鏡の中に映るもの
ある日夢を見た
それはとても辛く悲しいもので
夢の中で鏡に映った私の顔は何故か苦しそうに歪んでいた
鏡の中の苦しむ私の奥には逃げ惑う人々が見える
我先にと周りの人を押し退けて必死な形相で走っていく
やがて大きな炎が鏡いっぱいに映り、心なしか熱い気がする
人も山も建物も全てが勢いよく燃えていく
鏡の中の世界では何が起きているのか
鏡の中の私が炎に包まれ先程よりも苦しそうに何かを言っている
「えっ、なに?」
恐る恐る耳を近付ける
「…………………………」
その声を聞いて私はバッと身を引いてしまった
すると鏡の中で今度は大量の水が押し寄せる
鏡の中の私は力なく水に流されて行った
思わず鏡の前で手を合わせた
何の信仰もないが神に縋って
「どうか鏡の向こうの人々が安らかに眠れますように」
そこでパッと目が覚めた
汗でびしょびしょになっていた
こんな悪夢を見たのははじめてだ
いや、本当に夢だったのか?
今思い出しても鮮明に人々の悲鳴や人の焼ける匂いが思い出される
それに鏡の中の私が行った言葉が、あの声が息遣いが頭から離れない
もしかしたら本当に何処かの世界かはるか昔に起こったことなのかもしれない
今日は一応お祓いに行こう
そして毎日祈りながら暮らそう
あの夢が私の未来でないことを祈る
「えっ、なに?」
「神に殺されるみんな殺される繰り返し繰り返し…誰も逃げられない!!」