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研究備忘録:「グローバル経済を蜘蛛の巣のように巧みに絡めとるロンドン金融街 :英国の植民地遺産が築き上げたグローバル金融ネットワークの実態」


要旨

ロンドン金融街(The City of London: ザ・シティ・オブ・ロンドン)は、英国経済の中心地であると同時に、グローバル金融市場を支配する中核的存在として機能している。本稿は、ロンドン金融街が「英国の第二帝国」とも呼ばれる広大なオフショア金融ネットワークを通じて、租税回避、規制回避、そして資本移動の自由を実現する仕組みをどのように構築し、維持してきたかを明らかにすることを目的とする。ロンドン金融街の影響力は、法的・制度的な自律性、英国帝国の歴史的遺産、そして戦略的に配置されたオフショア管轄地を基盤としており、これらがグローバル金融市場における資本の流動性と匿名性を支えている。一方で、この仕組みは国家主権の侵食、社会的不平等の拡大、金融システムの不安定化といった重大な課題を引き起こしている。具体的には、租税回避地(Tax Haven: 低い税率や税の優遇措置を提供する地域/多国籍企業や富裕層が税負担を軽減するために利用する地域)や秘密管轄地(Secrecy Jurisdiction: 金融取引の秘密保持を強化するための法制度を持つ地域/税情報や金融取引の透明性が低く、資金の出所や所有者を隠すことが容易なため、租税回避や資金洗浄に利用される地域)の利用による税収減少、影の銀行業務や特別目的事業体(SPV)の乱用による金融リスクの増大、そして開発途上国からの資本流出が指摘される。

2023年12月1日にSOAS(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)で公開された映画『The Spider’s Web: Britain’s Second Empire』(『蜘蛛の巣:英国の第二帝国』)は、過去と現在の英国帝国、そしてその植民地や遠隔地における拠点について独自の洞察を提示し、特に第二次世界大戦後に旧帝国が租税回避地や秘密管轄地を中心とする新たな金融帝国へと変貌したプロセスを明らかにしている。この映画は、ロンドン金融街が「英国の第二帝国」の中核として機能し、世界金融市場の支配を維持してきた実態を告白しており、本稿を執筆する動機となった。

さらに、本稿は、このオフショア金融ネットワークが「ディープ・ステーツ(深層国家)」として都市伝説的に語られることがある一方で、実際には詳細な分析と視点の転換によってその構造と影響力を明確に把握できる「シャロー・ステーツ(浅層国家)」としての側面を持つことを論じる。この構造を解きほぐすことは現実的には極めて困難であるが、その存在を直視し、透明性を高め、国際的な協力と規制の強化を通じてその影響を最小化する取り組みが必要であることを提言する。本稿は、ロンドン金融街の役割とその影響を学術的に解明し、持続可能で公平なグローバル経済の実現に向けた課題を浮き彫りにするものである。


目次

序論

第1章:ロンドン金融街とそのオフショア帝国

1-1. ロンドン金融街の法的・制度的基盤

1-2. 歴史的基盤:帝国の遺産

1-3. 支配のメカニズム

第2章:グローバル金融化におけるロンドン金融街の役割

2-1. グローバル金融ネットワーク(GFN)の中核としてのロンドン金融街

2-2. ユーロダラー市場の成長を通じた影響力の強化

2-3. 世界経済の金融化を推進する原動力

2-4. グローバルな影響力の拡大

第3章:ロンドン金融街の影響と課題

3-1. 国家主権の侵食

3-2. 社会的不平等の拡大

3-3. 金融システムリスクの増大

第4章:まとめ

第5章:おわりに

参考資料



序論

2023年12月1日、SOAS(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)にて映画『The Spider’s Web: Britain’s Second Empire』(『蜘蛛の巣:英国の第二帝国』)が公開された。この映画は、映画監督マイケル・オズワルド氏とタックス・ジャスティス・ネットワーク(Tax Justice Network)のジョン・クリステンセン氏による共同制作であり、SOASオープン・エコノミクス・フォーラムおよびウラニア・ディマク教授(SOAS所属)によって主催されたものである(Oswald, 2017)。『The Spider’s Web』は、英国帝国の歴史的遺産とその進化を描き、過去と現在の英国帝国、特にその植民地や遠隔地における拠点がどのようにして世界経済および金融システムに影響を与え続けているのかを精緻に分析している(Oswald, 2017; Shaxson, 2011)。

この映画の中心的なテーマは、第二次世界大戦後の英国の経済的・政治的変貌である。戦争後、英国は植民地の直接的な支配を失ったものの、租税回避地や秘密管轄地を中心とする「新たな金融帝国」の構築を通じて、経済的および金融的影響力を維持してきた(Palan et al., 2010; Shaxson, 2011)。この「英国の第二帝国」と呼ばれるネットワークの中心に位置するのが、ロンドン金融街である。本映画は、ロンドン金融街が英国本土のみならず、旧植民地や海外領土、さらには他の租税回避地を結びつけるグローバルな金融ネットワークの中核としてどのように機能しているのかを明らかにしている(Oswald, 2017; Vlcek, 2013)。また、ロンドン金融街が租税回避、資本フローの管理、高度な金融サービスの提供を通じて、国家主権や国際的な規制を超越する力を持つ仕組みを詳細に描写している(Haberly & Wójcik, 2014; Shaxson, 2011)。

