ネタやプロットはどうつくる? 『冴えない彼女の育てかた』丸戸史明さんの「物語のつくりかた」
小説や映像、マンガなど、ストーリーの最前線で活躍するクリエイターをお招きし、創作のルーツや執筆スタイルから、個人的な趣味・野望までを深掘りするトーク番組「物語のつくりかたRADIO」。
ゲーム『WHITE ALBUM2』や小説『冴えない彼女の育てかた』を執筆された、丸戸史明さんをゲストにお迎えした第一回のダイジェストです。
自己紹介
「丸戸史明と申します。ゲームや小説、アニメ。漫画原作など、いろいろなジャンルで文字を書く仕事をやっていますが、自分の肩書きはシナリオライター・脚本家だと考えています。実際、僕の名刺にはシナリオライター・脚本家としか書いていません」
丸戸さんの原点/ルーツといえる作品について
「小学校に上がる頃に親に最初に買い与えられた本は、『ロビンソン・クルーソー』でした。その1冊しかないから、100回ぐらいは読みました。
その次に読んでいたのは、漫画。僕の好きな女性キャラのルーツはここにあって、例えば、年上女は『めぞん一刻』、不良女は『きまぐれオレンジロード』などですね。
小説だと、まずは横溝正史ですね。特にはまった作品は『女王蜂』『三つ首塔』『八つ墓村』の三作品。どれも基本ドロっとしていて、エロくて、男女関係のもつれとか恋愛要素が強めなんですよ。
恋愛もの以外の小説では、軽妙な表現やブラックユーモアにはまって、阿刀田高や北杜夫の小説はかなり読んでいました。
ドラマだと、『男女七人夏物語』とか『男女七人秋物語』とかの影響も強いです。
ゲームは、『リップスティックアドベンチャー』、『同級生』、『同級生2』、『White Album』、『ときめきメモリアル』の1と2など。
好きなヒロインは、館林見晴、八重花桜梨、麻生華澄……って、こんな話ししていいんですかね?」
物語づくりを仕事にしていくきっかけ
「『久遠の絆』っていう PlayStation用のゲームにめちゃくちゃはまったんですよ。
そのゲームのサイト内には、オフィシャルのBBS(掲示板)がありまして……というか、当時はいろんなゲームのサイトにオフィシャルBBSがありました。
で、その『久遠の絆』オフィシャルBBSのオフ会に参加していた際に、シナリオを担当されている小林且典さんと知り合う機会があり、彼から誘われたのがきっかけですね。
最初は、とあるゲーム会社の社長を紹介され、企画書を提出しました。結局そのゲームは日の目を見ませんでしたが、企画書自体は評価してもらえて、お仕事を回していただくようになりました。
そうやって実績を積んでいくうちに、ゲームまるまる1本のシナリオを任せてもらえることになりました。それが、2002年4月5日に発売されたデビュー作『Ripple~ブルーシールへようこそっ~』です」
ゲームシナリオの執筆で大変だった経験
「完成までにかかる時間が長いことですね。丸2年書き続けても、まだユーザーの目に触れられない。そして、ゲームのディレクターは何も言わない。そうすると、この物語は面白くなっているのか、とか、ちゃんとユーザーに受けるのか、とか、どんどんわからなくなっていくんです。
『White Album2』では、原画を担当されたなかむらたけしさんが、毎週長文の感想メールを送ってくれました。しかも、なかむらさんはすごくいい人なので、褒めることしかしない。だから、不安で壊れそうだけど、なかむらさんに感想をもらうためにシナリオを書こうって、そんなふうにモチベーションを保っていた時期もありました」
小説の道に進んだ経緯
「ちょうど『White Album2』というゲームのシナリオを書き終えて、暇だった時期なんですよ。しかも、ちょっと燃え尽き症候群みたいになってしまっていて。
『White Album2』は二部作のPCゲームで、テキスト容量5メガバイト、だいたい250万文字、文庫の小説に換算すると、20〜25冊分でした。そのテキストを2年で書き上げたんですよね。さすがに体力がもう持たないって思って、もっと分量的に軽いジャンルを書こうと考えたんですよ。
それで、いくつか企画案を当時の富士見書房さん(現KADOKAWA)に持っていきました。担当編集さんに全ボツを食らいつつ、何度かやりとりをしながら完成したのが『冴えない彼女の育てかた』です」
小説を書いてみて感じたこと
「ゲームシナリオを書いていたときは、テキストにチェックを入れられたこと、ほとんどなかったんですよ。
それがいきなりプロットをボツにされ、文章表現とかでも色々と指摘を受けたりして、校正でも細かく直してもらえて。これは、自分ひとりじゃできない部分で、創作のスキルが上げられるチャンスだなと思いました」
小説執筆で苦労したことは何ですか?
