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第二話 初めての共同作戦
穏やかな海を進む「フォックスバイト」。昼下がりのデッキには心地よい風が吹き、乗組員たちは次の目的地へ向けて準備を進めていた。艦長のナギサはその風景を眺めながら、気楽そうに椅子に腰掛け、何か飲み物を片手に楽しんでいる。
「ナギサ艦長!」
シェラが駆け寄ると、彼女は驚いたように顔を上げた。
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「偵察艇から連絡が入りました。近くに海賊船がいるそうです。」
その言葉に、ナギサは一瞬だけ真剣な表情を浮かべたが、すぐに柔らかな笑みを見せた。
「そう。まあ、海賊くらい大したことないでしょ。」
「艦長、それは軽く見すぎです。」
シェラはきっぱりと言い放った。「敵船の規模は私たちの艦より少し小さいですが、戦闘経験豊富な集団だと報告があります。」
ナギサは肩をすくめる。「ふむ。じゃあ、ちょっと面白い作戦を考えてみる?」
「“面白い”では困ります。これは乗組員全員の命に関わることです。」
シェラの真剣な目を見て、ナギサはやや困ったように笑った。
「わかった、わかった。君がそんなに真剣なら、ちゃんとやるよ。」
ナギサは椅子から立ち上がり、デッキを見渡した。「全員、戦闘準備に入って!」
ナギサとシェラは一緒に海図を広げ、敵の位置や風向きを確認していた。ナギサは顎に手を当てて考え込む。
「正面から当たるのはつまらないな。敵を少し誘い込む形にしたほうが面白いかも。」
「艦長、戦術は“面白い”だけではなく、効果的であるべきです。」
「もちろん。だから君がいるんじゃない?」
ナギサはシェラに向かってニッと笑う。その余裕に、シェラは少し呆れつつも、内心では感心していた。彼女の冷静さは本物だ。
「では、こうしましょう。」
シェラはペンを取り、海図に印をつけた。「この狭い水路に敵を誘導します。ここなら動きが制限され、こちらの火力を最大限活かせます。」
ナギサは頷いた。「いいね。でも、君に任せるなら、どうやって誘導する?」
「艦長、私が囮になります。」
その言葉に、ナギサの目が驚きで大きく開いた。
「囮?君が?」
「私の踊りは注目を引くのに役立つはずです。敵がこちらに気を取られる間に、艦を配置してください。」
ナギサは一瞬考え込み、そして笑った。「いいだろう。君がその自信を持っているなら、私もそれを信じる。」
敵船が近づいてくる。シェラは甲板に立ち、青い衣装をはためかせながら軽やかに踊り始めた。その動きは美しく、敵船のクルーたちが一瞬その光景に釘付けになる。
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「なんだあれ?ただの踊り子じゃないか?」
敵船の船長が笑いながら指示を飛ばす。「全速力で突っ込め!あんなもの、すぐに黙らせてやる!」
だが、その間にフォックスバイトは水路の周囲に巧みに配置を整え、攻撃の準備を整えていた。
「今だ!全砲門、発射!」
ナギサの声が響き、フォックスバイトの砲撃が一斉に放たれた。狭い水路に誘導された敵船は身動きが取れず、一瞬のうちに無力化された。
夕陽に染まる甲板で、ナギサがシェラに近づく。
「君の踊り、なかなかだったね。敵も完全に君に見とれてた。」
「あなたの指揮があってこそです。」
シェラは軽く微笑むが、その顔には疲労の色も見えた。
ナギサはそんな彼女の肩に手を置き、真剣な目で言った。「でも、危ない賭けだった。次は囮なんて言わないでね。」
「艦長、それは私の役目です。」
「そうかもしれない。でも、君がいないと私は困るから。」
シェラはその言葉に少しだけ驚きながらも、静かに頷いた。
二人の間に流れる沈黙は、これまでよりも少しだけ温かかった。