この映画によって浮き彫りにされたのは、ロンドン金融街が「蜘蛛の巣(スパイダーウェブ)」のように世界金融市場を密かに絡め取る構造である。この蜘蛛の巣は、英国の旧植民地や海外領土(英領バージン諸島、ケイマン諸島、バミューダなど)を含む広範なオフショア金融ネットワークを基盤としており、これらの地域が租税回避、規制の裁定取引、金融取引の秘密保持を可能にする制度的インフラを提供している(Palan et al., 2010; Sikka & Willmott, 2010)。この金融ネットワークは、英国の歴史的な植民地政策によって築かれた法制度や政治的・経済的関係を土台としており、現在でもグローバル経済における資本移動の中核的役割を果たしている(Vlcek, 2013; Haberly & Wójcik, 2014)。

一方で、この金融ネットワークがもたらす影響は、単なる経済的な利便性にとどまらず、国家主権の侵食、社会的不平等の拡大、そして金融システムの不安定化といった深刻な課題を引き起こしている(Findley et al., 2012; Oxfam, 2000)。例えば、租税回避地を利用した多国籍企業や富裕層による租税回避行為は、各国政府にとって必要不可欠な税収を減少させ、公共サービスへの投資を阻害している(Shaxson, 2011)。また、影の銀行業務(シャドーバンキング)や特別目的事業体(SPV)の利用が金融市場の透明性を低下させ、2008年の金融危機のようなシステミックリスクを増大させていることが指摘されている(Sikka & Willmott, 2010; Wójcik, 2013a)。

さらに、この蜘蛛の巣の存在は、その歴史的背景を考慮するとき、単なる経済的な現象にとどまらない。『Regional Blocks and Imperial Legacies - Mapping the Global Offshore FDI Network』(Haberly & Wójcik, 2014)における研究が示すように、このグローバルな金融ネットワークは、歴史的な社会・政治的関係の層が重なり合うことで形成されたものであり、欧州の植民地支配、特に英国の帝国主義的遺産がその設計原理となっている(Haberly & Wójcik, 2014; Palan et al., 2010)。これにより、英国は直接的な植民地支配を失った後も、旧植民地や海外領土を利用して経済的な支配を維持し、グローバルな資本フローを操作する仕組みを構築してきたのである(Vlcek, 2013)。

本稿では、『The Spider’s Web』(Oswald, 2017)で提示された内容を出発点とし、『Regional Blocks and Imperial Legacies』(Haberly & Wójcik, 2014)における学術的知見を補強的に活用しながら、ロンドン金融街(The City of London:ザ・シティ・オブ・ロンドン)がどのようにして世界金融市場を密かに絡め取り、その影響力を行使し続けているのかを考察する。特に、本稿は次の問いに答えることを目指す。ロンドン金融街がどのようにしてこの「蜘蛛の巣」を構築し、維持しているのか? そして、このネットワークがグローバル経済に与える影響とは何か? さらに、これらの課題にどのように対応可能かという視点から、持続可能な経済の実現に向けた方向性を探る。


第1章:ロンドン金融街とそのオフショア帝国

ロンドン金融街は、英国経済の中心地であるだけでなく、グローバル金融市場の中核として機能している。その影響力は、法的・制度的な自律性、英国帝国の歴史的遺産、そして戦略的に配置されたオフショア金融ネットワークを通じて世界中に広がっている。本節では、ロンドン金融街の法的基盤、歴史的背景、そしてその支配を支えるメカニズムについて概説する。

1-1. ロンドン金融街の法的・制度的基盤

ロンドン金融街は、英国の他の地域とは異なる法的・政治的自律性を享受する特異な存在である。この自治権は、ロンドン金融街が国家規制の影響を相対的に受けにくくし、グローバルな金融ハブとしての地位を確立する基盤となっている(Palan et al. 2010; Shaxson 2011)。この特異性は、ロンドン金融街が単なる地理的なエリアを超え、国際的な金融ネットワークの中核として機能することを可能にしている。

ロンドン金融街の真の力は、その地理的な境界の内側にとどまらず、「英国の第二帝国」とも呼ばれる広大なオフショア管轄地のネットワークに依存している。このネットワークは、ロンドン金融街の経済的優位性を支える主要な手段であり、租税回避、規制の裁定取引、金融の秘密保持を可能にする制度的インフラを提供している(Palan et al. 2010; Wójcik 2013a)。

主要なオフショア管轄地
ロンドン金融街のオフショアネットワークを構成する主要な管轄地には以下の地域が含まれる:

