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また一枚脱ぎ捨てる旅から旅

「また一枚脱ぎ捨てる旅から旅」

上記は昭和の俳人・種田 山頭火の句です。

山頭火は43歳のときに放浪の旅に出て、死ぬまで放浪し続けた昭和の俳人。旅をしながら、1万2000余りの句を詠んだことで有名。旅にまつわる句も数多く残している。

昭和の吟遊俳人・種田 山頭火

「旅に出るとは馴染んだ土地・家・友人との関係をいったん脱ぎ捨て、知らない土地で新たな馴染みを着ることである」と僕はこの句を勝手に解釈しました。服は着ていると馴染んできます。それを旅に絡めて、旅に出るということは、いろんな馴染んだものを脱ぎ捨てることと表した俳人の山頭火らしい名句です。

では、この一句から見える旅の真理とはなんでしょうか。ここから、より探っていきましょう。

脱ぎ捨て着るほどに快感が増す

まず、旅の最大の醍醐味は「未知との出逢いだ」ということ。見たことないもの、知らないもの、知らない人を求めて、今も幾多の旅人が世界中を旅しています。

オマーンの船旅で出逢ったインド人たちとの出逢い

しかし、一回出逢ってしまえば、それは馴染みになります。ですので、また新しい何かを着るために人は新たな旅に出ます。

その繰り返しは人生に彩りを与えます。人によっては旅の道中、「生きていること」をダイレクトに感じることも。これも人が旅にハマるひとつの真理でしょう。

さらに馴染みとの出逢いと別れを繰り返ししていくうちに放浪する人も現れます。山頭火は「旅行は帰る場所がある、放浪は帰る場所がない行為」だと表しました。

バックパッカーの中には、住民票を抜き、帰るあてもなく世界中をさまよう人たちもいます。彼らは帰ることを拒むほど「古い出逢いを脱ぎ捨て、新しい出逢いを着る快感」に最大限、魅了された人たちであると僕は感じてなりません。

旅の自由度を上げる

次に伝えたいことは「旅人は自由だ」ということ。

山頭火は旅に自由を求めました。彼の五七五の定型に縛られない自由律俳句からも、その一貫したスタイルを感じ取れます。死ぬまで放浪を続けたということは、社会のしがらみに縛られずに一生自由に生きたいと心の奥底から願ったからでしょう。

多くの現代人も心の中では、自由になりたいと感じて生きています。

だれもが鎖を切って羽ばたきたいと感じてはいるが......

しかし、できない。食うためにはしがらみの中、働いて生きていかなければいけないから。正直、現代社会を生きるということは鬱になる人、命を断つ人も現れるくらい苦行です。

そのような生活に、旅はささやかな自由を与えてくれる癒しになりえます。ですので、旅はどのような形であっても自由度が高くなければ心の回復につながりません。

たとえば、ツアーであろうと、日帰り旅行であろうと、だれかに旅の種類を選んでもらっては自由度が減ります。修学旅行や社員旅行がつまらなく感じた理由は「選択できる自由」が少ないことが原因の一つではないでしょうか。

こういった理由から、僕は複数人での旅行でも、みずから旅を計画する幹事の役目をよく引き受けます。計画するめんどくささと引き換えに選択する自由度を高めて、より心を充実させるためです。

ちなみに、もっとも自由を感じられる旅は一人旅です。一人旅をしたことない人は、ぜひ自分で行き先を選択し、計画し、出かけてみてください。はじめは寂しいと感じるかもしれません。けど、帰るころには意外と心が充実してることに気づきますよ!

たまにはデジタルをオフに

最後にお伝えしたいことは「歴史上、今が一番、旅のしやすい時代だ」ということ。

それはスマホの存在抜きにしては語れません。地図アプリ、翻訳アプリ、ライドシェアアプリなど、20年前では考えられないほどの旅のサポートを片手サイズのデバイスから享受することができます。

しかし、それは旅をイージーにしすぎた原因になりました。昔は街中で紙の地図を開いたり、分厚い時刻表から該当電車を探したり、その辺の歩行者にたずねたりと、昔の旅人は今よりもはるかに難しい旅をしていました。

そういった時代を生きた旅人にとっては、現代の旅は面白みに欠けているかもしれませんね。

そこでおすすめなのが、旅に馴染みが増えすぎて、また一枚脱ぎ捨てたいと感じたときはスマホの電源をオフにして旅することです。

スマホがなくなるだけで一気に旅の難易度はあがりますが、より自由度が増すし、人にたずねることで新たな出逢いにつながることも。

勢いあまってスマホを完全に捨てなくてもいい

それにデジタルデトックスという言葉があるとおり、ストレスが軽減され、より眠りにつきやすくなります。


今回は山頭火の一句から見える旅のススメについて紹介しました。ぜひ、みなさまも自由な旅ライフを送ってください。

※この記事を読んで、「感じたこと」や「思ったこと」があれば、僕のXアカウント宛(@WelcomeToSekai)にお気軽にリプかDMいただければ嬉しく思います。

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