瞬の闇と鈍い光を併せ持つ不思議な時間帯。そこには、荘厳かつ不気味な雰囲気をまとうグレバドス教会本部のシルエットが浮かび上がっていた。

高くそびえ立つ鐘楼と、大聖堂の尖塔。石造りの壁面には無数の聖刻が刻まれ、月と星の光が微かに反射している。平時なら人々が祈りを捧げる神聖なる場所だが、今は内部で「ゾディアーク召喚」という恐ろしい陰謀が進められている――そう考えるだけで、ミルウーダの胸は苦しくなる。

外壁周辺には多数の教会騎士や修道士が警備に立ち、厳重な陣形を組んでいた。その奥には、神殿騎士の部隊がいるという情報もある。彼らは聖なる任務を掲げながら、実際はルカヴィとの内通を進める教会の暗部に手足として従属している可能性が高い。

そんな厳重な警戒態勢のもと、ミルウーダ、ラムザ、そしてアグリアスの三人は辺りの茂みに身を潜め、外壁の死角を探していた。

冷たい風が彼らのマントを揺らし、足下の草がさわさわと音を立てる。魔銃を背負うミルウーダの体に軽い緊張が走り、彼女は低く呟く。

「……ここが教会本部。まさかこんな形で乗り込む日が来るとはね……。兄さん(ウィーグラフAI)やセラフィーナが遠隔サポートしてくれてるけど、警戒が想像以上に厳重だわ。」

これに対し、アグリアスが力強く頷く。白銀の甲冑に薄青いマントをまとい、聖騎士としての誇りを胸に秘めた姿は、一目で戦場の華とも言えそうな凛々しさを漂わせている。彼女は言葉を選ぶように静かに口を開く。

「神殿騎士が相手でも、怯むつもりはありません。」

その瞳には揺るぎない信念がある。王女オヴェリアを守るために戦ってきた過去を思えば、教会の裏切り行為など看過できない。ゾディアークが降臨し、世界が破滅するのを防ぐためなら、どんな相手にでも盾を向ける――それが彼女の“信義”だ。


すでに、ウィーグラフAIやセラフィーナのサポートで内部構造の一部を把握し、布陣の隙を探している。ざっとこんな作戦プランだ。

ラムザとアグリアスが正面突破を図り、教会の防衛線をかき乱す。
アグリアスは聖騎士としての威圧感を活かし、敵の注意を引く。

ラムザはアルテマ制御の不完全な剣を試しつつ、自ら囮を買って出る形。
ミルウーダがステルス行動で外壁を回り込み、裏口から内部へ侵入。
魔銃やトラップを駆使して静かに通路を制圧し、要所の扉を破壊or開放して仲間を呼び込む。

元革命家の暗殺&潜入スキルをフルに使うシーン。
教会内部に潜む神殿騎士の撃退、もしくは封印。
ゾディアーク召喚の儀式場を特定し、そこへ向かう。
ルカヴィが既に配置されている可能性があるため、戦闘が避けられない。

これがざっくりとした方針だ。時間は夜明け前――暗闇が味方している一方、起床の祈りのために早起きする僧や騎士も少なくないという状況。まさに手探りの潜入だが、ゾディアークが呼び出される前に動かなければならない。


夜陰の中、ミルウーダが音もなく外壁へ取り付く。やや崩れかけた古い排水口を見つけ、そこからするりと体を滑り込ませる。暗殺者仕込みの軽やかな身のこなし――かつて革命家として鍛えた技術が蘇る瞬間だ。

その間、遠く正門付近ではラムザとアグリアスが意図的に姿を見せ、教会兵士の注意を引いている。

「何者だ……! 夜明け前から何の用だ!」

「私の名はアグリアス・オークス。神殿騎士が相手でも、怯むつもりはありません。貴方たちの教会がゾディアークを召喚しようとしている……その事実、弁明していただこうか?」

「くっ……何を馬鹿な……!」

激しいやり取りの中、騎士や術者が殺気をみなぎらせて集まり始める。まさに“正面突破”を狙う形で、ラムザとアグリアスは剣を抜き、派手に威嚇してみせる。そこへ十数名の教会兵が殺到し、戦闘の火蓋が切られそうな気配だ。

