“疾走する若者”が“人類の希望”である事に説明はいらない/『メイズ・ランナー 最期の迷宮』レビュー
“謎の巨大迷路”で話題を集めたこのシリーズも遂に最終章。
いつも前置きが長くなってしまうので、とりあえずシリーズ3部作を知ってもらうには予告編をみてもらうのが早いかと。
1作目の予告で興味を持った人は2作目へ!
【1作目予告編】
【2作目予告編】
※過去作含めネタバレちょっとあります!
1作目&2作目のあらすじ:
目覚めると謎の巨大迷路の中。記憶はない。
最長3年をここで過ごしてきた若者達との共同生活。
毎日変わる迷路、迷路に潜むモンスター、そして死んでいく仲間たち・・・。
脱出を強く望む主人公・トーマスと彼の無鉄砲ぶりに引き寄せられたニュート、ミンホ、そして彼が唯一記憶の中でも見たことのあるテレサらは、迷路内の未知のゾーンへ挑み見事脱出を果たす。
しかし、脱出した彼らを待ち構えていたのは、迷路に彼らを閉じ込めていた組織・WCKDだった。
再び脱出を図った彼らは、初めてWCKDの施設を飛び出し、そして助け合える仲間を見つけ、世界の惨状を知る・・・。
果たして、彼らが追われる理由は!?
【3作目(最終章)】
予告編:
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そもそも、ヤングアダルト小説の映画化は、結構面白い。
アメリカは日本ほど漫画文化が根付いていないので、中高生に人気の読み物として“ヤングアダルト小説”が根付いている。
日本でいえばラノベにあたるのかなと思うけど、漫画が定着している日本においてラノベといえば“異世界転生”、そしてアニメ化、みたいなイメージがあるので、イコールではなさそう。
YA小説も内容のジャンルは様々でその時々のブームがあるらしく、10年ぐらい前はラブロマンス全盛だったものが、その後ディストピアものへ移行していってるらしい。
その流れは映画化でも一緒。
『トワイライト』シリーズが一世を風靡し、『シャドウハンター』等多様な異種恋愛ものがあったあと、『ハンガー・ゲーム』シリーズ、『ダイバージェント』シリーズ等のディストピアものへ。
前々回、『ザ・レイン』を紹介した際のnoteで書いたけど、私はこのディストピアものが大好きという文脈からYA小説映画化へ流れ込みました。
なので、『ハンガー・ゲーム』以降かな。
(『ハンガー・ゲーム』シリーズは、宣伝で言われるようなバトロワ風味のものではなく、運命に翻弄されながらも信念を貫く1人の少女を通して国家や人間、そして希望を描く傑作。特に2作目!)
そんなディストピアYA小説の映画化『メイズ・ランナー』シリーズの3作目にして最終章は、前置きなく前作の続きから始まります。
シリーズものはそれで良いと思う。予習は各自でOK。
このオープニングが、おそらく主演のディラン・オブライエンの大怪我シーン??
※主演が怪我して製作・公開が1年以上伸びました。
走る列車から目的のものが乗った貨物を強奪!という、「マッドマックスFF」×「ワイルド・スピード」的な、(どこかで見たことあるけど)テンションあがるダイナミックなアクション。
正直メイズ・ランナーでこういうシーンが見れると思ってなかったので冒頭で心掴まれる。
3年ぶりに見るキャスト陣は、さすがに皆ちょっと大人になっていて、良い面構えに。
何よりディラン君が無事で良かったよ・・・。かなりの大怪我だったようなので。
救出される若者達、しかし目的のミンホはそこにはおらず、本部組織に送られていた。そして、そこにはテレサの姿も・・・。
そんな怒涛のスピードで幕を開けた本作では、WCKDの本部組織への潜入、そして最終対決が見せ場になります。
1つだけ先に断っておくと、このシリーズ、主人公たちの行動に100%同意できないもやもやがある。
敵視しているWCKDは、曲がりなりにも本気で人類を救うために動いているから。
そりゃ、同意もなく若者達を人体実験して(あったのかも知れないけど、だったらそこは記憶消しちゃダメ)、死んでもお構いなしみたいな態度は如何なものとは思うし、全体のために個を犠牲にして良いのかという『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』的な話にもなるんだけど、主人公たちはそこに全く迷い無し。
テレサという存在が、脚本上もうちょっと上手く機能していればいいんだけど、割とはっきり「裏切り者」にしちゃっていて、その信念に周りが悩む描写がない。
もしくは、WCKDをもっと極悪組織として描いていればもっと主人公たちに肩入れできたのかもなあ。
難しい問題だし、お気楽映画なら気にならないんだけど、シリアスめな本シリーズではここの扱い方もうちょっと考えて欲しかった。
あと、フレア・ウイルスの影響とか感染の詳細とか、意外とよくわからないし、迷路要素が2作目以降あんまりない(これは邦題のつけかたの問題だけど、やっぱりもう少し迷宮感ほしかった。そもそも2作目はタイトルに“2”って入ってるのに、本作では“3”つけるの忘れてる)。
そして、シリーズの見どころでもあり他の作品と違うポイントだった“走る”シーンが足りない!
迷路要素はなくなっても良いので、これはもっともっと欲しかったなあ。
前2作でとにかくよかったのが、“全力疾走する若者達”という画のもつ力。
ひょろっと長い手足を振り回してどこまでもがむしゃら走りのディラン・オブライエンと、均整の取れたフォームでアスリートのような走りを見せるキー・ホン・リー(ミンホ役)を筆頭に、その“生命力”が、“ああ、この子達が世界の希望なんだな”という有無を言わせぬ説得力を持っていたんです。
作品自体はスピード感あってアクションの見せ場も多く誰もが楽しめるものになっているので欲張りな意見だけど、最後にシリーズの集大成的な形で疾走するシーンを盛り込んでほしかったな。。
でも、私はこのシリーズ、好きです。
まず物語のベースが“友情”であり、“恋愛”ではないのが好き。
仲間を見捨てない、助け合う、信頼する。少年ジャンプ的な。
彼らは無駄に悩まない。とにかく仲間を信頼し、行動する。
そして、3作通して皆キャラがブレない。
トーマスは常に無鉄砲な暴走機関車で、ノープラン。
彼を冷静に静止しつつも、その突破力についていくニュート。
恐らく一番タフなのに、一番ヒロイン扱いのミンホ。
ついていきたいカッコ良さのブレンダ。
どこまでも胡散臭く憎らしいジャンソン。
信念を持ってWCKDを率いるエヴァ・ペイジ。
仲間をおいて、そんなWCKDの信念に立ち戻るテレサ。
演技巧者な大人たちに支えられ、若手俳優たちが生き生き動き回っているのは、やっぱり観ていて楽しいの。
(活かしきれているかというと怪しいけど)、“謎の巨大迷路”という舞台設定がやっぱり最高なんですよね。
協調性、身体性、人間性、、、様々なものが見える極限環境。
この舞台では、アクションがキャラクターを描写する。
その映画的な楽しさが、若手キャストの煌めきとともに観れる作品。
3作追いかければ、キャラクター達の成長と友情にほろりとするはず。
全国公開中。
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