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複素数平面と図形

 複素数平面(複素平面)は,平面上の点の位置を複素数で表したものです。現在の高等学校の教科書では「複素数平面」ですが,以前は「複素平面」でしたので,年配の方や大学では「複素平面」の方がなじみがあるでしょう。以後は「複素数平面」と表記していきます。

 「数直線」というものがあります。直線上の点と実数を対応させたものです。小学校の算数から登場します。ただし,小学校では「実数」という用語は登場しません。定規やはかりの目盛りのような感覚です。
 「実数」に対し「虚数」というものがあります。これは高校の数学で学びます。動機としては,2次方程式を解の公式で解く時に,ルートの中がマイナスになったらどうするか,というところから始まります。中学校ではそのような2次方程式はそもそも扱いません。高校の2次方程式ではそのような場合も扱い,$${\sqrt{-1}}$$ すなわち「2乗すると -1 になる数」を考えます。これを $${ i }$$ で表し,「虚数単位」といいます。この虚数単位を用いて,$${a+bi}$$ の形の数($${a,b}$$は実数)を複素数といいます。 $${a}$$ を実部,$${b}$$ を虚部といいます。$${a=0,\ b \neq 0}$$ なら虚数,$${b=0}$$ なら実数です。
 すると,直線上の点と実数を対応させたように,平面上の点と複素数を対応させることができます。これが複素数平面です。座標 $${(x, \ y)}$$ の点を $${x+yi}$$ で表します。軸の名前も x軸,y軸 に対して,実軸,虚軸といいます。

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複素数平面についてのいろいろな性質は数学Ⅲの内容なので,学ばない人は半数以上いるでしょう。しかし,基本的な四則演算と累乗,「極形式」の知識さえ得れば,このあとのすばらしいフラクタルの世界に足を踏み込むことができます。この節では,この必要な知識だけ説明します。大学入試に出てくるような問題を解く必要はありません。

 説明は,次のページを開いてもらって行います。

リンク先を開くと,次の画面になります。

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上方にボタンが並んでいます。表示されるまでに少し時間がかかりますが,表示されない場合は再読み込みしてください。
 始めは「c=a+b」のボタンにチェックがついています。a, b, c は点A, B, Cにそれぞれ対応する複素数です。

複素数の和と差は,実部と虚部の和・差をそれぞれとります。
  $${a=a_x+a_y i , \ b=b_x+b_y i}$$ とすると,$${a+b=(a_x+b_x)+(a_y+b_y) i }$$ です。補助線ボタンを押すと,そのことがわかりやすくなるでしょう。

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点AまたはBをドラッグしてみましょう。

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 OBとACが常に同じですね。道筋にたとえると,a+bは,まずaまで行って,そこからbだけ行くことになります。
「c=a-b」のボタンをクリックして同じようにやってみましょう。

次にかけ算と割り算ですが,複素数平面上で図を考えるときには,別の表し方をする方が便利です。
 平面上の点の位置を表すのに「xy座標」を使う方法の他に,「極座標」を使う方法があります。原点を「極」と呼び,極からの距離と,横軸とのなす角を使って位置を表すのです。距離を$${r}$$,角を$${\theta}$$ とすると$${(r, \ \theta)}$$ と表します。同様にして,複素数では$${r(\cos \theta+i \sin \theta)}$$ と表します。

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すると,三角関数の加法定理という計算公式を用いて,
$${a=r_1( \cos \theta_1+i \sin \theta_1)}$$ , $${b=r_2( \cos \theta_2+i \sin \theta_2)}$$ のとき
$${a  b=r_1 r_2( \cos (\theta_1+\theta_2)+i \sin (\theta_1+\theta_2))}$$
となります。つまり,かけ算の結果は,距離をかけて,角は足すことになります。
「c=a×b」のボタンをクリックしてみましょう。補助線を引くとわかりやすくなります。点をドラッグして,上記のことを確かめましょう

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また,割り算の場合は
$${\dfrac{a}{b}=\dfrac{r_1}{ r_2}( \cos (\theta_1-\theta_2)+i \sin (\theta_1-\theta_2))}$$
となります。距離は割って,角は引くのです。
「c=a÷b」のボタンをクリックして,動かしてみましょう。

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以上が四則演算です。これに加えて,累乗もみておきます。
$${a^2=a \times a}$$ ですから,つまりはかけ算ですね。距離は2乗で,角は2倍になります。
「$${c=a^2}$$」のボタンをクリックして確かめましょう。

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このあとは応用です。この後の「自己平方フラクタル」のための予習です。

ある複素数 $${z}$$ を2乗し,$${c}$$ を加えます。
その結果をまた2乗し,$${c}$$ を加えます。これを繰り返します。式で書くと
  $${z_1=z_0^2+c,  z_2=z_1^2+c,  z_3=z_2^2+c,  z_4=z_3^2+c, }$$・・・
「$${z_0=a,\ z_{n+1}=z_n^2+c}$$」 のボタンをクリックしてみましょう。

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緑の点が出たでしょうか。出ていない場合は,点Aまたは点Cを原点に近づけてみましょう。

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原点付近にたくさんの点ができました,上の図だと$${z_{22}}$$ が少し離れたところにあります。
さらに,AまたはCを原点に近づけると

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かなり密集しました。しかも,$${z_{21}}$$が少し離れているように見えますが,そのあとの番号を追っていくと,遠くに離れてしまうものはありません。
なんともふしぎな動きですね。
これについては,「自己平方フラクタル」の節で改めて考えることにします。


次節:反復関数系とコッホ曲線

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