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【感想】コンクリート・ユートピア

2023年 韓国
監督 オム・テファ
出演 イ・ビョンホン
   パク・ソジュン
   パク・ボヨン

あらすじ

未曾有の大災害により、すべてが崩壊してしまった首都・ソウル。そんな中、奇跡的に原型を保っていたアパートがあった。
家を無くし、路頭に迷った人々は次から次へアパートへと逃げ込んでくる。増える避難民と住民たちとの間では、日々トラブルが止まらない。たまりかねた住民たちは会議を開き、代表を決めてこの難題に立ち向かうことになった。
直前の火事で勇敢に立ち回ったことから、代表に選ばれてしまったキム・ヨンタクは、冴えない普通の中年男性。初めは自信なさげに代表を務めるヨンタクだったが、周りから認められるにつれ、彼の振る舞いは変貌していく……。
崩壊した世界の“ユートピア“を舞台にしたスリラー映画。

感想

どんどんイケメンになっていくイ・ビョンホンを楽しむ映画です。

初めは挙動不審で隠キャなおっさんという雰囲気なんだけど、周りから「代表カッコいー!」と持て囃されているうちに、本当にイケおじになっていく変化が素晴らしい。

おそらくキャラクターのベースとなっているのは、世界一有名なちょび髭ことアドルフ・ヒトラーなんだと思う。彼もしがない美術家志望だったのが、時代と環境と多くの偶然により、最悪の独裁者へと変貌する。自信をつけたヨンタクが、激しい身振り手振りで演説するシーンとか、かなり意識してる気がします。

アパート内に忍び込んだ外からの避難民を「ゴキブリ」と称して捕まえていくのも、もろナチスの対ユダヤ政策って感じだし。スローガンとか号令とかもね。

独裁者とそれを信奉する人々、という過去の歴史を、災害が起こった現代というシチュエーションに落とし込んだこの設定はとても好みでした。じわじわと恐怖政治が蔓延していく不穏な空気とかも上手く作られています。

残念ポイントとして、ヨンタクのキャラとか舞台設定はそんな感じで奇抜かつ斬新だったんですけど、それに見合うだけのインパクトあるストーリー展開では無かったこと。言ってしまえば、テンプレで想像の範疇を超えてこない。あー、そうなるよね…という感想の連続で、新鮮な驚きはありませんでした。

ラストはバタバタと忙しい感じになるんですが、めっちゃ強引に締めに来たなぁと感じてしまいました。人の生き死にが急に雑になるところも含めて、ペース配分がよくない

あと、ヨンタクと対になる、もう一人の主人公であるミョンファに魅力がなかった。これは大きなマイナス要素だったと思います。

博愛主義で根っからの善人。狂気に飲まれたアパート内で彼女だけが正義感のままに行動する。聞こえはいいんですが、状況に対してあまりにマッチしていない行動というか、全体を通して見れば彼女の方が異常に見えてしまう感じなんですね。全然迷ったり悩んだりしないんです。

多分、彼女の言動について苛々してしまった視聴者も多いのではないでしょうか。それは、独裁者側の立場になって「余計なことをするな」と考えているというよりかは、この状況でそんだけ真っ当なのおかしいでしょ、っていう苛立ちだと思います。人間味がなさすぎる。決まったストーリーに展開するために用意された舞台装置のようだと感じてしまいました。

はい、長くなりそうなのでまとめます。斬新なシチュエーションと独裁者への変貌がべらぼうに面白い。しかし、その他の部分の建て付けが甘く、作品としての完成度を落としてしまっている、そんな映画でした。

以上、皆さんも災害には気をつけましょう。お疲れ様でした。


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