一方、ミルウーダは潜入作戦を実行。排水口から滑り込み、狭い石の通路を這いつくばるように進む。途中、鉄格子を魔銃で静かに撃ち抜き、金属音を最小限に抑えて仕留める。その先には狭い地下室が広がっている。


暗い地下室。苔むした石壁と腐食した木の梁があるだけで、住居スペースとは思えないほど荒れ果てている。ときおり天井の隙間から外の警備兵の声が聞こえる。「大丈夫だ、正門には奴らがいる……」と会話するのが朧げに耳に入る。
ミルウーダは息を潜め、床の水溜まりを踏まないよう気をつける。魔銃を片手に、右手には小型ナイフを握り、いつでも無音で敵を排除できる態勢だ。

(……兄さん、聞こえる? 今、地下室に入った。これから階段を探して上階へ行くわ。)

通信イヤーピースから、かすかにウィーグラフAIの声が返ってくる。「了解だ。警備のルートデータによれば、数名の修道士が地下を巡回している。見つからないように――もし見つかったら、スタングレネードで一気に黙らせろ。殺すなよ?」

ミルウーダは微苦笑し、「わかってる」と小声で返事。かつてなら不意打ちで一気に殺していたが、今は違う道を選んでいる。**“殺さない革命”**のためには、こうした配慮が欠かせないのだ。


ミルウーダが通路の角で足音を聞き、壁にぴたりと張り付く。
教会修道士が提灯を掲げ、鈍い足取りで巡回している。彼らは見張りというより内部点検に近い雰囲気だが、警戒心はある。

ミルウーダは息を止め、提灯の光が消えるタイミングを狙い、魔銃を低出力モードで撃ち込む。光弾が壁をかすめ、修道士の足元に閃光を放ち、一瞬のスタン効果で気絶させる。

倒れ込む修道士をそっと隅へ引きずり、口を布で塞ぎ、縛り上げる。ここでも殺さない対応。無駄に流血を招かない。

(……行ける。上階まであと少し……)

ミルウーダは自分の心の高鳴りを必死に抑えながら、静かに階段を上がっていく。この先で神殿騎士と遭遇するかもしれない――危険な興奮が体をこわばらせるが、彼女は挑戦的な微笑みを浮かべる。


場面は正門付近へ切り替わる。

ラムザとアグリアスが教会兵や聖騎士の集団を相手に派手な戦闘を繰り広げている。先ほどの会話の流れで、“正面から突っ込んで敵の注意を引く”作戦を選んだのだ。

聖騎士たちは、鋭い光を纏った剣や崇高な魔法で攻撃を仕掛けてくる。その人数はざっと20人以上。

通常なら圧倒されてもおかしくないが、アグリアスの聖剣技とラムザのアルテマ制御試作剣が連携を見せて、激突の火花を散らしていく。

「聖騎士が相手でも、怯むつもりはありません。――はあっ!」

剣を一閃すると、聖属性の光が渦を巻き、敵の盾ごと衝撃を与える。二、三人の騎士が吹き飛ばされるが、アグリアスはすかさず「離脱しろ、殺す気はない」と声を張り上げる。

「くっ……!」

試作剣に魔力を注ぎ、青白いオーラを剣先に凝縮するが、まだ安定はしない。閃光が走り、周囲の聖騎士をまとめてひるませるが、その反動でラムザの腕が痺れ、剣が微妙に軋む。

「まだ不安定……でもやらなきゃ……!」と必死に踏みとどまり、敵の剣撃を避けながらカウンター光弾を放つ。


聖騎士や修道士たちは、こうした“異端の力”に驚きながらも、「神の御名において貴様らを粛清する……!」と叫び、散開して包囲を試みる。

戦いはまさに白熱――地面が裂け、瓦礫が舞い、魔法の光と剣閃が交錯。アグリアスの甲冑が火花を散らし、ラムザの魔力が破裂音を伴って炸裂する。

圧倒的な数の敵が押し寄せるが、二人は巧みな連携で防ぎきっていた。


一方で、ミルウーダが上階から外壁へ出て、バルコニー状の箇所から正門近くに陣取る聖騎士部隊を発見する。そこには何人もの弓兵や魔術師が控えており、ラムザとアグリアスに遠距離攻撃を集中しようとしている。
これを見たミルウーダは、魔銃を構え、後ろから一気に奇襲をかける。バルコニーの手すりをひらりと乗り越え、軽やかな回転を伴って地面に着地。そのままスタングレネードを投擲し、閃光と爆音で弓兵たちを混乱に陥れる。