「セリフの鉤括弧の前にキャラクターの名前を入れられないことです。これは僕は今でも思っていて、誰が言った、とか、誰々が答えた、とかを説明するテキストが、物語のおもしろさに寄与している気がしないんですよ。だから、書きたくない。
もちろん小説がうまい方は、そこに心情とか所作とかを織り交ぜて、流れのいい文章を書かれると思うんです。でも、僕は会話だけで食ってきたライターなので、会話しか書きたくなかった。そのせいで、状況描写が足りないって言われたりもしましたね。
でも、ネットで叩かれたこともあって試行錯誤し、台詞に対して一人称の地の文で主人公がツッコミを入れていく……というスタイルを編み出すことができました。
他の作家さんの書き方、考え方とは全く違うんでしょうけど、僕が普通の小説を書いてもしょうがないと思うんですよね」
アニメの脚本の仕事について
「アニメ脚本は『冴えない彼女の育てかた』の前に放送された『White Album2』でも経験しましたが、そもそも現場ごとに作法が全然違いますね。
プロデューサー、スタジオ、監督……現場ごとにそれぞれ言うことが違う。そもそも、細かく指摘が入る現場もあれば、あんまり指摘が入らない現場もある。入ってみないとわからないんですよ。ですので、脚本に書いた台詞や芝居のすべてに、ロジックを通してからいくようにしました。
そうすると、仮に監督やプロデューサーから、あるシーンを変えてほしいというオーダーがあったとして、ロジックに照らし合わせておもしろくなると納得できれば取り入れられますし、繋がっているすべてのシーンの意図が崩れちゃうという部分であれば、そのリスクは認識できていますか?という確認ができます。
アニメの仕事が楽しいのは、そうやって苦労して脚本をつくっても、最終的にどんな映像になるのかについては、やはり監督やアニメーションスタッフの力が大きい、という点です。自分が脚本執筆の時に描いたときのイメージとは違った形でシーンが表現されていたりもしますが、そういう、予測していなかった絵が出てくるのを見るのは楽しいです。
ましてや自分の脚本と映像での演出とが相乗効果を発揮して、素晴らしい映像に仕上がっていたりすると、すごく嬉しくなりますね。そう考えると、僕の脚本作品って、僕が一番楽しんでいるのかもしれません」
新企画を考えるとっかかりはどこから?
「今まで自分が見ておもしろいと思った作品から着想を得ることが多いですね。完全オリジナルなんて幻想ですよ。でも、それが直近の作品だったりすると、いかにも二番煎じになってしまう。それはカッコ悪いじゃないですか。
僕はそこそこ歳をとってからデビューしたので、それをアドバンテージだと考え、若い頃に吸収した作品を参考につくることが多いです。これを今の世代の方々が新鮮に感じてくれればしめたもの。
僕がシナリオを書いた作品を例に挙げると、『FOLKLORE JAM』は、『CUBE』や『池袋ウエストゲートパーク』、『ままらぶ』は、『アーノルド坊やは人気者』や『ファミリータイズ』、『世界でいちばんNGな恋』は『めぞん一刻』が着想元ですね」
プロットはどこまでつくられますか?
「プロットは、結末まで書きます。ただ、結末までの間はあんまり埋まっていないことが多いですね。プロットの分量っていうのも特に決まっていなくて、長編より短編の方が長いプロットを書くこともありますし、その一方で、文庫20巻分のシナリオがあるゲームシナリオのプロットが5000文字くらいだったりもします。
結末に至るまでの過程を繋ぐことが、僕は得意なんですよ。絶対に結末に繋がらない、話がおかしなほうに飛んでいっちゃった、そんなことにはならない自信があります。だから、結末さえしっかり決められれば、この物語で自分が最終的に描きたいところには行けると思って、書き始めちゃいますね」
プロットから結末までの過程はどのくらいずれますか?
