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会社の価値は純資産か?

純資産よりも高い価格で会社を買収した場合、のれんが発生する。
高いのれんの計上は将来の減損リスクとして、懸念する日本企業がある。
また中には、会社の本質的な価値は純資産であり、それを超える部分ののれんに大きな金額を支払うのはなんとなく損をしているように感じる人もいるようだ。
「のれん」という薄っぺらな感じがする名前が良くないのかもしれない。

残念ながら現在の企業会計では、企業価値を正しく計上することができない。なぜならバランスシートには有形資産の価値しかのらないルールとなっているからだ。
有形資産は、現金の他、商品や設備、不動産など、お金を出せばいつでも誰でも手に入りやすいものが多い。
一方で、優秀な人材、他社がまねできない技術、唯一無二のビジネスモデル、顧客や取引先との関係といったバランスシートに乗らない無形資産こそ、M&Aでしか手に入らない貴重な資産じゃないだろうか?

会社は、バランスシートに計上できる純資産だけでは成り立たず、上記のようなバランスシートに乗らない無形資産があって初めて利益を生み出す会社として機能する。
これら無形資産の価値は、買収後すべてのれんに含まれる。
適切なのれんを支払って、貴重な無形資産を手に入れることにこそ、M&Aの意義があると私は考える。

ただし、無形資産を価値を正しく評価することは簡単ではない。同じ社員100人でも、会社に大きな利益をもたらしている貴重な人材と、会社に貢献しておらず、今後コストをかけてリストラしなくてはならない社員では当然ながら価値が異なる。
単純に社員100人の会社より、社員1000人の会社の方が高い価値の無形資産を保有しているとはいえない。結局はその無形資産がどれだけ会社に利益をもたらしているかが、無形資産の価値の評価で最も重要な要素となる。
利益を産まない無形資産はいくら持っていても企業価値にプラスにならないどころか、むしろマイナス要因となり、そうなると資産ではなく負債に近い。

当たり前の結論になってしまうが、M&Aにおける企業価値算定では、対象企業のバランスシートだけでなく、どのような価値の無形資産を持っているのか?というその実態を正しく評価し、適切なValuationを行うことこそが重要だと改めて強調したい。無形資産を正しく評価することは簡単ではないが、その評価が過大であれば将来大きな減損のリスクを抱えることになるし、過小であれば本来魅力的な投資案件を逃すことになりかねない。いずれにせよM&Aや投資は成功しないと思われる。

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