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職業訓練校の職業人講和(Web)って何話すの?

 2024年6月26日(水)、人生で2度目の職業人講和を担当させて頂き、今回もなんとか無事に完了致しました。

 2度やっても全く慣れない職業人講和。 依頼を受けて困っているという講師の方向けに、参考程度に当時の内容を共有させていただきます。



職業人講和って?

 職業人講和とは、業界の先輩(Web科ならWebデザイナー等)をお呼びし、講和を行っていただくもの。

 私自身も拝聴したことがあるのですが、自己紹介→現在の業務内容→求める人材等のお話が多い印象です。

 私は自己開示できるほど優れた功績等がございませんので、毎度就職活動に役立つ内容で講和を設計し、差別化を狙っています。(できているかわかりませんが…)


準備期間(半年)の流れ

 半年前から準備を開始し、教材が完成したのは講和開催日の1か月前。
準備期間は下記12工程で進行しました。


  1. 職業訓練校様より参加者人数、年齢層、性別、習熟度をヒアリング

  2. 参加者のニーズを推測しプロットを作成

  3. プロットを担任講師、職業訓練校がチェック

  4. 教材制作開始

  5. 先輩デザイナーやフリーランスデザイナーへのアンケート調査を開始

  6. 教材のα版が完成

  7. 前職の社長や有識者に校正を依頼

  8. 校正をもとにβ版が完成

  9. 協力頂いたデザイナーから生徒様方へのコメントを拝受し教材へ掲載

  10. 担当講師、職業訓練校の最終チェック終了

  11. 生徒全員分の教材を印刷し職業訓練校へ配布

  12. 講和の練習、最新情報の収集


講義のテーマ決め

 前回の講和では、数字獲得のためのWebデザインをテーマとし、UIUX等に主軸を置いた内容としておりました。

 しかし反省点として、Webを覚えたての生徒様に理解しやすく伝えるための技術が私には不足しており、納得のいく講和には至らなかったのです。

 そこで今回は、学生とプロの間にある3つの壁(キャズム≠キャズム理論)をテーマとし、マクロ視点>メゾ視点>ミクロ視点を章立てし設計しました。

 設計上、社会学や経済学、経営学、法務などにも触れる場面があり、専門的な質問が想定されたため、有識者の先生方を頼りつつ、自身も予備校に通って勉強する毎日が半年続きました。

 お陰で教材完成後には保有資格が1つ増えております。


職業人講和の収益

 私の場合、職業人講和の謝礼は1万数千円+交通費でしたので、収益性皆無の完全な慈善事業となりました。

 参考までに教材1冊を作るまでの出費は、校正費、取材費、アンケート調査依頼料などを含めて約12万円ほど。

 予備校費用35万円、印刷費1万5千円、私自身の人件費なども加えてしまうと大赤字です。

 ただし、職業人講和は収益を求める場ではないので、生徒様方の実力UP+就活力UPに貢献できるかがKPIとなるのではないでしょうか?


職業人講和を担当するメリット

 講和を担当するメリットは、知識量の増加や自身の先生が増えていくことなのかなと思います。

 今回は自身のWord練習を兼ね、教材をWordで作成したため大変勉強になりました。

 図形の組み合わせでポスターを作れる程度には上達し、Wordって面白いなと再発見に至っております。




講義の流れ(全6コマ/6時間)

実際の講和次第

 全体で6コマ(各1時間)あるのですが、事前想定よりも生徒様方の理解や作業速度が速く、午前の3コマで40ページの教材が終了。 半年間の成果を3時間で消費できる生徒様方のポテンシャルに興奮しました。

 よって午後の3コマはワークショップとし、実在するクライアント用のモックアップを制作して頂く流れへ変更。

 今回ご協力頂いたクライアントは子供食堂。 かなり特殊な業種であり、生徒様は大変悩んでおりましたが、それぞれの強みを活かしたデザインが無事完成。

 本講和が、生徒様方のポートフォリオにワンアクセントを添える効果を生み出せたならば嬉しい限りです。


1コマ目:プロとアマチュアのキャズム

 先輩方に倣って簡単な自己紹介や実績紹介、作品紹介を行った後、デザインの3原則からスタートしました。

 また、国家検定であるウェブデザイン技能検定3級を紹介し、折角なら国家資格取得まで頑張ってみてねと案内しています。

 3級ですと暗記で合格できる内容となりますので、職業訓練校で学んだ知識量でも十分太刀打ちできると感じています。専門学校においては1年生で受ける学校もあるようです。

 ちなみに、1コマ目では下記10項目(16ページ分)を講義しました。


  • デザインの大原則

  • プロとアマチュア何が違う?

  • 企業とは何か?

  • たった3問でプロの資質がわかる?

  • 資質は大事か?

