音楽:アレンジとオーケストレーション
アレンジは日本語では「編曲」,オーケストレーションは「管弦楽法」かな。
歌の旋律ができたとして,それに前奏や間奏,対旋律をつけたりするのがアレンジ。どんな楽器でどの部分を演奏するのか割り当てるのがオーケストレーション。
旋律を生かすも殺すもこの2つの出来にかかっているだろう。
たいていは編曲者がオーケストレーションもやるわけだが,演奏によってはオーケストレーションが変わることもある。
たとえば,八代亜紀が唄った「舟唄」。
普通は「作詞 阿久悠」と「作曲 浜圭介」だけが表示される。
これに限らず,編曲者は影の存在であることが多いけど,実は重要。
Wikipedia には,シングル版の編曲が竜崎孝路となっているから,この人の編曲がおおもとだろう。
オーボエで始まる前奏。これがいい。
これをアコーディオンでやっている演奏もあるけど,やっぱりオーボエ。
しかも,上手じゃなきゃだめ。
ついでに,アレンジではないけど,唄は藤圭子が絶品。
さらについでに,演歌や歌謡曲では似たようなイントロが多く,舟唄のイントロで森昌子の「悲しみ本線日本海」も始められるなんてこともある。
閑話休題。
さだまさしの「親父の一番長い日」では,山本直純が編曲したけど,このとき,盟友の岩城宏之が「やめろ」と言った話は有名?
軽井沢でのコンサート,岩城宏之が,「ギターだけでいい,何もするな,と山本直純に言った」と,さだまさしに伝えている。そして,「直純一世一代のアレンジだ」とも。
まあ,名手山本直純だから悪かろうはずはない。
ギター1本の伴奏(さだ自身)が4分近く続いたあと,ピアノが入り,弦が入り,木管が入り,間奏では弦が歌う。後半は弦が対旋律を奏でる。まったく違和感なく進んでいくのは直純さんの技量の故だろう。
さだまさしの歌では渡辺俊幸が編曲を多く手がけており,風の篝火(アルバム夢供養)など名編曲が多い。
オーケストレーションも含めて編曲と言っている意味もある。
たとえば,バッハ作曲・ストコフスキー編曲フーガニ短調は,オルガン曲にオーケストレーションを施したもの。前奏などの追加はない。
また,映画音楽などでは作曲者がオーケストレーションもしているわけだ。これをコンサートで演奏する場合は,編曲者が別になることがある。
さて,ここから本題。
バラライカをリライトして,「ドクトル・ジバゴはララのテーマよりメインタイトル」を書いてから,メインタイトルが頭を離れなくて困る。毎日2、3回は聴きたくなる。
そこで,「なぜか」を考えてみた。
YouTubeでは,次々に関連した動画が出てくる。サウンドトラックではなくコンサート版もある。「ララのテーマ」は多い。
いろいろ聴いてみたが,やはりサウンドトラックのメインタイトルがいい。
オーケストレーションが関係しているようだ。
はじめに2小節間,同じ音だけのの序奏があり,バラライカがメロディーを弾き出す。
採譜してみると次のようになっている。
3小節目でフルートが入り(同じメロディー:以下同様)、そのあとオーボエ,ホルンと,2小節ごとに楽器が増えていく。
実際に聴いてもらうのがいいだろう。
背景がレコードジャケットだが,こちらの方が音質がいいのと,序曲がないのですぐ聴ける。
続いて,マンドリン,弦と金管楽器が加わり,17小節目でヴァイオリンがオクターブ上で加わる。
このあと,ララのテーマになり,その後再びこのメロディーになるのだが,今度はフルオケで,ヴァイオリンは四分音符から八分音符へポルタメントをかける。クライマックスである。
それから楽器がだんだん少なくなり,音量もピアノに落ちて,本編がはじまる,という寸法。
見事なオーケストレーションである。