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ヨーロッパ的なるもの:小話18 女性参加率が高い社会

【女性参加率が高い社会】
 ノルウェーで何かの組織を訪問すると、部門トップが女性であることは決して珍しいことではありません。ごく普通です。こう言うと、「北欧は女性の社会進出が進んでいるからそうなのでしょうね」と言う声が聞こえてきそうです。
 確かに、ヨーロッパ各国の国会議員に占める女性の割合(2021年)を見ても、ノルウェーは40.8%、スウェーデンも49.6%あります。加えて、フィンランド46%、デンマークも40%なので、北の国々(ノルディックカントリー)は、男女差が少ないとの印象を持ちます。
 ところが上記4か国以外で、国会議員の女性比率が30%を超える国々を挙げてみると、ベルギー(43.3%)、スペイン(42.2%)、スイス(42%)、オーストリア(39.8%)、ポルトガル(39.5%)、オランダ(39%)、フランス(38.6%)、イタリア(35.6%)となります。この数字を見ると、「ノルディックカントリーは~」と言う説は怪しくなってきます。南のスペインやポルトガル、イタリアも高いのです。
 一方、低い国々は低い方から、ハンガリー(12.6%)、ルーマニア(20%)、チェコ(20.4%)、スロヴァキア(21.2%)、ギリシャ(21.7%)、リトアニア(26.2%)、ポーランド(27.7%)となっています。東欧の国々では軒並み低い数字が並ぶ。それなら、北と南ではなく、「西欧は女性の社会参加率が高く、東欧は低い」と言いたくなるかもしれません。そこに異議を差しはさむのは、英国とアイルランドです。女性議員比率はそれぞれ30.6%、27.3%で、東欧のポーランドと同じぐらいです。なぜか、南北を問わず、ヨーロッパの真ん中のゾーンの国々は女性議員比率が高く、その中央のゾーンの西の英国、アイルランドや、東のハンガリー、ルーマニアなどは低いという、興味深い構図になっています。
 EUの委員長(総理大臣に相当)も女性なので、これはヨーロッパの政治事情なのだろうと言う見方が出るかもしれません。そこで、大手民間企業の役員に占める女性の割合も見てみましょう。北の国々では、ノルウェー(45%)、スウェーデン(39%)、フィンランド(36%)となり、ビジネスの世界でも女性比率が高いのですが、フランス(45%)、イタリア(41%)、オランダ(39%)も高い比率になっています。ビジネス界でも「ノルディックカントリーは~」説は上手く行かないようです。さらに、これを新規に役員に任用された率(2022年)に限ると、デンマーク(58%)、スイス(57%)、スウェーデン(54%)、イタリア(53%)で、『女性比率が高い』どころか『新規役員は女性の方が多い』のです。以上に示した国々は政治、ビジネスを問わず、女性参加率が高い社会と言えます。
 先に政治面では女性比率が低かった英国は、民間企業の女性役員率は39%、新規任用役員では51%と率を上げています。英国女性は政治よりビジネスの方が好きなのかもしれません。
 東欧企業のデータは持ち合わせていないので、ビジネス界での東欧、西欧の違いは分かりませんが、これらの数字からは、少なくとも、『ヨーロッパでは、ノルディックカントリー以外にも女性参加が根付いている地域が多い』ということは言えるでしょう。
 これに年齢も加わった、さらに進んだ状況に遭遇することがあります。やはりノルウェーの中手の企業とミーティングしていたときのこと。相手は40~50歳台のベテランの技術者たち。しばらくすると、その部門の本部長を紹介すると言われました。やって来たのは、30歳台前半の女性。彼女も元々技術者でしたが、勤務を続けつつ、オスロ大学でMBAを取ったので、本部長に抜擢されたとのこと。彼女が退席した後も、おじさん技術者たちからは、妬みや見下げたような発言は一切ありませんでした。むしろ、技術も経営も分かるので適任だと歓迎です。人は、フェース・トゥ・フェースで話していると、その発言がうわべだけなのか、本心かを感じ取ることができます。そのおじさんたちは、全く、100%、何のわだかまりもこだわりも持っていませんでした。こういうムードは広くノルウェー人から感じます。
 もともとヨーロッパの多くの国々では、公的資格や学歴、能力や実績が重視され、年齢はほとんど考慮されない傾向があります(採用面接で生まれ年や年齢を聞くことが違法の国もあります)。その傾向は、ますます加速しています。フランスのマクロン大統領は39歳で大統領になりました。英国のスナク首相は42歳、フィンランドのマリン前首相は34歳での就任でした。 
 もともと高い女性の社会参加が率がさらに高くなり、加えて、年齢ではなく能力ベースでの登用が増えていっているヨーロッパ。古代ギリシャ、ローマ時代以来、2000年を遥かに超える長い歴史を持つヨーロッパですが、本件に限らず、さまざまな『古くて、実は、新しい」と言える側面を持っています。
 
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