「なんだ……! 背後から……くぁっ!」

「ふふ……悪いわね。でも殺す気はない。黙って眠ってて。」

魔銃の青白い光弾が弓兵の武器を弾き飛ばし、呪文を詠唱しようとした魔術師も煙幕を浴びて視界を奪われる。荒れ狂うエフェクトの中で、ミルウーダのステルス&戦術が炸裂。
こうして背後を突かれた聖騎士たちは混乱し、ラムザとアグリアスへの集中攻撃を維持できなくなる。結果的に、三人の共闘による前後の挟撃が完成し、大勢の教会兵が制圧されていく。


激しい戦闘の末、教会兵の大半が戦意を喪失し、または無力化された。何人かは逃げ込み、内部の神殿騎士へ応援を要請するだろう。しかし、少なくとも今、正門付近は三人が制圧した形だ。
荒い呼吸を整えるラムザ。

「ふう……なんとか勝ったね。でも、まだ奥に神殿騎士が……」と呟く。

アグリアスは聖騎士の血が騒いだのか、甲冑に付いた灰を振り払い、「ええ、これで終わりではありません。神殿騎士が相手でも、怯むつもりはありませんわ。」と静かに決意を示す。

ミルウーダは魔銃を仕舞い、「よし、内部へ突入しましょう。兄さんが地図を解析してくれてるはずだから、それに従って儀式場へ急ぐの。ゾディアークの召喚を止めるために……!」と焦燥感を滲ませる。


三人は正門から大聖堂の奥へ足を踏み入れる。そこには高い天井にステンドグラスがはめ込まれ、色鮮やかな宗教絵画が描かれている。昼なら光が差し込み美しいだろうが、今は夜明け前の陰鬱な薄明かりが逆光となり、聖堂に不気味な影を落としている。

床にはレッドカーペットが敷かれ、両脇には石像や聖人の像が並んでいる。だが、その聖なる空間に漂うのは、どこか淀んだ邪気だ。ルカヴィの力を感じさせる冷たい吐息のような空気が三人の肌を刺す。

「これが教会本部……。本来なら多くの人が祈りを捧げる場所。だけど、今は妙な殺気が満ちている……」

「神殿騎士たちはどこにいるの? 近くに隠れてる気配……気をつけて。」

「神殿騎士が相手でも……油断しないように。万全の構えで。」

その時、遠くの回廊から金属靴が石床を踏む音が聞こえ、何人もの神殿騎士がゆっくりと現れる。全身黒銀の甲冑に身を包み、顔を隠すようなヘルムを被っている。

彼らの背後には修道士や魔法司祭らしき人影も見えるが、その表情はほとんど殺気を宿していて、人間らしい温度が感じられない。


アグリアスが一歩前へ出て、真っ直ぐに騎士たちを睨む。

「私はアグリアス・オークス。あなたたちのしていることは、神への冒涜です。ゾディアークなどという破滅を呼び込む行いは、絶対に容認できません……!」

しかし、神殿騎士の一人が「貴様らが異端だ。教会の偉大なる計画を妨げる愚か者……ここで潰させてもらう……」と低い声で返す。

周囲の騎士が陣形を取り、槍や大剣を構える。

ミルウーダは魔銃を握り、「仕方ない……行くよ、ラムザ!」と声を張り上げる。

ラムザもアルテマの試作剣を構え、「わかった。アグリアス、隙を作るから、無理はしないで……!」と言い放ち、三人は一斉に構えを取る。

すぐに神殿騎士たちが雄叫びを上げて突進し、激戦の火蓋が切って落とされる。


アグリアスが聖剣技を放ち、雷鳴の閃光が複数の騎士を弾き飛ばす。一瞬の閃光でステンドグラスの色彩が乱反射し、荘厳な空間が戦場に早変わりする。

ラムザが試作剣を掲げ、青白いオーラを剣先に溜める。しかし依然として不完全で、かすかな赤いノイズが混じる。「うっ……」と苦痛に歯を食いしばり、暴発を抑え込みながら一撃を振り下ろす。光が槍を砕き、騎士を吹き飛ばすが、腕にも反動が走る。

