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1.5-38 愛情表現
貨物列車を降りて歩いていく。
どこまでも続くかの様に思える真っ白に広がる空間は、砂漠を連想させる。
乾いた空気が頬を掠めるような雰囲気がある。
それでも、金のソバージュにスーツ姿の女は、歩みを止めない。
真っ白な空間を地平線へとただ、ひたすらに進む。
何もない地平の先、答えがあるのを知っているかの様に。
或いは、信じている執着地点があるかの様に。
その胸に砕けた赤いコアを抱きしめて。
「もうすぐだからね。トロン」
「もうすぐ元気に動ける様になるから」
そう胸元へと語りかけながら、彼女は進んでいく。
何もない真っ白な空間。
地面には、墓標の様な石板。
刻まれた数値は、何かのアドレスを示す様にも見える。
そこで立ち止まり、跪き。
砕けたトロンのコアを地面に降ろし、手を合わせて祈りはじめるデイジー。
彼女の周りには複数のコントラクトが、その空間へと転記されていく。
はじめは、数節だった空間へと映し出されたコントラクトが彼女の祈りとともに増していき、彼女が見えなくなるくらいの数へと至る。
すっ、とデイジーは祈る手を離し、広げる。
両手で何かを掬い取るようなそんな姿勢。
すると、デイジーの広げた手の間へと光が集まって来た。
様々な色の光。
それが、彼女の胸元に集まり。
光の玉となり、デイジーの姿が見えなくなる。
暫くして、地上は、光に満ちた。
地上の光に反応したかの様に、それをかき消さんと、地平から稲妻が襲いかかる。
それを光の玉は、躱し、稲妻の中央へと手が伸びる。
「「よこしなさい」」
光の玉は、デイジーとトロンの声色で呟いたかと思うと稲妻の中央にあった透明なヒトガタの首を捉え。
その角度をありえない角度へと曲げる。
「やめろ!契約を、するのでは無かったのか!?」
「我々の『愛』が欲しいのだろ」
首を曲げられたヒトガタは、苦しそうに口を開き、そんな言葉を紡ぐ。
「そうよ。だから、頂くわあなた達ごと」
曲がり、剥き出しになった首筋へと落ちる光。
光が触れた瞬間、空間へと赤い飛沫が飛び散り透明なヒトガタは真っ赤に染まり、その輪郭を表しながら、徐々に削られ。
光が地面へと到達する頃には、完全に消滅した。