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水鳥

【わたし達は銀のフォークと薬を手にして】

という小説を今日から読みはじめた。
陽当たりがすごく良いとは言えない今暮らす部屋でも、
閉じこもっているよりは窓を開けて風を取り込み鳥の声が聞こえる方が
ステイ・ホーム・アローンの今でも、
塞いだ気分が少し世界と繋がれた気がして良い。

昼下がり、フランス語で水鳥という名の紅茶を片手に読み始める。
所有者である友人が読み終えたその本をただ渡されただけで
恋愛モノと聞いて少し読むのを躊躇った。
けれども序盤で水鳥ということばが出てきて
おや偶然、と思っていた矢先、
あるワンセンテンスで急に主人公とフュージョンした。

事実を知ることに後先はあれど、
ひとを好きになるとき
そのひとを作り上げた
そのひとのストーリーが
重大な役割を果たしていることを知る。

とは言え
そのときのそのひとに落胆してしまったり
ストーリーの中にわたしがいないことに嫉妬心や寂しさを覚えたり
ストーリー自身には好感を抱かないことが多いけれども
そのストーリーをわたしに話して聞かせてくれる
という1つのアクションがあって
わたしが登場する次の章が始まっているような気がする。

自分の過去が蘇ったり、
未来への不安や憧れが現れては消えて脳が混乱している。
好きなことに囲まれて穏やかに暮らせる時間が増えたことで
こんなに動揺させられる読み物は久しぶりだった。

ときめきとか単純なものではない恋愛の擬似体験をしているような気分で、
読み進めるのが怖くなって、勿体無くなって、
ひとまず落ち着けるためになんとかここでことばを紡いでみる。
まとまらない綿のようなほわほわした思考にもならないような考えが
頭の遠くをほわほわほわほわたくさん浮遊しているから、
きれいに形にならずに浮かび続けている。

こんな状態で続きを開けるか分からないけど、きっとすぐ開いてしまう。
そんな矛盾の入り混じった状態。やはり恋だ。
今はしたくないのに、急に開かれた。ああでも、それも恋だ。
なんて身勝手な奴なのだろう、恋は。

そんな物語途中。
読み終わってを書けるかどうかは、分からないけど、
きっとまた酷く混乱することは分かっている。

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