  • 英海外領土:ケイマン諸島、英領バージン諸島(BVI)、バミューダ、ジブラルタル

  • 王室属領:ジャージー、ガーンジー、マン島

これらの地域は、英国帝国の支配下にあった地域であり、その法制度、特にコモンローに基づく仕組みが現在でも機能している(Palan et al. 2010; Shaxson 2011)。これにより、ロンドン金融街はこれらの地域を利用して、グローバルな資本フローの管理を行い続けている。

  • ケイマン諸島と英領バージン諸島(BVI):これらの管轄地は、ペーパーカンパニーや特別目的事業体(SPV)の設立地として広く利用されている。これにより、資産の匿名性が保たれ、税負担が軽減される仕組みが整備されている(Vlcek 2013; Sikka and Willmott 2010)。

  • バミューダ:再保険や金融派生商品の中心地として機能しており、これらの高リスク・高収益の金融取引を支える重要なノードである(Shaxson 2011)。

  • ジブラルタル:ヨーロッパとアフリカの接点として、貿易や金融取引の拠点となっている(Vlcek 2013)。

  • ジャージー、ガーンジー、マン島:これらの王室属領は、信託制度や資産管理の分野で特化しており、富裕層や企業が資産を保護しつつ税負担を軽減するためのプラットフォームを提供している(Palan et al. 2010; Sharman 2012)。

これらの地域が提供する法的・制度的インフラは、ロンドン金融街を世界金融ネットワークの中心的存在として維持する鍵となっている(Wójcik 2013a)。

1-2. 歴史的基盤:帝国の遺産

ロンドン金融街の支配力は、英国帝国の歴史的遺産に深く根ざしている。植民地支配の時代に、英国はその広大な領土内外で法的、金融的、貿易ネットワークを構築した。このネットワークは、植民地が独立を果たした後も存続し、多くの元植民地がオフショア金融センター(OFC)として機能するようになった(Palan et al. 2010; Shaxson 2011)。

a. 英国帝国の遺産の継承

  • 法制度の継承:ケイマン諸島やBVIのような旧英領の管轄地は、英国帝国時代に構築された法制度、特にコモンローの伝統を受け継いでおり、これがオフショア金融取引における一貫性と信頼性を提供している(Palan et al. 2010; Vlcek 2013)。

  • ネットワークの維持:英国の植民地政策は、インフラや金融制度の整備だけでなく、商業ネットワークや人的ネットワークの構築にも重点を置いていた。この結果、これらのネットワークは現在でもロンドン金融街の影響力を維持するための基盤として機能している(Sharman 2012; Wójcik 2013b)。

b. 地域別の役割

  • インド洋地域:モーリシャスやセーシェルは、アフリカやアジアの資本フローを仲介するハブとして重要な役割を果たしている(Vlcek 2013)。

  • カリブ海地域:BVI、ケイマン諸島、バミューダは、租税回避や資本移動の拠点として機能しており、特にケイマン諸島は世界最大級のヘッジファンド拠点として知られている(Shaxson 2011; Palan et al. 2010)。

このように、ロンドン金融街は帝国時代に築かれたネットワークを活用し、各国の規制を迂回しながら、グローバルな金融フローへの支配力を維持している。

1-3. 支配のメカニズム

ロンドン金融街は、複数の戦略的メカニズムを通じて、オフショアネットワークを介しグローバル金融市場への支配を確立している。

a. オフショア金融センター(OFC)の役割

  • 租税の裁定取引:ルクセンブルク、バミューダ、オランダなどの管轄地を通じて投資を行うことで、多国籍企業は税負担を大幅に軽減している(Weyzig 2012; Palan et al. 2010)。これにより、利益を低課税地域に移転する仕組みが整備されている。

  • 規制の裁定取引:オフショア管轄地は、厳しいオンショア規制を回避する手段を提供しており、影の銀行業務や移転価格操作を可能にしている(Sikka and Willmott 2010; Wójcik 2013a)。これにより、企業は国際的な規制を回避しながら、資本移動の自由を享受している。

b. 高度なビジネスサービス(ABS)プロバイダー
ロンドン金融街には、PwC、デロイト、EY、KPMGといった世界的な会計、法律、コンサルティング会社が集中している。これらの企業は、オフショア管轄地を利用した複雑な金融構造を設計し、運用する役割を果たしている(Wójcik 2013a)。

  • ペーパーカンパニーの設立:ABSプロバイダーは、ロンドン金融街とオフショア管轄地をつなぐ仲介者として機能し、ペーパーカンパニーや特別目的事業体(SPV)を用いることで、金融取引の出所や目的地を曖昧にしている(Sharman 2012; Sikka and Willmott 2010)。

