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魚屋の詩です

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最近の記事

刺身

今日は刺身を作る 切りつけた刺身は 右から左へ リズム良く ドミノ倒しのあとのよう 階段状に並らぶ 区切りがつく 息が止まっている ことに気づく 大きく息を吸う 深呼吸 ふと思う 今 張り詰めた シャボン玉の中にいた 意識した時 それが弾けとび 我に帰る 刺身の呼吸 深呼吸が大切

    • あじの塩焼

      あじのヒレに 塩をたっぷりと つける ヒレがピンとたち 躍動感ある 絵画のような 焼魚になる 焼き立てに 箸を入れると 皮が弾け白い身が 湯気とともにあらわれる パリパリに焼きあがった ヒレをパキッとおり 口に入れると かるい食感 つよい塩味 すぐに身を食す 塩味と旨みが 口いっぱいにひろがり 目を瞑り うまみをからだいっぱい に吸い込み しばし時がとまる 塩焼の醍醐味

      • 晩秋を感じる 魚で感じる 北の大地で黒い塊 になり川をのぼる鮭 暑さ残る爽やかな秋の 日々はほんの少し前 鮭は皮目が銀色に輝き 身がオレンジだった 今は金木犀の香りも過ぎ 冬の空気を呼び起こす晩秋 鮭は皮目が黄金色を帯び 鮭の顔も厳つく牙を剥く 身は薄いオレンジに変わった 鮭で感じる季節のうつろい 晩秋 淡い光の中に鮭が輝く

        • マグロ

          先人が築きあげた 刺身用 冊 長方形にしていく 赤い身に白い筋 木の年輪模様 ひとつひとつ 違う模様 硬い木の板にみえてくる 大きく威厳のあるまぐろ 口に運ばれまでの1切 今日も思いを込めて 包丁をにぎる

          切身

          魚をさばいて 決められたトレーの中に 切身を乗せる 1尾の魚から1切の切身 皮と身の黄金比で 美しい切身が トレーと一体となり お店に並んだ 身は 白 赤 オレンジ ピンク 皮は 黒 青 銀 赤 色彩豊かな切身たち 魚をさばいて切身に 仕上げることは ひとつの作品 細部まで気を使いつくる 神は細部に宿る

          ごまさば

          毎日全国各地から 魚が届く 同じものはない その中で光り輝く ものがある 今日はごまさば まるまると張りのある魚体 ひかりものといわれる 箱を開け 手触り 感覚でわかる 今日一番だ いや今年一番だ 光に反射し魚体が 光り輝く 背側は 青黒銀色がまざり 唐草模様 腹側は ごまが散らばる 包丁を入れ 捌くと光が漏れ出す 私自身もひかりにつつまれる

          まな板をコロコロ かつおがころがる まるまるの魚体 背側は 黒青紫が混ざり合い 光の加減で色とりどり 腹側は銀色と白色 手触りは まるで 甲冑の胴体 ボーリングのボール フルフェイスヘルメット のような つるりと硬い感触 色も 手触りも うつくしい 鰹をさばく

          天然ぶり

          10k近くのぶり まな板いっぱいに広がる 背中は 黒に近い深緑色 腹は 白色を持つ魚体 うっすら黄色の線が 尾から頭にかけて 深緑と白色の間 をはしる はっきりと境界線のない 神秘的な色のグラデーション 切身にする 皮と身の黄金比 身は脂で光り輝き 皮は深緑もあれば 白色もある 黄色はなかなかない

          開店前の空気感

          朝 一番乗りで静まり返った 作業場に着く 作業開始前に 今日働く人が次々集った 開店まで持ち場の作業に それぞれが集中する 開店までの数時間 今日働く人は 今日のお店を作る 同じ方向に向かい ひとつのかたまりの 空気感がうまれる 人が違うと少し違う 毎日ちがう ひとかたまりの 空気感。

          開店前の空気感

          魚屋

          魚屋 何日か前まで海の中を泳いでいた魚 朝獲れ直送魚は何時間前まで海の中いた 漁師さんが獲り  ドライバーさんが運び わたしたちの元に届き 誰かの元に届ける そして 誰かの糧になる 魚屋は いのちといのち を繋ぐ仕事