「だいぶずれますね。
でも、ずれることは成功なんだって、ポジティブに考えています。書いているうちに、当初想定していたものよりも、いいネタを思いつけたってことでもあるので」
ネタはどんな時に思い浮かびますか?
「他の作家さんからもよく聞きますが、構想段階だと特に、机に向かっている間はネタが思いつかないんですよ。
思いつくのは、ウォーキング中、お風呂、ベッドですね。ウォーキングにメモ帳を持っていき、何かネタを思いついたらばーっと書き殴ってました。
お風呂でたくさんネタを思いついたときは、メモ帳もパソコンも持ち込めないから、慌てて飛び出し、全裸のままテーブルに向って、どれか一個だけでも覚えていてくれ!って祈りながらメモしています。
最近一番多いのは、ベッドに入って電気消して目を閉じたあとで、ひどいときは、1日50回くらい、思いついて、書き留めて、またベッドに入って目を閉じて、思いついて、を繰り返しています」
【リスナーからの質問①】
(リスナーからの質問)兼業作家だったということですが、どんな業種に勤めていましたか?
「製造業ですね。ゲーム会社とかシナリオ制作会社とかに勤めていたのを辞めてフリーランスになったんじゃないか、なんて思っていた方もいるみたいですが、本当に、そういう業界とは関係ない業種のサラリーマンでした。
月曜日から金曜日まで会社に出社していたので、執筆は仕事から帰ったあととか、土日とか、あるいは仕事中にこっそり行っていました」
(リスナーからの質問)執筆にはどんなソフトを使っていますか?
「今、僕が執筆で使っているのはTera Pad、フリーのテキストエディターですね。
Wordを使っている人が多いのかもしれませんが、僕は使っていないです。ゲームのシナリオライターはテキストエディター派が多いんですよ。なぜかというと、報酬がテキスト単価で計算されることが多いから。
だから、執筆したテキストの量を見ると、いくら稼いだかがわかるんです。僕はそれが目的だったわけではないんですけど、一番動作が軽いし、進捗が数字で把握しやすかったので、ゲームシナリオ時代からずっと使っています」
(リスナーからの質問)会話劇を執筆する際に意識しているポイントはありますか?
「とにかく短いテキストでオチをつける、ということですね。僕はシットコムが好きで、特にアメリカの、合いの手のように笑い声が入るステージドラマをよく観ていました。
先ほどチラッと名前を挙げましたが、『ままらぶ』ってゲームのシナリオを書いたときには、サウンドエフェクトとして笑い声を小・中・大で設定できるようにしてもらい、どこにどの笑い声を入れるかをシナリオ上で指定していった。そんなことをやるくらい、好きなんですよ。
そういったドラマの影響もあって、短いテキストでのオチっていうのに、凄くこだわりがあります。……だから、小説の地の文が邪魔なんですよ!
『冴えない彼女の育てかた』では、セリフとセリフの間に主人公が地の文でツッコミを入れる、という形に落ち着かせました。会話劇のテンポはそのままで、厳密には小説になってないかもしれないけど、小説らしきものにはなっているんじゃないかなと思っています」
【プライベートと今後について】
創作以外の趣味
「ウィスキーに最近すごくはまっていますね。僕、10年ぐらい前までは、実はあんまりお酒が得意じゃなかったんですよ。会社に勤めていたときは自動車通勤だったこともあって。
ただ、先ほども話に出たイラストレーターのなかむらたけしさんがすごい酒飲みで、東京では上野や池袋、大阪では梅田や日本橋、いろんな店に連れて行っていただき、高い酒をガバガバ飲ませてもらい、すっかりお酒が好きになってしまいました。
さらに数年前、アイルランドやスコットランドに行くことがありまして。旅行に行く前は、特にウィスキーに興味があったわけではないんですよ。でも、帰ってきてからいろいろとスコットランドとウィスキーのことを調べるうちに、『あれ? スコッチっておもしろくない?』って思うようになり、一気にはまってしまいましたね」
