不定期連載小説『YOU&I』42話
小金井から、中野たちと話しをした経緯を聞いた國立。しかし、どこか釈然としない。なぜ中野たちは急に小金井に話しかけたのか。中野の性格からして、初対面の人に話しかけることまでなら理解は出来る。だとしても、いきなり旅行に誘うのはさすがの中野もしないのではないか。
小金井を旅行に誘ったのには何か訳がある。
國立はそう考えた。
「なあ、本当に何も思い当たることはないのか?」
改めて小金井へと質問をする。小金井は嬉しそうにケーキを頬張りながら、
「ん? なんのこと?」
と、既に先ほどの会話は忘れているように答えた。
(……立夏の性格を考えても、何か隠しているような感じはないな。だとしたら俺の考え過ぎか? でも、この前の飲み会のときは冬真も立夏のことを知らなかったよな。それでいきなり旅行に誘うか?)
國立は考えれば考えるほど、疑問を抱いた。
その時、中野がちょうどバイトのためカフェへとやって来た。
(あれ? 春樹くんと立夏ちゃん?)
二人の姿を見かけた中野は話しかけようとしたが、
(そういえば冬真が、「変な詮索はするな」って言ってたっけ? 二人の邪魔しちゃ悪いし、もしかしたら見られたくないかもだから、気づかないふりしておこうかな)
と、あえて二人に気づかないふりをして過ごすことにした。
一方國立は、まだ中野が来たことには気づいていない。
(うーん。可能性としては、俺が中野さんのことを好きだってことに気づかれて、それで4人で行くことは止めようってことになったとか? でもそれなら俺を外せばいいだけだし、何でわざわざ立夏を誘うんだ?)
と、未だに頭を悩ませていた。
「ちょっと俺トイレ行ってくる」
國立は小金井にそう言い席を立つ。そしてトイレへと向かうとき、レジの方へと何気なく視線を送ると、そこに中野がいることに気づいた。
(ヤバっ! そういえばここ、中野さんのバイト先だった……。い、いま少しだけ目線あったよな……?)
と、恐る恐る中野の方を見てみると、中野は全く違う方向を向いていた。
(あれ? 気づかれてない? ……まあ今話しするのも何だから、とりあえず後で挨拶だけするか)
と、國立はそのままトイレへと向かった。
(気づかないふり、気づかないふり)
実はこのとき、中野も國立と目が合っていたのだが、気づかないふりをするためあえて目線を外していたのだった。
その後も、中野は國立らと何度かすれ違うも、気づいていないふりをし続けた。しかし、中野の性格もあり、その気づいていないふりは明らかに不自然であった。さすがの國立もそのことには気づいていた。
(中野さん、何か今日は様子がおかしいぞ。っていうか、何か俺らのことを避けてないか? ……もしかして、本当に俺が中野さんのことを好きなことがバレてるのか?)
今まではあくまで可能性として考えていたことが、中野の態度を見てより確信的なものへと変わった。
中野が自分のことを避けているかもしれない。
このことが國立にはとても重くのしかかった。
▶To be continued
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