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特定小型原付の最適解

私について

2023年7月に法改正があり、電動キックボードや電動自転車が公道を走れるようになった。
読者の皆さまも、この記事をご覧になっていることから多少なりとも興味関心がある事だと思う。
私は、その法改正の2023年以前より電動トライク・電動バイクの販売を行なっており、当然の流れのように特定小型原付に注目してきた。
販売するにあたり、お客様には安心して乗っていただけるよう、他社製品の購入・中国から直接取り寄せなど、車体タイプもキックボードタイプからバイクタイプまで合計10種を手に入れ、実際に使用してきた。
時には行政の研究所に持ち込んで性能試験や分解し、構造のチェックをした。

特定小型原付の最適解

そんな私が思う、特定小型原付の理想系を提案したいと思う。

フレーム形状

2024年現在、販売されている特定小型原付の多くは折りたたみ構造を備えている。
利用していない時に折りたためて省スペースで保管できるため便利に思えるが、人力以外のモーターで走る乗り物として、フレームが折り曲げることのできる構造に不安を覚える。
実際に研究所で荷重試験を行ったところ、国の定める基準に満たさない製品もあった。
フレームを分割できる機構が増えれば増えるほど、フレーム強度は下がっていく。小学生でもわかる簡単なことだ。

さらに、いかに日本の道が舗装されていて段差が少ないとはいえ、走行中には細かい振動が発生する。私の所持している特定小型原付の電動キックボードはその振動で折りたたみ部分のロックが外れるという事象が発生した。(それも1度ではなく、1km走ると毎回のように外れる)さすが、中国から輸入した車体をそのまま売ったモデルだなと呆れたものだ。
中国からの輸入において、折りたたみ機構は商品の梱包サイズを小さくして輸送コストを下げるのには一役を買っている。というよりも、輸送量を増やすためにわざと折りたたみ機構を採用しているとさえ言える。

たしかに前述したとおり、保管には折りたたみ機構は便利である。しかし、その折りたたみ機能をフルに活かすことはどれほどあるだろうか?
自宅やマンションの自転車置き場に車体を置いておき、バッテリーだけ持って帰り充電する。外出先のスーパーやコンビニでも自転車置き場に停車するのではないだろうか。フレームが折りたためる構造でなくとも、車のトランクに入るサイズ感であれば、私は問題ないと考える。

想像してもらいたい。走行中にフレームの折りたたみロックが外れ、走行中に制御不能となり、転倒する・走行中の車に突っ込む・歩道を歩いていた子供を轢いてしまう。後悔どころでは済まない問題となる。
日本のバイクメーカーをみてもわかるように、折りたたみバイクなど発売していない。

特定小型原付のフレームはタイヤやハンドル、サドルといったパーツを繋ぐ根幹のパーツである。このフレームが頑丈でなければ話にならない。

フレーム形状は折りたためない構造が望ましい

タイヤサイズ

発売されている特定小型原付のタイヤサイズは10インチ〜26インチくらいとサイズもさまざまで、横幅を太く設計されたファットタイヤといったものもある。

私の考えるタイヤサイズの理想は、14インチ以上のタイヤ幅は自転車と同等である。
たしかに、ファットタイヤ装備したモデルや小さいタイヤを装備したモデルは見た目からして格好いい。
だが、小さいタイヤの場合、小さな段差を乗り越えられなかったり、ハンドルを切る際の安定感が無い。大きすぎると携行性に欠ける。

ファットタイヤの場合は、タイヤを回転させるためのパワーが普通の車輪よりも多くかかり、その分、モーターの出力を上げたりバッテリーの減りが早くなる。さらにパンクなどした際のタイヤ交換も通常のタイヤに比べて大変で、替えタイヤが無かったり交換を受けてくれる店舗も少ない。
そんな太いタイヤの乗り物に乗りたいのであれば、アメリカンバイクを買えば良いのではないだろうか。

