好きだけが私を私たらしめる
先日、長年の夢だった、喫茶を開業した。
高校生の時からの夢だった。
私は友人が多い方ではないけれど、驚くほどたくさんの人が祝ってくれた。
何年も会っていないような人が花を持って顔を出してくれたりした。
自分も少しは人の記憶に爪痕を残してきたらしい、ということが新鮮な驚きだった。
好かれることよりも、自分が好きなことを追いかけることを、圧倒的に優先してきた人生だった。
道すがら大小たくさんのルールを破ってきたし、たくさんの人を傷つけてきたと思う。
不思議だなと思う。
私が高校生の時に思い描いた喫茶は、そこに来る人に小さな幸せや安心感を与えられる場所で、今も全く同じ思想で喫茶に立っている。
目の前の人が、少しでも良い一日を過ごしてくれますように。
矛盾のど真ん中にいて、誰にも説明できず、誰にも理解してもらえないだろうという感覚が、私を動けなくする時がある。
そんな時私は縋る。
好きなものやことを前にした、その瞬間の替え難い幸福の味、
それをただひたすらに追いかけてきた自分を、
それだけが私を私だと証明し、肯定する。