  • 匿名性の確保:これにより、資産の匿名性が保たれ、規制当局の監視を回避することが可能となっている(Palan et al. 2010)。

c. 秘密性と透明性の欠如

  • 金融秘密の提供:ロンドン金融街の影響下にあるオフショア管轄地は、かつてないレベルの金融秘密を提供し、規制当局や税務当局が資金フローを追跡することを困難にしている(Shaxson 2011; Findley et al. 2012)。

  • 新興市場への影響:特にロシアや中国などの新興市場からの資本フローがロンドン金融街のオフショアネットワークに依存しており、これらの国々は資本逃避や「逆流投資」の主要な発信地となっている(Vlcek 2013; Wójcik 2013a)。

d. カリブ海金融の「バミューダ・トライアングル」

  • 主要拠点:英領バージン諸島(BVI)、ケイマン諸島、バミューダは、カリブ海におけるオフショア金融の「三角地帯」として知られている(Haberly and Wójcik 2014)。これらの拠点は、租税回避と資本移動を支える重要なノードである。

  • 具体例:BVIは、中国やロシアからの資本フローを管理する主要な中継地であり、特に中国の「逆流投資」において重要な役割を果たしている(Vlcek 2013)。ケイマン諸島はヘッジファンドおよび再保険取引の中心地として機能し、バミューダは高度な金融派生商品の取引で知られている(Shaxson 2011; Palan et al. 2010)。


第2章:グローバル金融化におけるロンドン金融街の役割

ロンドン金融街は、単なる英国の金融中心地を超え、グローバル金融市場における支配的な役割を果たしてきた。その影響力は、オフショア金融ネットワークの活用を通じて拡大し、世界経済の金融化を推進する主要な原動力となっている。本セクションでは、ロンドン金融街の役割を「グローバル金融ネットワークの中核」「ユーロダラー市場の成長」「世界経済の金融化」という観点から概説する。

2-1. グローバル金融ネットワーク(GFN)の中核としてのロンドン金融街

ロンドン金融街は、グローバル金融ネットワーク(Global Financial Network, GFN)の中心的ノードとして機能している。このネットワークは、オフショア金融センター(Offshore Financial Centers, OFCs)を結びつけることで、資本のグローバルな流動性を支えるインフラストラクチャを提供している。

  • 主要なノードとの連携
    文書「Regional Blocks and Imperial Legacies」によれば、ロンドン金融街はルクセンブルク、オランダ、スイス、英領バージン諸島(BVI)といった主要なオフショア管轄地と密接に結びついている(Haberly and Wójcik 2014)。これらの地域は、資本フローの中継点として機能し、ロンドン金融街を中心としたネットワークの一部を構成している。たとえば、ルクセンブルクやオランダは「税制上の裁定取引」の拠点として広く利用されており(Palan et al. 2010)、BVIやケイマン諸島はペーパーカンパニーの設立地として重要である(Vlcek 2013)。

  • 「ネットワークコア」の形成
    PCA(主成分分析:Principal Component Analysis)の結果に基づき、ロンドン金融街は「ネットワークコア」と呼ばれる中心的な領域に位置している。このコアには、英国、ルクセンブルク、オランダ、スイス、BVIといった管轄地が含まれ、これらがグローバルなオフショア資本の流動性を支えている(Haberly and Wójcik 2014)。興味深いことに、ルクセンブルクとオランダは全ての主要なネットワークに関与しており、特に多国籍企業の租税戦略において重要な役割を果たしている(Wójcik 2013a; Weyzig 2012)。

  • 資本のグローバル循環の仲介
    ロンドン金融街を中心とするネットワークは、オフショア金融の「パイプライン」として機能し、資本を低課税・高秘密保護地域に効率的に移動させる(Shaxson 2011)。これにより、多国籍企業や富裕層は、税負担を軽減しつつ、規制を回避することが可能となっている。また、このネットワークは、英国の「第二帝国」と称される構造の一部として、旧植民地との歴史的な結びつきを活用している(Palan et al. 2010; Shaxson 2011)。

2-2. ユーロダラー市場の成長を通じた影響力の強化

ロンドン金融街は、戦後の国際金融市場における資本規制を回避するための革新的な手段として「ユーロダラー市場」の成長を支えてきた。この市場は、ロンドンを拠点にしながら、規制が適用されない米ドル建ての貸付と取引を可能にした無規制市場である。

  • ユーロダラー市場の起源と成長
    戦後のブレトンウッズ体制の下で、資本移動が厳しく規制される中、ユーロダラー市場はロンドンで急速に発展した。この市場は、米ドル建ての取引が英国の規制外で行われるため、完全に「オフショア」とみなされ、国境を越えた資本フローを促進する役割を果たした(Shaxson 2011; Wójcik 2013a)。

  • 市場規模の拡大
    1980年代にはユーロダラー市場は5,000億ドル規模に達し、1988年には4.8兆ドル、1998年には国際貸付の約90%がこの無規制市場を通じて行われるようになった(Shaxson 2011)。この急成長により、ロンドン金融街はグローバル金融市場の中心としての地位を確立し、規制の枠外で巨大な資本フローを管理する力を得た。

