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インドラの真珠:変換群

 幾何変換の集合$${G}$$を考えます。 この集合は次の3つの性質を持つものとします。(いかにも数学っぽくてわかりにくい人も多いでしょう。読み飛ばしてもかまいません)

(1) $${e \in G}$$ は何もしない変換とする。
 すなわち,すべての $${a \in G}$$ に対し,$${a \circ e=a}$$ が成り立つ。
(2) $${e \in G}$$ に対し,$${a \circ a ^{-1}=e}$$ となる変換 $${a^{-1}}$$ が存在する。(逆変換)
(3) 結合法則 $${a \circ (b \circ c )=(a \circ b) \circ c}$$ が成り立つ。 

(1) の$${e}$$ を単位元といいます。実数の場合には,$${ \circ }$$ がかけ算のとき,$${e}$$は1に相当します。$${a \times 1=a}$$ ですね。
(2) は逆元といいます。実数では逆数がこれに相当します。
(3) は実数の計算でもおなじみです。
これらの性質はある変換の逆変換が$${G}$$に含まれ、2つの変換の合成 $${a \circ b}$$ が$${G}$$に含まれればそのまま成立します。
$${G}$$は、さらに次の条件を満たすものとします。

(4) 異なる方向への平行移動が存在する 
(5) 距離を保存する変換(回転、鏡映、平行移動、すべり鏡映)だけが許される
(6) $${G}$$のどの変換による像も、もとの点の近くの点の像の近くにある

(4)は変換が平面全体に及ぶことを保証します。
(5)は拡大・縮小と円に関する鏡映を除外することを意味します。
(6)は変換によって像がばらばらになってしまわないことを保証します。

 3枚の鏡を使った万華鏡が3種類だけありましたが、構造の異なるこれらの変換は有限個:17個だけあります。これらのうち、今までに5つを見てきました。
・2つの平行移動からなる変換 
・長方形の鏡からなる変換
・3つの万華鏡
 残りの12の変換を紹介しますが、特に美しいものはまだ除いておきます。

 リンク先を開くと次の画面になります。

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画面右に13個のボタンがあります。これらのボタンがない場合は再読み込みしてください。あるボタンをクリックすると変換が変わります。 

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 このプログラムはミュンヘン工科大学での数学の展示 ix-quadrat のために Martin on Gagern によって書かれました。
 それぞれの変換がどのようなものかはここでは置いておいて,単に鑑賞すればよいでしょう。

※ ここでの「変換群」は、オリジナルでは「Ornamentgruppen」となっています。英語版では「Wallpaper groups」ですが、「装飾群」も「壁紙群」も分かりにくいので、ここでは「変換群」としました。

→次節:相似変換の反復

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