ミルウーダはフロアの柱陰を巧みに利用し、後方から魔銃の射撃で敵の詠唱を妨害する。スタングレネードやチャフグレネードをタイミングよく投げ込み、騎士の援護を行う司祭や修道士の魔法を妨げる。

一人の神殿騎士が気づき、後方から切りかかろうとするが、ミルウーダは反射的に小型ナイフを突き出し、騎士の脇を制して膝蹴りを入れる。「悪いけど、通してもらうわね!」と攻撃を封じ、魔銃で追撃せずに逆手で気絶させる。

戦いが激しさを増し、火花や爆音でステンドグラスの一部が割れて落下。破片が床を転がり、騎士たちは足を取られながらも前進。

アグリアスが「ここを崩すわけには……っ!」と必死に動き、床に散らばるガラスを蹴飛ばしながら神殿騎士の一撃を受け止める。硬い甲冑が衝撃を鳴らすたび、スパークが夜の静寂を切り裂く。


神殿騎士の中で、ひときわ重厚な甲冑を纏う隊長格が前に出る。

大剣を両手に握り、蒼白い聖紋が胸当てに刻まれている。視線がラムザに向かう。

「ベオルブの名に相応しいか、見極めさせてもらう……!」と怒号しながら突撃。巨大な剣が風圧を起こし、床をめり込ませる勢いでラムザめがけて振り下ろされる。

ラムザは試作剣を構え、アルテマの力を注ぐ。だが不安定なまま全開出力は危険。ぎりぎりのラインで受け止め、火花が散り、低い唸り音が轟く。腕に重い負荷が掛かり、体がきしむように痛む。しかし、必死に踏み止まる。

「何と……これほどの魔力……! お前、本当にベオルブなのか?」

「だから何だ……僕は、世界を守りたいだけだ……お前たちのやり方を許さない……!」

アグリアスが脇からカバーしようとするが、別の騎士が割り込み、アグリアスも激しい剣撃を受け止める形となる。ミルウーダは射線が通らず焦るが、隊長の剣が大きく振り下ろされているため、誤射の危険があり迂闊に撃てない。

ラムザは「やるしかない……!」と心の中で決意。再度、アルテマの青白いオーラを剣先に集める。暴走の兆しは感じるが、ここで逃げたら仲間が危ない。**“破壊ではなく、守る力”**を念じ、極限の集中を発揮する。

一瞬、赤いノイズが混じるものの、彼の意志が青い波形を維持し、バキィッという音とともに衝撃波を剣先から放つ。隊長格は大剣で防御しようとするが、その防御を突き破るほどのエネルギーが放出され、ドォンという爆音とともに吹き飛ばされる。


撃破され、地面に倒れ込む隊長格の神殿騎士。兵たちも戦意を失い、ズタズタになった聖堂の床で武器を落とす。

生き残りは何人かが隊長を担ぎ出し、敗走するように奥の回廊へ逃げ込む。

「くっ……撤退だ……ヴォルマルフ様の命により、ここを死守せよと言われていたが……おのれ……!」

こうして表層の教会防衛網は崩れ、三人は辛うじて神殿内部の大回廊へ進むことができる。

しかし、この奥に潜む本物の黒幕――ヴォルマルフや他のルカヴィが待ち構えているかもしれない。

ほっと息をつくミルウーダ。
「ここまでやれるとは……でも、ゾディアークの召喚儀式を止めなきゃ意味がないわ。まだ先が長そうね」

ラムザは試作剣を見下ろし、刃が軋みながらもなんとか崩壊せずに済んでいるのを確認

「うん……危ないところだった。アルテマ制御が少し安定してきたのかな……」と微笑むが、腕には痛みが残り、焦りも募る。

アグリアスは騎士剣を納め
「あなた、よく耐えたわ。……この先、もっと強大な敵が待ち受けているはず。だけど私たち三人なら、正面からぶつかっても勝ち目がある……そうでしょ?」と励ますように言う。

三人は頷き合い、教会本部のさらに深部――ゾディアーク召喚が行われると噂される“儀式場”へと足を進める。物語は、いよいよ危険な領域へ突入していくのだ。


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