プロレタリア独裁という過ち
プロレタリア独裁はマルクス主義やマルクス・レーニン主義に置いて中核をなす概念である。
プロレタリア独裁とは、社会階級の中で下層に位置するプロレタリア階級(労働者階級)による独裁のことであり、これは社会主義経済を実現するために必要な独裁であるとされた。プロレタリア独裁は、これまでに存在したブルジョア独裁(資本家独裁)や特権階級による独裁と異なり、労働者階級による独裁に於いては搾取は生まれず、中央集権型の社会主義を効率的に実現できると主張されていた。
実際に、多くの社会主義国家においてプロレタリア独裁が実施された。しかし、結果は思うようなものではなかった。プロレタリア独裁により、支配者側につく労働者階級と、被支配者側につく労働者階級に明確に格差が生まれ始め、階級内での格差が顕著になっていった。その格差は、まさに新しい階級を生み出してしまったのである。ソ連において、ノーメンクラツーラと言われるような階級はまさに顕著な例であり、本来は労働者階級であったものが、独裁的権力を握ることにより、新たな特権階級、抑圧階級と成り下がっていったのである。
これは、プロレタリア独裁の大いなる失敗である。プロレタリア独裁は、そもそもが指導者の良心や階級内での結束に委ねられた、不安定な概念でありあまりにも理想主義的な考え方であったと断言できる。これはマルクスの社会主義思想全般に言えることではあるが、階級闘争に偏重しすぎるがあまり、理想主義に偏りすぎている。これらの考えは、真の労働者の解放のためにも改良されていくべき点である。
しかし、現在の共産主義諸政党および社会主義諸国家に於いては、民主集中制の名のもとに、プロレタリア独裁が実施され続けているという現実がある。これは、世界ではじめて社会主義政権を樹立したソビエト連邦が、独裁色が強く中央集権的な政府を持つ国家であったからだと言える。各国の共産党は、ソ連主導で作られたコミンテルン(第三インターナショナル)の支部として確立し、発展していったものも多く、ソ連の指導のもとで発展していった共産党が多い。故に、ソ連式の独裁と中央集権を取り入れて、プロレタリア独裁を擁護し続けている。
前述の通り、プロレタリア独裁は大きな過ちであり、前時代の社会主義国家が失敗に終わった要因の一つである。そういった独裁を掲げ続けているようでは、共産党はいつになっても勢力を広げることができないばかりか、自由の中で育った若年層には嫌悪され支持を減らしていく結果となるだろう。今こそ、共産主義諸政党に変革が求められているのだ。