今後仕事でやってみたいジャンル
「僕がゲームシナリオライターをメインにやっていた時代に、どこかのインタビューで、死ぬまでにやりたい四つの企画があるって話をしたことがありました。
そのうちのひとつが『White Album2』だったんですが、それ以外にも三つあります。
ひとつが、ミュージカルを演出に取り込んだアダルトゲーム。ひとつが、『街』というゲームのような、大量のフラグを制御しながら展開する大型マルチサイトアドベンチャーゲーム。もうひとつが恋愛シミュレーション。主人公に抱いていた嫌悪が、あるイベントをきっかけに、すべて好意に逆転するという、『ツンデレシステム』を搭載したものですね。
でも、今のご時世とか、現在のユーザーのニーズとか、それに自分の体力を考えると、どれも実現は難しいなと思います。20代ならともかく、今からじゃ、未完成のまま遺作になっちゃいますよ。
それに、さっきお話しした“ゲームシナリオライターの孤独”もあります。特にフラグ制御を綿密に組み上げるタイプのシナリオは、ひとりでコントロールしなきゃいけない部分が多すぎて、他のライターに一部の執筆を任せたりとかできないんです。
ゲームシナリオという仕事はパートごとに分業することも多いんですが、もともと僕は、そういうやり方が苦手でした。自分がメインライターとして執筆するようになってからは、長いシナリオでも、他の人に執筆を任せて後でチェックするより、全部自分が書いたほうが早いと思っていました。そして実際に、書けたんですよね。若かったから」
丸戸さんが仕事を選ぶ基準は?
「この作品をどのくらい多くの人が見てくれるか、というのが重要ですね。例えば1億円でひとりの大金持ちのために書く仕事より、100万人から100円出してもらえる仕事のほうが魅力的に感じます。たくさんの人に見てもらいたいっていう気持ちは強いですね。
TVで放送するアニメって、深夜といっても多くの人が見るじゃないですか。そうすると、届く範囲も違ってきますし、リアクションもいっぱいもらえる。今はそれが楽しいと感じています。
アニメは集団制作なので、小説よりも作家表現としての純度は低いのかもしれませんが、僕は完成品が“自分が楽しめるもの”になっていれば、それでいいんです。ゲームでも小説でも同じで、書いているテキストそのものではなく、最終的に出来上がった作品が素晴らしければ、僕はその仕事をやってよかったと思えます。
もうデビューして20年経つと、僕がもともと書きたいと思っていた作品は、最初の10年で結構書けてしまっています。『White Album2』は、その最たるものでした。だからこそ一時的に燃え尽き症候群になってしまった、というところもあります。
ひょっとしたら今後、またそういう純度の高いものをつくりたいという欲求が湧いてくるかもしれませんが、それはタイミングも重要ですね」
【リスナーからの質問②】
(リスナーからの質問)丸戸先生の作品には、実在の友人・知人をモデルにしたキャラがいるとインタビュー等で聞いたことがありますが、他にもそういうエピソードはありますか?
「友人・知人をモデルにしたこともありますが、まずはいろんなところに“自分”が入っています。『White Album2』のヒロイン・雪菜なんかはそうです。
エピソード単位でも、たとえば『冴えない彼女の育てかた』の霞ヶ丘詩羽の創作に関する思いとか、主人公・倫也のオタクに関する台詞とか、自分の経験がモチーフになっています。『冴えない彼女の育てかた』1巻1章で、倫也が友達の喜彦に語っているセリフなどは、全部僕が実際に言っていたものですね。
僕の中でも特に駄目だったところ、やってしまったところ、これは人に嫌われそう、そんな部分をよく入れています」
(リスナーからの質問)駆け出しの作家がプロの目に留まるベストな方法はありますか?
