海外博士号取得→実家ニート→最近やっと就職した私が女性研究者による起業支援プロジェクトをしたいと思った理由
こんにちは、ゆーりんちーです。いつも個人のブログとしてnoteを書いていますが、今回はお仕事関連のお話です。
働いている株式会社tayoで女性研究者による起業を支援するプロジェクト「WISER」を始めます。
内容についてはプレスリリースやLP(近日公開予定)を見ていただければと思いますが、今回は個人的にどんな経緯でこのようなプロジェクトをやりたいという思いを持ったのかについて、書きたいと思います。
大学時代に工学部で女性が圧倒的に少ないことから感じた辛さ、就活の時に感じた「やりたいこと」と「居たい環境」の両立の難しさ、仕事をしながら感じているジェンダーギャップについて、つらつら書きます。個人のバックグラウンドとして「こんな体験をして、こんな想いを持ってやっているんだな~」ということが伝わればうれしいです。
学部時代のマイノリティ経験
まず、自分自身が女性がマイノリティである環境で辛かった経験を共有します。学部時代、工学部の機械系で女性率は5-6%という環境で過ごす中で、異質な存在として見られている、または存在が想定されていない、と感じたできごとがいくつもありました。
エンジンを4人のチームで作るという実習があったのですが、旋盤加工が必要な設計になったため、加工について4人で先生に相談に行きました。先生は私に向かって「女子は旋盤加工できない」と言いました。
授業中に、ヘビ型ロボットに関する動画があったのですが、動画再生前に教授が私たち女子学生に向かって「女の子はヘビ怖いでしょ、目を瞑ってていいよ~」と言いました。(ちなみに私は爬虫類大好き!飼ってたこともある。)その先生の講義に行かなくなりました。
分野や学科内に女性が少ないことについて話題に上ると、「女性はこの分野に向いてないから少ない」ということを面と向かって言われました。
このように「女性は○○だ、○○できない」、という主旨の発言を何度も聞きました。学生相談室にも行きましたが、相談室で泣き出してしまい、「感情的で精神の問題があるようだから医者に行った方がいい」と言われ、(いま考えるとセカンドハラスメントです)誰も助けてくれない、という感覚に陥りました。私が在学していたのは2012-2017年なので、そう遠くない昔の話です。
女性の存在がそもそも想定されていないと感じたできごと
さらに、女性がそもそも想定されていない、いないのが当たり前、という場面にも遭遇しました。
授業で、工具を扱う実習があるため、作業服が必須でした。男子学生向けには大学の教室に作業服業者が来て、まとめて採寸購入ができました。女子学生は「自分で買いに行ってください」という学科からの指示でした。
学科のインターンで、大手の重工業でエンジニアの職場体験をしたときは、100人を超えるオフィスフロアで、エンジニア女性はゼロでした。宿泊型のインターンで、男性のインターン生は、社員寮に入寮体験ができました。しかし、女性は寮がないからホテルに泊まりました。
事例が少ないから仕方がないと思うかもしれませんが、私たちの存在が想定されてないと感じて悲しい気持ちになったのをいまでも鮮烈に覚えています。
女性の居づらさがいまも変わっていない現状
私は大学院からアメリカに進学しましたが、女性として工学系のキャリアの先が見えないと思ったことが理由の一つです。もちろん他にも理由はありますが、これが大きな要因でした。
アメリカで博士号取得後、帰国し、再び日本におけるジェンダーギャップを感じています。何より衝撃的だったのは、母校の女性比率が私の在学時からあまり変わっていないことと、いまもつらい思いをしている学生さんがいるということでした。特に現役の工学部の女子学生から、「大学の講義中に教授から『女性がいるとやりづらい』という発言があって、とても辛い気持ちになった」と聞き、憤りを覚えました。自分が学生だった10年前と変わらない現状に、何も状況を改善するための行動を起こしてこなかった自分に対する悔しさも湧き上がり、アクションを起こそうと思いました。
就職活動中に感じた「やりたいこと」「居たい環境」の両立の難しさ
もう一つこの問題について取り組むきっかけになったのは自分自身の就活でした。博士号取得後アカデミアを離れようと決め、地元の大阪で就活を始めました。博士卒業後のインダストリー就活は難しいことが多いですが、自分の場合、海外大学院の卒業時期の違いや、体調管理、人間関係への不安などの理由から、一層の困難を感じました。
就活中は研究開発職(ハードウェアものづくり)への就職を中心に考えていました。それと同時に、「多様性を大事にしている職場がいい」「女性が著しく少ない職場は不安」と思っていました。このような「やりたいこと」と「居たい環境」を両立しようとした就活は、さらに難航しました。
