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インタビュー「タンコーカナリの石井さん」

前回の利府トレイルのイベントレポートに続き、イベントを主催する一般社団法人タンコーカナリの石井さんのインタビュー記事をお届けします。

まずは社名となっている「タンコーカナリ」の意味から伺わせてください。とても面白い響きですよね。

タンコーカナリは「炭鉱のカナリア」という慣用句から取っていまして、その意味は、「警告を発する」とか、「予兆に気づく」とか、そういった意味になります。大事なのに失われていくものや、変な方向に社会が進んでいるときに、「それでいいの?」と言えるような団体でありたいです。主な活動は、利府という町に利府トレイルという歩いて旅ができるような道を作ることです。

私が先日参加させていただいたのが「利府トレイル 赤沼・番ヶ森ハイキング」ですよね。改めて、今回イベントをやった目的や趣旨を教えてください。

まず一つ目は利府トレイルの普及。普及というか、周知ということでもあるかもしれません。利府トレイルは単なるイベントのように誤解されることもあるのですが、トレイルというのは「道」のことです。道なので、単なる場所を示しているに過ぎません。「富士山に行く」とか「お遍路に行く」とかと同じように、利府トレイルも「利府トレイルに行こう」と思ってもらえる旅の舞台づくりを目指しています。それを一から作りたいっていうのが、本来の活動になります。

だけども、そのトレイルっていう言葉さえ、あまり知られてないので、このようなイベントを通して、トレイルっていう言葉を知ってもらうと同時に、活動の内容も少しずつ浸透させていきたいというのが一番の目的になります。

二つ目は、 今回は赤沼地区に設定したんですけれども、この地域の魅力を町民の方だけでなく、利府とは別の地域の方々にも来ていただいて、こんなところがあるんだなと、イオンやグランディだけじゃないんだなと、知ってもらうようなきっかけにしたかったです。

利府トレイルはどのくらいの頻度で開催しているんですか?

春・秋のシーズンで考えていて、次は秋になるので、9月の下旬ぐらいから、11月の中旬ぐらいまでにかけて、1~2週間に一回ぐらいのペースではやっていきたいと思っています。年間だと10~15回ぐらいになると思います。

募集して実際に手を挙げられる方々って、 だいたい何人くらいになりますか?

10人から20人くらい来るっていう感じですね。

参加は有料ですか?無料ですか?

有料です。企画/運営とガイド料としては2,000円です。一律で2,000円で考えていますけど、例えば飲食業の方と一緒にコラボレーションしてやるとなったら、プラスアルファされるような感じです。

客層はどうでしょうか?もしかしたら地域性も出るかもしれませんが

今回のは60代が1番多かったかもしれないですね。赤沼でやったような、ちょっと歴史深いようなものになると、客層の年齢は上がりますよね。

地域史みたいなところなので、ちょっとマニアックなジャンルでもありますよね。例えば「ブラタモリ」のような。そういう意味でも、年齢層が上がりやすい傾向はあるのかもしれませんね。

参加者はみんな利府の人なのでしょうか?それとも、仙台とか近隣の塩釜とかそちらからもいらっしゃっていたりしますか?

もう半々ですね。半分以上は町外から来てます。バランス的にはちょうどいいなと思っています。

外から見ていると、赤沼は利府の中でもちょっと奥にあったりとかして、マニアックなスポットなのかなと思ったりするんです。それが、利府町の人だけだったらわかるけど、町外の人が半分も来るって結構意外というか、すごいなって思っちゃいます。

はい。意外でした。町外の人にも伝われば、興味を持つ人はいるんだなっていうのは、よくわかりました。赤沼の染殿神社は、利府街道を車で通り過ぎる時に、なんかこう気になると思うんですよ。立派ですし。縁がありそうだなと。でも、きっかけがないから行かないんですね。だから、今回のようなイベントがあったときに、「ちょうどいいや、参加してみよう」と思った人も多かったんじゃないですかね。

利府トレイルの中で、 ジャンルって言ったらおかしいんですけど、海の方とか、山の方とか、町の方とか、これまでもいくつかパターンがあると思うんですけど。参加者の反応がいいものってあったりするんですか?

やっぱり歴史は興味を引くのと、あと地域の生産者に会いに行くみたいなものですかね。そのコースの中に、30分とか1時間滞在するような場所があって、そこで何かを作ってる人がいて、その作ってるものに対して話してくれたりとかっていうのは、すごく好評です。

今回の赤沼の利府トレイルを振り返ってみて、改めてどのような感想をお持ちですか?