  • 影響の拡大
    タックス・ジャスティス・ネットワークのアレックス・コブハム氏によれば、ユーロダラー市場は「他国で行われた経済活動を別の場所で行われたように見せかける」仕組みを作り出した(Haberly and Wójcik 2014)。この市場を通じて、ロンドン金融街は規制や課税を回避する新たな仕組みを提供し、金融活動の透明性を低下させた(Palan et al. 2010)。

2-3. 世界経済の金融化を推進する原動力

ロンドン金融街は、グローバル経済の「金融化」を推進する主要な原動力となっている。金融化とは、実体経済への投資よりも、金融エンジニアリングや資本フローの操作を優先する経済構造への移行を指す。

  • 知的財産(IP)を介した利益移転
    多国籍企業は、知的財産(IP)をオフショア管轄地に移転させることで、利益を低課税地域に移動させている(Seabrooke and Wigan 2014)。たとえば、企業はブランド、特許、著作権といった「無形資産」を利用して、税制上の優遇を享受できる地域に利益を再配分している。これにより、実体経済の活動とは無関係に、企業は大幅な税負担の削減を実現している(Haberly and Wójcik 2014)。

  • 影の銀行業務とシステムリスク
    ロンドン金融街のオフショア拠点は、規制されていない金融活動のための法的基盤を提供している。この「影の銀行業務」は、金融商品や資産の透明性を低下させ、2008年の金融危機の一因ともなった(Wójcik 2013a; Shaxson 2011)。このような活動は、グローバル経済におけるシステムリスクを増大させる要因となっている(Sikka and Willmott 2010)。

  • 資本蓄積と富の集中
    ロンドン金融街が主導する金融化のプロセスは、富裕層や多国籍企業による資本蓄積を助長し、結果として富の集中を引き起こしている。この仕組みは、特に開発途上国において資本流出を加速させ、社会的不平等を拡大させる原因にもなっている(Oxfam 2000; Baker 2005)。

2-4. グローバルな影響力の拡大

ロンドン金融街は、租税回避地や秘密管轄地との連携を通じて、グローバル金融ネットワークの中心的存在としての役割を果たしている。このネットワークを利用することで、ロンドン金融街は資本フローを管理し、規制や課税を回避する仕組みを提供している。

  • 旧植民地との結びつき
    ロンドン金融街は、英国の旧植民地であるオフショア管轄地を活用し、歴史的な結びつきを維持している。これにより、英国の「第二帝国」という形で、経済的影響力を世界中に拡大している(Palan et al. 2010; Vlcek 2013)。

  • 国際的なロビー活動
    ロンドン金融街UKなどの団体を通じて、ロンドン金融街は英国国内外での金融政策に強い影響を与えている。これにより、ロンドン金融街は規制緩和を推進し、金融市場の自由化を維持する力を持っている(Shaxson 2011)。


第3章:ロンドン金融街の影響と課題

ロンドン金融街は、グローバル経済における重要な金融ハブとして機能しているが、その活動と影響は広範な課題を引き起こしている。ロンドン金融街が形成するオフショア金融ネットワークは、国家主権の侵食、社会的不平等の拡大、そして金融システムリスクの増大に深く関与している。以下では、それぞれの課題を考察する。

3-1. 国家主権の侵食

ロンドン金融街のネットワークは、租税回避地や秘密管轄地を活用することで、国家による租税・規制の施行を著しく難しくしている。これにより、各国の主権が侵害される形となっている。

  • 租税回避と規制の裁定取引
    ロンドン金融街を中心とするオフショア金融ネットワークは、企業や富裕層が租税回避や規制の裁定取引を行うための主要なインフラを提供している。多国籍企業は、ルクセンブルクやオランダ、ケイマン諸島といった管轄地を利用して利益を移転させ、課税逃れを行っている。このような行為により、各国政府は重要な税収を失い、財政基盤が弱体化している(Palan et al. 2010; Shaxson 2011)。

  • 法的空白の利用
    秘密管轄地の法制度は、国際的な規制の枠外にあるため、企業や富裕層が法的責任を回避する手段を提供している(Picciotto 1999)。たとえば、英国の旧植民地であるジャージーやマン島は、信託制度を利用して資産の匿名性を確保する仕組みを整備している。これにより、各国の規制当局が資金フローを追跡し、課税対象とすることが困難になっている。

  • 国家間の不公平な競争
    ロンドン金融街のネットワークを利用する企業は、税率の低い管轄地を選ぶことで競争優位性を高めているが、これにより国家間で公平な競争が損なわれている(Haberly and Wójcik 2014)。さらに、OECD諸国の一部(例:ルクセンブルク、オランダ)は、租税回避地として機能しており、他国の租税政策を直接的に侵害している(Vlcek 2013)。

