UAD使えるならNeve 88RSを最初に買った方が良い理由

 こんばんは。イーヴィルな斉藤(@evilsaitoh)です。
 今回は私が超愛用しているNeve 88RSについて語ります。

1 Neve 88RSとは

画像1

 88RSは、チャンネルストリップ(プリアンプ+EQ+ゲート/コンプ・リミッターの複合機)です。
 UNISON(マイクの入力段での掛け録り)でも使えますし、単体のLegacy版でEQやコンプだけ使用する、ということもできます。
 ↓Legacy版はプリアンプ部分がありません。88RSを買ったらついてきます。

画像2


2 ゲートがついていて効きが良い!!

 これ、私にとっては超重要です。
 私は常にマイクを繋ぎっぱなしで「実況やるかぁ」となったときに即撮れる環境でないと撮らなくなるのですが、そうなると常にサーノイズが乗っていたら気が散って仕方がない。

 「マイクをミュートにすればいいじゃん」と思うかもしれませんが、歌うときにいちいちConsole呼び出し→Mute解除…はかったるいです。
 他にゲートがついているUNISON対応マイクプリはたぶんないんじゃないかな…?

 Neutronについているようなゲートの方が視認性が高くてお気に入りでしたが、効きが良いので最近ではもっぱらこのゲートばかり使用しています。

 しかも、他のマイクプリプラグインを使うときでもLegacy版でゲートがかけられます。便利。

【ゲートの簡単な設定方法】
 せっかくなので設定方法を書いておきます。
 ごちゃごちゃして見えますが、4つのノブだけで設定できるので実は簡単だったり。
 ↓赤枠部分だけで完結します。

画像3

① ON・OFFスイッチ
 ゲートをオンにするにはここを押します。緑色のランプが点灯したらオンになっています。

② HYST(ヒステリシス)ノブ - 感度調整
 「どれくらいの音量の音を通すか」の設定で、「しきい」を決定します。
 左に回せば「大きい音以外は一切通さない」になり、目いっぱい右に回すと「EXP(エキスパンダー)」になります。
 エキスパンダーは「小さい音を持ち上げて音量を平均化する」みたいな挙動をするようですが、あまりそう感じず、単に「全部の音を通す(THR以降のセクションのみでゲートをする)」挙動だと感じています。
 通常はEXP~最初の位置(上の画像と同じ位置)でいいと思います。
・EXPの位置…ボーカル録りなどを自然にしたいとき
・0の位置…常に大き目のノイズが鳴っているとき(ただし、しゃべりはじめや小さいノイズに反応して不自然になるときがあります)

③ THR(スレッショルド) - 消音する音量を決める
 「④RGEを適用する音量」の設定です。ここをグリグリ動かして「お、ノイズ消えはじめたな」と思うところまで動かします。
 HYSTノブは「通さない音は一切通さない」という挙動をしますが、こっちはRGEと組み合わせて「うっすら通す」などができるので、こちらをメインに設定しましょう。
 「どう動かしてもノイズ消えないよ!」というときは(マイクプリやオーディオIFのゲインを見直した方がいいと思いますが)、隣の「pull-40」と書かれた赤いボタンを押してください。適用範囲が増えます。

④ RGE(レンジ?)ノブ - 消音する強さを決める
 「③THRで通さない音(ノイズ)をどれくらい消すか」という挙動を決められます。
 左に動かせばまったくノイズを消さないことができますし、右に回すとノイズが強く消えます。
 ここの設定は④-1 G/Eメーターを見て「これ以上右に回してもメーター動かないな」と思うところで止めておくといいです。
 このメーターはリダクション量(どれくらい消音しているか)を表すので、メーターが動かない=これ以上やっても無駄 ということです。

⑤REL(リリース)ノブ - ゲートを再度適用するまでの時間を決める
 「声を通した後にもう一度ゲートをかけるまでの時間」を設定できます。10ミリ秒~3秒まで。
 左に回すと速くなり、右に回すと遅くなります。
 速すぎると、例えばイスの「ギシッ」という音が入ったときも「ギ / シ / ッ / 」みたいなノイズの消え方になり不自然になります。反応が早すぎるので「少しでも無音部分になったら音消したろ!」と反応してくれるんですね。
 遅すぎると、「ギシッ(スーーーッ)」という音の後にテンポの悪いノイズが入ります。
 ただ、ここは割と良い値が振られているようで、フルでどちらかに振るよりは2割~8割くらい回しておけばまぁまぁいい感じになります。
 ボーカルなら真ん中にしておけばまぁまぁどれにも合うとは思います。


3 コンプの効きがいい

 キャラクターが違いますが、SSLのコンプのように簡単設定でダイナミクスをコントロールできます。
 傾向としては「スパッとガッツリ効く!」というよりは「上品にまとめる」みたいな感じですが、これが最初のUADとしては非常に使いやすいでしょう。
 正直、私のようなあまり物を覚えたくない人にとってはアタックのノブがないだけでかなり使いやすいです…。