ちょっとそこまでの使い方が主である特定小型原付においては、省エネで安定性のあるタイヤを選べば良いだろう。

タイヤサイズはスタンダードな形状の14インチ・16インチを選ぶと良い

モーター出力

法律上、特定小型原付に搭載できるモーターの最大出力は600wである。
モーターの出力が高いとトルクが高く登り坂に強く・最大速度も速くなる。
しかし、特定小型原付は法律で最高速度が20km/hを超えないようリミッターをつけることが明記されている為、大出力のモーターは無用の長物である。
さらに、登り坂性能も、多くの特定小型原付に採用されている350wモーターでさえ傾斜角15度くらいであればすいすい登る。
道路の勾配は、国の道路構造令により全国一律で「最大12%」と定められて、傾斜角に変換すると約10.2度となるため、350wのモーターを選んでおけば問題ない。

モーター出力は350wの一択

バッテリー

バッテリーは着脱モデルと本体から取り外せないモデルの2モデルが存在する。
着脱モデルでも、フレームを折り曲げてフレームの中から引きずり出す形状や、外部に装着されていてカギで他人が外せないようにロックされている(日本の電動アシスト自転車のような)形状がある。

充電場所は、利用者の住居環境によるところが大きく、戸建に住んでいる場合だと車の横に停めて壁面コンセントで充電できるだろう。
集合住宅に住んでいる場合は、バッテリーの取り外し機能は必須と言っていい。私の自宅も集合住宅だが、取り外しできない折りたたみタイプの特定小型原付を乗っていた際は相当苦労した。2日に1回エレベーターに積み込み玄関に入れて充電するという行為が煩わしく感じるし、朝の出勤時に別の部屋の人がエレベーターに乗っていると車体を降ろすのにも気を使う。

マンションの駐輪場で充電のたびにやらないといけない折りたたみ



バッテリーの容量はどのくらいの距離を1充電で走行するかにもよるが、おおよそ15kmくらいの航行距離があれば普段使いできるだろう。なので、7Ah〜10Ahくらいを選ぶと良い。
中国製の電動アシスト自転車をネットで調べると60km乗れます!とか100km乗れます!といった製品が出てくる。そんなわけあるかと声を大にして言いたい。ほぼ人力でペダルを漕いだらそのくらいは進むだろうが、車体だけで20kgを超える金属の塊を人力だけで長距離ペダルを漕ぐとかどんな拷問だ。
無負荷状態でもその長さ分だけタイヤを回すことすら怪しい。実際、街中で違法で走ってるフル電動のアレ(350w-48v-10Ah)。アレもせいぜい15km走ったら良い方だ。

バッテリー容量は7Ah〜10Ahで、特にマンションに住んでいる場合は着脱タイプ

ペダル付き?

特定小型原付としてペダル付きのタイプがネットモールで売られていることがある。
堂々と公道OKなどのセールスコピーがついている。
これは真っ赤な嘘である。販売者が制度を詳しく理解せずに自己判断で販売しているにすぎない。
特定小型原付は20km/h以上出せない仕組みにしないと乗ってはいけないのである。つまり、ペダルを漕ぐと20km/h以上の速度が出せる可能性があるので、ペダル付きでは販売できない。
今まで特定小型原付と謳って販売していた会社はこぞって、公道使用可能“ただし”原付1種と販売名称を変えている。つまりペダルのついたただの原チャリなのである。当然、原付ナンバーの車両なので、車道しか走ってはいけない。

アレ

ペダル付きの特定小型原付は無い

最後に

公道が走れるフル電動自転車と謳っているものは全て第1種原動機付自転車だ。当然ヘルメットもいるし、免許もいる。当然歩道を走ってはいけないし、電源を切ったとて原付バイクなのだから歩道は車体を押して通行しなければならない。

その点、特定小型原付は、16歳以上なら誰でも乗れて、ヘルメット(努力義務)も免許も要らず、歩道もモード切り替えで運転することができる。
ただしく使えば非常に便利な移動ツールである。
この法改正で電動モビリティの魅力に気づいてもらえる人が増えると嬉しい。

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