1年近く、実家ニートしながら彷徨っていたところを「音楽バンドやってたなら、うちみたいな小さい会社大丈夫です!」という熊谷さん(tayo代表)のお声がけからtayoでインターンをはじめ、今に至ります。就活中の困難や心情変化についてはまた別のnote記事にまとめます。最初に思い描いていた職種ではありませんでしたが、多様な研究者と関わりながら仕事ができて楽しく過ごしています。
スタートアップ・起業に関わる仕事を始めて
tayoでは、研究の社会実装や研究者の起業支援を行っています。活動を続ける中で、特に女性研究者のためのコミュニティや支援があればいいのにと思う場面が増え、これが今回の「WISER」プロジェクトを立ち上げる直接のきっかけとなりました。
例えば、tayoで企画したイベントでは、内容によっては参加者の女性比率が極端に低くなることがあり、自ら関わるイベントでこの状況を目の当たりにして、落ち込むことがありました。また、この状況について社内で話すことにためらいがあり、不安に感じていた時期もありましたが、思い切って相談してよかったと感じています。結果的に、WISERプロジェクトが実現できたことを嬉しく思っています。
さらに、大学発ベンチャーやディープテック分野の起業支援イベントやコミュニティに参加する中で、男性の参加者が圧倒的に多く、ネットワーキングが難しいと感じることが多々ありました。また、女性向けの起業支援に行っても、研究者としての立場が珍しく、理解されにくいと感じました。このような経験を通じて、女性研究者が起業を目指す際にサポートし合えるコミュニティを作りたいと考えました。
女性支援のあり方についての悩み
女性支援について、悩みながら進めていることもあります。「女性だけで集まる意味があるのか」、「女性ってバイナリーな性別観念に基づいた表現だからそれについてどう考えるべきか」、とかいろいろ悩みました。が、男性が圧倒的に多いディープテック業界へのアンチテーゼとして、女性だけのコミュニティをやります。Discordコミュニティは性自認が女性の方、女性として社会で生活している方、が対象ですが、WISERの枠組みの中でジェンダーギャップの問題など、性別問わず議論できる機会も作りたいなと思っています。
女性支援が自分自身のエンパワーメントになる
大学時代、私の学科は女性のPI(教授、准教授、講師)がゼロでした(助教に女性が数人)。ある日、学期の初日の数学の授業である女性が教室に入ってきて黒板を消し始めました。わたしはその人のことを事務員さんだと思いました。その人が授業を始めたときはおったまげた(ほかの学科の教授だった)と同時に、自分自身が女性でありながら、女性が少なすぎる環境にいるせいで、ステレオタイプ・バイアスを持っていることに気づき衝撃を受けました。
いま、自分の研究を生き生きと話す女性や起業家として活躍する女性と身近に仕事ができることが、自分自身のエンパワーメントになっていると実感しています。そして、WISERコミュニティを通じて、起業を含めた多様なキャリアの選択肢を知り、仲間が挑戦する姿を身近に感じられる場を作ることで、一人ひとりがエンパワーメントされることを目指します。
さいごに: 背中を押してくれた言葉
私は、昔からいろんなことに違和感を覚えるタイプで、それがコンプレックスでした。その話を映画プロデューサーの方に相談したときに、このような言葉をかけていただきました。「違和感がないと作品が作れないと思っているから、それこそが大事。違和感を感じなくなったら終わり。」
私は違和感を原動力に行動します。
WISERにご興味があれば、以下からお願いします。
■オンラインコミュニティ参加者募集
WISER communityでは、登録を受け付けております。
こんな方が対象です:
「ほかの大学、分野の女性研究者とつながりたい」
「研究者のキャリアの悩みについて共有したい」
「ぼんやりと起業や産学連携に興味があり、仲間を探したい」
「自身の研究内容で社会課題を解決したい」
参加条件: 40歳未満の女性研究者。修士以上の学生またはそれに相当する研究経験を持つ方。
以下より登録頂ければ、交流用のDiscordの案内をお送りいたします。https://forms.gle/t9DpLyC3RbPyFkKE7
■サポーター募集
企画趣旨に賛同し、支援者としてサポートいただける方は下記のメールアドレスよりご連絡いただけるとありがたいです。
例1:所属学会でキャリア委員を行っており、年会のイベントなどを通して本事業の周知を手伝えるかもしれない
例2:ベンチャーキャピタルで働いており女性研究者のスタートアップの支援がしたい
Email: wiser-support[at]tayo.jp
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