3-2. 社会的不平等の拡大

ロンドン金融街のオフショア金融ネットワークは、富の集中を助長し、グローバルな社会的不平等を深刻化させている。

  • 租税回避による富の集中
    多国籍企業や富裕層は、オフショア管轄地を利用して課税を回避することで、巨額の富を蓄積している(Shaxson 2011)。たとえば、英領バージン諸島(BVI)やケイマン諸島は、ペーパーカンパニーを通じて資産を匿名化し、税負担を軽減する仕組みを提供している。結果として、これらの富裕層や企業は、社会的な負担を共有することなく公共サービスの恩恵を享受している。

  • 開発途上国への影響
    開発途上国は、ロンドン金融街のネットワークを通じた資本逃避の主要な被害者である。オフショア管轄地を利用することで、これらの国々から大量の資本が流出し、税収が失われている(Oxfam 2000; Baker 2005)。たとえば、ナイジェリアやケニアのような国々では、エリート層が汚職資金をオフショアに移転し、国内の経済成長を阻害している(Vlcek 2013)。

  • グローバルな不平等の加速
    ロンドン金融街を中心とするネットワークは、富裕層に有利な仕組みを提供する一方で、一般市民に対する負担を増加させている。例えば、租税回避による税収の欠如は、公共サービスへの投資を減少させ、社会的不平等をさらに拡大させている(Palan et al. 2010)。


3-3. 金融システムリスクの増大

ロンドン金融街のネットワークは、影の銀行業務やオフショアSPV(特別目的事業体)の利用を通じて、グローバルな金融システムのリスクを高めている。

  • 影の銀行業務
    ロンドン金融街は、規制されていない金融活動の拠点として機能しており、これにより金融危機のリスクが増大している。2008年の金融危機では、ロンドン金融街を含むオフショア金融ネットワークが複雑な金融商品を生み出し、金融システム全体に不安定性をもたらした(Wójcik 2013a)。

  • オフショアSPVの利用
    特別目的事業体(SPV)は、資産を匿名化し、リスクを隠蔽するために使用されている。これにより、規制当局が金融の実態を把握することが難しくなり、金融システムの透明性が低下している(Sikka and Willmott 2010)。たとえば、ケイマン諸島やルクセンブルクは、大規模なSPV取引の主要拠点として機能しており、これが金融市場の不安定性に寄与している。

  • システミックリスクの増加
    ロンドン金融街を中心とするネットワークは、金融機関間の相互依存性を増大させており、これによりシステミックリスクが高まっている。特に、オフショア管轄地を利用した資本フローの規模が拡大する中で、金融危機が一国の枠を超えてグローバルに波及しやすくなっている(Haberly and Wójcik 2014)。


第4章:まとめ

ロンドン金融街は、自律的な法的基盤、帝国時代からの遺産、そして戦略的に構築されたオフショア金融ネットワークを通じて、グローバル金融市場における支配的地位を築いてきた。その影響力は、単なる金融取引の中心地にとどまらず、世界的な資本移動を仲介し、租税回避や規制回避、そして金融取引の匿名性を実現する制度的インフラを提供することで、現代のグローバル経済において不可欠な要素となっている(Palan et al. 2010; Shaxson 2011; Wójcik 2013a)。

しかし、このような仕組みは、単に経済的な利便性を提供するだけでなく、国家主権の侵食、社会的不平等の拡大、そして金融システムリスクの増大といった重大な課題を引き起こしている。これらは、ロンドン金融街の影響力がもたらす深刻な副作用である。

4-1. ロンドン金融街の役割と影響

ロンドン金融街は、グローバル金融ネットワーク(GFN)の中心として機能し、ユーロダラー市場の成長や世界経済の金融化を通じて、世界中の資本フローを管理してきた。ユーロダラー市場の急速な拡大により、ロンドン金融街は規制の枠外で巨大な資本を動かす力を得ており、これがグローバル金融市場における支配力をさらに強化している(Shaxson 2011; Wójcik 2013a)。また、ロンドン金融街は、租税回避地や秘密管轄地と連携することで、規制や課税を回避する仕組みを提供し、富裕層や多国籍企業にとって有利な環境を整備してきた(Haberly and Wójcik 2014; Vlcek 2013)。

一方で、このネットワーク(スパイダーウェッブ:蜘蛛の巣)は、世界的なシステムリスクや社会的不平等の拡大にも寄与している。特に、影の銀行業務やオフショア金融商品が2008年の金融危機を引き起こした一因として指摘されており、これらの活動がもたらす金融システムの不透明性と不安定性が問題視されている(Wójcik 2013a; Sikka and Willmott 2010)。

4-2. オフショア金融ネットワークの課題

ロンドン金融街が形成するオフショア金融ネットワークは、グローバル経済における資本フローの効率化を実現する一方で、国家主権や社会的公平性に深刻な影響を与えている。

  • 国家主権の侵食
    ロンドン金融街のネットワークは、租税回避地や秘密管轄地を活用することで、国家による租税・規制の施行を困難にしている。これにより、各国政府は税収を大幅に失い、財政基盤が弱体化している(Palan et al. 2010; Shaxson 2011)。特にルクセンブルクやオランダのようなOECD諸国が租税回避地として機能し、他国の租税政策を直接的に侵害している点は、国家間の公平性を損なう要因となっている(Vlcek 2013; Haberly and Wójcik 2014)。