単純に、終わった後とかに楽しかったとか、もう1回参加したいなとか、そういうお話があるのは単純に嬉しいです。あと、自分でも想定していなかったことが、赤沼の住民の人たちが、このイベントのことをどこかから知ってくれて、じゃあちょっと神社の神輿堂を開けようかとか、用意してたポスターを神社の目の前にあるコンビニに掛け合って貼ってくれたりとか。そういうことがあって、その地域の人を刺激するっていう側面はあるなっていう風に感じました。それはいいことだなと思って。

今後の展望、 近々のことでもいいし、もう少し将来的なところでも大丈夫ですが、教えてください。

近々で言うと、この秋にかけてイベントを作っていくというのあるんですけども、利府には良いところがもっとあるので、それを5キロとか10キロくらいの短い距離の中で、紹介していきたいです。中長期的な目標としては、利府トレイルをしっかりとした形にしたいです。今は私がつくったぐるっと回るような1本の暫定ルートはあるんですが、これをベースにして本ルートというか、オフィシャルなルートにしていきたいと考えています。もちろん、公式的なハイキングマップや道標なんかも必要ですね。

そんなのさっさとやればいいじゃん!とか思うかもしれないけど、単純に地図に線を引いただけではダメなんです。その地域に住んでる人たちに知ってもらって、ここよりこっちの道の方がいいんじゃないとか、こっちのパン屋に寄ってもらいたいなとか、いろんな人が関わって1つの道にしていかないと、「私たちのトレイル」として浸透しないと思うんです。なので、今は地道に人のネットワークを作って、いずれみんなで話し合えるような環境を作りたいと考えています。

まさに先ほどのお話の中で、地域住民がお神輿を開いてくれたりとか、地元のコンビニにポスターを貼ってくれたりとか、地元住民が主体的に関わるという意味では、地域交流みたいことも含めて、このイベントが担っている部分を大きく感じます。商業的なイベントってたくさんありますけど、別の意味合いを含んでいるような。石井さんの利府トレイルはそういう要素が強いのかなというところで、私たちも参考にしたいなと思いました。

地域交流におけるニーズみたいなものは感じとったりしますか?

それはありますね。赤沼の例で言うと、赤沼の人は赤沼の人でやっぱりやりたいことがあって。例えば、染殿神社の建物が古くなってきたからリフォームしたいとじか、神輿を担ぐ人がいなくなってきてるので、若い人たちに関わってもらうにはどうしたらいいかとか、そういう風に思ってるわけですよ。だから、こういうイベントを通して、その地域の裏側も見せることで、じゃあ神社に寄付しようかなとか、子どもに神輿を担がせようかなとか、思ってくれる人が出てくるかもしれません。

イベント自体が、もはやなんか地域課題みたいなところにも、踏み込んでるというか。もちろんそのためにイベントを開催するわけではないのだけど、イベントをやることで、実はそういう課題にもちょっと触れてて、その地域の人からしたら、そういう課題もあるから、石井さんみたいに何かやってくれる人もなかなかいないっていうところでは、やっぱりすごい重要というか。さっき言ったような地域交流もそうだし、地域にとっては、すごく嬉しいっていうか。実際に僕も参加した実感として、地元の赤沼の人がみんなの前で話せたりとか、地元の誇りでもあるようなお御輿をみんなに見てもらっている姿を見て率直に嬉しそうだったなぁという印象もありました。
あとは逆に、石井さんのイベントの主催者側が、そのニーズ、地域課題に気づいたりとか、そういうことにも繋がったということですよね。それはなんだかすごい良いキャッチボールっていうのかな。そんな気がします。

本当にそうで、自分自身は、ただ、 歩くの楽しいとか面白いとか、そういうところから入ってイベントを作るので、それが結果的に地域のためになってるんであれば、それは嬉しいです。 

今の地域交流みたいなのも含めた、ネットワーク作りや広がり、新しい人たちとの関わりみたいなことで、何か具体的に起こったことはありますか?

このイベント関連で言うと、今回赤沼の人たちと知り合えたことで、例えば赤沼地域における道(トレイル)を今度考えていくときに、住民が参画してくれる土台を作れたということは一つありました。あとは単純に、この利府トレイルの理念に賛成賛同してくれる人たちがいて、一緒に下見に出て行ってくれたりとか、新しい道、コースを作る時とか一緒にじゃあ歩いてみようとか。手伝ってくれたり、応援してくれたり。沢乙地区にあるうちみ旅館さんは、集まりがある時、お部屋を使いたかったら相談してねとも言ってくださいます。そういう繋がりは増えてきているな、という実感があります。

石井さんが行っているネットワークの作り方は、イベントの取り組みが地域課題や地域交流とも重なり、それが自然にネットワーク形成に寄与していますね。利府トレイルの大きな目的である道を作るということにも、このネットワークが今後さらに繋がっていくように感じました。本日はありがとうございました。


リサーチデータ
目的と趣旨:利府トレイルの普及=人々が出会い、交流する場
開催場所:利府町内
開催頻度:年5,6回
平均集客数:20-30人
平均売上:40,000-60,000円
客層(年齢・居住地域):30-60代、客層の半分は利府
人気商品ジャンル:パン屋さんなどコラボでのイベント開催


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