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CXO・CDO超会議「グロースからキャリアまで! みんなの悩みをズバッと解決! 」 #教えてデザイン
「仕事や将来のキャリアについて悩むデザイナーの参考になるようなイベントをしたい」
こうした想いからnoteでは、「CXO・CDO超会議 #教えてデザイン 」イベントシリーズを企画しました。注目企業のCXO(Chief Experience Officer)やCDO(Chief Design Officer)をお招きし、noteのCXO深津貴之さんとCDO宇野雄さんとともに、視聴者からの質問になんでもお答えするイベントです。
組織の責任ある立場として、また数多くのサービスやプロダクトをデザイン、開発してきたトップランナーとしてたくわえた知見を、ゲストの方々が惜しみなく披露してくれます。
みなさんが未来を切りひらくときの参考になれば幸いです。
▼次回イベントはこちら
今回のゲスト
株式会社くふうカンパニー執行役
池田 拓司さん
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多摩美術大学卒業。ニフティ株式会社、株式会社はてな、クックパッド株式会社、株式会社ロコガイドを経て、現職。デザインアンドライフ株式会社の代表取締役も務める。
Twitter
dely株式会社
UIデザイナー、プロダクトマネジャー
坪田 朋さん
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株式会社ライブドア、株式会社DeNAなどで多くの新規事業やUI / UX領域のデザイン組織立ち上げを手がける。2019年、自身が代表を務めていた株式会社Basecampをdely株式会社に売却し、同社のサービス「クラシル」のCXOに就任。現在は「クラシル」の開発責任者を務める。
note、Twitter
デザイン / デザイナーとは
質問1「デザイン / デザイナーの定義や仕事の範囲について、みなさんの考えをうかがいたいです」
宇野 僕は最近、デザインとは「目に見えないものや、まだ『かたち』になっていないもの、ひとが認知できないものなどを具現化していくプロセス」だと考えています。
「デザイナー」とは、具現化のプロセスを牽引するひと、またそのデザインのやり方などをほかのメンバーに伝道していくひとのことをいうのだと、思うようになりました。
池田 今日のようなイベントでも、たとえばだれをゲストに呼ぶかや、席順をどうするかなど、デザインできるところがたくさんあります。そういうふうに、いろんなことを「これってデザインできるな」と考えられることがデザイナーの特徴であり、仕事でもあるのかなと思います。
坪田 自分でデザインしたものやサービスの品質を担保し、リリース後の品質改善まで含めて、最後まで自分が責任をもつプロセスを設計するひとが、デザイナーであるべきだというのが僕の考えです。
深津 僕は「場のカオスを最小化する仕組みを提案する」のがデザインなのかなと。
たとえばファッションデザイナーなら、「カオスな自己表現や身体表現を整理して、見えるかたちにするby服」。グラフィックデザイナーだったら、「カオスな状態の情報を整理してわかりやすく伝達できるようにするbyグラフィック」。
職種は違っても、やはりデザインは1本串で、カオスをコントロールすることにフォーカスされているんだと思っています。
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CXO・CDOの役割とは
質問2「CXO・CDOなどのデザインの責任者が一般デザイナーと明確に違う点はどこですか?」
坪田 僕はCXOやCDOの役割について、池田さんから教わったんですよ。当時、クックパッドの執行役だった池田さんは「役職者の役目は、経営と現場を接着すること」だとおっしゃっていました。
3、5年後の経営ビジョンを現場メンバーに伝えつつ、そのためにいまやるべきことを具体案に落とし込んでディレクションすること。デザインの重要性をわかりやすい言葉にして経営者に伝えること。この2つを行って、経営と現場を一体化させることが、CXOやCDOには求められていると思います。
池田 そうですね。僕は株式会社はてな時代に1人でデザインをしていたときから、デザインをどうするかということとともに、サービス開発や、提供している事業をいかによくしていくかということを意識していました。
経営陣が何を気にして、どんな言語で話しているかを普段から吸収しようとするのは、大切なことかなと思います。
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池田 拓司さん
深津 「ここの赤色とこっちの赤色が違っていて気持ちが悪いんです」と経営者に言っても100%届かなくて。「ばらけている色を同じコードで1元管理することで運用コストが下がり、開発速度は上がるのでシステム化しませんか?」といった言葉に翻訳する必要がありますよね。
こうした翻訳力は、CXOやCDOの基礎スキルとして要求されます。
宇野 CXO、CDOは「デザイナーの長」ではなく、「デザインやユーザー体験の長」。つまり「会社全員のアウトプットに責任をもつ」ということなんですよね。
広告業界でたとえると、クリエイティブディレクター。クリエイティブディレクターって、アートディレクターの上位職ではあるけれど、コピーライターがクリエイティブディレクターになることもできる。
同様にCXO、CDOは、必ずしもデザイナーの延長線上にある職種ではないと思います。
なんにせよ、まだできてまもない職種。所属会社から期待されることも、各社ごとに違っています。CXO、CDOが100人いれば、100通りのやり方があるんでしょうね。
デザインの責任者として心えぐられる失敗
質問3「デザインの責任者としてやっちまったな〜と思う失敗があったら教えてほしいです」
宇野 以前、メンバーから「こういうことをやりたいです」と相談されたときに、僕の経験上なんとなくうまくいかない気がして止めたんです。でも数ヶ月後にそれは、そのタイミングでやっておくべきことだったと気がついて。大きな失敗でした。