4 音が変わりにくくて使いやすい

 初めてUADでデモをしたとき「え、こんなにマイクの音が変わるんだ、ちょっと使いづらいかも」と思わなかったでしょうか。私は思いました。
(余談ですが、「そんなに変わらねぇ!俺はクソ耳か!?」と思ったときはマイクプリのゲインを突っ込んでアウトプットを同じくらい絞るとわかりやすいですよ)

 88RSは音質変化がさほど起こらず、「Neveっぽいシルキーな上品な感じ」と「現代的なハイファイでクリアな音」が両立しているチャンネルストリップと思っています。
 「〇年代のロックのような~」という目指す音がある分には合致した方向性のマイクプリを使った方がいいとは思いますが、「万能に録りたい」という方向では88RSが一番良いと感じています。


5 所有しているマイクプリとの比較

……と、オススメしましたが「斉藤はどんだけ他のプラグインを試したんだい?」と思うじゃないですか。

ほとんどデモはしていますが、持っているのとじっくり比べたときの印象を書いておきます。
他のプラグイン買うときの参考にもなるかもしれません。もっとUADに金を落とそうな!!(ダメ人間の目)

①Neve Preamp
 Neve preampはあの最も売れているNeve 1073からプリアンプ部を取り出したものです。
 よく「この時代のNeveと今のNeveは別物だ」とは聞くんですけど、なーんか似てるんすよねぇ…。
 もちろん、Neve preampの方が歪みっぽくて、良く言えば「歌がなじむ」「歌がうまくなったように聞こえる」という傾向であることには違いありません。
(悪く言えば音程感がちょっと曖昧になったり、スーパークリアーではない感じ)
 ただ、共通する「音が均されるようなシルキーな感じ」とか「超高域のレンジ感」とか「ちょっとリズムが遅い」みたいな点は結構似ている気がします。
 88RSの方が上品できれいな音でクリアーですが、共通する「ゆったりさ」みたいなものはあるので、歌い上げる系の曲が一番合います。他の曲でも80点以上は出せる音ですし。
 ただ、ゆったりなのでラップとかなら「パンチがある中域」「さらにパンチを与えられるコンプ」の両方でSSL E CHANNEL STRIPの方が合っていると思います。

②UA-610A
 さっきNeveは歪むよねーという話をしましたが、UA-610Aのが歪みます。
ただ、Neveよりはスピード感があるし、パンチがあるので速い曲でも合います。というかロックとかのレジェンド機材だから当然か。
 決して悪い意味ではなくナローな音ではあるんですが、ハイファイな現代的な音のオケからの分離が非常に良いです。
 このため、ゲーム実況によく使っています。ゲーム実況では音の兼ね合いよりも何しゃべってるのかを聞かせるのが一番大事なので。
 コンデンサーマイクに使うとちょっとダイナミックマイクっぽさが出るというか、音が太く温かみがあるしコンデンサー特有の繊細な感じも出るしで結構気に入っています。
 また、UA-610Aの良いところは高域のEQです。3dB上げるだけで6,000Hz~13,000hZあたりがガッツリ上がります。なんでも使えるわけではありませんが、「こういう設定のボーカルよく聞くよな~」という音が聴けます。
 88RSの方が当然歪みは少ないですが、オケに埋もれるとき、ガッツを出したいときに使うと楽に声が聞き取りやすくなります。 
 地味に無料でついてくるプラグインの過去版なので、あまり人気がないような気がしています。

③UA-610B
 最初からついてきたやつですね。上の610ーBの現代版です。
 いや、付属してきたとは思えないクオリティで全然使えるんですが、「金払ったプラグインをひいきしちゃう」みたいな心理効果であまり評価されていないような気がします。
 610Aとは違い、歪みは少なめ。でも多い方だとは思います。
 高域のナローな感じもだいぶ減っています。その分オケからほどよく出てくる感じ。
 ただ、ちょっと音がぼやけるような音像の大きさで、例えばBOAの「つつみこむように」みたいなテンポなら最高にマッチする半面、宇多田ヒカルの「Traveling」くらいの速さになると遅さが気になるかも。

④Manley VOXBOX
 人によっては付属したりしなかったりするプラグイン。超お気に入り。
 低域がすっきりしているおかげか、近接効果が少なくマイクに近づいて歌える。Headroomを調整すればもっと音を近くもできる。
 コンプセクションもかなり良くて、音なじみの点では一番だと思います。
 一方、低域が少ない分ノリが良く聞こえているだけで結構まったり系なので、やはり男らしい曲とかディストーションギターばりばりの音には合いにくいです。
 歌い上げるような、平井堅みたいな曲に使うと「ちょっとうまくなったかも?」と思えるのが素敵。
 88RSと比べるとどちらも歪みは少ないですが、VOXBOXはマイクが近くてボーカリストの技量が良い曲(いきものがかりとかEGO-WRAPPINとか)、88RSは無難でなんでも録れる!って印象。


6 まとめ

 88RSはいいぞ…!( ˘ω˘ )

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?