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インタビュー「伊達祭実行委員会の渡邊さん」
伊達祭のイベントレポートに続き、伊達祭実行委員長の渡邊さんのインタビュー記事をお届けします。
東日本大震災をきっかけに始まった「伊達祭」
2012年から始まった伊達祭ですが、どのようなきっかけだったのでしょうか?
2011年の東日本大震災がきっかけです。それまで関わりのなかったカルチャー同士が協力する動きが生まれました。
例えば、「物資を持っていきますよ」「じゃあ一緒に行きましょう」というような会話から、少しづつ繋がりが広がっていきました。それまであまり仲が良くなかったり、接点がなかったカルチャー同士も協力し合うようになったんです。
その流れで「せっかくだからみんなでイベントやろうよ」という話になって、もともとレゲエイベントだった伊達祭を、地元のストリートカルチャー全体を取り込んだフェスにすることにしたんです。音楽・スケートボード・BMX・ダンス・地元のショップや飲食店などを集めて、復興をテーマに始めたのが2012年です。
当時、ストリートカルチャーはまだあまり一般的ではなかった印象ですが、いかがでしたか?
おっしゃる通りです。当時はスケートボードやBMXのショップも、いわゆるアンダーグラウンドな存在でした。今では一般的になりつつありますが、2012年当時はまだそうした状況でしたね。
開催資金:協賛と出店料
無料イベントとして運営されていますが、その規模でどのくらいの予算が必要なのでしょうか?
毎回だいたい1000万円ほどの予算が必要です。今回のメインスポンサーはCARHARTT WIP様でした。契約の関係で金額はお伝えできないのですが、その他の協賛金が300~400万円、出店料が300万円ほどになります。
それ以外には、たとえば提灯協賛が2万円や4万円、うちわの協賛が10万円といった具合です。これらを合わせて、200~300社から協賛を集めています。すべて実行委員会のメンバーが手分けしてお願いしている状況です。
地道な努力ですね。それだけの規模で利益は出るのですか?
残念ながら、毎回トントンか赤字です。無料イベントという特性上、利益を出すのは本当に難しいですね。それでも、このイベントを続けることに意義があると思っています。
実行委員会の活動と変遷
協賛や出店者の管理をされている実行委員会は何名くらいで活動されているのでしょうか?
現在は約10名で運営しています。初回の2012年には30人ほどが関わっていました。地元のさまざまなカルチャーの関係者が集まった形ですね。
続けているのは今の10人ですが、共通しているのは「中途半端なことはやりたくない」という思いです。しっかりとかっこいいものを見せたいという気持ちが強いので、その信念を共有できるメンバーだけが残った形ですね。
その思いがイベントの方向性を保つ原動力になっているのですね。
そうですね。ストリートカルチャーとしての一貫性を保ち、真剣に取り組む姿勢を見せ続けてきました。それが評価されて、協賛をいただける企業も増えてきたと感じています。
社会の理解が進むストリートカルチャー
地元での理解やサポートは変化してきていますか?
はい、初期の頃とは随分変わってきました。当初は、市の公園課に苦情が入ることが多かったですね。
たとえば、「こんな人たちに公園を貸すなんて」といったクレームもありました。しかし、最近ではスケートボードがオリンピック競技になったり、BMXやダンスも注目を浴びてきたおかげで、公園課の担当者の方も「この文化は重要だ」「オリンピック選手もこのカルチャーから生まれています」と進んで
説明してくださるようになりました。それは非常に大きな前進だと思います。
社会の理解度が上がったことを実感しますね。
はい。特に子どもたちの参加が増えてきたのは嬉しいですね。スケートボードやバスケ・ダンスなど、意識的にも子どもたちが出られる機会を増やすようにしています。その取り組みが少しづつ理解されてきたと感じています。
特殊な魅力を持つマーケット
今年の出店者について教えていただけますか?
今年は飲食とアパレルを合わせて35店舗ほどが出店しました。基本的には宮城県内の方々ですが、東北地方からも1、2店舗いらっしゃいました。
このマーケットの特徴は、出店者が扱うアイテムの個性だと思います。スケートショップのオリジナルアパレル・骨董品・Tシャツプリントのブースなど、普通のイベントでは見られないようなものが並ぶのが特徴です。車やバイクの展示もあり、地元の特色が詰まっていますね。
家族連れがかき氷を頬張っているのが印象的でした
飲食店も多様なジャンルが揃っています。家族でも楽しめる様に、最大限の工夫を考えていました。マーケットの売り上げは特に報告してもらったりはしていないのでわからないのですが、飲食店によってはなかなかの金額を売り上げているようですよ。
伊達祭を続ける意味:次世代への影響
この規模のイベントを継続していく中で、大切にされているポイントは何でしょうか?
次世代に「こういうものがあるんだ」というのを伝えることですね。
たとえば、ダンスやスケートボードが今や習い事として広がりを見せています。それがきっかけで世界に飛び出す子どもたちも出てきています。私たちが積み上げてきたものを見せることで、子どもたちに「これをやってみたい」と思ってもらえたら、それが一番嬉しいです。
伊達祭を通じて派生したプロジェクトや、新たなつながりはありますか?
はい、たくさんあります。この場で知り合った人たちが新しいプロジェクトを始めたり、お互いを紹介し合ったりしていますね。
普段なかなか会えない人たちが、年に1回伊達祭で顔を合わせることで、「こんなことやってるんだ」という会話が生まれています。そういうつながりが広げていくのが、伊達祭の大きな役割だと思います。
リサーチデータ
目的と趣旨:ストリートカルチャーの普及/育成
開催場所:仙台市 勾当台公園
開催頻度:年1回
平均集客数:8,000人
協賛:約160社
出店数:約35店舗(飲食・物販)
平均売上:ー
客層(年齢・居住地域):10-40代、主に宮城県内(一部県外)
人気商品ジャンル:飲食関連