  • 社会的不平等の拡大
    租税回避を可能にするロンドン金融街のネットワークは、富裕層や多国籍企業にとって有利な仕組みを提供し、富の集中を助長している(Shaxson 2011)。その結果、開発途上国からの資本流出が加速し、経済成長が阻害されるとともに、社会的不平等がさらに悪化している(Oxfam 2000; Baker 2005)。

  • 金融システムリスクの増大
    ロンドン金融街のネットワークは、影の銀行業務やオフショア特別目的事業体(SPV)の利用を通じて、金融市場の透明性を低下させている。これにより、金融危機が一国の枠を超えてグローバルに波及するリスクが高まっており、特にオフショア管轄地を利用した複雑な資本フローがシステミックリスクを増大させている(Haberly and Wójcik 2014; Sikka and Willmott 2010)。

4-3. 持続可能なグローバル経済のための有識者からの提言

ロンドン金融街の役割を再評価し、その影響を適切に規制することは、持続可能なグローバル経済の実現に向けた重要な課題である。以下のような協調的な取り組みが求められている:

  • 金融透明性の向上
    ロンドン金融街を含むオフショア金融ネットワークの透明性を高めるため、国際的な情報共有制度を強化し、租税回避地の機能を制限する必要がある(Findley et al. 2012; Palan et al. 2010)。

  • グローバルな租税回避を防ぐための国際的税制改革
    富裕層や多国籍企業が租税回避を行う仕組みを解消するため、国際的な税制の調和を進めることが重要である。特に、利益移転と移転価格操作を防ぐための統一ルールが必要である(Weyzig 2012; Sikka and Willmott 2010)。

  • 金融システムの安定化
    影の銀行業務やオフショアSPVの利用を規制するため、国際的な金融規制の枠組みを強化し、金融市場の透明性と安定性を確保することが求められる(Wójcik 2013a; Shaxson 2011)。


第5章:終章

ロンドン金融街は、まるで世界の金融システムを密かに支配する巨大な蜘蛛の巣(スパイダーウェブ)のように機能している。この蜘蛛の巣は、英国の旧植民地や秘密管轄地を結びつける広大なオフショア金融ネットワークを基盤とし、グローバル経済のあらゆる隅々にその糸を張り巡らせている(Palan et al., 2010; Shaxson, 2011)。このネットワークを通じて、ロンドン金融街は資本の流れをコントロールし、国家の規制を超越して金融の透明性を覆い隠しながら、租税回避や規制回避を可能にしている(Wójcik, 2013a)。

この蜘蛛の巣の中心にあるロンドン金融街は、グローバル金融市場において圧倒的な影響力を持つ一方で、その影響力は多くの課題を引き起こしている。例えば、国家主権を侵食するような租税回避の仕組みは、各国政府の財政基盤を弱体化させ、公共サービスへの投資を妨げている(Findley et al., 2012; Palan et al., 2010)。また、富裕層や多国籍企業がロンドン金融街のネットワークを利用して富を集中させる一方で、取り残された多くの人々に対する社会的負担が増大し、グローバルな不平等が拡大している(Oxfam, 2000; Shaxson, 2011)。そして、ロンドン金融街を通じて形成される影の銀行業務や複雑な金融商品は、金融システムを不透明で脆弱なものとし、2008年のような世界的な金融危機を引き起こすリスクを高めている(Sikka & Willmott, 2010; Wójcik, 2013a)。

この蜘蛛の巣の構造を明らかにし、ロンドン金融街の影響力を持続可能な形に再構築するためには、国際的な協力と規制の強化が不可欠である(Haberly & Wójcik, 2014)。まず、金融取引の透明性を向上させることは、租税回避や資本逃避を抑制する上で重要である(Findley et al., 2012)。各国が協力して情報を共有し、租税回避地や秘密管轄地に対する規制を厳格化することで、ロンドン金融街のネットワークが持つ隠れた力を制限することが求められる。また、グローバルな税制改革を進めることで、富裕層や多国籍企業が不公平な仕組みを利用して税負担を回避する状況を是正する必要がある(Palan et al., 2010; Weyzig, 2012)。さらに、影の銀行業務やオフショア特別目的事業体(SPV)の利用を規制することで、金融システムの透明性と安定性を確保し、システミックリスクを低減させることが重要である(Shaxson, 2011; Wójcik, 2013a)。