それからは、基本姿勢を変えました。メンバーから「やってみたい」と言われて、自分の答えに確信をもてなかったときは、「僕もわからないけどやってみよっか」、「失敗したときは一緒に謝るよ」というようにしています。
坪田 僕はいま、クラシルの機能開発で意思決定をする立場ですが、エンジニアやデザイナーなど何人ものメンバーが関わってリリースしたものを取り下げる判断をするときが、いちばん精神をえぐられます。
いまは不確実性が高いから、クラシルではチケットサイズ(※個々のタスクやプロジェクトのサイズ)を小さくして、リリースから評価のサイクルを早めたいと考えています。
あとから、もっとミニマムに進めることができたとわかったときも、「やっちまった」と思いますね。
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坪田 朋さん
深津 僕も超大作はつくりません。
以前、レビュー(※開発の工程ごとに成果物の品質を検証すること)し損ねたまま進んだプロジェクトがあって、数ヶ月後にレビューできていなかったことが発覚しました。もう軌道修正できないフェーズで、リセットするしかなくて。「やってしまった!」と。
短期間でつくって出し、試すのをくりかえす。いまは、そうやって段階的にアップデートしていくやり方がいいと考えています。
責任をとるので予算を
質問4「デザインに注力していない会社でデザインの重要性を経営者に理解してもらうには、どんな手段があると思いますか」
坪田 僕がDeNAにいたときは、いろんな手段をつかって経営陣を説得しました。深津さんにコンサルで手伝ってもらい、経営陣に深津さんとの議事録を提出したり、知人を呼んで社内向けにUXデザインについて講演をしてもらったり。
池田 上司をつかう手もありますよね。ただし、デザインを重要視すること自体を目的化しないほうがいいとは思います。いまはデザインに注力するフェーズではない、という場合もあるので。
宇野 そうですね。デザインではなく、別の部分に力を入れたら3〜4倍も効果が出るタイミングであれば、投資をそちらに寄せることになります。
深津 僕がデザイナーに対してコンサルする際におすすめするのは、経営者に対して「経営の言葉でデザインの価値を伝える」ことです。自分たちがつくるデザインの価値やパフォーマンスを、お金の力として説明できるというのは必要なんですね。たとえ自分の心情とあわない言い方になるとしても。
「ここに300万円かけるより、こっちにデザインリソースを300万円つかったほうがサービスがグロースします」と翻訳する必要があるんです。
坪田 最後の手段は「これをやれないなら、この会社でプロダクトをつくるのはあきらめます。責任をもつので予算をください! 」と気概をみせること(笑)。僕は実際にこの手をつかったことがあります。
それだけ「やりたい」と思うのは、その会社に愛があるということ。だから、1回チャレンジしてみるのはありだと思います。
深津 そこまで言ってもやらせてもらえない会社だったら、そのときは転職など、次の道を考えるのもありですよね。最終的に別の会社を探すことになるなら、チャレンジしたいと言ってみるほうがいいと思います。もし挑戦させてもらえたら、そのぶんお得です。
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デジタル系デザイナーはいま脚光を浴びている
質問4「デザイナーのキャリアラダーはどのように設計すればよいでしょうか」
深津 最近、IT職全般がどんどん分業化、専門化しているんですよね。でも僕は、キャリアの初期段階で一気通貫してプロダクトをつくる経験をしておくと強いなと思います。いろんな設計の配慮ができるようになるので。
坪田 デザインシステムを組んだり、マテリアルデザインを設計したりするのと、サービス設計では脳みそのつかい方が全然違いますよね。
池田 事業会社にいると職種混合チームで仕事をするので、別の職種の仕事に携われたり、調整力が身についたりします。
そんな中でも、グラフィックデザインや技術力など、何かひとつ自分ならではの飛び抜けたスキルを武器としてもてるように、意識するといいと思いますね。
宇野 デジタルを主戦場としているデザイナーがいまほど脚光を浴びている時代はきっとなくて。デザイナーの求人がすごくふえていて、いろんな分野に挑戦しやすくなっています。
だから、みなさんやりたいことをやっていくのが1番じゃないかと。それでとんがったデザイナーになって、時代とフィットすれば大活躍できる。
キャリアラダーを描くというよりは、「自分はこの業界でこんなふうになっていたい」と考えていくほうが、デザイナーとしてこれからの時代を生きていく道がみえそうな気がします。
(敬称略)
***
noteはこれまでも、CXOの深津貴之さんのもと、サービスやプロダクトのデザインに力を入れてきました。そして今後ますますデザインを強化していきたいと考え、2022年2月に宇野雄さんをCDOにお迎えしました。
あわせて、「これからnoteを一緒に盛りあげていきたい! 」と思うデザイナーを現在募集しています。noteの仕事に「興味がある」、「話を聞いてみたい」という方はぜひ「noteカジュアル面談エントリー」からご連絡ください。
あなたのご応募をお待ちしています。
話を聞いたひと
note株式会社CXO
深津 貴之さん
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インタラクション・デザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、クリエイティブユニットTHE GUILDを設立。メディアプラットフォームnoteのCXOとして、note.comのサービス設計に従事する。
note、Twitter
note株式会社CDO
宇野 雄さん
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ヤフー株式会社でYahoo!ニュースやYahoo!検索などのデザイン部長を歴任。その後、クックパッド株式会社でVP of Design / デザイン戦略本部長を務める。2022年2月に、note株式会社のCDOに就任した。
Twitter
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text by いとうめぐみ