AIの発展は資本主義的なので、宇宙ブームとは背景が異なる話
HAL9000
2001年宇宙の旅にはHAL9000という人工知能が登場する。
孤独に任務を遂行しなくてはならない宇宙飛行士たちの話し相手になったり、チェスの相手になったり、時には人間を裏切ったりする。
近頃のAIブームを見ていると僕はいつもHAL9000のことを思い出す。
AIなんて言葉すら知らなかった幼少期において理想かつ未来の代名詞はいつもHAL9000だった。
宇宙開発競争
しかし、2001年宇宙の旅が制作された当時のAIと現在進行形で発展し続けるAIは大きくその背景が異なる。
2001年宇宙の旅が制作された当時は冷戦に伴う宇宙開発競争の真っ只中であった。
当時の技術進歩の原動力は戦争や国際的対立と緊張であって、純粋な探求心や資本主義的な競争の原理には基づいていなかった。
しかし、今回のAIブームによる競争の過熱化は間違いなく国家、国際間に起因するものではなく、企業や市場に基づいた競争の原理に端を発しており、国家はむしろそうした世界的な現象になんとか対処しようと追いつくので必死に見える。
イタリアはCharGPTの国内での使用を禁止にして、実際にアクセスできなくなった。
中国も体制保護の意味もあり、公式にはアクセスできないようになっている。
他の国も法整備などのルール作りに追われている印象だ。
Kubrick
宇宙開発競争は冷戦が終わったと同時に急激に衰退していった。
原動力がなくなった途端にまったく進まなくなった。
冷戦下での宇宙開発のスピードが凄まじかっただけに当時の人々は宇宙への未来は加速度的に近づき、数年単位で想像を超えるような結果をもたらすと感じていた。
結果として、2001年宇宙の旅のような数十年後の全く変わった未来を描く作品が多く生まれた。
しかし2001年から22年経った2023年になっても映画が描いたほどの変化は起きていない。
HAL9000もまだ生まれていない。
原動力が純粋な資本主義の原理に乗っかっていなかったからだ。
原動力の喪失とともにSF作品が描いた未来も喪失していった。
資本主義的未来
現在のAIブームは原動力が資本主義に基づいたものだ。
かつての宇宙開発競争のように急激に進歩が止まってしまうなんてことはないだろう。
国家が使用を禁止しようが、テック業界の大物たちがAI開発に待ったをかけようが止まることがない。
もちろん、それは危険性も孕んでいる。
おそらくコントロールは一度は失われ、大事件が起きる。
それでも止まることはない。
車だって、ネット掲示板だって、なんだって新しい技術に摩擦は付きものだ。
ルールも整備されておらず、現行の社会との折り合いもできていない。
さらに人々も慣れていない中、なにかしらの摩擦が起きるのは当然であり、そしてそれは織り込み済みであるべきだ。
事件が起きたときにじゃあ辞めてしまえという人は必ず現れる。
でもそれは思考の放棄にほかならない。
AI
AIは確実に人間にとって利益を生み出すことのできる技術だ。
AIに人間が乗っ取られるとかそういった幼稚な話じゃない。
現実的なよりよい未来のためにできる方法を考えていくべきだ。
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