このような協調的な取り組みを通じて、ロンドン金融街が張り巡らせた蜘蛛の巣は、グローバル経済を搾取する道具ではなく、持続可能で公平な経済を実現するためのインフラへと変化していく可能性がある(Haberly & Wójcik, 2014)。ロンドン金融街が持つ影響力を適切に管理し、この蜘蛛の巣がもたらす課題に対処することは、より公平で安定したグローバル経済を築くための鍵となるだろう。そして、国際社会がその力を合わせて、ロンドン金融街のネットワークを制御し、透明性と公平性を基盤とした新たな金融秩序を構築することが求められている(Vlcek, 2013)。

しかしながら、これらの提言は実行可能かと問われれば、現実的には非常に困難であると言わざるを得ない。国際的な協力や規制の強化は、各国の政治的、経済的な利害関係の衝突、そして租税回避地や秘密管轄地を維持することで利益を得ている勢力の抵抗によって、実現への道のりは極めて険しい(Shaxson, 2011)。こうした現実の中で、ロンドン金融街の影響力を根本から再構築するという目標が、理想論に留まりかねないことは否定できない。

このため、一部の人々は、この目に見えない金融ネットワークの仕組みや権力構造を、「ディープ・ステーツ(深層国家)」と呼び、それを都市伝説的な存在として語る。しかし、実際には、この「蜘蛛の巣」はそれほどディープ(深い)ではない(Shaxson, 2011)。むしろ、視点を変え、しっかりと注視することで、その輪郭や構造をはっきりと認識できる「シャロー・ステーツ(浅層国家)」とも言えるのだ(Haberly & Wójcik, 2014)。

重要なのは、この蜘蛛の巣の存在を現実として認識すること自体である。たとえその仕組みを完全に変えることができなくとも、その存在を無視し続けることは、誤解に基づく政策や経済活動を繰り返す悲劇を招きかねない(Findley et al., 2012)。具体的には、租税回避や資本逃避の問題を単なる企業や富裕層のモラルの問題として捉えたり、オフショア金融ネットワークの影響を過小評価したりすることで、より深刻な社会的・経済的な不平等を助長する結果を招いてしまう(Oxfam, 2000)。

そのため、まずはこの蜘蛛の巣の存在を直視し、その影響力を理解することが必要である(Palan et al., 2010)。現代のグローバル経済は、資本の自由な移動を前提としており、この仕組みを一夜にして変えることはできない。しかし、蜘蛛の巣の構造を明らかにし、その力学を理解することで、少なくともその影響を弱める方策や、透明性を高めるための段階的な取り組みを進めることが可能になるだろう(Shaxson, 2011)。

たとえば、金融教育を強化し、一般市民がオフショア金融ネットワークの仕組みとその影響について理解を深めることは、その存在を公共の議論の場に引き上げる第一歩となる(Haberly & Wójcik, 2014)。また、メディアや学術機関がこの問題を継続的に取り上げ、透明性を高めるための圧力を国際社会に対してかけ続けることも重要である(Findley et al., 2012)。このような草の根レベルからの意識改革は、ディープ・ステーツをただの都市伝説として片付けるのではなく、その実態を「現実」として受け入れ、より良い未来を築くための基盤となる(Wójcik, 2013a)。

最終的に、この蜘蛛の巣を完全に解きほぐすことは現実的に不可能かもしれない。しかし、この仕組みを放置すれば、不平等や金融リスクは今後も拡大し続けるだろう(Oxfam, 2000)。私たちにできることは、この蜘蛛の巣を見える形にし、その影響力を最小化するための現実的な対策を講じることである。そして、少なくともその存在を認識することで、誤った前提に基づいた政策や行動を繰り返す悲劇を防ぐことができるのではないだろうか。それこそが、この「シャロー・ステーツ」と向き合うための第一歩であり、未来に向けた希望の光となるだろう(Palan et al., 2010)。


参考資料

映画

  • Oswald, M. (Director). (2017). The Spider’s Web: Britain’s Second Empire [Film]. Tax Justice Network. ( https://spiderswebfilm.com )

図書・学術書

  • Palan, R., Murphy, R., & Chavagneux, C. (2010). Tax havens: How globalization really works. Ithaca: Cornell University Press.

  • Shaxson, N. (2011). Treasure islands: Tax havens and the men who stole the world. London: Vintage.

学術論文

  • Coe, N. M., Lai, K. P. Y., & Wójcik, D. (2014). Integrating finance into global production networks. Regional Studies, 48(5), 761–777.

  • Haberly, D., & Wójcik, D. (2014). Regional blocks and imperial legacies: Mapping the global offshore FDI network. Economic Geography, 90(3), 251–274.

  • Sikka, P., & Willmott, H. (2010). The dark side of transfer pricing: Its role in tax avoidance and wealth retentiveness. Critical Perspectives on Accounting, 21(4), 342–356.

  • Vlcek, W. (2013). From Road Town to Shanghai: Situating the Caribbean in global capital flows to China. The British Journal of Politics & International Relations, 15(2), 257–272.

  • Wójcik, D. (2013a). Where governance fails: Advanced business services and the offshore world. Progress in Human Geography, 37(3), 330–347.

レポート・政策文書


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