インタビュー「ザ・オトマチプロジェクト代表の佐藤さん」
イベントレポートに続き、ザ・オトマチプロジェクト代表の佐藤さんのインタビュー記事をお届けします。
ザ・オトマチとは?
2019年から宮城県蔵王町で始まった手作りのフェス。プロのミュージシャンと地域の住民、蔵王に遊びにきてくれる他県の皆さまと共に「音楽」「アート」「マーケット(蔵王の食)」の三本柱で発信していく町おこしプロジェクト。
参加者の多様性が生んだイベントの魅力
イベントを開催して、率直にいかがでしたか? また、当日はどれくらいの方が来られましたか?
佐藤: 当日の来場者は約500人でした。遠くは福岡県から来られた方もいて驚きましたね。
500人は凄いですね。そして遠方からの来場があることにも驚きました。
佐藤: そうですね。アーティストのファンの方々にもご来場いただけたということが一つあると思いますが、地元の方も「ちょっと見てみようか」という感じで多く立ち寄ってくれました。結果的に幅広い層の方々に来ていただけたことが、本当に嬉しかったです。
客層の幅が広いのは、オトマチのポイントでもあるかもしれませんね。会場の場所も、宮城蔵王の中ではちょっと珍しい宮地区でしたね。
北谷: はい。遠刈田ではなく、4号線に近い宮地区で行いました。東白石駅から歩いて来られた方もいらっしゃいました。特に印象的だったのは、遊びに来てくれた中学生が初めて真近でDJを見たそうで、とても驚きそして感動してくれていました。小学生や赤ちゃん連れのご家族もたくさん来ていて、みんなが安心して楽しめる雰囲気になっていたのも嬉しかったです。
開催資金:協賛と出店料
町おこしのイベントとして運営されていますが、どのくらいの予算が必要なのでしょうか?
イベント全体では、切り詰めて大体200万円くらいでしょうか。マーケットの出店料が各5,000円、協賛金が約100万円、あとは入場料です。今回は入場料は前売り一般は4500円に設定していました。蔵王町在住の方や学生は1500円、中学生以下は無料としました。マーケットのエリアは、入場無料にしているので、寺内に入ってライブを楽しむ料金という形になります。協賛はホームページでの掲載やてイベント内での木札など、工夫を凝らしながら探り探りやっています。
補助金も活用していて、今回は宮城県の「商店街NEXTリーダー創出事業費補助金」と蔵王町の「商店街にぎわい創出事業補助金」に申請しました。本当に助かりました。
工夫されているんですね。参考になります。中学生以下は無料だったり、蔵王町民についても半額以下なので、町への想いの強さを改めて感じます。
そうですね。そのためにやっていると言っても過言ではないので。蔵王といえば遠刈田みたいなイメージが強くあると思いますが、生まれ育った宮地区の力に少しでもなれたらという想いで活動しています。
地域の伝統を披露する新しい試み
インスタグラムで見たのですが、子どもたちが踊りを披露していましたね。
佐藤: 小村崎地区の「春駒」という伝統芸能や、宮地区の「宮の子ども神楽」がイベントの中で披露されました。それぞれ、普段は産業祭りやどんと祭など、年に1回程度しか見られない踊りなんです。そのため、今回は特別に出演していただきました。
また、畳を敷く必要があったので、地元の同級生に協力してもらい、実現しました。こうした伝統芸能をイベントで紹介できたのは良い試みだったと思います。
地元地域の伝統をイベントで取り上げるのは素敵ですね。イベントの意義もグッと強くなるように感じました。
佐藤: ありがとうございます。それに加え、今回初の試みとして、小学6年生たちに「蔵王の推しシンボル」をテーマに絵を描いてもらいました。それをTシャツにプリントして展示したところ、親御さんも含めて大好評でした。
アーティストとの交流とユニークな演出
ライブ会場の背景には大きな絵が飾られていましたね。
佐藤: 同級生の画家 加川広重さんに描いてもらいました。それに、2019年のイベントから使っている特注の顔出しパネルも設置しました。来場者やアーティストがインスタグラムに写真を上げたりして、会場全体で楽しめる雰囲気が作れたと思います。
チラッと拝見しましたが、たくさんの写真で溢れていましたね。イベントを楽しんでもらう要素としてとても参考になりました。
佐藤: イベント後はさらに投稿が続々と増えています。「#otomachi」で検索すると見られるので、ぜひチェックしてみてください。
マーケットの盛況
当日は天気にも恵まれましたね。マーケットの様子を教えてください。
佐藤: 出店数は13店舗になります。本屋さん〜豚汁、ワークショップなどなど色々なお店に出ていただいているのですが、商品がすべて完売するお店が続出するなど、マーケットも大盛況でした。売上は確認していないので、わかりませんが毎回出店してくれている人も多くいて、楽しんでくれているのが伝わってきたりします。
地域ならではジャパンXをはじめとした地元のグルメ、その他にもDJもされている佐藤さんの繋がりを感じる出店も見受けました。
佐藤: レコード店「スタグホーンレコード」が持参したカセットテープ用のDJ機材を体験できるコーナーや、大きなノコギリで丸太を切るワークショップなどがありました。どちらも子どもたちに大人気で、ワークショップを行う大人達も力が入ってましたね笑
佐藤さんの繋がりの広さに驚くのですが、何か理由があるのですが?