  • キャズム(溝)を越えられるか

  • 理想的な仕事の循環を生む関係性マーケティング

  • 原則+関係性によるキャズムの分解

  • プロの皆様からのアドバイス

  • WORK:志望動機(自己PR)を作ってみよう


2コマ目:サイト毎のキャズム

 2コマ目は就活時に直面するキャズムをテーマとしました。

 時代の変化速度に執筆が追い付かず、講和開催時には1か月分古い内容となってしまったことが反省点です。

 講和においては、職業訓練校という特性上、就業経験のある方々が多く、生徒様方の理解速度は早かったように感じます。

 私自身の学生時代と比べると優秀な方が増えた印象であり、専門的な質問も飛んできて思わず感動してしまいました。

 2コマ目では下記9項目(9ページ分)を講義しています。


  • サイト毎に求められる関係性

  • コーポレートサイト(金融市場・原材料市場)

  • コーポレートサイトがもたらす関係性

  • イントラサイト(労働市場)

  • 求人サイト(労働市場)

  • ランディングペ-ジ、Eコマースサイト(製品市場)

  • 具体的な制作の手順

  • 特化人材と万能人材どっちが良い?

  • 天才はどこにいる?


3コマ目:成果物のキャズム

 3コマ目は4~6コマ目に行う実制作(ワーク)に向けたクライアント理解、ソフト操作説明を主軸としました。

 クライアント希望でCANVAの利用が指定されており、生徒様方にとっては1つハードルが増え心配していたのですが、担当講師の普段の授業内容が良かったお陰で非常にスムーズに進みました。

 3コマ目では下記8項目(11ページ分)を講義しています。


  • オンラインWeb制作サービス(クラウド型CMS)の利用者増加

  • 急いでポートフォリオを拡充させたい場合の案件(初心者向け)

  • CANVAを使ってWebサイトを作ってみよう

  • 本件の難しさ

  • CANVAを使ったサイトデザイン

  • 納品前の保護対象チェック

  • CANVAサイトの納品

  • おわりに


4~6コマ目:実制作(ワーク)

 前述の通り、クライアントの要項に沿ったサイト制作(モックアップ)を3コマ使って実施致しました。

 各々がワイヤーフレームから制作を開始し、グラフィック作成、モックアップへと至ったのですが、喜ばしいことに似たようなサイトは1つもなく、生徒様方の強みを活かしたデザインが完成。

 実際の完成品をお見せすることはできませんが、はじめてにも関わらず下記特徴を持ったサイトを生徒様方が自力で完成させていました。


  • 子供も見るから難しい漢字は使わない、必要不可欠な漢字にはルビを振る。 といったアクセシビリティに配慮した制作を行う生徒。

  • 余白を多めに用い、自由度と開放感を表現する生徒。

  • 文章を減らして画像やイラストを用い、外国人の方でも理解しやすいデザインを制作する生徒。

  • ボランティアの募集に注力したデザインを制作する生徒。


 初体験のソフトでガツガツとデザインを作っていく姿を見ると、最近の職業訓練校は本当にレベルが高いなと実感します。

 おそらくアクセシビリティは通常の講義でも教えていないものだと思いますが、生徒が自力でアクセシビリティに辿り着けたことが何より素晴らしいです。




講和を終えての感想

 専門学校や民間のPC教室、商工会のPC教室などで講義を行っていた私ですが、職業人講和はその中でも自由度が高く、講師の力量が直に生徒様方の成果物に直結するように感じました。

 短時間で生徒の特性を理解し、ワーク内で適したサポートを提供すれば成果物のクオリティはメキメキとあがります。

 私の感想としては、講師が全ての知識と技術を費やしても解決できない課題に直面する場でした。

 結果として勉強不足だったなと反省する瞬間もあり、最高の講和には至らなかったものと感じます。


うまくできた点

 専門学校にて講義を行っていた際、学生から「実習のない6コマは眠くなる。」とのご指摘を頂き、以降の午前は座学+簡単なワーク。午後は実制作のスタイルへと改善しました。 もう大反省です…気付けなかった自分が未熟でした。

 本講和でも同様のスタイルを取り入れたところ、生徒様方の集中力が続き、更には理解も深まり質問が増える、といった効果が発生。 結果として良い成果物が完成しております。

 ご指摘いただいた学生には感謝しかありません、まさに金言でした。


改善できる点

 サンプル事例が少なかったこと、文章が固すぎたことが反省点です。

 どうしてもお見せできない実例は、何か別な形で提示し理解を深めてもらえれば、更なるクオリティアップに繋がったのではと考えています。

 また、未経験者でも歓迎している企業の求人を持っていけば良かったなと後悔しています。


おわりに

 2回目の職業人講和ということもあり、初回時よりは完成度の高い講和を提供できたと思っておきます。

 白羽の矢が立ち、講和をしなければならない講師の方にとって、僅かでも参考になれば幸いです。

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