不定期連載小説『YOU&I』21話
とうとう中野の家へと到着してしまった。
「よし、行こうぜ」
市ヶ谷は陽気にマンションのエントランスへと進んでいく。対する國立は、緊張で少しだけ膝が震えているのを感じとった。
「てか、結構いいとこに住んでるんだな」
市ヶ谷はマンションのエントランスに入りそうつぶやく。オートロックではないが、マンションのロビーには小洒落た観葉植物などが置いてあり、学生の一人暮らしと考えれば豪華なものと言える。
そして、二人でエレベーターに乗り3階へと上がっていく。
「えーと……305号室だからあそこだ!」
市ヶ谷は中野の部屋を見つけ、ドアの前まで進む。そしてインターホンを押し、
「市ヶ谷でーす」
と声をかける。
「はーい!」
インターホン越しから、中野の元気な声と、こちらへ向かう足音が聞こえた。それから間もなくして、
「いらっしゃーい!」
と元気な愛顔の中野が出迎えた。普段よりも少しラフな格好をしている中野。その姿に國立は一瞬見惚れてしまう。
「ならお邪魔するね」
市ヶ谷の言葉でハッと我に返った國立は、あとに続いて中野の部屋へと入っていく。
“女の子の部屋”
特段何かあるわけではないのだが、その響きだけで國立の心臓は大きく脈を打っている。どこに目線を送ったらいいのか、自分の足は汚くないかなど、色々なことが気になってしまいどうにも落ち着かない。
「お! お疲れ!」
リビングに入ると、そこには既に神田がくつろいでいた。神田もいつもよりもラフなスタイルをしていることに気づく。
「亜希は分かるけど、何でお前まで部屋着なんだよ?」
市ヶ谷もそのことに気づき、神田へと質問をした。
「あー、気づいちゃった? 実は昨日から亜希の家に泊まってるんだ」
「そうそう! どうせ早く来るなら泊まっちゃえってなって、昨日から二人で遊んでたんだよね」
と笑顔を見せ合う中野と神田。國立から見ても、この二人は本当に仲が良いことがうかがえた。
「さぁさぁ、そんなことはおいといて、さっそくゲームやろうよ!」
中野はそう言うと、市ヶ谷は待ってましたと言わんばかりに
「ソフトめっちゃ持ってきたぞ! 何からやる? ウイイレ? パワプロ?」
とカバンの中を探りはじめる。
「えー、スポーツ系は難しそうだからもっと簡単なのないの?」
どうやら神田もゲームはあまりやらないらしい。
「私は何でも出来るからどれからでもいいよ!」
対する中野は、ゲーム機を持っていることもありゲーム自体は結構得意な様子。
「うーん。だったらまずは王道だけどこれからやるか」
と言って市ヶ谷が取り出したのは『マリオカート』であった。普段めったにゲームをやらない國立でもマリオカートのことくらいは知っていた。小学生の頃に数回やったこともある。
(マリオカートなら俺にも出来るかも)
そんな淡い期待も出てきた。しかし、國立がやったことのあるマリオカートはかなり昔のもの。操作性も今よりもシンプルで単純なレースゲームであった。
なので、國立の淡い期待は、儚くも散ることになる。
▶To be continued
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