クラフトコーヒー KITAYAという無店舗の珈琲屋をしています。様々なマルシェなどに自分も出店するので、そこで知り合った方々と仲良くなって、オトマチのイベント出店にお誘いしたお店もありました。
ライブパフォーマンスの特別な瞬間
寺内の有料ゾーンはどうでしたか?
佐藤: ライブ会場には入れ替わり立ち替わりで約200人の方に来ていただきました。時間は10時から18時までと長時間だったんですが、小西さんのDJの時が特に盛り上がりましたね。ドラムンベースという、めちゃくちゃビートが早いジャンルで、僕ならお寺では絶対プレイしないような音楽なんですけど、それがまた大盛況で、「お寺でドラムンベースやばいな!」って感動しました。
その時間に入れなかったのが残念です。他の方にもお話を伺ったところDJの小西のお名前は上がっていました。
佐藤: ライブだと、少林兄弟のステージがすごかったですね。彼らを応援する熱狂的なファンがいて、その人たちが踊りまくっていました。あと、僕がSpotifyでたまたま見つけて、「出演していただけませんか?」とインスタでメッセージを送ったアーティストがいまして、それがカリフォルニアから来たスクーバートドゥーパートさんです。
カリフォルニアから来たんですか?笑
佐藤: はい。彼はPCで自作の音源を流しながら、ベースとギターを交互に持ち替えて演奏していました。何より、ボーカルの声がすごく澄んでいて、日本語もとても堪能で、日本語でMCを入れるたびに観客が「すごい!この人は誰?」って盛り上がっていましたね。本当に良かったです。mikiさんのパフォーマンスも良かったです。アニメソングをたくさん歌ってくれて、子どもたちも大盛り上がりでした。それと、いとうせいこうさんのポエトリーリーディング。お経を聞いているような不思議な感覚でしたね(笑)。
いとうせいこうさんを見に来た来場者は多かったのでないでしょうか。ライブも宗教的なわけではないのに、どこか尊い感じがありました。
佐藤: そうなんですよね。演奏に合わせて詩を読むスタイルなんですが、言葉が自然に心に染み入る感じで。僕はその瞬間、感極まって泣いちゃったんですけど、後ろから声をかけられて恥ずかしかったです(笑)。
会場は音楽の力が相まって、本当に神聖な気持ちになれる瞬間でしたね。映像やラジオだけでは伝えきれない空気感があって、まさに「その場にいること」に意味があるパフォーマンスでした。
アットホームな雰囲気で成功したイベント
お寺という会場も含めて、全体的にアットホームな雰囲気でしたね。
佐藤: マーケットも音楽も異なるジャンルが集まったイベントでしたが、全体的にまとまりがあり、演者の方々からも「楽しかった」「またやりたい」という声を多くいただけました。
今回のような取り組みが続けば、地域の魅力がさらに広がりそうですね。
佐藤: 地域の人々と一緒に作り上げることが、最も大事だと思っています。今後もこうしたイベントを続けて、もっと多くの方に蔵王の魅力を知ってもらいたいですね。
リサーチデータ
目的と趣旨:町おこし
開催場所:蔵王町 宮地区
開催頻度:年1回
平均集客数:約500人
協賛:約74社
出店数:約13店舗(飲食・物販)
平均売上:ー
客層(年齢・居住地域):10-40代、主に宮城県内(一部県外)
人気商品ジャンル:飲食関連