「僕のデビューのきっかけについて話をしていた際に出た、ゲームのオフィシャルBBSの話をしますね。
当時、僕はいろんなゲームメーカーのオフィシャルBBSに通っていたのですが、昔のBBSってツリー形式になっていて、最初に書かれたトピックに対して、皆がどんどんレスをつけていく、という仕組みが多かったんです。僕が、短いセンテンスでいろいろなオチをつけるっていう技術を鍛えられたのは、そのBBS内でのレスバトル、ネタの投げ合いの影響が一番強かったと思っています。
単に自分の文章を見せるだけでなく、見せ合い、戦わせ合い、叩き合う、そういう相手がいるというのは、少なくとも僕にとっては、腕を鍛えるのにいい環境でした。人に見せる、人から感想をもらうっていうことは、絶対に恥ずかしいことじゃないんです。
しかも、別に物語が完成してから見せなきゃいけない、なんて必要性もないと思っています。本当に、アイディアレベルでも別にいいと思うんですよ。こんなネタ思い付いたんだけど、っていう気軽さで。そこで貶されるようなら、その相手からはそっと離れ、新しい友達に見せればいいと思いますよ。
感覚が合う相手っていうのは、とても大事ですから。僕も、そういう時代に知り合った二十年来の友人たちとは今でも付き合いがありますし、今でも話していておもしろいと感じます。そういう、一生物の友人を見つけられるといいですよね」
(リスナーからの質問)シナリオライター丸戸史明のセールスポイントはなんですか?
「納期を守ることです。これはネタでも何でもなく、僕が他人に一番誇れるところはそこだと思いますよ。しかも、締め切りに間に合わせるために無理をしたり、間に合わせのような仕事をしたりしたことは、1回もないですね。普通にやって、締め切りまでに納品する、それができるから、僕はずっとライターとして使われているわけです。
また、締め切りを守ることで、定期的に作品が出ていると、世の中の目にも留まるし、クライアントさんにも届くわけですよ。そうすると、この丸戸史明というライターは、頼まれた仕事をちゃんとやってくれるんだなって信頼してもらえるんです」
これから物語づくりに取り組む方々へのメッセージ
「創作は、能力のあるなしで決まります。……なんて言うと、すごくひどい、というか残酷で、努力が無駄なものだというように聞こえるかもしれませんが、実は全くの逆で、努力であろうがそうでなかろうが、自分が今までやってきたことが、突然、創作の能力を開花させることがあります。
さっきも話に出しましたが、自分はゲームのオフィシャルBBSの常連で、そこの仲間たちと楽しいやりとりがしたくて、すっごく頭を悩ませてBBSへのネタの書き込みを続けていました。一年か二年か、そのくらいずっと、毎日やっていました。それが今の自分の礎になっていると思っています。
小説を読むとか、テレビ番組や映画を観るとか、そういうことじゃなくてもよくて。もちろんインプットはたくさんすべきだと思いますが、その内容っていうのは、本当に何でもいいと思うんですよ。それこそ、友達との会話だっていい。
わざわざ創作物を見ろというのではなく、いろいろな刺激に触れる。その中で、どうやったら自分だけでなく相手も一緒に楽しめるか。相手だけでも駄目だし、自分だけでも駄目。ふたり、あるいはその場にいる全員が楽しめる、そういう状況をつくるということを一生懸命頑張り、試行錯誤し、発展させていく。
これをPDCAサイクルっていうんですけど、双方向コミュニケーションで自分の能力を磨いていき、それを世に発表し続けていけば、いつの間にか文章で稼げるようになります。というか、僕はそうやって稼げるようになりました。
もうひとつ、今回のRADIOのテーマにある“ヒット作をつくるコツ”ですが、これはもう、モチベーションの高いクライアントと組むことです。これは本当に大事なことで、そういうクライアントを引き当てるのは、ある程度運の要素もあるんですけど、こちらにもできることはあると思っています。
それは、クライアントと最初に会ったときとか、仕事をしているときとか、一緒にお話をしたときとかに、先方のモチベーションを高めるようなアウトプットをこちらが出し続け、相手に気に入られることです。と言ってもゴマをするとか取り入るとかではなく、自分の出したアウトプットの結果で相手を打ちのめす。最初の客は、読者・視聴者ではなく、クライアントだと、僕はそういうふうに思ってやっています。
しかも、こちらが相手のモチベーションを上げたら、相手もまた、こちらのモチベーションを上げてくれるような仕事が返ってくる、そういう対等な環境がつくれると最高ですよね。
逆に、いくらアウトプットを出しても響かないクライアントとは組む意味がないので、早めに次の仕事先を探した方がいいと思いますよ。互いが互いを満足させるような仕事ができていればいいと思います。特にフリーランスの立場だと、そういう関係が築けないと次の仕事がなくなり、ジリ貧になってしまいますので。
皆さん、一緒に頑張りましょう!」